経営随想
縁に導かれて・次に継ぐこと
当社は、義父が戦後、昭和24年秋田駅前店・金座街に陶器店として小売業を始めました。その後、昭和48年に県内のスーパーマーケット・ホームセンターを対象に卸売業態として株式会社を設立しました。更に、秋田駅前再開発事業に伴い、金座街から現在の仲小路に小売店舗・食器のさかいだを移転して35年になります。
(境田商事本社機能も5年前に全てを仲小路店舗の3階に移転しております。JR奥羽本線の電車に乗った方々が、秋田駅に近づくと、車窓から本社倉庫の看板が見えていたかと思いますが、春には解体し、新しい方向へと向かう予定です。)
〔ちゃわんや かわらばん〕
今、手元に義父が発行していたミニ雑誌「ちゃわんや・かわらばん」が50巻あります。当時のお客様が押入れを整理して出てきたとして持って来てくださりました。
<第1号 1979(昭和54)年9月>
陶磁器・有田焼の説明やサービスとは何か等
<第25号 1981年4月>
秋田県内はもとより、青森・山形・岩手のスーパー、デパート、陶磁店等への陶磁器・ガラス器・漆器の卸売販売の総合商社―株式会社境田商事の紹介等々
<第38号 1983年11月>
新装店舗11月 仲小路オープン
<第50号 1986年5月(最終号です)>
白亜かがやく器の殿堂・食器のさかいだ
ふれあいの街・仲小路を歩いてみませんか。
きっとあなたと同じ想いの人に出逢えます
―臆面もなく小売店舗のPRです―
義父がどのような想いをこめてミニ雑誌を発行し続けたのか、伝えようとしていたのか、未だに私にはわからないのが残念です。
紙面で残しておいてくれたのは、後継にも伝えよという意味でもあろうかと思います。
先日、娘がこれを読んでいて、「どうしよう!私、おじいちゃんと同じことをしている」と叫んでいました。
思わず苦笑いしたものでした。
〔古さとあたらしさ〕
生活の変化の中で、いつでも・どこでも商品を手軽に購入することができるようになりました。こんなものが欲しいと思って手に取ったもの、ふらりと立ち寄って心惹かれ手にしたもの、こうしたものがいつか壊れてしまった時、果たして、「繕う」という言葉が思い浮かぶでしょうか。
―漆でつなぐ贅沢なたしなみ・金継ぎ―
今、「大切にしていた想いを繕うこと」を伝えようとしています。月一度、食器のさかいだの2階「ティールーム陶」に於いて、割れた食器・欠けた食器・ひびの入った食器などを漆と金を用いて補修する「金継ぎ」の繕いを承っております。
想いを今に取り戻すことのできる幸せを皆さんにお届けしたく、始めました。
しかし、実際は5年ほど前からお客様に金継ぎの問い合わせをいただいていたのです。お客様が必要とされていることにきちんと向かい合って応えることを大事にしていたはずが、できておらず、こうして今、ようやく実行できていることは、実は少々恥ずかしいことです。お客様の声を逃していて何のための商いでしょうか。とまれ、今一度の見直し作業に必死の思いで取り組んでいます。
〔秋田市・ふれあい通り仲小路〕
当社の直営小売部・食器のさかいだは、秋田駅前からエリアなかいちへつながる仲小路に在ります。義父の『かわら版48号 1985年11号』では、次のように紹介されています。
「仲小路の名称が『ふれあいの街』に決まりました。名付け親は川柳家の柏崎時子さんで、電柱のない、歩く街・歩行者を優先する街というのは今でもなかったことです。みなさんも歩いてみませんか。」
エリアなかいちがオープンし、街なかを歩いてくださる人が増えました。アトリオン内の“秋田市立千秋美術館”、エリアなかいち内の“秋田県立美術館・平野政吉財団”と2つの美術館に囲まれ、アートな街としても来街者が増えて一因となっています。一昨年には、2つの美術館の共催で「草間彌生展」が開催されました。商店街のウインドーに草間彌生の顔ポスターがズラリ。街中が一体感に包まれました。
ちなみに、食器のさかいだ2階ティールーム陶でも、窓・テーブルで草間彌生水玉ワールドを一緒に楽しみました。美術館のイベントでは、県外からのお客様も多くみえますので、秋田の土産品も品揃えするようになりました。
しかし商店街は、何かがあるから来るのではなく、来てみたら楽しいことがあって、また来たくなる「ワクワク感」を味わえることが大切だとも考えています。そのため、毎月一回「仲小路 仲の日」として商店街の一部を歩行者天国としてテーブルやベンチの配置・手造りマーケットや野菜産直販売等を開催していますが、子供達に人気の路上落書きや積み木遊び等のイベントも考えていきたいと思っております。
今後は、仲の日の開催を増やすなど、いつ行っても仲小路は楽しいことでいっぱいとの情報を仲小路振興会のホームページでPRしていきたいと考えております。(ホームページを持っている商店街は少ないのですが。)
いずれ、日々の業務で忙しい商店街の方々が多いのですが、会員の方々の参加がなくては実施できないことも多く、今後の検討課題です。
〔今一度前へ〕
陶器店は季節を大事にしています。
「春」は緑色と桃色――還暦祝用のひょうたん柄、陶器のおひな様、花型の小皿など。
「夏」は青色――透明なガラス器、竹製品、麻生地ののれんなど。
「秋」は橙色と茶色――厚みのある土物陶器、秋の夜長のステンドグラスランプなど。
「冬」は赤色――ハレの日を迎えるための赤絵付された食器、漆器など。
食生活や家族構成の変化の中で、お客様の食卓を楽しく潤す食住空間を提供しつづけていきたいと考えております。そのため、小売店舗と当社の飲食店等を担当している業務部門とでタイアップし、あきた企業応援ファンド事業で採択された、「川連漆器で新しい酒器の提案」として、秋田川連蒔絵技法をガラス食器に加飾した自社企画商品「川連蒔絵ぐい呑み・秋田の四季」を展開中です。
小売店舗では、自家用や贈答用、更に観光客用の土産品として、また卸売業務部門では、日本酒提供の際のツールとして提案するなど、お客様ニーズに今後の商品提案アイテムとして生かそうと話し合いを続けております。
この度、寄稿のお話をいただき、「私は今、何をしていて、何を伝えようとしているのか」迷いました。私がここまで・今・仕事をしていられるのは、たくさんの方々から背中を押してもらったからだと思います。
この感謝の気持ちは、現在一緒に事業を支えていてくれる長女、遠く富山にてガラス工房で制作に励んでいる次女、二人の娘たちにも伝えていくのが、私の使命なのかと思っております。
商売とは何たるものかを知らずにいた私を背後から支えてくれた主人をはじめ、改めて皆様に感謝です。
(会 社 概 要)
1 会 社 名 | 株式会社境田商事 |
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2 代 表 者 | 代表取締役 境田幸子 |
3 本社所在地 | 〒010-0001 秋田市中通2丁目1番21号サカイダビル3F TEL 018-834-3604(代) FAX 018-834-3733 |
4 U R L | https://www.cna.ne.jp/~sakaida |
5 設 立 | 昭和48年6月(創業:昭和24年4月) |
6 資 本 金 | 1,200万円 |
7 従業員数 | 13人 |
8 事業内容 | ○業務部 ・ホテル及び飲食店等への業務用食器の販売 ・厨房器具・機械及び設備等の販売 ・老健施設・学校・保育園等への食器(メラミン等化成品も含む)の販売 ・記念品・販促用プレミアム用品の販売 ○小売部 ・一般日常食器・インテリア雑貨等の販売 ・贈答品一般、県銘産品(稲庭吉左衛門稲庭うどん・桜皮細工・県内陶芸家作品他)の販売 |