トップ機関誌「あきた経済」トップ第97回県内企業動向調査(平成29年9月調査)

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第97回県内企業動向調査(平成29年9月調査)

 平成29年度上期(29年4月~9月)における県内企業の業況判断(実績見込)は、業績全般BSIが28年度下期(28年10月~29年3月)に比べて、2ポイント上昇の▲8となった。県内企業の業況感は、ICT市場向けおよび自動車関連市場向け商品が堅調に推移した電子部品、春の大型観光キャンペーンやねんりんピック等のイベントの開催による効果から需要が増加した観光などでの上昇を背景に、全体としては小幅ながら改善がみられた。
 29年度下期(29年10月~30年3月)の業績全般BSI(見通し)は、29年度上期に比べて8ポイント上昇の0と、さらに改善し、水面下を脱する見通しとなっている。木材・木製品や衣服縫製で需要の増加が見込まれるほか、運輸、機械金属、酒造などでも改善する見通しとなっている。
 29年度の設備投資計画額は、機械金属、酒造、卸売・小売で増加が見込まれるものの、その他の業種での減少を受けて、前年度実績比22.1%減の614億6,300万円となる見込み。
 賃上げについては、29年度以降「実施した」企業が68.1%、「今後、実施予定」は16.7%となり、8割を超える企業が賃上げを実施済もしくは実施予定であることが分かった。

〈調査要領〉
1 調査方法 郵送によるアンケート方式
2 調査時期 平成28年8月下旬~9月中旬
  調査は年2回(3月、9月)実施
3 調査対象 県内に事業所のある企業323社
4 回答企業数 263社(回答率81.4%)
5 調査項目
(1)業況判断 ~平成28年度上期(28年4月~28年9月)実績見込
   平成28年度下期(28年10月~29年3月)見通し
(2)業況の回復について
(3)設備投資について ~27年度実績および28年度計画
   設備投資の目的
   設備投資の対象
(4)賃上げについて
(5)県内企業の「働き方改革」への取組みについて
(注)BSI(ビジネス・サーベイ・インデックス)とは企業の業況判断を指数化したもの。「上昇」、「増加」等と回答した企業の割合から「下降」、「減少」等と回答した企業の割合を差し引いた値である。

BSI=(「上昇」等と回答した企業数)-(「下降」等と回答した企業数)/回答企業×100

1 業況判断

(1)業績全般BSI
29/上(29年4月~29年9月)実績見込
 全産業の業績全般BSI(前期比「上昇」割合-「下降」割合)をみると、平成29年度上期(以下、「29/上」)の実績見込は、28年度下期(以下、「28/下」)に比べ2ポイント上昇の▲8と、業況感が改善した。
 産業別にみると、製造業では、電子部品は、ICT市場向けおよび自動車関連市場向けの製品が堅調に推移したことなどから、大幅に改善した。機械金属では、受注の減少に加え、人員確保にともなう経費の増加によりやや悪化した。木材・木製品では、市況の低迷、円安の影響等により原材料コストが上昇したことなどから、大幅に悪化した。酒造では、高付加価値商品の販売は好調を維持する一方、普通酒の落ち込み拡大により悪化した。その結果、製造業全体としては7ポイント低下の▲8となった。
 非製造業では、建設で公共工事の減少に加え、民間工事も伸び悩んだことから悪化した。卸売・小売では、個人消費の低迷が続いており悪化した。運輸は荷動きが回復傾向にあり改善した。観光でも、春の大型観光キャンペーンやねんりんピック等のイベント効果から大幅に改善した。その結果、非製造業全体としては8ポイント上昇の▲9となった。
 なお、地域別(全産業)では県央、県南で水面下ながら改善したが、県北で悪化した。

29/下(29年10月~30年3月)見通し
 平成29年度下期(以下、「29/下」)の全般的な業績BSIは、全産業では29/上に比べて8ポイント上昇の0と、改善する見通し。
 産業別にみると、製造業では、電子部品で先行きが不透明なことから落ち込むものの、衣服縫製、木材・木製品などで受注の回復が見込まれることから、全体では15ポイント上昇の7と改善する見通し。
 非製造業でも、建設で公共工事は前年並みを確保可能と見込むほか、運輸では荷動きの増加などにより大幅な改善が見込まれ、全体では3ポイント上昇の▲6と上向く見通し。
 なお、地域別(全産業)では県北が水面下ながらも大幅に改善する見通し。県央、県南においてはプラスに転じるなど全地域で改善する見通しとなっている。

(2)売上高BSI
29/上実績見込
 29/上の売上高BSI(前年同期比「増加」割合-「減少」割合)は、全産業で28/下に比べて9ポイント上昇の0と大幅に改善した。

29/下見通し
 29/下の売上高BSIは、全産業で29/上に比べ2ポイント上昇の2と改善する見通し。

(3)経常利益BSI
29/上実績見込
 29/上の経常利益BSI(前年同期比「増加」割合-「減少」割合)は、全産業で28/下に比べ3ポイント低下の▲11と悪化した。

29/下見通し
 29/下の経常利益BSIは、全産業では29/上に比べて10ポイント上昇の▲1と改善する見通しである。

(4)在庫水準BSI
29/上実績見込
 29/上の在庫水準BSI(「過剰」割合-「不足」割合)は、全産業(建設・運輸・観光・サービスを除く)で6と、28/下から横這いとなった。

29/下見通し
 29/下の在庫水準BSIは、全産業で29/上と比べて7ポイント低下の▲1と、過剰感が緩和する見通し。

(5)資金繰りBSI
29/上実績見込
 29/上の資金繰りBSI(前期比「好転」割合-「悪化」割合)は、全産業で28/下に比べて8ポイント上昇の2と改善した。

29/下見通し
 29/下の資金繰りBSIは、全産業で29/上と比べて2ポイント低下の0と、やや悪化する見通し。

(6)雇用BSI
29/上実績見込
 29/上の雇用BSI(「過剰」割合-「不足」割合)は、全産業で28/下に比べて6ポイント低下の▲39と、不足感が強まった。

29/下見通し
 29/下の雇用BSIは、全産業で29/上から横這いの▲39と、不足感が続く見通し。

2 業況の回復に効果のある施策

 29/上の業況が28/下に比べて「上昇」と回答した事業所へ、業況の回復に効果のある(または、あった)ものを、3つまでの複数回答で質問した。
 全産業では、「既存取引先からの受注増加」が57.1%と最も多く、次いで「販路の拡大」(35.7%)、「作業工程などの効率化・短縮化」(17.9%)となっている。
 製造業では、「既存取引先からの受注増加」が77.8%、「販路の拡大」が29.6%となった。
 非製造業では、「販路の拡大」が41.4%と最も高く、次いで「既存先からの受注増加」37.9%となっている。また、「販売価格の引き上げ」が13.8%となり、製造業と比較して割合が高くなった。
 業種別の特徴としては、機械金属、建設の2業種で、「既存取引先からの受注増加」とする回答が100.0%であった。

3 設備投資の動向

 回答企業263社における平成29年度の設備投資実施計画企業数は、28年度(実績)を1社上回る193社(実施計画企業割合73.4%)となる見通し。設備投資計画額は前年度実績比22.1%減の614億6,300万円となっている。
 産業別にみると、製造業は、設備投資計画企業数が96社(実施計画企業割合79.3%)、設備投資計画額は前年度実績比24.7%減の513億8,200万円となる見通し。一方、非製造業は、設備投資計画企業数が97社(実施計画企業割合68.3%)、設備投資計画額は同5.3%減の100億8,100万円となる見込み。
 設備投資の主な目的(3つまでの複数回答)をみると、「既存設備の維持・更新」(82.9%)が最も多く、次いで、「生産能力の増強」(32.1%)、「合理化・省力化・効率化」(29.5%)が約3割を占めた。また、「販売力の増強」も16.6%となった。
 設備投資の主な対象(3つまでの複数回答)をみると、「生産機械・工作機械」(44.0%)が最も多かった。以下、「車両」(34.7%)、「その他の機械・装置」(16.6%)と続いた。

4 賃上げについて

 平成29年度以降、賃上げ(定期昇給やベースアップなど)を実施したかについて質問した。
 全産業では、68.1%が賃上げを実施した。また、「今後、実施予定」の企業も16.7%あり、合わせて84.8%の企業が賃上げを実施済もしくは今後、実施予定であることが分かった。
 製造業では、賃上げを「実施した」企業が71.9%、「今後、実施予定」は14.0%となった。非製造業では「実施した」が64.8%、「今後、実施予定」は19.0%となった。
 業種別にみると、賃上げを実施した企業割合が最も高かったのは、機械金属の88.0%、次いで電子部品の82.6%であった。
 また、賃上げ実施の時期(予定を含む)については、全産業では「29年度上期」が最も多く78.5%を占めた。次いで「29年度下期」が11.7%、「30年度以降」が8.5%となった。
 製造業では、「29年度上期」が81.7%、「29年度下期」が8.7%となった。非製造業では、「29年度上期」が75.6%、「29年度下期」が14.3%となった。
 業種別の特徴をみると、賃上げを29年度上期に実施した企業割合が最も高かったのは、機械金属(100.0%)、次いで電子部品(90.5%)であった。また、29年度下期に実施を予定している企業割合が最も高かったのは、衣服縫製(37.5%)、観光(20.0%)、30年度以降に実施を予定している企業割合が高かったのは、衣服縫製(25.0%)、木材・木製品(16.7%)、運輸(15.4%)であった。
(打矢 亘)
あきた経済

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