経営随想
新しい会社風土づくりに挑戦
(秋田協同印刷株式会社 代表取締役)
<はじめに>
私は、地方銀行で定年を迎え、ホテル業に数年かかわり、その後今の印刷会社に入社し11年になります。
当時から印刷業は不況産業、斜陽産業と言われていました。特に官公需に頼っていた秋田県の印刷業界は全国的にも最悪な状況で、その後もなかなか浮上できずに現在に至っています。現にピーク時全国で8兆円あった出荷額が、平成22年度には5兆円台に落ち込むと言われています。
私にとって入社前の印刷会社のイメージは映画『男はつらいよ』に出てくる、ダンゴ屋「とらや」の裏の「タコ社長」が経営する印刷会社でした。「タコ社長」はいつも資金繰りに汲々とし、溜め息ばかりついていました。その姿に笑いながらも零細な町工場の社長の悲哀を感じたものでした。当時の我が社も厳しい状況で資金繰りにも困るほどでした。社員にもあまり活気が感じられず、後ろ向きな気分が社内に漂っていました。
この状況を打破すべく、まず社員が元気になると共に、仕事に誇りをもってもらいたく次の事を提言しました。
<印刷業はサービス業>
印刷業は製造業であり、情報産業でもあり、同時に「サービス業」でもあることを全員に理解してもらいました。いくらいい印刷物を造ってもお客様に満足してもらわなければ意味がありません。それは、品質はもちろん、納期、価格、営業係の態度と仕事の進め方、電話応対、あるいは会社全体の雰囲気等々、総合的なものでお客様は満足し、当社を選んでくれているのです。したがって、サービス業という視点から社員の意識と行動を変えていきました。
また、製造現場である工場を「ショールーム」と見なし、お客様にはできる限り工場内を見ていただきました。当時の工場はかなり乱雑で、社員の服装や態度も満足のいくものではありませんでした。しかし、見られることにより社員に緊張感が出て、機械のオペレーターの挨拶も引きつった笑顔から徐々に本物になり、服装や態度も改善されていきました。お客様が工場に出入りし始めると、社員も汚い所が気になったのでしょう、自発的にトイレを含め全員で掃除をするようになりました。これにより会社への愛着が出てきたように思われます。
毎朝営業室で「おはようございます」「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」を全員で挨拶というより叫んでいます。大きな声を出すと気分がいいのか皆んながスッキリしたいい顔になります。先日お客様が「工場の社員は仕事を楽しんでいるようですね」と言われました。本当にうれしい事です。
<チーズ(仕事)を求めて東京へ>
秋田県内だけでは限界を感じ、東京進出を決意しました。標準的な秋田弁しか話せない営業マンが東京で商売ができるのか不安でした。当初は東京に事務所を置いたのはよかったのですが、経費倒れで撤退したり、当社のミスで何百万円もの損害請求がきたりと苦難の連続でした。ところが口下手な秋田県人でも、県民特有の誠実な人間性がお客様の信頼を徐々に得て、社員も東京の仕事ができることに誇りを感じ始め、厳しい要求を一つ一つクリアしていきました。
一方、地域格差も当社にとって有利に作用しました。東京では「タコ社長」のような町工場は高い地価、高い人件費、後継者難でどんどん閉鎖に追い込まれています。工場が残っても分業化が進み、お客様にとっては不便な状況になっています。その点秋田は地価が低く人件費も高くありませんので価格競争には有利です。また、当社のような小規模でも、企画─デザイン(含Webデザイン)─印刷─製本─発送まで社内でワンストップサービスの体制ができ、印刷部は交替で24時間稼働していますので厳しい納期にも応えることがきます。これらのことがお客様に評価されているのかと思っています。お陰様で今では東京の売り上げが全体の20~25%を占めるようになりました。
物流の整備とITの発達で東京との時間と空間の差は縮小しています。相互のデータはパソコン上でリアルタイムに処理されますし、でき上がった製品は夜発送すると、次の朝には東京のユーザーの手元に確実に着いています。ただし、東京のお客様には二ヶ月に一回は必ず営業担当者に顔を出させるようにしています。これは新規開拓と併行して、既存先には情報交換により当社を忘れられないようにするためです。一方担当者も東京へ行くとテンションが上がり、帰社してからも社内へいい刺激を与えています。
<Aターンの人々の受け皿になりたい>
ここ数年、高いレベルのAターンの人材が入社してきます。東京で活躍していた営業マンや、全日空の整備士などです。今年もIT関連に強い男が入ってきました。早速、デザイン事業の一環として数社のホームページを制作し、商品を売り込めるツールとしての作成テクニックを駆使、その結果製品への引き合いの多さにお客様は驚き、感謝されております。これで当社も、ようやくお客様の多様化、高度化するニーズに応える体制ができました。彼も東京の大企業でバリバリ働いていた人物です。彼等が入社することにより社内外に刺激を与え、当社の活性化に大いに貢献してくれています。
このようなすばらしい人材を採用できるのは当社のレベルが上がったのではなく、秋田の雇用状況が厳しく、当社を選ばざるを得ないという背景があるからと思われます。中央の第一線で活躍していながら、いろいろな事情で故郷秋田に帰ってこなければいけない人々がたくさんいます。当社が少しでもその受け皿になれればと考えています。この人達が秋田の地で自分の才能を思う存分発揮し、各自の人生を賭けるのにふさわしい職場にしたいと思っています。
<古希を迎えて>
当社は来年で70才を迎えます。ここまで、「秋田協同印刷」を慈しみ、育ててくれた多くの人々に感謝し、また毎日莫大な紙を使い、その原料となる木材を消費した罪滅ぼしに70才の記念日には全社員で植樹をし、ささやかなお祝いの宴を開きたいと思っています。
会 社 概 要
| 1 社名 | 秋田協同印刷株式会社 |
|---|---|
| 2 代表者名 | 代表取締役 渡辺芳勝 |
| 3 所在地 | 秋田市八橋南二丁目10番34号 |
| 4 電話番号 | 018-823-7477 |
| 5 FAX番号 | 018-824-2864 |
| 6 URL | https://www.akyodo.co.jp |
| 7 設立年月 | 昭和16年12月1日 |
| 8 資本金 | 1000万円 |
| 9 年商 | 約9億円 |
| 10 従業員数 | 75名 |
| 11 事業内容 | 総合印刷業 |




