トップ機関誌「あきた経済」トップ平成26年度新入社員アンケートから

機関誌「あきた経済」

平成26年度新入社員アンケートから―安定志向が再び強まる―
 当研究所では、毎春、県内企業に就職した新入社員を対象に、就職活動や仕事に対する考え方、インターンシップの経験などについて、アンケート調査を実施している。本年度は、雇用情勢の改善を背景に、希望に添う就職ができたとする回答者割合が伸びたことなどから、定年までも視野に入れ長く働きたいと希望する割合も上昇し、安定志向が再び強まった。

1 アンケート結果

Q1 効果的だった情報収集方法は何ですか(2項目複数回答)
 全体では、「就職部の資料」(48.0%)が、平成25年度に実施した前回調査(42.5%)を5.5ポイント上回り、3年ぶりに最も高い割合となった。「先生・教授に話をきく」(40.1%)も4割を超えており、回答者は主に校内で情報収集に取り組んでいたようだ。一方、前回調査で最高割合となった「インターネット」(38.7%)は、6年ぶりに4割を下回った。
 最終学歴別にみると、中学・高校卒では「就職部の資料」(57.8%)と「先生・教授に話をきく」(50.9%)が5割を超えた。「インターネット」については、大学・大学院卒(71.2%)と専門・短大卒(52.5%)による活用が目立つ。
Q2 就職活動で利用した機関やイベントはありますか
 就職活動を進める際に利用した機関やイベントについて、全体では、利用した割合の高い順から、「秋田県合同就職説明会・面接会」(29.0%)、「ハローワーク」(26.2%)、「リクルート会社主催の会社説明会・面接会」(20.1%)、「秋田学生職業相談室」(5.0%)となった。例年どおり、回答者は、多くの企業の求人情報を一挙に得られる機関・イベントを積極的に利用している。ただし、中学・高校卒はいずれの利用率も低い。学校主導の就職活動を行っていたため自発的な利用が少なかったものと考えられる。
 個別にみると、秋田県と秋田労働局などが主催する「秋田県合同就職説明会・面接会」は、専門・短大卒(55.9%)と大学・大学院卒(54.2%)で過半数となった。このイベントは、本県のほか、東京都と宮城県でも開催されることから、県外で学生生活を送っていた回答者も参加しやすかったものと思われる。
 「ハローワーク」については、大学・大学院卒(45.8%)と専門・短大卒(44.1%)で4割を超えた。ハローワークは、全国各地にあり、また、インターネットによるサービスも提供しているため、回答者が手軽に利用できたようだ。
 「リクルート会社主催の会社説明会・面接会」は、大学・大学院卒(61.0%)で回答が集中した。このイベントは、規模の大きな都市で開催されることが多いことから、主に県外の大学・大学院に在籍していた回答者が参加したものと推測される。なお、大学・大学院卒の回答者のうち、県外で通学していた割合は62.7%である。
 秋田市御所野にある「秋田学生職業相談室」は、大学・大学院卒(11.9%)でのみ二桁となった。市中心部から距離があるため、生徒・学生が利用するにはやや難しかったようだ。
Q3 インターンシップ(職業体験)の経験はありますか
 インターンシップ経験があると回答した割合は、全体の71.7%で、前回調査(66.1%)から5.6ポイント上昇した。本質問を設けた平成15年度以来、23年度調査(76.9%)に次ぐ2番目の高さとなった。県内では、生徒・学生にインターンシップが浸透したことや、就職難の時期が長引いたため生徒・学生の危機感が強いことなどから、参加希望者数が増加傾向にあり、本調査の回答者も積極的に参加したようだ。
 中学・高校卒(87.0%)、専門・短大卒(67.8%)、大学・大学院卒(33.9%)と、最終学歴が上がるにつれ、経験者割合は低下した。
 次に、インターンシップ経験のある回答者200人を対象に、その効果について質問をした。インターンシップの経験を通して何らかの効果が得られたという回答者の割合は、91.0%となった。専門・短大卒で95.0%、中学・高校卒と大学・大学院卒では90.0%と、いずれの学歴の回答者にとっても、貴重な体験となったようだ。なお、専門・短大卒では、「効果がなかった」とする回答者はみられなかった。
 項目別にみると、「企業や仕事の内容を理解できた」(42.5%)が最も割合が高く、次いで「職業意識が向上した」(29.5%)となった。
 「企業や仕事の内容を理解できた」は、専門・短大卒(55.0%)で過半数となった。実際に職場に身を置き、仕事の内容や働く社会人の姿に触れることで、仕事への理解が深まったようだ。
 「職業意識が向上した」については、中学・高校卒(28.6%)と専門・短大卒(25.0%)に対し、大学・大学院卒は45.0%と、高い割合となった。大学・大学院卒では、インターンシップ経験を通して、職業に就くことへの意識や自覚が高まった様子が見て取れる。
Q4 就職に関して誰に一番相談しましたか
 一番の相談相手として、全体では、「先生・教授」(38.4%)と「親・家族」(38.0%)に回答が集中した。
 項目別にみると、「先生・教授」は、専門・短大卒(47.5%)と中学・高校卒(46.6%)で4割を超えた。「親・家族」は、中学・高校卒(43.5%)と大学・大学院卒(40.7%)で4割超と、専門・短大卒(20.3%)の約2倍となった。回答者にとって、学校と家庭それぞれで最も身近にいる社会人が心強い相談相手だったことが分かる。
 その一方で、最終学歴が上がるにつれて、「就職部」と「友人」の割合が上昇した。大学・大学院卒では、「就職部」(22.0%)と「友人」(18.6%)が「先生・教授」(6.8%)を大きく上回り、校内で就職相談を行う際には、専門的な部署の利用や友人同士での情報交換が有効だったようだ。
Q5 就職先の職種・企業は第一希望ですか
 就職先が第一希望の職種であると回答した割合は全体の73.8%で、前回調査(67.7%)から6.1ポイント上昇した。専門・短大卒(78.0%)と中学・高校卒(74.5%)が、大学・大学院卒(67.8%)を上回った。
 また、第一希望の企業であるとした割合は全体の59.9%と、前回調査(56.8%)から3.1ポイント上昇した。ただし、中学・高校卒(63.4%)、専門・短大卒(57.6%)、大学・大学院卒(52.5%)と、最終学歴が上がるにつれ、第一希望とした割合は低下している。
 なお、職種・企業とも第一希望先であるとした割合は全体の52.7%で、前回調査(50.6%)を2.1ポイント上回った。反対に、どちらも第一希望ではないとした割合は17.2%で、前回調査(23.0%)から5.8ポイント低下した。
Q6 県外での就職を希望したことがありますか
 県外での就職を希望したことがある割合は、全体の51.6%となった。前回調査(52.2%)と比較すると、0.6ポイント低下した。
 中学・高校卒(42.9%)は5割を下回ったが、専門・短大卒が57.6%、大学・大学院卒(69.5%)は約7割となった。
 県外での就職を希望したことのある回答者144人のうち、実際に県外で就職活動を行った割合は37.5%と、前回調査(44.0%)を6.5ポイント下回り、2年連続で低下した。県内では、新規高卒者・大卒者等の就職内定率が上向くなど、就職活動を取り巻く環境が改善しているため、本調査でも、県外で本格的な就職活動を行ったとする回答割合の低下が続いている。
Q7 県外での就職を希望した理由は何ですか
 前設問で「県外での就職を希望したことがある」と回答した144人に、希望理由を質問した。
 全体では、「都会での生活を体験してみたかった」(27.8%)と「地元より条件のよい勤め先があった」(27.1%)、「地元や親元を離れて生活したかった」(25.0%)が上位を占めた。県外就職を、生活拠点を変える機会として捉えた回答者と、よりよい条件を求めた結果、職探しの範囲を県外に広げた回答者がみられる。
 男女別では、男性回答者では、「都会での生活を体験してみたかった」(33.3%)が3割を超えており、都会暮らしに心惹かれた様子が窺える。一方、女性では、「地元より条件のよい勤め先があった」(29.8%)と「地元や親元を離れて生活したかった」(26.3%)がともに2割台で、県外就職は公私各々の面で魅力的だったようだ。
Q8 現在の職場でいつまで働きたいですか
<全体>
 全体では、「定年まで」が43.0%で、前回調査(34.8%)から8.2ポイント上昇し、2年ぶりに4割を超えた。また、「条件や状況次第では転職する」(15.8%)と「技術を習得したり十分な経験を積んだら転職する」(4.3%)を合わせた“転職希望派”は20.1%で、3年ぶりに低下したものの2割台を占めた。回答者では、安定志向が再び強まったものの、引き続き転職希望も根強い。

<男性>
 男性回答者では、「定年まで」(60.9%)は、前回調査(53.4%)を7.5ポイント上回り、3年ぶりの上昇となった。また、「条件や状況次第では転職する」(17.3%)と「技術を習得したり十分な経験を積んだら転職する」(5.8%)との “転職希望派”は23.1%で、前回調査(24.1%)から1.0ポイント低下した。男性では、就職後も、一層やりがいのある仕事や、よりよい労働条件を求めようとする回答者もみられた一方で、定年まで勤め上げたいと考える割合が上昇した。

<女性>
 女性では、「結婚・出産後もできるだけ長く働きたい」(35.2%)が前回調査(30.6%)を4.6ポイント上回り、最も高い割合となった。「定年まで」(19.7%)も前回調査(11.8%)と比べて7.9ポイント上昇した。また、「結婚・出産を機に退職する」(13.1%)は前回調査(16.0%)を2.9ポイント下回った。女性回答者では、いずれは家庭に入りたいとする希望もみられたものの、仕事と家庭の両立を目指す割合と定年までの勤続を希望する割合を合わせると5割を超えた。

○女性新入社員の職業意識の変化について
 「Q8現在の職場でいつまで働きたいですか」について、現行の選択肢を設定した平成15年度以降の回答をみると、女性では、「定年まで」、「結婚・出産後もできるだけ長く働きたい」とする割合は、ともに緩やかな上昇傾向にある。特に、「定年まで」は、18年度以降、24年度を除いて10%台で推移しており、女性が定年までの勤続を視野に入れて働くことが定着し始めていることが分かる(注)。
 また、「結婚・出産を機に退職する」は緩やかな低下傾向にあるものの、平成24年度以外は、1割を下回ったことはない。仕事と家庭の両立が困難で職を手放す女性が多いといわれるが、自ら家庭に入ることを望む女性が一定の割合でいることを示している。
 本県の女性雇用状況について、総務省「就業構造基本調査」によると、平成24年の雇用者総数(会社などの役員を含む)43.0 万人のうち、女性は19.7万人(45.8%)である。女性雇用者の内訳では、正規の職員・従業員割合は全体の47.2%となり、全国(41.1%)を6.1ポイント上回っているが、非正規(50.5%)の割合が高い状況にある。
 現在、行政により、男女共同参画社会の実現に向けた取り組みのほか、職場復帰・再就職の支援や待機児童の解消など、女性が働き続けることができる環境の整備が進んでいる。中小企業を中心とする企業側の受入体制などの課題もあるが、女性が多様な生き方・働き方をより一層自由に選択できるよう、官民ならびに男性女性が協力し合い、整備の推進に取り組むことが望まれる。
(注)平成23・24年度調査結果では、震災発生の影響から不安感が高まり例年とは異なる傾向がみられた。
Q9 就職先を選んだ理由は何ですか(3項目複数回答)
 全体では、「仕事の内容」(45.5%)が最も割合が高くなった。Q8にある通り、回答者は、できるだけ長く働きたいと考えていることから、何より仕事内容を重視し就職先を決定している。次いで、「会社のイメージがよい」が38.0%で、好印象を抱いている会社の一員として働きたいと願っている様子が窺える。

○新規高卒者、就職内定率は過去20年間で最高
 新規高卒者の就職状況について、秋田労働局によると、平成26年3月末現在、県内求人数は2,780人と、23年以降、増加が続いている。また、全体の内定率は99.3%で、過去20年間で24年3月と並び最も高くなった。
 男性回答者では、「資格が取れる」(13.5%)が女性(2.5%)を11.0ポイント上回っており、仕事を通して自らのキャリアアップを図りたいという意欲が見て取れる。女性は、「人に勧められた」(26.2%)が、男性(14.1%)を12.1ポイント上回っており、就職先を決定する際には信頼する相談相手の意見を参考にしたようだ。

2 まとめ

 雇用情勢の改善を受け、回答者では、希望に添う就職ができたとする割合が高まった。そのため、就職先で定年までの勤務も意識しながら長く勤めたいとする割合も上昇し、安定志向が再び強まった。また、就職先の選択理由としても、仕事の内容や会社の安定性など、回答者が腰を据えて働くために大切な要素が重視された。
 ただし、県内若年層の早期離職率は高止まり傾向にあり、企業や行政による離職防止に向けた取り組みの強化にも期待したい。

(相沢 陽子)

あきた経済

刊行物

お問い合わせ先
〒010-8655
 秋田市山王3丁目2番1号
 秋田銀行本店内
 TEL:018-863-5561
 FAX:018-863-5580
 MAIL:info@akitakeizai.or.jp