トップ機関誌「あきた経済」トップ第95回県内企業動向調査(平成28年9月調査)

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第95回県内企業動向調査(平成28年9月調査)

 平成28年度上期(28年4月~9月)における県内企業の業況判断(実績見込)は、業績全般BSIが27年度下期(27年10月~28年3月)に比べて、11ポイント低下の▲16となった。県内企業の業況感は、円高の影響により海外での価格競争力が低下した機械金属や荷動きが低迷した運輸、仕入価格の上昇に加え、厳選消費傾向が続き客単価が低下した卸売・小売、高付加価値商品の販売が好調であったが、猛暑の影響から業務用市場が伸び悩んだ酒造などでの低下を背景に、悪化する結果となった。
 28年度下期(28年10月~29年3月)の業績全般BSI(見通し)は、28年度上期に比べて10ポイント上昇の▲6と、改善する見通しとなっている。機械金属で受注の増加が見込まれるほか、運輸、卸売・小売、木材・木製品、酒造などでも改善する見通しとなっている。
 28年度下期の業況が「横這い」もしくは「下降」と判断した企業の業況回復時期については、「30年度上期以降」が30.6%と最も多くなったが、「29年度上期」も29.7%を占めた。
 28年度の設備投資計画額は、電子部品、木材・木製品で大幅な増加が見込まれるほか、その他製造業(製錬や食料品など)での増加を受けて、前年度実績比97.5%増の836億2,300万円となる見込み。
賃上げについては、28年度以降「実施した」企業が65.9%、「今後、実施予定」は19.7%となり、8割を超える企業が賃上げを実施済もしくは実施予定であることが分かった。

〈調査要領〉
1 調査方法:郵送によるアンケート方式
2 調査時期:平成28年8月下旬~9月中旬、調査は年2回(3月、9月)実施
3 調査対象:県内に事業所のある企業340社
4 回答企業数:290社(回答率85.3%)
5 調査項目
(1)業況判断 ~平成28年度上期(28年4月~28年9月)実績見込
   平成28年度下期(28年10月~29年3月)見通し
(2)業況の回復時期について
(3)設備投資について ~27年度実績および28年度計画
           設備投資の目的
           設備投資の対象
(注)BSI(ビジネス・サーベイ・インデックス)とは企業の業況判断を指数化したもの。「上昇」、「増加」等と回答した企業の割合から「下降」、「減少」等と回答した企業の割合を差し引いた値である。具体的には次のとおりに算出。
((「上昇」等と回答した企業数)-(「下降」等と回答した企業数))/回答企業数×100

1 業況判断

(1)業績全般BSI
28/上(28年4月~28年9月)実績見込
 全産業の業績全般BSI(前期比「上昇」割合-「下降」割合)をみると、平成28年度上期(以下、「28/上」)の実績見込は、27年度下期(以下、「27/下」)に比べ11ポイント低下の▲16と、業況感が悪化した。
 産業別にみると、製造業では、電子部品は、円高の影響により受注が減少したが、生産性向上の取組み等により、水面下ながら改善がみられた。機械金属では、円高の影響により海外での価格競争力が低下し悪化した。木材・木製品では、住宅の木材使用率低下に加え、増産によるコスト増が収益を圧迫し、大幅に悪化した。酒造では、高付加価値商品の販売が好調であったが、猛暑の影響から業務用市場が伸び悩んだ。その結果、製造業全体としては13ポイント低下の▲15となった。
 非製造業では、建設で公共工事が減少した一方、民間工事が増加し、横這いとなった。サービスでは、1ポイント低下したものの、マイナンバー制度関連需要の増加が続いている。運輸では、円高の影響により荷動きが低迷し悪化した。卸売・小売では、仕入価格の上昇に加え、厳選消費傾向が続き客単価が低下したことから悪化した。その結果、非製造業全体としては9ポイント低下の▲17となった。
 なお、地域別(全産業)では県南で水面下ながら改善したが、県北、県央で悪化した。

28/下(28年10月~29年3月)見通し
 平成28年度下期(以下、「28/下」)の全般的な業績BSIは、全産業では28/上に比べて10ポイント上昇の▲6と、改善する見通し。
 産業別にみると、製造業では、衣服縫製で受注が不透明なほか、人手不足が続き人件費が上昇することから落ち込むものの、機械金属で受注の増加、酒造で需要の拡大が見込まれることから、全体では13ポイント上昇の▲2と改善する見通し。
 非製造業でも、建設で前年並みを確保可能と見込むほか、運輸では燃料価格が低下しコスト負担が軽減することから大幅な改善が見込まれ、全体では7ポイント上昇の▲10と上向く見通し。
 なお、地域別(全産業)では県南で落ち込むものの、県北、県央で大幅に改善する見通しとなっている。

(2)売上高BSI
28/上実績見込
 28/上の売上高BSI(前年同期比「増加」割合-「減少」割合)は、全産業で27/下に比べて10ポイント低下の▲23と大幅に悪化した。

28/下見通し
 28/下の売上高BSIは、全産業で28/上に比べ10ポイント上昇の▲13と改善する見通し。

(3)経常利益BSI
28/上実績見込
 28/上の経常利益BSI(前年同期比「増加」割合-「減少」割合)は、全産業で27/下に比べ10ポイント低下の▲12と悪化した。

28/下見通し
 28/下の経常利益BSIは、全産業では28/上に比べて3ポイント低下の▲15とさらに悪化する見通しである。

(4)在庫水準BSI
28/上実績見込
 28/上の在庫水準BSI(「過剰」割合-「不足」割合)は、全産業(建設・運輸・観光・サービスを除く)で27/下に比べて2ポイント低下の6となり、過剰感が弱まった。

28/下見通し
 28/下の在庫水準BSIは、全産業で6と、28/上から横這いの見通し。

(5)資金繰りBSI
28/上実績見込
 28/上の資金繰りBSI(前期比「好転」割合-「悪化」割合)は、全産業で27/下に比べて2ポイント上昇の1と改善した。

28/下見通し
 28/下の資金繰りBSIは、全産業で28/上と比べて7ポイント低下の▲6と、再び悪化する見通し。

(6)雇用BSI
28/上実績見込
 28/上の雇用BSI(「過剰」割合-「不足」割合)は、全産業で27/下に比べて8ポイント低下の▲28と、不足感が強まった。

28/下見通し
 28/下の雇用BSIは、全産業で28/上に比べて、2ポイント上昇の▲26と、わずかに緩和するものの不足感が続く見通し。

2 業況の回復について

(1)業況の回復に効果のある施策
 28/上の業況が27/下に比べて「上昇」と回答した事業所へ、業況の回復に効果のある(または、あった)ものを、3つまでの複数回答で質問した。
 「既存取引先からの受注増加」が最も多く、全産業で62.0%、製造業で70.8%、非製造業では53.8%となった。次いで「販路の拡大」が多く、全産業で52.0%、製造業では50.0%、非製造業で53.8%となった。
 業種別の特徴としては、電子部品、酒造の2業種で、「既存取引先からの受注増加」とする回答が100.0%であった。
 
(2)業況の回復時期
 28/下の業況が28/上に比べて「横這い」もしくは「下降」と回答した事業所へ、業況が回復すると見込まれる時期について質問した。
 業況の回復時期については、全産業では「30年度上期以降」が30.6%と最も多くなったが、「29年度上期」も29.7%を占めた。製造業では、「29年度上期」(34.3%)とする回答が最も多くなったが、非製造業では、「30年度上期以降」(38.5%)が最も多くなった。製造業に比べ非製造業で、回復までに時間を要すると予想する企業割合が高くなった。
 業種別の特徴としては、回復時期が「29年度上期」とする回答が、観光で50.0%となったほか、衣服縫製で46.2%、酒造で40.0%となった。また、「30年度上期以降」とする回答は、サービスで42.9%、卸売・小売で40.4%となった。

3 設備投資の動向

 回答企業290社における平成28年度の設備投資実施計画企業数は、27年度(実績)を10社上回る226社(実施計画企業割合77.9%)となる見通し。設備投資計画額は前年度実績比97.5%増の836億2,300万円となっている。
 産業別にみると、製造業は、設備投資計画企業数が102社(実施計画企業割合79.1%)、設備投資計画額は前年度実績比145.2%増の723億2,500万円となる見通し。一方、非製造業は、設備投資計画企業数が124社(実施計画企業割合77.0%)、設備投資計画額は同12.1%減の112億9,800万円となる見込み。
 設備投資の主な目的(3つまでの複数回答)をみると、「既存設備の維持・更新」(81.9%)が最も多く、次いで、「合理化・省力化・効率化」(29.2%)、「生産能力の増強」(27.4%)が2割を超えた。
 設備投資の主な対象(3つまでの複数回答)をみると、「生産機械・工作機械」(41.6%)が最も多かった。以下、「車両」(31.0%)、「事務機器・情報通信関連機器」(19.9%)と続いた。

4 賃上げについて

 平成28年度以降、賃上げ(定期昇給やベースアップなど)を実施したかについて質問した。
 全産業では、65.9%が賃上げを実施した。また、「今後、実施予定」の企業も19.7%あり、合わせて85.6%の企業が賃上げを実施済もしくは今後、実施予定であることが分かった。
 製造業では、賃上げを「実施した」企業が65.9%、「今後、実施予定」は18.6%となった。非製造業では「実施した」が65.8%、「今後、実施予定」は20.5%となった。業種別にみると、賃上げを実施した企業割合が最も高かったのは、機械金属の85.2%、次いで電子部品の77.3%であった。また、賃上げ実施の時期(予定を含む)については、全産業では「28年度上期」が最も多く73.0%を占めた。次いで「29年度以降」が13.3%、「28年度下期」が12.1%となった。
 製造業では、「28年度上期」が74.3%、「29年度以降」が12.8%となった。非製造業では、「28年度上期」が71.9%、「28年度下期」と「29年度以降」が、ともに13.7%となった。業種別の特徴をみると、賃上げを28年度上期に実施した企業割合が最も高かったのは、電子部品(94.1%)、次いで機械金属(91.7%)であった。また、28年度下期に実施を予定している企業割合が最も高かったのは、衣服縫製(50.0%)、29年度以降に実施を予定している企業割合が高かったのは、酒造(35.7%)、木材・木製品および観光(27.3%)であった。
(佐藤 由深子)
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