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秋田県における人口減少の要因について

 先般公表された平成22年国勢調査速報(平成22年10月現在)によると、秋田県の人口は108万5,845人と、前回の国勢調査のあった5年前の17年10月と比べ、5万9,656人(5.2%)の減少となった。前回調査では、5年間で4万3,778人(3.7%)の減少であったことと比べると、人口減少は加速しているといえる。この5.2%という減少率は全国最大であり、本県では平成12年の国勢調査以降、全国最大の減少率が続いている。将来人口推計をみても、現在のすう勢が続く限り、本県は人口減少に歯止めをかけることは難しい。本稿では本県の長期的な人口減少要因を、人口総数や年齢構造の推移を全国と比較することにより再確認したい。人口減少に歯止めをかけるため、地元企業の活性化等を通じた雇用の確保による社会減の抑制に加えて、県の「秋田の少子化対策」の着実な実施が望まれる。

1 はじめに

 人口の変動要因は大きく分類すると、「出生」「死亡」「移動」の3つの要素に分かれる。しかし、人口に関しては、現実に調整可能なものは、出生数のみである。それ以外の年齢層は、総数としては今以上に増加しない。人口は既にある年齢構成に大きな影響を受け、現状の姿を調整できないという特徴があるため、人口問題は解決が難しいと言われるものである。したがって、人口問題に関しては「年齢別人口構造」(以下、「年齢構造」)が、将来の人口を大きく動かすという意味で決定的に重要である。以下、年齢構造等の推移をみてみる。

2 人口に関する統計

(1)全国と秋田県の比較
 平成21年10月における日本の総人口は1億2,751万人と、前回調査の17年10月(1億2,776万人)と比べて、4年間で約25万人(0.2%)減少している。
 総務省の人口推計によると、日本の総人口が減少したのは、平成17年からである(16年10月:1億2,768万人、17年9月:1億2,761万人)。これは死亡が出生を上回ったこと(約2万1千人減)によるもので、「日本も人口減少社会に突入」と表現されたものである。ただし、今のところ国内の減少率は極めて小さい。
 次に、秋田県の状況をみると、平成22年10月の人口は108万5,845人となっている。全国との比較を行うため(22年10月の全国統計は未公表)、前年(21年10月)をみても109万7,483人と17年10月(114万5,501人)に比べ約4万8千人(4.4%)減少。減少率は全国平均を大きく上回る結果となった。

(2)本県の人口動態の変化
 まず、秋田県の人口が何故、大幅に減少するに至ったのかを確認するため、自然減と社会減の推移をみる。本県では、平成5年に自然減が始まり、11年には社会減を上回り、それ以降、自然減は急速に拡大していった。このことからも、人口減少が加速した要因は、従来からの社会動態(転入-転出)による減少が拡大したことに加え、自然動態による減少が急速に拡大したためといえる。
 また、人口減少率が全国で2番目に大きい隣県の青森県と比較しても、秋田県は特に自然動態の減少率が大きくなっており、本県の置かれている極めて厳しい状況がわかる。

(3)年齢別人口構造
 この人口動態の変化を受けて、年齢構造も大きく変化した。平成5年から22年にかけて僅か17年間で、年齢構造は著しく変化した。平成5年は働き盛りの40歳前後が男女とも一番多かったが、平成22年は60歳前後が一番多くなった。また、注目すべき変化は20歳代後半から30歳代にかけての年齢層である。平成22年においては、この年齢層(25~39歳)の人口が約16万5千人(15.2%)と極めて少ない。さらに、23歳を中心とした人口の「谷」も一段と深まった。
 本県の人口構造が現在のようなアンバランスな形となった要因には、18~24歳頃の時期に就職や進学などの理由から他の都道府県へ転居し、そのまま秋田県外で生活する、いわゆる若年人口の減少が約30年以上もの長期間継続したことが大きい。
 社会動態の推移を年齢別にみると、秋田県は過去30年間で約14万5千人純減しているが、このうち、15~24歳までの若年人口が約13万9千人と96.0%を占めている。この若年人口の流出が年齢構造に与えた影響は極めて大きい。
 なお、全国の年齢構造と比べると、現在の本県人口の年齢構造が極めてバランスを欠いた形になっていることがわかる。

(4)20~39歳の人口
 秋田県の年齢構造のなかで大きく懸念されることは、子どもを産み育てていく中核的な世代となる20~39歳の年齢層が著しく少ないことである。全国の25.7%と比較すると本県は6.4ポイント低い19.3%となり、この年齢層の少なさが一段と際立つ。20~39歳の人口が少ないため出生数の減少が進み、ひいては急速な労働力人口の減少、高齢化という結果に至っている。

(5)まとめ
 以上のことから、本県では若年人口を中心とした社会減が先行し、その結果として出生数の減少につながり、自然減が加速してきた構図が窺える。ゆえに、年齢構造のバランスを再構築するためにも、社会減に対して歯止めをかける必要がある。
 若年人口の県外流出を防ぐため、地元企業の活性化と粘り強い企業誘致への取組み等を通じて地域における安定した雇用を創出していくことが欠かせない。

3 将来の本県人口

(1)将来人口推計による算出
 将来人口推計は、過去(平成12年~17年)に生じた人口動態が今後も続いた場合に、将来人口はどのように変化するのかを投影的に計算したものである。国立社会保障・人口問題研究所による本県の将来人口推計によれば、今後25年間で、本県人口は急減。10年後の平成32年で約97万5千人、25年後の平成47年には約78万3千人になる見込みである。

(2)平成32年の秋田県
 10年後の平成32年の本県推計人口総数は97万5,455人、0~14歳の人口は9万3,779人(9.6%)、15~64歳は52万5,875人(53.9%)、65歳以上は35万5,800人(36.5%)となる見込みである。なお、0~4歳の年齢層は2万7,638人と、平成22年(3万6,716人)よりも約9千人少なくなる。
 年齢構造も、人口の「山」が65~74歳へとシフトし、高齢化がさらに進むほか、現在80歳以上の高齢層が平均寿命(男:77.44歳、女:85.19歳、平成17年)を超える90歳以上の年齢に到達するため、人口は大きく減少すると見込まれる。
 既述のとおり、平成22年時点で既に、県人口は年齢構造がアンバランスな状態にあるうえ、20~39歳の出生を担う世代の人口が極端に少なく、出生率も低い状態で推移している。この状況が続く限り、人口減少は加速度的に進むと見込まれている。少なくとも25~30年の期間、減少に歯止めがかからない推計となるものである。

4 人口減少への対策~出生

 人口減による県内マーケットの縮小は秋田県経済に生産から流通、消費に至る多くの面でマイナスとなって働く。このため人口減への歯止めが必要となるのだが、人口減少への対策として手を打てるのは、前述の社会減の抑制と出生である。
 これまでの出生数の推移をみると、平成21年(暦年)における出生数は7,013人と17年と比べ684人(9.8%)減であるが、年々出生数の減少幅は拡大している(図表14)。将来人口推計の結果では、今後、出産を担う中核的世代である20~39歳の女性人口が著しく減少する。平成32年には、20~39歳の女性人口は21年に比べ、18%ほど(約1万9千人)減少する状況にあり、将来的にも増加に転じる兆しがみえにくい。
 人口減少の速度を緩めるためにも、出生数増加をはからなければならないが、対策としては、安心して結婚、出産、育児を行える環境の構築が必要である。現在、秋田県は「秋田の少子化対策」として、年間の出生数を8,000人超へと増やすため、雇用の受け皿づくりとAターンの促進、結婚しやすい環境づくり、子育て・教育の充実、少子化克服に向けた官民挙げての体制づくりに取り組んでいる。本対策に記されている環境を、県内の総力を挙げて実現することが出生数の増加に結びつく。
 併せて、環境づくりの重要性を周知していくことも必要であると思われる。「出生」を再度重要視しなければ、人口問題は解決されず、年間1万人超に達した県人口の減少幅も縮小することはないと思われる。

5 まとめ

 秋田県の人口は急速に減少しており、現状の推移が続けば、秋田県の年齢構造はますますバランスを欠いたものになり、経済に対する影響も深刻なものとなる。人口減少に歯止めをかけるためにも、地元企業の活性化等を通じての社会減の抑制および「秋田の少子化対策」の着実な実践が望まれる。

(片野 顕俊)

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