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機関誌「あきた経済」

第29回秋田県消費動向調査

(要旨)

1 「昨年と比較した暮らし向き」は、「変わらない」(66.8%)とする世帯割合が引き続き最も高いものの、「良くなった」(6.5%)が3年ぶりに上昇に転じるなど、緩やかに改善している。
2 「昨年と比較した収入」は、減少に向かった前回調査(平成24年10月実施)から再び増加した。
3 「1か月あたりの生活費」は前年比1千円減少し、「今後の家計支出」についても、抑制傾向が一段と強くなった。世帯収入は、見通しも含めて緩やかに改善しているが、物価上昇や来年4月の消費税増税が影響し、回答者の生活防衛意識が高まっている。
4 耐久消費財の購入は、地上デジタル放送への移行にともなうテレビの買い替え特需が一巡したことを主因に、通常年並みの水準に戻った。
5 消費税増税を理由に、特定の商品・サービスを「今年、購入(契約)した」または「来年3月末までに購入予定」とする割合は、回答者全体の36.1%となった。生活に必要で且つ高価格帯の品目が対象となっており、若年層で「乗用車」、高齢層では「住宅リフォーム」の回答割合が高くなった。

1 暮らし向きについて

(1)昨年と比較した暮らし向き
―「良くなった」世帯割合、3年ぶりに上昇―
a 「良くなった」とする世帯割合(6.5%)は、昨年調査を2.0ポイント上回り、3年ぶりに上昇した。
b 「悪くなった」は26.7%と、20年(51.0%)をピークに低下が続いている。
c 「変わらない」(66.8%)は、平成21年以降5年連続で上昇し、6割を超えた。
d 年代別にみると、全ての年代で「変わらない」を選択した世帯割合が最も高くなった。30代以下では、「良くなった」が二桁となり、暮らし向きは若年層を中心に改善している。
e 昨年調査と比較すると、70歳以上を除く全ての年代で「悪くなった」が低下した。一方、70歳以上では、「悪くなった」が2.1ポイント上昇したほか、全年代で唯一「良くなった」とした回答が見られず、暮らし向きに厳しさを感じる世帯割合が高まっている。
f 暮らし向き得点は△0.25と、昨年調査(△0.39)を0.14ポイント上回り、2年ぶりに上昇。
(2)今後1年間の暮らし向き
―上向きに転じる―
a「良くなる」(10.1%)は、昨年調査から5.6ポイント上昇し、平成12年(10.5%)以来13年ぶりに二桁となった。
b「悪くなる」は33.1%で、昨年調査比2.3ポイント低下と、昨年悪化に向かった暮らし向き予想は上向きに転じた。
c「変わらない」と予想する世帯割合は56.9%で、平成23年調査(62.5%)をピークに低下が続いている。
d 住宅ローン(以下、ローン)の有無別では、双方とも現状並みと予想する世帯割合が最も高く、また、昨年調査と比べて、「良くなる」世帯割合が上昇した。「悪くなる」は、ローンのある世帯(36.1%)が、ない世帯(31.7%)を4.4ポイント上回り、より厳しく見通している。

2 収入について

(1)昨年と比較した世帯収入の増減
―緩やかながら改善―
a 「増加した」は17.2%と、昨年調査から2.9ポイント上昇した。世帯収入は、減少に向かった昨年調査から再び増加に転じ、緩やかながら改善している。
b「減少した」(35.7%)は、昨年調査(40.8%)から5.1ポイント低下した。
c「変わらない」を選択した割合は47.2%と、昨年調査(44.9%)を2.3ポイント上回った。
d 昨年調査と比べて、特に30・40代で「増加した」割合が上昇した。29歳以下では、「増加した」が4.1ポイント低下したものの、「悪くなった」も5.2ポイント低下した。
e 年代別にみると、50代と70歳以上を除く全年代で「変わらない」とする割合が最も高くなった。70歳以上では、「変わらない」と「減少した」が、ともに48.4%。50代では、全年代で唯一「減少した」が5割を超えた。
f 収入得点は△0.26で、昨年調査(△0.37)から0.11ポイント上昇し、2年ぶりに上向いた。
(2)来年の収入(見込み)の増減
―減少予想世帯割合が大幅低下―
a 「増加する」は9.1%と、昨年調査から1.5ポイント上昇した。
b 減少予想世帯の割合(30.8%)は、昨年調査(40.8%)と比べて、10.0ポイント低下した。来年の収入の見通しは、昨年大幅に悪化したものの、本調査で再び上向き、平成23年調査とほぼ同じ水準となった。
c 「変わらない」と予想する世帯割合は60.2%で、昨年調査(51.6%)を8.6ポイント上回った。
d ローンの有無を問わず、「変わらない」とする割合が最も高いが、ローンのある世帯(62.2%)では、ない世帯(59.2%)を3.0ポイント上回るなど、若干慎重な見方をしている。

3 生活費について

(1)1か月あたりの生活費
―平均生活費は前年比1千円減の172千円―
a 昨年調査と比較して、「10万円未満」(12.9%)が、2.8ポイント低下した。食料品や電気料金など生活必需品での物価上昇が、生活費のかかり増しに繋がっているようだ。対象的に、「25~30万円」(8.8%)が1.3ポイント低下、「30万円以上」(5.9%)が1.0ポイント低下など、生活費が高額な世帯割合も低下した。
 その結果、中間層である生活費10~25万円の世帯割合(72.3%)が、4.9ポイント上昇した。世帯収入は持ち直したものの余裕には乏しく、また、物価上昇により家計負担が増しているため、生活費の抑制傾向は一層高まっている。来年4月の消費税増税も、生活防衛意識を高める一因になっている。
b ローンの有無別では、双方とも「10~15万円」とする割合が最も高くなった。ローンのある世帯では、生活費20万円以上の割合(41.0%)がない世帯(25.1%)を15.9ポイント上回った。ローンが負担となり、生活費を押し上げている。
c 1か月あたりの世帯主の年代別平均生活費は172千円で、前年比1千円の減少。年代別にみると、50代(190千円)と40代(183千円)で高く、60代と70歳以上はともに176千円。最も低い額は、29歳以下の年代で132千円。
 昨年調査と比べて、40代以下の全ての年代で金額が増加した。一方で、50代以上の全年代で減少し、特に70歳以上では14千円減と減少幅が大きい。本年10月から公的年金の減額が開始されたため、年金受給者が多い年代層で、生活費を抑制する動きが生じていることが、背景として考えられる。
(2)昨年と比較して支出が
「増えた」費目・「減った」費目 ―物価上昇の影響大―
a 昨年よりも支出が増えた費目
(a) 割合が高い順に、「食料費」(16.2%)、「水道光熱費」(15.5%)、「保健医療費」(11.0%)、「教育費」(10.9%)と、昨年調査と同じ4費目が並んだ。
(b) 「食料費」は、昨年調査(15.2%)を1.0ポイント上回り、3年連続で全費目中最も高い割合となった。円安や原材料の価格高騰による食料品の値上げが相次いだことが、支出増加に繋がったものと考えられる。
(c) 「水道光熱費」は、本年9月から電気料金が値上げとなったことが影響し、昨年調査(12.8%)を2.7ポイント上回った。
(d) 「保健医療費」は、昨年調査(11.3%)とほぼ同水準。県内の高齢者割合の上昇にともない、健康維持や病院治療面に要する支出も年々増加しているためと推測される。
b 昨年よりも支出が減少した費目
(a) 割合が高い順に、「旅行・レジャー費」(15.4%)、「外食費」(14.2%)、「貯蓄」(13.1%)、「小遣い」(11.1%)、「衣料品費」(10.3%)となった。いずれも選択的費目であり、食料品など生活に欠くことのできない費目で物価が上昇し家計への負担が増しているため、回答者は、これらの費目で支出を削減せざるを得なかったようだ。
(b) 「旅行・レジャー費」では、ガソリン価格の値上がりも、遠出を控えた一因と思われる。
(c) 「外食費」については、支出の抑制傾向による内食化の流れが続いている。
(3)今後の家計支出
-家計引き締め傾向が強まる-
a 「引き締める」とする世帯割合は73.6%で、昨年調査から1.6ポイント上昇した。これまでも高止まり圏内で推移していたが、本調査で支出抑制意識は一層高まっている。世帯収入は、見通しも含めて緩やかに改善しているが、依然として余裕は少なく、回答者は財布の紐を更に固く引き締めるようだ。食料品や電気料金などの値上がりによる生活費の負担増加も、節約意識の高まりに繋がったと考えられる。
b 年代別では、「引き締める」は30~50代で7割を超え、なかでも40代で最も高く80.0%。子育てや住宅ローンなどで支出が大きいとされる世代で、節約意識が高まっている。50代以上では、年代が上がるにつれて割合が低下し、70歳以上(43.2%)で最も低くなった。
 「増やす」とした回答者は40・50代で見られなかった一方で、60代(23.0%)と70歳以上(31.8%)で二桁となった。高齢層では、物価上昇や消費税増税があっても、生活に必要なものへの支出水準は引き続き維持していく意識が強いようだ。
c 家計支出を引き締める理由としては、5年連続で、「所得の減少または伸び悩み」(46.7%)とする割合が最も高くなった。世帯収入は、平成22年以降緩やかな改善傾向にあるが、回答者の財布の紐が緩むまでには至っていない。次いで、「食料品や日用品、電気料金の値上げによる負担増」(37.7%)と「生活の先行き不安」(33.1%)がともに3割台で、回答者の厳しい暮らしぶりがうかがえる。「消費税増税の負担が大きいから」は、26.8%となった。

4 耐久消費財について

過去1年間に購入した耐久消費財 ―「スマートフォン」の購入割合高まる―
(1) 過去1年間に耐久消費財を購入した世帯割合は57.6%となった。昨年調査比9.8ポイント低下、一昨年の平成23年調査からは19.9ポイント低下した。購入割合は、23年の地上デジタル放送への移行にともなうテレビの買い替え特需が一巡したことを主因に、通常年並みの水準(約60%)に戻った。
(2) 年代別の購入割合をみると、50代(64.4%)を筆頭に30~50代で6割を超えた。一方、60代で42.4%、70歳以上では34.8%と、高齢層で割合が低くなった。
(3) 購入した耐久消費財としては、割合が高い順に、「スマートフォン」(38.2%)、「乗用車」(21.7%)、「洗濯機」(18.2%)。
a 「スマートフォン」は、昨年調査(30.4%)を7.8ポイント上回った。新製品の登場や、大手通信会社間の競争激化による利用料の低下から、回答者は購入意欲を一層刺激された模様。
 年代別では、29歳以下と30代がともに50.0%と若年層で割合が高く、ただし、50代以上の年代では一桁。なお、「携帯電話・PHS」と比較すると、70歳以上で唯一、携帯電話・PHSの購入割合がスマートフォンを上回った。
b 「乗用車」は、昨年調査(24.7%)を3.0ポイント下回った。消費税増税による駆け込み需要が生じ始めているものの、エコカー補助金制度が昨年9月に終了した影響が現れた。
c 「洗濯機」は、昨年調査から4.6ポイント上昇。「冷蔵庫」や「掃除機」など他のエコ家電製品も割合が伸びており、消費電力を抑えた製品への買い替えが進んでいるようだ。

5 消費税増税の影響について

(1) 来年4月の消費税増税を控え、下図表にある商品・サービスのいずれかを購入(契約)した、もしくは来年3月までに購入を予定している世帯割合は、全体の36.1%となった。
(2) 既に購入(契約)した品目では、割合が高い順に、「乗用車」(9.7%)、「住宅リフォーム」(4.3%)、「家電製品」(3.4%)となった。
a 「乗用車」は、29歳以下(15.9%)と30代(11.3%)で購入割合が高い。
b 「住宅リフォーム」は、「住宅」(2.3%)を2.0ポイント上回った。本県は持ち家率が高いため、リフォームの需要が大きかった模様。契約した割合は、60代以上の年代で高くなった。
c 「家電製品」の購入割合について、年代別にバラつきが見られなかった。具体的な品目として、冷蔵庫や洗濯機、掃除機などが挙がった。 来年4月の消費税を理由に購入(契約)した、もしくは来年3月末までに購入を予定している商品・サービスはありますか
(3) 来年3月末までに購入(契約)予定がある品目としては、割合が高い順に、「乗用車」(7.7%)、「家電製品」(6.7%)、「旅行の契約」(2.5%)、「住宅リフォーム」(2.3%)となった。
a 「乗用車」は、30~50代で購入希望割合が高く、30代で13.4%となった。
b 「家電製品」は、来年3月までの購入を予定している割合が、既に購入を済ませた割合の約2倍となり、駆け込み需要は今後生じる模様。
c 住宅に関しては、新築・リフォーム問わず、本年9月末までに契約を済ませると、引き渡しが増税後でも現行の税率が適応されるため、既に購入した割合の方が高くなった。
(4) 全体として、増税による影響を踏まえた購入もしくは購入の検討を行った割合は、前述のとおり、全回答世帯の36.1%となった。主に生活に必要で比較的価格の高い商品・サービスが対象となっており、具体的には、若年層は乗用車の購入、高齢層は住宅リフォームの契約への回答割合が高くなった。

(相沢 陽子)

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