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経営随想

カラオケは日本の文化

下村 英春
(株式会社アルノ 代表取締役会長)

■カラオケの進化

 歌の大好きな若い頃、ジュークボックスに出会いました。お金を入れて選曲ボタンを押すと、レコードが自動的に回り、曲が流れるジュークボックスを見たとき、ジュークボックスのコインビジネスを初めて知り、面白さにのめり込みました。
 昭和45年頃のジュークボックスは輸入機械であり、(株)タイトー貿易、(株)セガエンタープライズといった一部の貿易会社でしか取り扱っていませんでした。あちこちを探し回り、中古のジュークボックスを1台、2台と購入していきました。そうして手に入れたジュークボックスを、スナックやバーに入れてもらう仕事を個人商店として始めました。
 ジュークボックスはヒット曲が有るか無いかで売上が変わるので、毎日のようにレコード店を巡り、今何がヒットしているのか探し回りました。趣味と実益を兼ねた仕事だったので、大変楽しく仕事が出来た時代でした。
 その5年後の昭和50年頃からカラオケが出始めました。ジュークボックスを取り扱っていたからでしょう、カラオケのメーカーから取り扱ってくれませんかと話があり、「今、大阪でカラオケが大ブームになっていますよ」と言われました。
 その時代はインベーダーゲームも日本中で大ブームでした。タイトー貿易で開発したインベーダーゲームは、ジュークボックスで取引があった関係から、我が社でも取り扱いレンタルをしていました。しかし加熱ブームで取り扱う業者も多くなったこともあり、その後ブームが終わる事も考えていました。その頃カラオケは登場したばかりで、取り扱っている業者はほとんどいなかったので、ライバルがいない分有利なのではと考えました。また、いつの時代も歌で頑張れた、元気をもらった、という話を聞いた事があり、「歌」は無くならないという思いがありました。
 そして昭和54年に株式会社アルノを設立して、本格的にカラオケの商売をする事にしました。

■カラオケブーム

 初めてテープカラオケを見た時は、すごいと思いました。エコーがあり、エコーを使えば上手く聞こえました。さらにキーコントロールもあり、美空ひばり、北島三郎のプロの音域が、素人でも歌えるようになりました。何台かスナックに置かせて頂いたら大変な人気が出たので、これは本当の大ブームになると確信しました。
 30年余り前と言えば、カラオケで好まれるヒット曲が数多くありました。夜のカラオケのセールスに出ても、「石原裕次郎の曲あるか!」「ぴんから兄弟の『女のみち』あるか!」「細川たかしの『北酒場』あるか!」と言われました。ありますと言えば、「置いていけ」。
 セールスは楽でしたけど、資金繰りが大変でした。その当時は100円玉(コイン)を投入して使っていましたので、金庫回収でなんとか資金が回れていました。
 また忙しいお店は、お金が入り過ぎてコインの投入口につっかえぱなしの状態の故障もありました。でも当時のカラオケは故障が当たり前で、テープが切れたり、マイクが鳴らなかったりして、夜中にスナックなどから故障の連絡が入る事がしょっちゅうでした。「カラオケにお金を入れても鳴らないよ!」と、お客様が酔ってママの目の前で騒いでいる。直さないわけにはいかない。お店が営業中は夜中でもサービスに走り回りました。町の電機店でもカラオケを取り扱っていましたが、夜の仕事でしたので、そういった仕事には対応できずにいました。その頃はナショナルショップとかサンヨーショップとか沢山ありました。夜中でもサービスが出来る、これが我が社の信用となってレンタル件数が増えていきました。
 昭和57年頃からハード・ソフトの技術革新が一気に起こりました。CD・LDといったオートチェンジャー機が登場し、歌詞カードが無くなり、テレビモニターに替わって行きました。

■カラオケボックスのブーム

 平成時代に入って、カラオケのメーカー(第一興商)より、「今、岡山で面白いものが流行っていますよ」「コンテナの中にカラオケがあり、たくさんの人が来ていますよ」と言われまして、さっそく岡山県に見に行きました。広い土地にコンテナを並べて、コンテナに内装を施し、カラオケのオートチェンジャー機が置いてあるだけでした。お酒も飲まずに、小さな部屋で昼から歌える。主婦からお年寄り、老若男女問わず待ち時間が出ていて、これはいけると思いました。私もさっそく郊外に、1号店、2号店と出しながら、現在8店舗を営業しています。
 あれから、20年の間に競合他社が増え、カラオケボックス業界は価格競争になってきております。これからはお客様にいかに満足して頂くか?顧客満足度を考え、細かいニーズに対応できる店づくりを考えております。

■元気と健康をサポートするエルダーカラオケ

 カラオケの登場から約35年が過ぎ、大衆の文化と呼ばれるほどに成長を遂げました。そんな中、今まで第一線で日本の経済を支えてきたシニアの人達のための、元気と健康をサポートする「エルダーカラオケ」が誕生しました。
 大学と共同開発した高齢者向けのコンテンツが充実。昭和を中心とした懐かしい映像と音楽で思い出を振り返り、若い頃の記憶を呼び起こす映像・音楽プログラム。また独自の振り付けを施し、体の機能低下を防いだり、心身ともにリフレッシュさせる、歌って踊れる体操プログラム。要はカラオケで毎日お腹から声を出して歌うことが、脳の活性化にも役立つという事が注目され、カラオケが立派な音楽療法として導入されるようになりました。元気なシニアライフを目的に、高齢者向けの施設など、各方面で利用されております。

■社長の交代

 日進月歩のように、ハード・ソフトと次々に新機種が開発されるカラオケの変化についていけないと思い、66歳を過ぎた私は2011年に社長を交代し、会長職になりました。以前から当社のメーカーであります(株)第一興商の保志会長から自分の体験談を聞かされていたからです。「いつの時代でも、過去の成功体験は、必ず次の大敗に結びつく。それを消すにはトップの交代である」などと、事業の継続の難しさを聞かされました。「事業の進歩発展に最も害をなすものは、青年の過失ではなく、老人の跋扈(ばっこ)である」という住友の第二代総理事の伊庭貞剛氏の話もしてくれました。そこでスピードを求められ、環境の変化に対応できる若い社長(息子)に会社を譲り、私が会長になりました。
 最後になりますが、世の中にはいろんな儲かる仕事、商売がありますけれども、音楽(カラオケ)で喜ばれた仕事でよかったと思っております。

会 社 概 要

1 社  名 株式会社アルノ
2 代表者名 代表取締役会長 下村 英春
代表取締役社長 下村 学
3 所在地 〒010-0931 秋田市川元山下町6番27号
4 電話番号 018-823-4144
5 FAX番号 018-866-2488
6 設立年月 昭和54年11月
7 資本金 2,000万円
8 年  商 13億円(平成23年8月期)
9 従業員数 正社員49名、アルバイト60名
10 事業内容 カラオケ機器のレンタル・販売、カラオケボックス経営
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