機関誌「あきた経済」
県内経済(7月号)
県内経済は、一部に持ち直しの動きがみられるが、
総じて足踏み状態が続いている
電子部品の生産は新興国経済減速の影響から弱含みの動きが続いているほか、木材も低調な動きとなっている。建設は、住宅着工が持ち直しているが、公共工事は前年を下回った。一方、個人消費は弱いながらも持ち直しの動きがみられる。雇用情勢は改善基調にあるものの、一部業種で逼迫感が強い状況が続いている。
産業別の動向では、電子部品の生産額は、新興国経済減速の影響からスマートフォン向けを中心に受注が減少するなど、弱含みの動きが続いている。機械金属の生産額は、3か月ぶりに前年を上回ったものの、前月対比ではやや弱含みの動き。木材は、普通合板(4月)で県内大手企業の火災発生が影響し、生産量は6か月ぶりに前年を下回った。公共工事請負額は、3か月ぶりに減少し、年度累計でも前年度を下回って推移している。地元大手(12社)の建設受注額も、民間工事が振るわず、3か月ぶりに減少した。住宅着工は分譲住宅で5年5か月ぶりとなるマンションの着工もあり、3か月連続で前年を上回った。個人消費は、新車販売の低調が続くものの、大型小売店販売額(4月)と家電販売額(4月)が前年を上回り、全体として弱いながらも持ち直しの動きがみられる。
有効求人倍率は前月比0.04ポイント上昇し、過去最高の1.18倍となった。新規求人数は前年比9.3%増となり、2か月連続で増加した。事業主都合離職者数は2か月連続で前年を下回った。
企業倒産件数は7件、負債総額は12億9,300万円であった。
弱含みの動きが続く
5月の生産額は前年比6.4%減と10か月連続で前年実績を下回り、前月対比でも減少が続くなど、弱含みの傾向が強まっている。車載向けの部品需要は底固さを維持しているものの、中国など新興国経済減速の影響などから、スマートフォン向けを中心に受注が減少している。
主力のセラミック・コンデンサやインダクタでは生産水準をやや引き下げているほか、これまで増勢を保ってきた産業機器向けを中心とするハイエンドの液晶パネルも大幅な減少が続いている。一方、車載向けが主体の半導体素子は持ち直しの動きがみられている。
生産額、やや弱含み
5月の生産額は前年比1.9%増と3か月ぶりに前年実績を上回ったものの、前月対比ではこのところほぼ横這い圏内の動きとなっていたがやや弱含んでいる。公共工事関連で弱い動きが続くなか、民需関連のうち、ウエイトの高い輸送機械が小型・普通車向けは堅調ながら、軽乗用車の燃費データ不正問題の影響から同車向けが大きく落ち込んだ。
輸送機械以外の民需関連では、金型は増加に転じたものの、建機部品はこれまで比較的好調だった国内向けも振るわず低調に推移している。一方、公共工事関連では、橋梁・鉄骨で大幅な減少が続いているほか、水道部品も伸び悩んでいる。
普通合板、製材品とも低調
全国的には、住宅着工の緩やかな回復等を背景に、普通合板、製材品とも出荷、生産は前年を上回り推移しているが、県内では、いずれも低調な動きとなっている。
4月の普通合板は、県内最大手で工場火災が発生したことなどが大きく影響し、出荷量は前年比6.1%減と2か月連続で前年を下回り、生産量も同16.0%減と6か月ぶりに前年比減少に転じた。また、在庫量は、火災による消失もあり同77.5%減の水準まで落ち込んだ。
5月の製材品は、出荷量が前年比横ばいとやや持ち直したものの、生産量は同4.0%減と低調に推移した。
出荷量、2か月連続で前年比増加
5月の清酒出荷量は、県内向けが前年比3.5%増、県外向けも同2.7%増となり、全体では同3.0%増と2か月連続で前年を上回った。種類別では、主力の普通酒が同3.2%増、特定名称酒も同2.9%増と、ともに増加した。県外向けの内訳では、東京が同2.3%増、東北5県は同3.4%増、北海道も同2.6%増となった。
県酒造組合は、業界関係者を対象とした試飲商談会「秋田の酒きき酒会」を、6月に大阪で初めて開催した。県産酒の人気が全国的に高まっているため、兵庫や愛媛など大阪以外からの参加も多く、東京開催と同規模の約750人が集まった。
県内向け出荷量 | 429kl |
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県外向け出荷量 | 872kl |
合計出荷量前年比 | +3.0% |
公共工事請負額、国、県、市町村が減少し3か月ぶりに前年比減少
5月の公共工事請負金額は、主要発注者の国、県、市町村が減少し、前年比46.0%減と3か月ぶりに前年を下回った。年度累計でも、前年同期比9.0%減となった。
一方、当研究所調査による地元大手12社の5月の新規受注額も、前年比2.2%減の2,334百万円と3か月ぶりに減少した。官公庁工事は、学校関連施設等の受注により建築が増加し、土木の減少を補って同24.2%増と前年を上回ったが、民間工事は、エネルギー関連受注等により建築が増加したものの、土木の減少が大きく、同16.8%減となった。年度累計では前年同期比44.2%増となっている。
企業倒産、小康状態続く
5月末の県内銀行の預金は、前月末比434億円減少したが、前年比では0.1%の増加となった。貸出金も、前月末比66億円減少したが、前年比では1.3%の増加となった。預金、貸出金ともに前年を上回って推移しているものの、伸び率は前月に比べ鈍化した。
5月の倒産件数(負債総額1千万円以上)は7件(前年比1件増)、負債総額は12億9,300万円(同262.2%増)となった。倒産件数は小康状態が続いているが、負債総額は秋田市の自動車用品小売業の約7億円が押し上げた。
増加傾向が続く
5月の県内新設住宅着工戸数は、403戸(前年比56戸増、16.1%増)と、3か月連続で前年を上回った。貸家が増加したほか、分譲住宅も22年12月以来65か月ぶりにマンション着工があり前年比増加となった。
利用関係別では、持家が258戸(前年比4戸減)、貸家が77戸(同14戸増)、分譲住宅が67戸(同48戸増)、給与住宅が1戸(同2戸減)となっている。
持家は需要が伸び悩み、3か月ぶりに前年を下回った。貸家は秋田市などで一般向け賃貸住宅の着工が増加したほか、大仙市で公営住宅の着工があり、3か月連続で前年を上回った。
地域別では、県北・県央・県南の全地域で前年を上回った。県央は貸家と分譲住宅の着工が、県北は持家と貸家の着工が、県南は持家の着工が、それぞれ増加した。
弱いながらも持ち直しの動き
新車販売が4か月連続で前年を下回ったものの、大型小売店販売と家電販売が前年を上回り、全体としては弱いながらも持ち直しの動きがみられる。
4月の大型小売店販売額は、前年比0.6%増となり、5か月連続で前年を上回った。衣料品は、春物の販売が振るわず前年を下回ったものの、飲食料品は、生鮮品や総菜などが好調となり、前年を上回った。
5月の新車販売台数は前年比9.2%減と、4か月連続で前年を下回った。内訳では、登録車は同2.4%増と、2か月連続で前年を上回ったが、軽自動車は同20.9%減となった。前月に比べ減少幅はわずかに縮小したものの、軽自動車税引き上げや燃費不正問題等の影響を受け、26か月連続の減少となった。
4月の家電販売は、冷蔵庫、洗濯機などの大型家電が増加したほか、エアコンなどの季節商品にも動きがみられ、前年を上回った。
生産額、3か月連続の前年比減少
5月の生産額は前年比7.6%減となった。前月に比べ減少幅は縮小したものの、3か月連続で前年を下回った。
生産は、国内生産移管の動きが強まっていた前年に比べ受注ロットが減少傾向にあることから、前年を下回った。受注も、紳士服、婦人服ともに伸び悩み、3か月連続で前年を下回った。
有効求人倍率は1.18倍、2か月連続で過去最高を更新
5月の有効求人倍率は、全数は前月比0.04ポイント上昇の1.18倍となり、2か月連続で過去最高を更新した。1倍台は18か月連続。常用の内訳では、一般は同0.06ポイント上昇の0.87倍、パートは同横這いの1.15倍となった。
新規求人数は前年比9.3%増と、2か月連続で前年を上回った。産業別にみると、製造業では同24.2%増となった。「電気機械器具」、「情報通信機械」で減少したものの、受注増や人手不足の影響から、その他の業種で求人が増加した。非製造業では同7.7%増となった。「運輸,郵便」、「建設」、「生活関連サービス,娯楽」で減少したが、「医療,福祉」、「情報通信」、「卸売,小売」で二桁の増加率となった。
新規求職者数は前年比5.5%減と、34か月連続で前年を下回った。
事業主都合離職者数は、前年比21.0%減となり、2か月連続で前年を下回った。
地域別雇用状況をみると、新規求人数(パートを含む常用)は、県北、県央、県南のすべての地域で前年比増加した。臨時・季節を除く有効求人倍率は県北が最も高く1.10倍、県央が0.91倍、県南が0.94倍であった。