トップ機関誌「あきた経済」トップ平成29年度新入社員アンケートから―第一希望の職種・企業への就職割合高まる―

機関誌「あきた経済」

平成29年度新入社員アンケートから
―第一希望の職種・企業への就職割合高まる―

 当研究所では、毎春、県内企業の新入社員を対象に、就職活動や仕事、働き方に対する考え方などについて、アンケート調査を実施している。企業の採用意欲の高さを背景に、職種・企業とも第一希望先に就職できたと回答した割合が4年連続で上昇した。

1 アンケート結果

Q1 効果的だった情報収集方法は何ですか(2項目複数回答)
 全体では、「先生・教授に話をきく」(39.9%)が、平成28年度に実施した前回調査(43.8%)から3.9ポイント低下したものの、3年連続で最も高い割合となった。次いで、「インターネット」(37.3%)と「就職部の資料」(35.1%)が、ともに3割台となった。
 最終学歴別では、「先生・教授に話をきく」が、中学・高校卒(47.5%)と専門・短大卒(45.3%)で4割を超え、大学・大学院卒(16.4%)を大きく上回った。大学・大学院卒では、「インターネット」(71.2%)に回答がひときわ多く集まり、中学・高校卒(25.7%)と専門・短大卒(31.3%)の2倍以上となっている。

Q2 就職活動で利用した機関やイベント
 就職活動を行う際に利用した機関やイベントについて、全体では、「ハローワーク」(29.4%)と、県と秋田労働局などが主催する「秋田県合同就職説明会・面接会」(27.8%)が、ともに2割台となった。また、「リクルート会社主催の会社説明会・面接会」は19.6%、秋田市御所野にある就職支援施設「フレッシュワークAKITA」内に設置されている「秋田学生職業相談コーナー」は6.3%となった。人手不足を背景に求人サイドが情報発信に努めた結果、前回調査と比べて、いずれの機関・イベントも利用率が上昇しており、就職活動に臨む学生・生徒の間で各機関やイベントの認知度が徐々に向上しているものと考えられる。
 個別機関・イベントについて、最終学歴別にみると、「ハローワーク」は、専門・短大卒(60.9%)で6割超と、前回調査(37.9%)から23.0ポイント上昇した。ハローワークでは、学校に対する求人募集よりも、より幅広い業種の情報を入手することができるため利便性が高かったようだ。
 「秋田県合同就職説明会・面接会」の利用割合は、大学・大学院卒(47.9%)と専門・短大卒(40.6%)で4割を超え、中学・高校卒(15.1%)の2倍以上となった。
 「リクルート会社主催の会社説明会・面接会」については、大学・大学院卒(57.5%)が他学歴を大きく上回った。なお、このうち、県外就職を希望した割合は67.0%、実際に就職活動を行った割合は66.7%を占めた。
 「秋田学生職業相談コーナー」は、大学・大学院卒(13.7%)と専門・短大卒(10.9%)で1割を超えたが、中学・高校卒では1.7%となった。

Q3 インターンシップ(職業体験)の経験はありますか
 インターンシップ経験があると回答した割合は、全体では74.4%で、平成15年度に本質問を設けて以来最高割合となった前回調査(78.6%)を4.2ポイント下回ったものの、4年連続で7割を超えた。9年に政府がインターンシップ制度の整備に取り組んでから20年が経過し、学校と企業双方に制度が浸透していることから、経験割合は高い水準で推移している。
 最終学歴別にみると、中学・高校卒(86.0%)と専門・短大卒(71.9%)の経験割合が高くなり、大学・大学院卒(47.9%)は5割を下回った。
 次に、インターンシップ経験がある回答者235名に対し、経験を通して得た効果について質問した。何らかの効果があったと回答した割合は92.9%で、最終学歴別にみると、中学・高校卒(95.5%)、大学・大学院卒(94.3%)、専門・短大卒(82.7%)の順に高くなった。
 項目別では、「企業や仕事の内容を理解できた」(43.4%)が4割を超え、次いで、「職業意識が向上した」(26.0%)と「自分の適性を確認できた」(20.9%)がともに2割台となった。
 「企業や仕事の内容を理解できた」は、大学・大学院卒(45.7%)と中学・高校卒(45.5%)で割合が高く、専門・短大卒(34.8%)を10ポイント以上上回った。
 「職業意識が向上した」は、中学・高校卒(28.6%)と大学・大学院卒(25.7%)で2割台、専門・短大卒では17.4%となった。
 「自分の適性を確認できた」については、専門・短大卒(26.1%)と中学・高校卒(20.8%)が2割を超えた。ある一定期間、職場で働くことで、自らの適性を見極め就職活動に活かしたものと考えられる。

Q4 就職に関して誰に一番相談しましたか
 一番相談した相手として、全体では「親・家族」(44.0%)の割合が、3年連続で最も高くなった。回答者が、身近にいる社会人である親・家族に相談をした様子が窺える。
 前回調査と比べて、「親・家族」と「先生・教授」(34.5%)の割合が低下した一方で、「就職部」(7.6%)、「友人」(6.3%)が各々上昇した。
 「親・家族」は、中学・高校卒(46.9%)と専門・短大卒(45.3%)で4割台となり、大学・大学院卒(35.6%)を上回った。また、「先生・教授」も、中学・高校卒(39.7%)と専門・短大卒(35.9%)で3割を超えた。
 大学・大学院卒では、「就職部」(19.2%)と「友人」(12.3%)が二桁台となり、他学歴を大きく上回った。多様な立場の人たちから広く意見を求めたようだ。

Q5 就職先の職種・企業は第一希望ですか
 就職先が第一希望の職種であると回答した割合は全体の74.1%と、前回調査(71.9%)と比較すると2.2ポイント上昇し、2年連続で割合が高まった。最終学歴別では、中学・高校卒(79.3%)と専門・短大卒(76.6%)が7割台となり、大学・大学院卒(58.9%)を上回った。
 また、第一希望の企業であるとした割合は全体の68.4%で、前回調査(63.6%)から4.8ポイント上昇した。中学・高校卒(75.4%)、専門・短大卒(68.8%)、大学・大学院卒(50.7%)と、最終学歴が上がるにつれ割合は低下している。
 なお、職種・企業とも第一希望先であると回答した割合は62.7%と、前回調査(58.5%)を4.2ポイント上回った。雇用情勢が改善基調にあるため、希望に沿う就職をした割合は4年連続で上昇している。

Q6 県外での就職を希望したことがありますか
 県外での就職を希望したことがあると回答した割合は、前回調査(50.2%)を4.9ポイント下回り、本質問を設けた平成11年度以降、最も低い45.3%となった。地元企業の求人が増加していること、若年層で地元志向が高まっていることなどが影響したものと推測される。
 前回調査と比較すると、中学・高校卒(43.6%)は2.2ポイント上昇した一方、大学・大学院卒(52.1%)と専門・短大卒(42.2%)はともに18.1ポイント低下した。
 県外就職を希望したことのある回答者143人のうち、実際に県外で就職活動を行った割合は37.8%で、前回調査(38.9%)から1.1ポイント低下した。

Q7 県外での就職を希望した理由は何ですか
 前設問で「県外での就職を希望したことがある」と回答した143人に、希望理由を質問した。
 全体では、「都会での生活を体験してみたかった」(30.8%)が、前回調査(33.8%)を3.0ポイント下回ったものの、4年連続で最も高い割合となった。一方で、前回調査と比べて、「地元より条件のよい勤め先があった」(25.9%)が0.4ポイント上昇、「地元に希望する職種がなかった」(17.5%)が5.4ポイント上昇した。県内では、就職を取り巻く環境は改善傾向が続いているが、回答者にとって、就職の選択肢は依然として少ないと感じる面があるようだ。
 男女別にみると、男性回答者では、「地元より条件のよい勤め先があった」(32.9%)が、女性回答者(18.6%)を14.3ポイント上回り、実利志向の考え方が窺える。

Q8 現在の職場でいつまで働きたいですか
<全体>
 全体では、「定年まで」(42.7%)が、前回調査(44.4%)から1.7ポイント低下したものの、最も高い割合となった。前回調査と比べて、「条件や状況次第では転職する」(19.0%)は0.5ポイント上昇、「技術を習得したり十分な経験を積んだら転職する」(5.4%)は横這いとなった。回答者では、安定志向が根強いが、就職後も状況次第では転職を検討するという回答も一定割合みられる。
<男性>
 男性回答者では、「定年まで」(59.1%)が約6割と、最も高い割合となった。前回調査と比べて、「条件や状況次第では転職する」(24.2%)が2.4ポイント上昇した一方、「技術を習得したり十分な経験を積んだら転職する」(3.2%)は2.0ポイント低下した。男性では、新卒として就職した先で定年を見据えた勤続を望む傾向は引き続き強いが、他方、就職後も状況により転職を検討すると回答した割合が高まった。
<女性>
 女性回答者では、「結婚・出産後もできるだけ長く働きたい」(28.5%)が回答項目のなかで最も高い割合となったものの、前回調査(31.0%)から2.5ポイント低下し、6年ぶりに3割を下回った。ただし、「定年まで」(19.2%)が前回調査(15.0%)を4.2ポイント上回り、「結婚・出産を機に退職する」(16.2%)は前回調査(17.0%)から0.8ポイント低下した。女性回答者では、家庭と仕事の両立を図りたいとする傾向が強くなっており、特に定年までを視野に入れ勤め上げたいという割合が高まった。

○新規大卒者確保に向けた県の取り組み
 県は、若年層の定住を促すため、生徒や学生の県内就職に向けた意識醸成を図るための定期的な情報発信や、就職動向を把握・分析するための情報収集を行っている。以下は始まったばかりの取り組みではあるが、県内就職の拡大に繋がることが期待されている。
(1)大学とのAターン協定締結
 都市部にある大学が、学生の地元就職に向けた就職活動を支援するため、就職に関する協定を地方自治体と締結する動きが広がっている。本県も平成28年から締結に取り組み始め、29年4月現在の締結先は県出身者が多数進学している12校となっている(図表1)。このうち、宮城県にある東北工業大学との締結は、東北の大学と自治体が協定を締結した初の事例となった。
 締結後、各大学は、県出身の在校生に向け地元就職に関する情報の提供を始め、県は、大学主催の地元就職セミナーや父母懇談会に参加し、各種支援策の説明とともに県内就職を呼びかけている。今後は、大学との協力で、県出身者の就職動向の分析も踏まえた支援により、県内就職の拡大を図っていく。
(2)県内就職促進に向けアプリをリリース
 平成29年2月、県内就職者を対象に優待サービスを提供するスマートフォン用アプリ「秋田GO!EN(ご縁)アプリ」をリリースした。高校生や大学生、Aターンまたは県内移住を希望する人がアプリに登録すると、就職説明会・面接会やインターンシップ、移住相談会等の開催情報が配信され、参加に応じてポイントが付与・蓄積される。県内に就職した後は、アプリにその旨を報告すると、ポイントがクーポンに交換され、日常生活に関連したサービスを受けることが可能となる。現在、75社220店舗がサービスを提供しており、新車購入費、賃貸物件仲介手数料、結婚式代など県内定住後に活用できるものから、ヘアサロン施術代、カラオケ店利用料など県内就職前にも利用できるものまで、各種サービスの優待を受けることができる。
 4月現在のダウンロード数は約800件強となっているが、今後高校生・大学生に向け、進路を確定する前に県内就職への意識を高めることができるよう、就活関連イベントなどでアプリの周知・普及に力を入れている。

○新規高卒者、就職内定率は前年比横這い99.7%
 新規高卒者の就職状況について、秋田労働局によると、平成29年3月末現在、県内求人数は3,816人と、23年以降、増加が続いている。また、全体の内定率は前年比横這いの99.7%で、前年同様、過去20年間で最も高くなった。

Q9 就職先を選んだ理由は何ですか
(3項目複数回答)
 全体では、「会社のイメージがよい」(41.5%)と「仕事の内容」(41.1%)が、4割を超えた。次いで、「会社の将来性」(25.9%)と「自分の能力を活かせる」(25.3%)が2割台となった。
 前回調査と比べて、「適切な勤務時間」(12.0%)と「休日が多い」(6.0%)と回答した割合が上昇した。政府の主導で働き方改革の機運が高まるなか、長時間労働が問題視されていることが影響したものと推測される。
 男性回答者では、「会社の将来性」が30.1%と、女性(20.0%)を10.1ポイント上回った。Q8のとおり、男性の約6割が定年までの勤続を希望しているため、会社の将来に渡る安定性を重視し就職先を決めたようだ。

2 まとめ

 アンケート結果では、人手不足により県内企業の採用活動が活発化していることを反映し、職種・企業とも第一希望先に就職できたと回答した割合が4年連続で上昇した。また、希望に沿う就職ができたため、新卒として就職した先で長く働きたいとする安定志向が根強い。女性では、家庭と仕事の両立を目指す傾向が強くなっており、特に定年までを視野に入れ勤め上げたいという割合が高まった。
(相沢 陽子)
あきた経済

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