トップ機関誌「あきた経済」トップ第33回秋田県消費動向調査(平成29年10月調査)

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第33回秋田県消費動向調査(平成29年10月調査)

1 「昨年と比較した暮らし向き」は、「良くなった」とする世帯割合(9.5%)が昨年調査(平成28年10月実施)を1.5ポイント上回り、「悪くなった」(22.9%)が3.8ポイント下回ったものの、「変わらない」(67.6%)が過去最高割合となり、景気回復の実感の乏しさが窺える。
2 「来年の収入(見込み)」についても、「増加する」(14.3%)が1.5ポイント上昇し、「減少する」(18.1%)が1.9ポイント低下の一方で、「変わらない」(67.5%)がやはり過去最高割合となり、緩やかに改善しつつも、依然厳しさが残るとする慎重な見方が大勢を占めた。
3 「1か月あたりの生活費」は、昨年調査比2千円の減少となった。将来不安の高まりからか消費よりも貯蓄を優先する姿勢がこれまで以上に顕著となった。
4 支出の抑制傾向を受け、耐久消費財の購入割合は60.8%と、昨年調査を4.6ポイント下回り、4年ぶりに低下した。
5 書籍の購入については、紙媒体の書籍を書店やコンビニ・駅の売店など実店舗で購入する割合が全体の70.1%で、書籍購入者における1年間の購入冊数は「5冊未満」が48.5%と最も割合が高い。電子書籍については、利用経験のない割合が全体の59.9%と過半数を占めた。

1 暮らし向きについて

(1)昨年と比較した暮らし向き
 -「変わらない」が調査開始以来最高割合-
a  「良くなった」とする世帯割合(9.5%)は、昨年調査(8.0%)を1.5ポイント上回った。
b 「悪くなった」(22.9%)は、昨年調査(26.7%)から3.8ポイント低下した。
c 「変わらない」(67.6%)は、昨年調査(65.3%)を2.3ポイント上回り、昭和60年に調査を開始して以来最高割合となった。昨年と比較した暮らし向きは、緩やかな改善傾向がみられる一方で、依然として景気回復の実感の乏しさも窺える回答結果と言える。
d 年代別にみると、「良くなった」は、29歳以下(18.7%)と30代(14.5%)の若い年齢層で二桁の割合となり、60代以上では「悪くなった」の割合が昨年調査より大幅に低下した(図表3)。平成28月4月の診療報酬改定による一部利用時の自己負担割合引き上げから1年が経ち、負担感が和らいだことなどが寄与した。
e 暮らし向き得点は△0.16と、昨年調査(△0.23)を0.07ポイント上回った。

(2)今後1年間の暮らし向き
 -緩やかな改善の一方、依然厳しさ残る-
a 「良くなる」と予想する世帯割合(8.8%)は、昨年調査(7.7%)を1.1ポイント上回り、3年連続で上昇した。
b 一方、「悪くなる」(18.5%)を選択した世帯割合は、昨年調査(22.9%)を4.4ポイント下回り、平成27年(26.9%)以降は年々低下している。
c 「変わらない」(72.7%)は、昨年調査(69.4%)から3.3ポイント上昇し、調査開始以来最高割合となった。今後1年間の暮らし向きについても、緩やかな改善の一方、依然厳しさが残ると予想する見方が大勢を占めた。
d 住宅ローン(以下、ローン)の有無別では、いずれも「変わらない」とする世帯割合が7割を超え、最も高かった。

2 収入について

(1)昨年と比較した世帯収入の増減
 -改善のペースが加速-
a 「増加した」を選択した世帯割合(25.4%)は、昨年調査(20.8%)を4.6ポイント上回り、2年ぶりに増加に転じた。
b 「減少した」(21.1%)は、昨年調査(24.5%)を3.4ポイント下回った。
c 「変わらない」は53.4%で、昨年調査(54.7%)から1.3ポイント低下した。世帯収入は、平成25年以降改善傾向にあり、本年調査では10年調査以来19年ぶりに「増加した」の回答割合が「減少した」の回答割合を上回り、改善のペースが加速した。
d 年代別では、「増加した」割合が、29歳以下(51.6%)と30代(41.9%)で他年代よりも高く、若い世帯で収入が改善している。
e 昨年調査との比較でも、全ての年代で「増加した」とする割合が上昇したが、なかでも特に30代で10.1ポイント上昇と、大幅に伸びた。
f 収入得点は△0.02と、昨年調査(△0.09)を0.07ポイント上回り、5年連続で上昇している。

(2)来年の収入(見込み)の増減
 -改善のペースがやや鈍化-
a 「増加する」と予想する世帯割合(14.3%)は、昨年調査(12.8%)を1.5ポイント上回った。
b 「減少する」(18.1%)は、昨年調査(20.0%)を1.9ポイント下回り、平成24年(40.8%)をピークに低下が続いている。
c 「変わらない」(67.5%)は、昨年調査(67.1%)比0.4ポイント上昇と、5年連続で上昇し、調査開始以来最も高い割合となり、依然として慎重な見方が大勢を占める。
d ローンの有無別では、いずれも「変わらない」を選択した世帯割合が最も高いが、「ある」世帯(72.7%)が「ない」世帯(65.5%)を7.2ポイント上回った。

3 生活費について

(1)1か月あたりの生活費
 -平均生活費は前年比2千円減の176千円-
a 昨年調査と比べて、生活費「15万円未満」の割合(40.9%)が1.4ポイント上昇した一方で、「15~20万円」(25.5%)が2.1ポイント低下、「25~30万円」(12.0%)が0.9ポイント低下、「30万円以上」(5.4.%)が0.7ポイント低下した。後述の「3(3)今後の家計支出」にみられるとおり、将来不安の高まりからか消費よりも貯蓄を優先する傾向が生じており、支出の抑制に努めている様子が窺える。
b ローンの有無別では、いずれも「10~15万円」の割合が最も高くなった。ローンの「ある」世帯では、「30万円以上」が11.7%と、「ない」世帯(3.1%)を大きく上回った点が特徴的である。
c 1か月あたりの平均生活費は176千円で、昨年調査から2千円減少した。年代別では、60代(192千円)をピークに年代が下がるにつれ減少し、29歳以下(145千円)が最低額となっている。
 昨年調査との比較では、70歳以上(19千円増)で大幅に増加した。年金受給者が多く恒常的に支出抑制に努めているものの、食料品など生活必需品の値上がりが支出増に繋がった可能性が高い。ほかに、高額療養費制度改正により、本年8月から70歳以上の医療費負担上限額が引き上げられたことも影響したと考えられる。
また、30代(4千円増)、29歳以下(2千円増)で増加した一方、40代(10千円減)、50代(4千円減)、60代(1千円減)で生活費が減少しているが、特に40代の減少幅が大きい。

(2)昨年と比較して支出が「増えた」費目・「減った」費目
 -「食料費」への支出増加続く-
a 昨年よりも支出が増えた費目
(a) 割合が高い順に、「食料費」(18.4%)、「教育費」(11.9%)、「保健医療費」(10.7%)が二桁となり、昨年調査と同じ費目・順番となっている。
(b) 「食料費」は、昨年調査(17.6%)から0.8ポイント上昇し、7年連続で全費目中最も高い割合となった。天候不順や円安進行による原材料価格の高騰に加えて、世界的な食料需要の高まりから食料品の値上がりが続き、支出が増加しているものと考えられる。
(c) 「教育費」は、昨年調査(12.7%)を0.8ポイント下回ったものの、主に40代が支出を押し上げており、首都圏を中心に大学の授業料が値上がりしていることが影響したものと考えられる。
(d) 「保健医療費」も、昨年調査(11.7%)から1.0ポイント低下したものの、前述のとおり、医療費負担上限額の引き上げの影響が大きく、特に70歳以上で支出が増加した。
b 昨年よりも支出が減少した費目
(a) 割合が高い順に、「旅行・レジャー費」(15.8%)、「外食費」(13.0%)、「貯蓄」(12.3%)、「衣料品費」(11.8%)となり、選択的費目が支出削減の対象となっている。
(b) 「旅行・レジャー費」については、全体的な節約意識の高まりに、海外では安全性に対する懸念もあり、出控えが生じ支出が減少した。
(c) 「外食費」の支出減は、節約志向から利用回数の減少や単価を低く抑える傾向が長引いていることなどが影響したものと思われる。

(3)今後の家計支出
 -家計の引き締め傾向が2年連続で和らぐ-
a 「引き締める」を選択した世帯割合は65.9%と、昨年調査(71.9%)を6.0ポイント下回り、平成18年(67.0%)以来11年ぶりに6割台となった。来年の収入増加を見込む世帯割合の上昇が続いているため、家計の引き締め傾向は2年連続で弱まっている。
一方で、昨年調査と比較すると、「増やす」(1.2%)は0.2ポイント低下し、「変わらない」(32.9%)は6.2ポイント上昇した。来年の収入(見込み)について、改善のペースがやや鈍化するとの見通しから、節約意識は依然として高いままである。
b 年代別では、全年代で「引き締める」の割合が高く、40代(72.3%)が最も高い。30代以下と50代で6割台、60代以上で5割台となり、70歳以上(53.7%)が最も低い。なお、29歳以下と40代、60代では「増やす」という回答がみられなかった。
c 家計支出を引き締める理由としては、「生活の先行き不安」(39.9%)が昨年調査(39.7%)を0.2ポイント上回り、9年ぶりに最も高い割合となった。世帯収入は改善しているものの、物価上昇の勢いが賃上げのペースを上回っているほか、平成31年10月には消費税増税が予定されているため、将来不安が高まっているようだ。「貯蓄を増やす」(34.5%)が昨年調査(30.4%)から4.1ポイント上昇していることも、同様に先行きに対する不安が影響しているものと考えられる。一方で、世帯収入の改善を反映し、「所得の減少または伸び悩み」(39.6%)が昨年調査(45.4%)を5.8ポイント下回り、2年連続で低下した。

4 耐久消費財について

過去1年間に購入した耐久消費財
 -「購入した」世帯割合は4年ぶりに低下-
(1) 過去1年間に耐久消費財を購入した世帯割合は60.8%と、昨年調査(65.4%)を4.6ポイント下回った。支出の抑制傾向を受け、購入世帯割合は4年ぶりに低下した。
(2) 年代別購入割合では、30代(70.1%)と40代(64.6%)が6割超、次いで、50代(59.9%)、60代(57.3%)、29歳以下(53.8%)が5割台となった。70歳以上(46.3%)が最も低い。
(3) 購入した耐久消費財としては、「スマートフォン」(35.4%)と「乗用車」(26.7%)の割合が高かった。
a 「スマートフォン」は、昨年調査を2.1ポイント上回った。従来型の携帯電話からスマートフォンへの切り替えが一巡し平成26年以降割合の低下が続いていたが、話題の新機種が発売された影響から4年ぶりに上昇した。年代別では、30代(40.2%)と40代(40.5%)で4割を超えた。70歳以上(20.0%)の購入割合は、本品目を設けた24年以来、初めて二桁に達した。
b 「乗用車」は、昨年調査を1.5ポイント上回った。新型車投入効果などが影響したものと推測され、特に29歳以下の年代で割合が高い。
c 昨年調査と比べて、「冷蔵庫」(12.5%)が4.5ポイント低下、「テレビ」(9.2%)も2.5ポイント低下した。50代以上で購入割合が低く、性能向上にともなう耐久年数の長期化もあり買い替えが進んでいないようだ。一方で、「掃除機」(18.1%)が2.7ポイント上昇し、全品目の中で上昇幅が最も大きい。60代以上で購入割合が高く、小型化・軽量化を図った「シニア家電」への買い替えを進めているものと考えられる。

5 書籍の購買行動について

 今回の調査では、書籍の購買行動に関するアンケート調査を併せて行った。
(1) 紙媒体の書籍について
 紙媒体の書籍(雑誌・漫画を除く)を購入する場所として、「書店(実店舗)」(63.5%)が全体の6割を超え、次いで、「インターネット通販」(13.1%)、「コンビニ・駅などの売店」(6.6%)となった。これらを合わせた、いずれかの手段で紙媒体の書籍を購入する回答者割合は83.2%と、購入しない割合(16.8%)の約5倍である。また、書店やコンビニ・駅などの売店で直接購入する割合は70.1%で、インターネット通販による購入割合を大きく上回った。
 年代別では、「書店(実店舗)」での購入割合は全年代で5割を超えた。一方で、「インターネット通販」は50代以下で1割台となったが、60代以上では1割に届かず、高齢層で浸透が遅れているようだ。また、「購入しない」は、70歳以上(36.4%)と29歳以下(20.9%)が他年代を上回った。
 以下、aからcは、上記設問で「紙媒体の書籍を購入する」と回答した566名を対象に、過去1年間の購買行動に関して質問した。
a まず、購入した冊数については、全体では、「5冊未満」(48.5%)が最も割合が高く、次いで「5冊~10冊未満」(27.7%)と「10冊~30冊未満」(17.0%)が二桁となった。
b 次に、購入金額では、「1千円~5千円未満」(40.1%)が最も割合が高く、次いで、「5千円~1万円未満」(26.0%)と「1万円~5万円未満」(19.0%)が二桁となった。
c また、新品と中古品の購入割合については、「新品のみ購入」(73.3%)に回答が集中した。「どちらも購入したが新品の方が多い」(17.1%)の割合も他を上回ったことと併せて考えると、回答者は新品をより好む傾向がみられる。ただし、「新品のみ購入」は、30代(63.4%)と29歳以下(70.0%)が他年代を下回り、若い年代の方がリユースに馴染みがあるようだ。

(2) 電子書籍について
 電子書籍(雑誌・漫画を除く)の読書経験では、「無料・有料とも読んだことがない」(59.9%)が全体の約6割を占めた。年代が上がるにつれ割合が上昇傾向にあり、70歳以上(92.6%)では9割を超えた。一方で、無料・有料問わず電子書籍の読書経験のある割合は全体の40.0%で、このうち、30代(63.8%)と29歳以下(56.7%)のみが過半数となった。
以下、aとbは、上記設問で「電子書籍を読んだことがある」と回答した271名を対象に、過去1年間の購買行動を質問したものである。
a 過去1年間に購入した電子書籍の冊数は、「5冊未満」(52.7%)が最も高く、次いで「10冊~30冊未満」(16.1%)と「5冊~10冊未満」(15.1%)が二桁となった。
b 次に、過去1年間に購入した書籍の金額では、「1千円~5千円未満」(38.7%)と「1千円未満」(30.1%)の回答割合がともに3割台となった。「1千円~5千円未満」をピークに金額が上がるにつれて回答者割合は低下し、「10万円以上」では回答がみられなかった。

(3) まとめ
 回答者では、電子書籍の利用経験がない回答者が約6割を占め、紙媒体の書籍の根強い人気が窺える。紙媒体の書籍については、書店やコンビニ・駅などの売店で回答者自らが書籍を手に取り購入する割合が7割であるが、1年間の購入金額は1千円~5千円未満、購入冊数は5冊未満という割合が高い。
 なお、媒体を問わず書籍を購入する割合は全体の87.0%と、8割を超えた。購入冊数や金額こそ少ないが、自分のペースで書籍を購入する回答者が多いようだ。

(相沢 陽子)
あきた経済

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