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「平成26年経済センサス-基礎調査」からみた秋田県の概況
 ‐民営事業所数は50,457事業所、従業者数は418,534人‐

 昨年11月末、総務省は「平成26年経済センサス-基礎調査」の確報を公表した。集計結果によると、平成26年7月1日時点の秋田県の民営事業所数は50,457事業所、従業者数は418,534人となり、5年前に実施した「平成21年経済センサス-基礎調査」を下回る結果となった。本稿では基礎調査の結果に基づき、全国および本県の民営事業所の現状や、この5年間における産業構造の変化等について概観する。

1 経済センサスとは

 経済センサスは、全ての事業所および企業を対象にして行われ、我が国の経済活動を同一時点で網羅的に把握することを目的とした統計調査である。
 経済センサスは「基礎調査」と「活動調査」の2つの調査から構成されており、基礎調査は母集団情報を整備するとともに、事業所および企業の基本的事項(事業内容、従業者数等)を把握することを目的としている。また、活動調査は基礎調査で把握した情報をもとに、我が国の全産業分野の経理事項(売上高、費用等)を把握することを目的としている。
 経済センサスは平成21年7月に第1回目の基礎調査が実施され、24年2月に活動調査、26年7月に2回目の基礎調査が実施されている。

2 全国の事業所数・従業者数

 昨年11月末に総務省が公表した「平成26年経済センサス‐基礎調査」の確報によると、26年7月1日時点における全国の民営事業所数(事業内容等が不詳な事業所を除く。以下、「事業所」)は554万事業所となり、5年前に実施した第1回目の基礎調査(21年7月1日時点)の589万事業所から5.9%減少した。
 また、全国の事業所で働く従業者数も5,844万人から1.7%減少し、5,743万人になった。この間、20年9月のリーマン・ショックの後遺症や東日本大震災の発生等により全国の事業所数、従業者数はともに大きく落ち込んだが、2年前に実施した活動調査(24年2月1日時点)との比較では、事業所数は1.6%増、従業者数では2.8%増となり、いずれも増加している。24年末の政権交代を起点とした緩やかな景気回復の動きに伴い、企業活動も足許では緩やかに持ち直している状況が窺える。

3 秋田県の事業所数・従業者数

 一方、秋田県の動向についてみると、26年7月1日時点における事業所数は50,457事業所となり、5年前の基礎調査の55,433事業所から9.0%減少した。従業者数も445,988人から6.2%減少し、418,534人となった。2年前の活動調査との比較では、事業所数は0.7%減、従業者数では0.1%減となり、減少幅は縮小したもののいずれも歯止めが掛っていない。全国の状況をみると、事業所数は33都道府県で増加しており、東北では本県と山形県(0.8%減)で減少が続いている。従業者数では44都道府県が増加しており、減少が続いているのは本県のほか、山梨県(0.2%減)、愛媛県(0.6%減)の3県となっている。
 また、本県の事業所数の全国順位は37位、従業者数は39位となっており、21年基礎調査、24年活動調査から順位に変動はない。全国シェアをみると、人口の0.8%に比し、従業者数は0.7%と0.1ポイント下回っているものの、事業所数は0.1ポイント高い0.9%となっている。
 1事業所当たり従業者数は、全国平均の10.4人に対し、本県は8.3人である。東北では、宮城県が全国平均を0.1人下回る10.3人となっているが、本県は最も低い8.3人にとどまり、全国でも44位となっている。

4 秋田県の産業別の事業所数・従業者数

 秋田県の産業大分類別の事業所数・従業者数は以下のとおりである。
(1)事業所数
 本県の事業所数50,457事業所のうち、事業所数の多い産業は、①「卸売業,小売業」、②「生活関連サービス業,娯楽業」、③「宿泊業,飲食サービス業」、④「建設業」、⑤「製造業」の順となっている。上位5産業の順位は5年前から変動ないものの、前回基礎調査で7番目だった「医療,福祉」が6番目となり、「サービス業」と順位を入れ替えた。
 前回基礎調査と比較した増減率をみると、「鉱業,採石業,砂利採取業」が18.3%減、「運輸業,郵便業」が14.4%減、「不動産業,物品賃貸業」が14.2%減となるなど14産業で減少となっている。一方、農業経営の法人化が進んだ「農林漁業」が6.7%増、再生可能エネルギー関連の発電事業者が増えた「電気・ガス・熱供給・水道業」が22.2%増となったほか、「医療,福祉」も19.6%増となるなど3産業で増加した。

(2)従業者数
 本県の従業者数の多い産業は、①「卸売業,小売業」、②「医療,福祉」、③「製造業」、④「建設業」、⑤「宿泊業,飲食サービス業」の順となっている。前回基礎調査で3番目だった「医療,福祉」は事業所数が大幅に増加したことから2番目となり、「製造業」と順位を入れ替えた。
 前回基礎調査と比較した増減率をみると、「情報通信業」が33.0%減、「農林漁業」が18.2%減、「鉱業,採石業,砂利採取業」が17.9%減となるなど14産業で減少となっている。一方、老人福祉・介護施設等の従業者数が増えた「医療,福祉」が23.2%増、郵便局の従業者数が増えた「複合サービス事業」が20.4%増となったほか、「教育,学習支援業」も4.0%増となるなど3産業で増加した。

5 製造業の業種別事業所数・従業者数

 全国と本県の「製造業」の産業中分類別(24分類)の事業所数上位5業種を比べてみると、本県は「食料品製造業」と「繊維工業」の割合が、事業所数、従業者数ともに高い。ただし、事業所数では9番目の「電子部品・デバイス・電子回路製造業」が、従業者数では15.2%を占め、最も多いのが特徴である。
 また、全国では事業所数で9番目ながら従業者数が2番目となっている「輸送用機械器具製造業」は、本県では事業所数で17番目、従業者数でも11番目となっており、自動車関連産業の集積度が全国に比べ低いことが計数にも表れている。
 一方、製造業の従業者数の増減率を都道府県別にみると、本県(13.8%減)は東京都(22.6%減)に次いで2番目に高い減少率となっている。
 産業中分類別に減少数をみると、「電子部品・デバイス・電子回路製造業」が最も大きく、「繊維工業」、「情報通信機械器具製造業」と続いた。本県製造業のリーディング業種である電子部品・デバイスは、20年9月のリーマン・ショックの影響や、24年以降の電子部品大手企業グループによる生産拠点の再編や業務委託契約の解消などにより、大幅な人員削減が行われている。こうした影響が全国2位の減少率となり、製造業の従業者が大幅に減少する結果になったものと考えられる。また、市町村別では、電子部品関連産業が集積するにかほ市が最も大きく、秋田市、横手市と続いた。

6 秋田県内の新設・廃業事業所数

 本県の新設・廃業事業所数の推移をみると、新設事業所数は、18年10月から21年7月までの2年9か月間では3,624事業所であったが(新設率2.2%)、24年2月から26年7月までの2年5か月間では6,109事業所に増え、新設率も24年活動調査の1.5%から4.9%に大幅に上昇した。
 一方、廃業事業所数は各調査期間とも新設事業所数を超えている。これは全国も同様の傾向にあり、各調査期間とも廃業率が新設率を上回って推移している。ただし、今回の基礎調査の結果では、新設率と廃業率の差が大幅に縮小しており、地域経済の活性化に欠かせない起業・創業が徐々に活発になってきていることが窺える。今後も新設率と廃業率の高まりによって、企業の新陳代謝が進むかが活性化の鍵となる。
 また、本県の新設率・廃業率は産業によって高低のバラツキはあるものの、全国との比較では概ね全国を下回っており、少産少死型の特徴にある。

7 まとめ

 本県の経済規模を示す県内総生産(名目)は、12年度に4兆円を割り、直近25年度は3兆5千億円まで落ち込んでいる。かつては「全国の1%経済」と言われた本県であるが、県内総生産の全国シェアは0.73%を占めるにとどまっている。
 高齢化率が全国で最も高い本県は、「医療,福祉」の事業所数および従業者数が大幅に増加したほか、農業や電気業でも事業所数が増加するなど、本県の地域の特性を活かした産業で動きがみられている。
 地域経済の活性化に向け、今年度より具体的な取り組みが進められる「地方版総合戦略」を着実に実行し、県内経済全体の底上げを図っていかなければならない。
(山崎 要)
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