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本県のDMOによる観光地域づくりの動き

 わが国においてDMO(観光地域づくりプラットフォーム)による観光地域づくりの動きが広がっている。政府の観光ビジョンは観光を「地方創生の切り札」と位置づけ、観光先進国への施策の一つとしてDMOの形成・育成を掲げている。本県でもDMOを設立し観光地域づくりに取り組む動きが現れている。DMOの目的や特徴、本県の動きについて紹介する。

1 DMOとは

(1)従来型観光振興の問題点
 DMO(Destination Management/ Marketing Organization )は、日本語では「観光地域づくりプラットフォーム」等と表記され、官民が連携して観光振興に取り組む組織を意味する。欧米では一般的に活動しているこの組織を「日本版DMO」としてわが国に取り入れようという動きが広がっているのは、わが国における従来の観光振興について、次のような問題点が意識されるようになったからである。
a 組織面
 従来型観光振興の組織は、行政(観光課等)、観光協会、観光業者(ホテル・旅館、飲食店等)が中心であり、地域の商工業者、農業者、NPO、地域住民などとの連携が弱かった。
 また、観光振興は行政単位(市町村)ごとに行われ、地域間の連携が不足していた。
b 人材面
 観光振興の中心となる人材は行政からの出向者で2~3年で異動することが多かった。このため、ビジネスセンスを持つプロフェッショナルな人材が不足していた。
c 現状把握・目標設定
 観光振興により地域にメリットをもたらすという目標に対するモチベーションが乏しく、結果に対する責任が不明確だった。
 観光振興による地域へのメリットの把握に関しては、市町村レベルでは入込客数が把握されている程度で、観光消費額やリピーター率、観光客の属性情報(居住地、旅行目的等)は県レベルに比べ把握が不十分であり、数値データによる「見える化」が不足していた。このため、明確な目標が設定されることも少なかった。
d 活動内容・活動成果
 観光協会のプロモーション(情報発信)と、農業者によるグリーンツーリズムのプロモーションが別々に行われるなど、マーケット(顧客)目線に基づき地域の魅力を統一的に発信するプロモーションが行われていなかった。地域にメリットをもたらすため地域全体で対応するという統一的な戦略がなく、コンセプト(地域ブランド)も不明確だった。
 観光客を送り出す側の旅行会社が団体客を大量に流す「発地型観光」を受け入れるだけで、地域自らが集客する「着地型観光」ではなかった。このため、個人客の増加やニーズの変化に対応できず地域の主体性を確保できなかった。また、旅行会社の要請で宿泊費等の単価を引き下げざるを得ないなど地域に落ちるお金が少なく、仮に多くの観光客が訪れる地域でも、そのメリットが地域全体には及ばなかった。

(2)日本版DMOとは
 上記のような従来型観光振興の問題点を解決するため、欧米で活動しているDMOという組織を「日本版DMO」としてわが国に取り入れようという動きが広がっている。日本版DMOは次のような特徴を持つ組織である。
a 「観光地域づくり」の視点
 観光振興のメリットをホテル・旅館など観光業者だけでなく、商工業者、農業者や地域住民などを含む地域全体に行き渡らせる「観光地域づくり」を目的とする。この点は、「住んでよし、訪れてよし」という言葉で表現される。
 そのためには、行政や観光業者だけでなく、地域の多様な関係者が連携・協力して観光振興に取り組むことが必要となる。
b 「発地型」から「着地型」へ
 旅行業者が送り出す団体客を受け入れるだけの「発地型観光」から脱却し、地域が主体的に集客する「着地型観光」への転換をはかる。
 そのため、どんな地域資源が観光客にとっての魅力・価値となるのかを見極め、地域ブランドを確立する。そのうえで、地域一体となった戦略に基づく一元的なプロモーション(情報発信)を行い、観光客受け入れに関しても予約手配の一元化を可能とする「ワンストップ窓口」を設ける。
 観光に関する各種データ(入込客数、宿泊者数、観光消費額、リピーター率等)を継続的に収集し、数値目標の設定とPDCAサイクルによる目標管理を行う。
c 多様な関係者を調整する組織
 このような地域一体となった観光振興を推進するため、日本版DMOを中心として観光地域づくりを行うことについて地域の多様な関係者の合意形成を行う。この合意に基づき日本版DMOは、観光に関わる多様な主体間のコミュニケーションにより地域の観光戦略を策定・共有し、戦略実行にあたっては各主体と連携し、調整する機能を担う。

2 政府によるDMO形成・育成の推進

(1)明日の日本を支える観光ビジョン
 平成28年3月、総理大臣を議長とする構想会議は「明日の日本を支える観光ビジョン」を公表した。このビジョンは「観光は、まさに『地方創生』の切り札」と位置づけ、訪日外国人旅行者数の目標を従来目標から倍増させ、2020年:4,000万人、2030年:6,000万人とした。
 また、東北の観光復興に向け、東北6県の外国人宿泊者数を2020年に150万人泊(2015年の3倍)とすることを掲げている。
 そして「観光先進国」に向けての施策の一つとして、2020年までに世界水準DMOを全国で100組織を形成するとしている。

(2)DMO候補法人の登録制度
 観光庁は、日本版DMOの形成・確立の促進などを目的として、日本版DMOの候補となりうる法人を観光庁に登録し、登録された法人に対して、関係省庁連携支援チームを通じて支援する制度を設けた。この登録は対象エリアの広さに応じて次のとおり3つに区分されている。
a 広域連携DMO
 複数の都道府県にまたがる区域を対象エリアとするDMO
b 地域連携DMO
 複数の地方公共団体(市町村)にまたがる区域を対象エリアとするDMO
c 地域DMO
 原則として、単独の市町村の区域を対象エリアとするDMO
 平成28年5月31日現在の登録一覧をみると、広域連携DMOが4件、地域連携DMOが39件、地域DMOが38件、合計で81件の候補法人が登録されている。

(3)DMO候補法人登録の5要件
 上記の登録には以下の5つの要件がある。
※aはいずれか一項目、他は全項目必須
a 多様な関係者の合意形成
・日本版DMOの意思決定に関与できる立場で行政や幅広い分野の関係団体の代表者が参画
・日本版DMO内に行政や関係団体をメンバーとする委員会を設置
・日本版DMOの取組に関する連絡調整を行うため、行政や関係団体で構成する協議会等をDMOと別に設置
・その他、関係者の合意形成が有効に行われる仕組みの存在
b データの継続的な収集、戦略の策定等
・各種データ等の継続的な収集・分析
・データに基づく明確なコンセプトを持った戦略の策定
・KPI(重要業績評価指標)の設定、PDCAサイクルの確立
c 観光関連事業と戦略の整合性
・地域社会とのコミュニケーション・地域の観光関連事業者への業務支援を通じた多様な関係者との戦略の共有
・地域が観光客に提供するサービスを、維持・向上・評価する仕組みや体制の構築
・地域一体となった戦略に基づく一元的な情報発信・プロモーション
d 日本版DMOの組織
・法人格の取得
・意思決定の仕組みの構築(責任を負う者の明確化)
・データ収集・分析等の専門人材がDMO専従で最低一名存在
e 安定的な運営資金の確保
・自律的・継続的に活動するための安定的な運営資金の確保の見通し

3 本県におけるDMO推進の動向

(1) 県内自治体の総合戦略とDMO
 秋田県が平成27年10月にまとめた「あきた未来総合戦略」は、「基本目標1 産業振興による仕事づくり」の施策の一つに「観光を中心とした交流人口の拡大」を掲げ、外国人延べ宿泊者数を平成26年の41,510人から平成31年には100,000人に増加させること等をKPIとしている。また、横手市や男鹿市の総合戦略でDMOの構築や推進が掲げられ、大館市では、地域連携DMOの設立が掲げられている。
 以下で、県内におけるDMOによる観光地域づくりの具体的な取組みについて紹介する。

(2)秋田犬ツーリズム
 一般社団法人秋田犬ツーリズムは、平成28年2月26日、県内第1号となるDMO候補法人の登録を受けた(法人設立は4月1日)。
a 対象区域、組織
 秋田犬ツーリズムは、大館市、北秋田市、小坂町という2市1町をマーケティング・マネジメントの対象とする「地域連携DMO」であり、隣接する鹿角市、上小阿仁村や仙北市との協力・連携も視野に入れている。DMOの代表者には中田直文大館商工会議所会頭が就任した。事務局は大館市職員が中心となり、マーケティングの外部専門家として秋田銀行から1名が出向している。
 このDMOと連携する組織として秋田犬ツーリズム連絡調整協議会が設置されている。この協議会は大館市、北秋田市、小坂町などの行政、観光、交通、金融等の関係者で組織され、秋田犬ツーリズムが進める観光地域づくりの取組みに関して多様な関係者の合意を形成し、広域連携による観光振興をはかる。
b 戦略
 同DMOは名称のとおり「秋田犬」をキーワードとしている。これは、全世界のネット検索ワードで秋田県に関するものとしては「秋田犬」が「富士山」の2倍に達するほど多く、世界的に知名度が高いことから決定された。
 白神山地や十和田八幡平、森吉山などの自然資源、康楽館や小坂鉱山事務所、伊勢堂岱遺跡などの産業遺産・歴史遺産、比内地鶏や曲げわっぱなどの食や文化をアピールし、「秋田犬」を核とした地域のブランド化を進め、動画、画像を活用したデジタルマーケティングにより、当エリアの情報を発信していく。また、秋田犬ツーリズムが観光客を呼び込むツール、機会等を準備し、地域事業者が訪日観光客をおもてなしすることでリピーター率の向上、観光客の増加による地元経済効果を高めていく。
 主なターゲットは台湾、タイ、韓国などの訪日観光リピーターとするが、平成28年度は台湾からの誘客に注力する。台湾との直行航空路のある函館を窓口とし、函館から入国した観光客を県北地域まで誘導することに取り組む。
c 目標・KPI
 次のようなKPIを設定している。
26年度:
 旅行消費額 28,769百万円 
 延べ宿泊者数 329,000人
 来訪者満足度 50%
 リピーター率 未調査
31年度:
 旅行消費額 45,648百万円 
 延べ宿泊者数 432,000人 
 来訪者満足度 55% 
 リピーター率  28年度+3%

 また、補助金に頼らない自主財源による事業運営を最終的なゴールとしている。
d 収支シミュレーション
 平成28~31年度の4年間は、国や市町村からの補助金を中心に65~86百万円の収入を確保し、この期間に海外向けプロモーション等の事業を集中的に実施する予定である。平成32年度は、補助金に頼らずWebサイトによる宿泊の予約手数料など収益事業により人件費等の支出を賄う予定である。
e 具体的な実施事業の例
(a) マーケティング
 大手の経済研究所に地域経済構造の分析を依頼し、地域の強みや課題、観光の視点から活用すべきポテンシャルの抽出を行う。
対象エリアへ来訪する台湾人観光客に対し、関心やニーズ、旅行経路等を探る実態調査を実施する。また、来訪者への満足度調査を実施し、「おもてなし」に関する課題解決、商品改良、ブランディングのための参考資料とする。
(b) 対外プロモーション
 大手広告代理店の協力を得てPR動画を制作する。第一弾は「秋田犬」をマストアイテムとして当地域を知ってもらうという内容である。その動画を掲載するWebページを作成し、秋田犬ツーリズムのネット上の総合窓口的な機能を持たせ、当地域を強力にPRする。
 ネット上で旅行プラン、宿泊施設等の検索から予約までを完結することができる専用Webサイトを新設し、秋田犬ツーリズムのWebページにリンクする。また、地元旅行業者を中心に着地型商品を開発し、域内の自然、文化、食等の観光コースをパッケージ化して魅力ある商品を提供する。
(c) 受入意識、おもてなし対応
 地域事業者を対象に訪日観光に必要な対応等に関するセミナーを開催し、訪日観光への意識向上をはかる。また、インバウンド対応おもてなし研修を実施し、異文化の理解や対応力の向上をはかる。
 外国語ができなくても訪日外国人の接客等ができるように「指さし会話ツール」を作成する。
(d) 地域産品の磨き上げ
 対象エリアに存在する秋田杉、曲げわっぱ、比内地鶏、枝豆などの特産品を活用した土産品の企画・商品化を進める。農産物の高付加価値化、所得の向上をはかる6次産業化を推進し、Webおよび対面PR等による商品の販路拡大に取り組む。

(3)羽後町DMO
 秋田市に本社を置く観光開発会社・トラベルデザイン株式会社は、平成28年4月22日、県内第2号のDMO候補法人として登録された。
a 対象区域、組織
 トラベルデザインがDMOとしてマーケティング・マネジメント対象とするエリアは県南の羽後町であり、同DMO(以下、羽後町DMO)は「地域DMO」である。
一般的にDMO候補法人となる組織は対象地域で新たに設立する一般社団法人などが多く、羽後町DMOのように民間事業会社がDMO法人となるのは非常に珍しい。トラベルデザイン社長の須﨑裕氏は、羽後町の「かやぶき山荘・格山」などの地域資源を発信するインバウンド誘致の取組みで平成25年度経済産業省クールジャパンの芽発掘・連携促進事業に採択されるなど3年間で留学生や国内外のツアー客等146名を羽後町に誘致した実績があり、これがDMO法人となることにつながった。
 DMOのサポート組織として、羽後町(行政)、地元観光関係者、国際教養大学、金融機関等で組織される羽後町DMO委員会が設置され、羽後町DMOと連携しながら外国人客の誘致に取り組んでいく。須﨑氏の出身校である国際教養大学は留学生の外国人目線によるプログラムの検証などで協力する。
b 戦略
 対象エリアには西馬音内盆踊りという知名度・集客力の高い観光資源があるが、羽後町DMOは地域住民の日常生活に光を当てるというユニークな戦略を採っている。
 コンセプトは「里山生活のサステナビリティ(持続可能性)を学ぶ」である。日本では人口減少が問題となっているが、世界的には自然資源の限界がある中で人口増加が続き「持続可能性」が大きなテーマとなっている。これに関して「稲作とワラの活用」などに見られるように持続可能性をすでに達成している里山の生活や農作業をリアルに体験してもらうことで、「里山留学」という形で世界に「学び」を提供するという考え方である。
 主要ターゲットは、台湾やタイの日本語・日本文化に興味を示す学生およびサステナビリティの研究者とし、サステナビリティを学ぶ教育プログラムを開発し提供していく。
c 目標・KPI
 羽後町DMOは次のようなKPIを設定している。
2015年度:
 旅行消費額 100千円 
 延べ宿泊者数 17人
 来訪者満足度 78%
 リピーター率 20%

2020年度:
 旅行消費額 25,000千円 
 延べ宿泊者数 500人
 来訪者満足度 90% 
 リピーター率 10%

(注)1 数字はすべて外国人を対象にしたもの
   2 2015年度は留学生が多くリピーター率が高い
d 収支シミュレーション
 2016~2018年度の3年間は、国や県、町の補助金を中心に14~24百万円の収入を確保し観光商材開発や海外プロモーション等を行う。2019年度以降は売上(事業収入)を中心に24~29百万円の収益を確保し一般管理費等の支出を賄っていく計画である。
e 具体的な実施事業の例
 2016年度、羽後町DMOは次のような事業を計画している。
(a) 「作る」(地域資源の発掘、商品化)
 羽後町の人へのインタビューを行いストーリー記事とし、歴史・文化などの観光資源をリスト化し写真ポスターを制作するなど、リソース(地域資源)を発掘し情報をストックする。これを基に体験コンテンツリストを作成する。
(b) 「売る」(プロモーション・情報発信)
 1週間、1ヶ月バージョンの留学プログラムを製作し、春・夏版および秋・冬版の5分紹介動画を作成する。これらをWebサイトやパンフレット、海外プレゼン等により発信していく。
(c) 「受け入れる」(観光客受け入れ)
 ワンストップ窓口として、海外-秋田間の「総合窓口」をトラベルデザインが担当し、秋田-羽後町間の「羽後町窓口」を、県南の旅行会社、地元の農家民宿が担当する。
県内在住外国人のモニターツアーを実施するとともに、羽後町の住民および受け入れたお客様を対象に調査を実施する。

(4)横手市の動き
 平成28年3月策定の「横手市まち・ひと・しごと創生総合戦略」は、観光振興等による交流人口の拡大のための取組として「『よこて版DMO』を立ち上げ、多様な関係者が連携しつつ、明確なコンセプトに基づいた戦略的な観光事業を実施する」ことを掲げている。
 同年3月27日、このDMOの母体となる横手市観光連盟、横手コンベンション協会、横手市の主催で「DMOを考える」をテーマに観光地域づくり勉強会が開催され、市内外から約100名の参加があった。勉強会では、専門家の基調講演とパネルディスカッションが行われ、観光関係者や市民等がDMOによる観光地域づくりへの理解を深める契機となった。
よこて版DMO設立に向けた具体的な動きも進んでいる。観光関連団体、観光業者、交通機関、NPO法人、金融機関、商工団体、JAや農家など広い範囲の関係者によるよこて版DMO準備検討会が設置され、5月24日に第1回の検討会が開催された。
 同DMOは、横手市を対象エリアとする「地域DMO」であり、民間ノウハウを最大限に活用した官民連携組織の設立と運営を目指すことや、設立時にはKPIを設定し、その経営責任を明確にし、民間組織として自立的に活動することを目指す方向性としている。また、従来の観光業務に加え、マーケティングリサーチの結果を基に、より優れた滞在型のコンテンツを充実させた観光ルートの形成や「住んで良し、訪れて良し」の観光地域づくりを行うことを事業内容としている。
 今後の準備検討会等で組織のあり方や活動内容に関する議論を深め、既存の横手市観光連盟と横手コンベンション協会の2つの組織をベースに、平成28年度中にDMO法人を設立し、初年度の戦略事業を実施する計画である。

(5)男鹿市の動き
 平成27年11月策定の「まち・ひと・しごと創生 男鹿市総合戦略」は、観光産業の振興のための施策として、「男鹿版DMOによる戦略的な観光振興」を掲げ、「地域内の着地型旅行商品の提供者と市場(旅行会社、旅行者)をつなぐワンストップ窓口としての機能を担う事業体の創設をすすめます」としている。
 具体的な動きとしては、平成27年12月1日に男鹿版DMO推進に向けた勉強会が開催され、28年1月28日には、行政機関、観光・商工・宿泊・交通等に関連する団体・企業や農業・漁業に関連する団体等を含む「男鹿版DMO設立推進協議会」が発足した。同協議会は、実務者により構成されるワーキンググループを同年2月以降開催し、運営法人のあり方や活動内容について検討を重ね、今年度内の登録を目指している。対象エリアに関しては、男鹿市単独の「地域DMO」に加え他の自治体と連携・協力する「地域連携DMO」も検討の対象としている。

(6)県南7市町村による連携DMOの検討
 前述のように、県南では羽後町と横手市で地域DMO推進の動きが進んでいるが、これと並行して県南7市町村(大仙市、仙北市、美郷町、横手市、湯沢市、羽後町、東成瀬村)による「地域連携DMO」の検討が行われている。
 本年2~3月、横手市から上記の近隣市町村に対し「地域連携DMO」に関する働きかけを行い、各市町村の同意を得た。今後、それぞれの地域と一緒に合意形成を図り準備検討会にて検討を進めていく方針である。

4 まとめ

 DMOによる観光地域づくりが県内で広がっていることは、本県全体の観光の活性化につながると期待される。一方で、DMOに関しては次の課題が指摘される。
 1点目に、地域間連携をさらに拡大することの必要性があげられる。地域を訪れる外国人観光客にとって、その地域がどの行政区域かということは関係がない。現在、県内の「地域連携DMO」は秋田犬ツーリズムだけであるが、各地域が有する様々な資源を総合的に活かし魅力ある観光プログラムを提供するためには、県南で「地域連携DMO」が検討されているようにさらに広い連携による取組みが有効である。
 2点目に、人材と自主財源の確保が挙げられる。DMOが自律的な組織として地域の観光マネジメントを担うためには、ビジネスセンスを有する専門的人材を確保し、その人材が活躍できる場を用意することが重要である。また、DMO自体が事業収益をあげる仕組みを作り、地方創生にかかる交付金等を得なくても安定的な財源を確保することが必要となる。
あきぎんリサーチ&コンサルティング 荒牧 敦郎
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