トップ機関誌「あきた経済」トップ第32回 秋田県消費動向調査

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第32回 秋田県消費動向調査

1 「昨年と比較した暮らし向き」は、「悪くなった」(26.7%)を選択した割合が前回調査(平成27年10月実施)から2.3ポイント低下し、「変わらない」(65.3%)が2.4ポイント上昇したものの、「良くなった」は8.0%の横這いにとどまり、依然として厳しさが残る結果となった。
2 「来年の収入(見込み)」は、依然「減少する」が「増加する」を上回っているが、25年以降改善傾向にあり、本年調査では改善の勢いが増した。
3 「1か月あたりの生活費」は、前回調査比3千円の増加。生鮮食料品など生活必需品の価格が上昇している影響を受け、支出が増加している。
4 耐久消費財の購入割合は65.4%で、前回調査を1.7ポイント上回り、世帯収入の緩やかな改善を受け、3年連続で上昇した。
5 今後1年間に物価が上昇するものと予想する割合は67.1%となった。
6 生鮮食料品の買い物環境をみると、秋田市を除く全地域で近所に店舗がある割合が6割未満となり、将来的に高齢化の進行にともなう買い物弱者の増加が懸念されるため、対策が急務となる。

1 暮らし向きについて

(1)昨年と比較した暮らし向き
―停滞感が強いが、若年層で大幅な改善―
a 「良くなった」とする世帯割合(8.0%)は昨年調査(8.1%)とほぼ横這いとなった。
b 「悪くなった」(26.7%)は、昨年調査(29.0%)を2.3ポイント下回った。
c 「変わらない」を選択した割合は65.3%で、昨年調査(62.9%)を2.4ポイント上回った。昨年改善に向かった暮らし向きは、本年調査では停滞感が強まった。
d 年代別にみると、「良くなった」は、29歳以下で20.6%、30代で10.9%と、30代以下の年代で二桁の割合となった。
e 昨年調査と比べて、29歳以下で「良くなった」が11.5ポイント上昇と、大幅に上昇し、「悪くなった」を8.0ポイント上回った。「人手不足」感から企業の待遇改善などが図られ、若年層の暮らし向き改善に繋がっているとみられる。
f 暮らし向き得点は△0.23で、昨年調査(△0.27)を0.04ポイント上回り、2年連続で上昇した。

(2)今後1年間の暮らし向き
―「変わらない」選択割合、3年連続で上昇―
a 「良くなる」と予想する世帯割合は7.7%と、昨年調査(6.7%)を1.0ポイント上回り、昨年に続いて上昇した。
b 「悪くなる」を選択した割合(22.9%)は、昨年調査(26.9%)から4.0ポイント低下した。
c 「変わらない」(69.4%)は、昨年調査(66.4%)を3.0ポイント上回り、3年連続で上昇した。暮らし向き予想は、改善傾向がみられるものの厳しく見る世帯の方が多い結果となった。
d 住宅ローン(以下、ローン)の有無別では、双方とも「変わらない」とする世帯割合が最も高い。ローンのある世帯は、「悪くなる」(30.1%)が、ない世帯(20.4%)を9.7ポイント上回り、より厳しい見方をしている。

2 収入について

(1)昨年と比較した世帯収入の増減
―「減少した」世帯割合の低下続く―
a 「増加した」(20.8%)は、昨年調査(20.9%)を0.1ポイント下回り、ほぼ横這いながらも4年ぶりに低下に転じた。
b 「減少した」は24.5%で、平成24年(40.8%)をピークに年々低下している。世帯収入は、25年以降改善傾向にあるが、本年調査では改善ペースがやや緩やかとなった。
c 「変わらない」は54.7%で、昨年調査(51.4%)を3.3ポイント上回った。
d 年代別では、29歳以下では「増加した」(47.1%)が最も高い割合となった。
e 昨年調査と比べて、40~60代で「増加した」割合が低下した。本年10月にパート・アルバイトの社会保険の加入条件が改正されたことにともない、手取り額が減少するケースや、労働時間を短縮し収入を抑えるケースが生じているため、パートとして勤務する女性が多い年代で世帯収入が伸び悩んだものと推測される。
f 収入得点は△0.09と、昨年調査(△0.12)を0.03ポイント上回り、4年連続で上昇

(2)来年の収入(見込み)の増減
―減少予想世帯割合は高いが改善の勢い増―
a 「増加する」と予想する世帯割合(12.8%)は、昨年調査(10.0%)を2.8ポイント上回り、2年連続で上昇した。
b 「減少する」を選択した割合(20.0%)は、平成24年(40.8%)をピークに年々低下している。来年の収入(見込み)は依然「減少する」が「増加する」を上回るものの、25年以降改善傾向にあり、本年調査では改善の勢いが増した。
c 「変わらない」とする割合(67.1%)は、昨年調査(66.3%)を0.8ポイント上回り、4年連続で上昇した。
d ローンの有無を問わず、「変わらない」とする割合が6割台後半と最も高いが、ローンのある世帯では、「増加する」、「減少する」双方とも、ない世帯を上回った。

3 生活費について

(1)1か月あたりの生活費
―平均生活費は前年比3千円増の178千円―
a 昨年調査と比較すると、「15~20万円」(27.6%)が2.3ポイント上昇、「25~30万円」(12.9%)と「30万円以上」(6.1%)がともに0.8ポイント上昇した。その結果、中間層である生活費「15~30万円」の割合が54.3%となり、昨年調査(52.4%)を1.9ポイント上回った。後述の「支出が増えた費目」にみられるとおり、原材料価格や物流費の上昇で食料品や日用品など生活必需品の価格が上昇している影響を受け、支出を増加せざるを得ないようだ。
b ローンの有無別にみると、ローンのある世帯では「15~20万円」(24.5%)が最も高く、ない世帯では「10~15万円」と「15~20万円」がともに28.7%で最も高くなった。
c 1か月あたりの平均生活費は178千円で、昨年調査から3千円増加した。年代別では、60代(193千円)が最高額で、次いで40代(192千円)、50代(188千円)となった。最少額は29歳以下の143千円となった。
昨年調査と比べて、29歳以下で8千円増、40代で14千円増、50代で4千円増となった。一方、生活費が減少した世帯は、30代(7千円減)、60代(9千円減)、70歳以上(16千円減)で、特に高齢層で減少幅が大きい。高齢層では年金受給者が多いため、生活必需品の値上がりが家計への負担となり、一層支出の抑制に努めたものと考えられる。また、30代は、教育費が嵩み始めるため、節約意識が強まり支出を切り詰めたようだ。

(2)昨年と比較して支出が
「増えた」費目・「減った」費目
―物価上昇の影響続く―
a 昨年よりも支出が増えた費目
(a) 割合が高い順に、「食料費」(17.6%)、「教育費」(12.7%)、「保健医療費」(11.7%)が二桁となった。
(b) 「食料費」は、昨年調査(20.8%)から3.2ポイント低下し3年ぶりに2割を下回ったものの、6年連続で全費目中最も高い割合となった。天候不順による生鮮品の生産量減少や世界的な需要拡大などの影響から食料品の値上がりが続いており、支出の増加に歯止めがかからない。
(c) 「教育費」については、首都圏などの私立大学や専門学校で少子化による入学生減少にともなう運営費の収入減少を補うため授業料を引き上げる動きがみられ、その影響が生じた。
(d) 「保健医療費」は、昨年調査(11.0%)を0.7ポイント上回った。平成27年8月の介護保険制度改正、28年4月の診療報酬改定により、一部で利用時の自己負担割合が引き上げとなったため、特に60代以上の年代で支出を押し上げた。
b 昨年よりも支出が減少した費目
(a) 割合が高い順に、「旅行・レジャー費」(15.5%)、「外食費」(15.4%)、「貯蓄」(11.9%)、「衣料品費」(11.2%)となった。選択的費目が支出削減の対象となっている。
(b) 「旅行・レジャー費」は、国内の大型テーマパークや遊園地で入場料の値上げが相次いでいるほか、海外でのテロや国内外での地震発生などから、出控えが生じ支出が減少したようだ。
(c) 「外食費」の支出減は、支出抑制を図るための内食傾向が続いているため、依然利用を控える傾向が続いていることが影響したようだ。

(3)今後の家計支出
―家計の引き締め傾向が幾分和らぐ―
a 「引き締める」は71.9%で、平成5年調査に本質問を設けて以来最高割合となった昨年調査(78.6%)を6.7ポイント下回り、4年ぶりに低下した。来年の収入増加を見込む世帯割合が2年連続で上昇しているほか、29年4月に予定されていた消費税増税の再延期が決定し、家計の引き締め傾向が幾分和らいだ。
一方で、「増やす」(1.4%)は設問以来最高割合となった昨年調査(2.7%)からほぼ半減し、「変わらない」(26.7%)は昨年調査(18.7%)を8.0ポイント上回った。生活防衛意識は依然強く、財布の紐が緩むまでには至っていない。
b 年代別では、全ての年代で「引き締める」の割合が最も高く、60代以下では7割を超えた。なお、29歳以下と60代で「増やす」という回答がみられなかった。
c 家計支出を引き締める理由としては、「所得の減少または伸び悩み」(45.4%)が8年連続で最も高い割合となったが、昨年調査(50.2%)を4.8ポイント下回っている。「食料品や日用品、電気料金の値上げによる負担増」(23.2%)は昨年調査から9.0ポイント低下した。原油安の影響から電気料金が値下がりしたため支出が減少したものと推測される。「消費税増税の負担が大きいから」(5.3%)も昨年調査(21.3%)を16.0ポイント下回り、増税から2年が経ち大幅に低下した。一方で、昨年調査と比べて、「生活の先行き不安」(39.7%)が8.8ポイント上昇、「貯蓄を増やす」(30.4%)も9.9ポイント上昇した。将来不安が根強く、消費よりも貯蓄を優先しているものと考えられる。

4 耐久消費財について

過去1年間に購入した耐久消費財
―「購入した」世帯割合が3年連続で上昇―
(1) 過去1年間に耐久消費財を購入した世帯割合(65.4%)は昨年調査(63.7%)を1.7ポイント上回り、世帯収入の改善傾向を受け、3年連続で上昇した。
(2) 年代別購入割合をみると、50代(74.5%)をピークに、割合が高い順に、30代(66.4%)、40代(65.6%)、29歳以下(64.4%)で6割台となった。高齢層ではやや低下し、70歳以上で54.1%、60代(53.3%)が最も低い。
(3) 購入した耐久消費財としては、「スマートフォン」(33.3%)と「乗用車」(25.2%)の割合が高くなった。
a 「スマートフォン」は、昨年調査を0.8ポイント下回った。従来型の携帯電話からスマートフォンへの切り替えが進み普及率が高まっているため、平成25年(38.2%)をピークに割合の低下が続いている。年代別では、29歳以下(48.2%)が最も高く、60代までの全年代で二桁となったが、70歳以上は5.3%にとどまった。
b 「乗用車」は、昨年調査を1.8ポイント上回った。消費税増税から2年、軽自動車税率引き上げから1年が経過し、これらの影響が若干和らいだものとみられる。
c 昨年調査と比較すると、「パソコン」(9.1%)が5.4ポイント低下し、全品目のなかで低下幅が最も大きい。29歳以下(19.6%)を除く全年代で購入率が一桁となるなど、普及が一巡したほか、スマートフォンやタブレット端末へ需要がシフトしているものと考えられる。なお、「タブレット」(10.0%)は3.4ポイント上昇し、二桁の割合となった。

5 物価上昇について

 今後1年間(平成29年秋まで)に物価が現在よりも上昇するかどうかについて、「そう思う」、「ややそう思う」を合わせた『そう思う』とする回答割合は、全体の67.1%となった。物価上昇を予想する世帯の割合が高い。
 年代別では、60代以下の全年代で『そう思う』の割合が6割台となり、29歳以下(60.9%)で最も低くなった。一方、70歳以上(86.5%)で『そう思う』が8割を超えており、物価上昇への懸念が強いようだ。

6 日常品を主に購入する店について

(1) 品目別にみると、生鮮食料品、他の食料品については、双方とも「食料品スーパー」と回答した世帯割合が最も高く、次いで、「百貨店・総合スーパー」となった。
日用品は、「百貨店・総合スーパー」(66.7%)、「ドラッグストア」(59.7%)で割合が高い。
医薬品・化粧品を購入する店としては、「ドラッグストア」(85.4%)と「百貨店・総合スーパー」(61.5%)が5割を超えた。
衣料品は、「百貨店・総合スーパー」(83.7%)、「専門店・個人商店」(66.1%)、「通信販売・宅配」(51.1%)に多く回答が集まった。
(2) 店別では、「食料品スーパー」は食料品全般、「コンビニエンスストア」と「ドラッグストア」は生鮮以外の食料品の購入割合が高くなった。「ホームセンター・家電大型専門店」は、日用品(42.7%)でのみ利用率が高い。「通信販売・宅配」は衣料品購入時の利用割合が5割を超えた。「百貨店・総合スーパー」と「専門店・個人商店」は全品目で二桁となった。
(3) このうち、「通信販売・宅配」については、衣料品(51.1%)での利用割合が最も高く、次いで、医薬品・化粧品(17.3%)でも二桁となり、購入手段として徐々に浸透していることが分かる。日用品で7.7%、生鮮食料品で6.2%、他の食料品でも5.1%となった。

7 生鮮食料品での買い物環境について

(1) スーパーや個人商店など生鮮食料品店が自宅から500メートル以内に「ある」と回答した世帯割合は、全体の54.7%となった。
 地域別では、「ある」の割合は、秋田市(67.2%)で最も高く、次いで、湯沢市・雄勝郡(58.1%)、能代市・山本郡(54.4%)、大館市・北秋田市・北秋田郡(51.0%)で5割を超えた。一方、「ない」は、男鹿市・潟上市・南秋田郡(62.1%)と鹿角市・鹿角郡(61.1%)で6割超となった。
(2) 自家用車の保有率は全体の95.6%と高く、特に、由利本荘市・にかほ市は100.0%となった(図表18)。一方、「保有していない」とする世帯割合は、秋田市(6.6%)が最も高く、次いで、鹿角市・鹿角郡(5.6%)が5%台となった。
(3) 上記のことから、生鮮食料品について、秋田市は近所に店舗がある世帯割合が高いため、自家用車の保有率が低くても、買い物しやすい環境が整っていると言える。また、由利本荘市・にかほ市は、近くに店舗がある割合は低いが、自家用車保有率の高さが買い物環境の不備をカバーしていると考えられる。一方で、鹿角市・鹿角郡は、近くに店舗がある割合が低く、自家用車の保有率も低いことから、買い物に不便が生じているケースがあるものと推測される。
 高齢者では運転能力の低下など自家用車の運転が困難となるケースも想定される。本県でも高齢化の進行にともない、「店を作る」、「商品を届ける」、「出かけやすくする」など、買い物弱者対策が急務となろう。
(相沢 陽子)
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