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県内の「道の駅」の現状と課題

 今年、秋田県内に新たに3つの道の駅が誕生した。 道の駅は単なるドライバーの「休憩施設」としてだけではなく、「地域振興」という役割を担っている。本稿では当研究所が県内の道の駅に行ったアンケート調査結果に基づき、県内の道の駅の現状と課題についてまとめた。

1 道の駅とは

(1)道の駅のはじまり
 一般道路を車で走っていると、最近「道の駅」の標識をよく見かけるようになった。車で旅行やレジャーをする際に自由に立ち寄れる休憩施設が増え、ドライバーにとっては大変便利である。
 この道の駅は、平成2年1月に広島市で開催された「中国地域づくり交流会」のシンポジウムのなかで「鉄道に駅があるように、道路の中にも駅があってもよいのではないか」との提案がなされたことがきっかけとなった。山口県、岐阜県、栃木県の3つの地域において仮設の休憩施設を利用した道の駅の実験が行われ、地域のコミュニティの活性化、特産物のPR等多くの効果が報告された。
 この実験結果を踏まえ、国土交通省では平成5年度から始まった第11次道路整備5か年計画の施策の一環として道の駅の設置を推進し、初年度全国の道の駅登録数は122か所であったが、現在は952か所まで増加している。県内には9月にオープンした「大館能代空港」を含め30か所設置されている。

(2)道の駅の「コンセプト」
 道の駅はドライバーが24時間利用できる「休憩機能」、道路や地域の情報を提供する施設としての「情報発信機能」、道の駅を接点に活力ある地域づくりを行う「地域連携機能」の3つの機能を基本コンセプトとし、この3つの機能による相乗効果から「地域とともにつくる個性豊かな賑わいの場」を創出することが求められている。例えば、道の駅には、特産物販売所、温泉施設、展示施設、体験型施設、キャンプ場などの施設が設置されている。そうした道の駅の特徴を生かしながら、趣向を凝らしたイベントを開催し、利用者と地域の人々がふれあう賑わいの場を提供している。

2 県内の道の駅の現状

(1)設置状況
 県内の道の駅の設置数は、全国で5番目に多い。北海道の110か所を筆頭に、岐阜県52か所、長野県41か所、新潟県34か所、秋田県、岩手県、兵庫県が30か所と続いている。10か所台の設置県が多いなか、30か所以上設置している県はわずか7県しかない。本県では積極的に道の駅の設置を進めてきたことが窺える。
 秋田県「観光統計」によると、平成21年の入込客10万人以上の施設(温泉・屋外入場無料施設を除く)は38施設あり、このうち19施設を道の駅およびその関連施設が占めている。道の駅は単なる休憩施設ではなく、人々が集まる場として地域連携機能が働いている。

(2)運営主体
 道の駅を設置するには、一般的に市町村等と道路管理者が互いに道の駅の施設計画等の調整を行い、全体整備計画を策定する。市町村等が設置申請者となり、地域振興設備の一環として特産物販売所やレストランの整備を行う一方、道路管理者は、駐車場や休憩設備の整備を行う。整備後、道の駅の基本コンセプトに適合した施設であると認められると国土交通省より登録証が交付され、開業への運びとなる。県内では平成5年4月に「たかのす」が第1号の登録を受けている。
 アンケート結果をみると、開業後の管理運営主体は、一部民間企業(2件)もみられるが、市町村が出資している第三セクター(15件)が半数と最も多い。これは、道の駅の施設の多くがもともと市町村等の公の施設であり、従来、そうした公の施設の管理運営主体は、「管理委託制度」に基づき地方公共団体の出資法人(2分の1以上出資)いわゆる第三セクターなど公共的団体等に限定されていた経緯に起因する。平成15年に地方自治法が一部改正され、「指定管理者制度」が導入されたことにより、株式会社、公益法人、NPO法人などの民間事業者も公の施設を運営することが可能になったが、制度導入後も引き続き継続して第三セクターが管理しているところが多く、依然公共的団体色が強く残っている。

(3)経営概況
 県内の道の駅の経営概況についてみると、21年度の平均年間利用客数は約25万人(回答16駅)、平均年間売上高148百万円(同16駅)となっている。売上高構成比では物販64.5%、レストラン24.0%、温泉施設1.7%、宿泊施設0.4%、展示施設0.2%、その他9.2%となっており、物販とレストランで全体の約9割を占めている。物販のうち約8割が地元産品(加工品を含む)と高い割合となっている。道の駅では地元農産物をはじめとする県内産の商品を多く取り扱っていることが分かる。
 来客層は県内客が65%、県外客が35%(回答17駅平均)と、県外からの利用客も比較的多い。「かづの」では自ら着地型旅行を企画し、大手旅行会社による観光ツアーの誘客に取り組んでいる。
 また、道の駅では収穫祭、開業祭、花火大会、盆踊り大会など各種イベントが開催されているが、主力商品である地元特産品の収穫時期や地域の行祭時に合わせてイベントを開催しているところが多い。地域の観光拠点として観光情報を提供するとともに、イベントを提供しながら地元特産品や文化をPRし、地域振興に深く係わっている。

3 道の駅の抱える課題

(1)売上高の確保
 アンケートの結果、道の駅が抱える課題として「売上高の増加」に関する回答が最も多かった。高速道路一部無料化などに伴う利用客減少の影響から経営に苦慮している道の駅もあり、売上高増加が課題であるとした回答が多かったものと思われる。
 「売上高の増加」、「利用客の確保」、「地域振興」を課題であるとした道の駅は、総じて①イベントを増やす、②オリジナル商品の開発、③PR活動の強化といった対応策を挙げている。

(2)冬期期間の野菜不足
 また、県内の道の駅が抱える課題にいくつか特徴が見られた。道の駅の農産物直売所では、例年、春先から秋口にかけて数多くの野菜、果物、花き等が店頭に並べられているが、冬場はそれらの商品がほとんどなくなり、乾燥野菜、キノコの缶詰、いぶりがっこ(漬物)など比較的長期間保存できる商品に代わってしまう。
 平成20年度の県産野菜出荷状況をみると、農協などを通じて出荷された野菜は、40,016tとなっている。このうち、7~9月に出荷時期が集中し、その出荷量は年間の約7割を占めている。
 一方、冬期野菜は、促成アスパラガス、山うど、ほうれんそうを中心とした野菜が出荷されているものの、20年度の出荷量は1,985tに止まり、冬場の出荷量が極端に少ないことが窺える。
 冬期期間の野菜不足の対応策として、以下の施策を講じるとしている。

(3)高速道路無料化の影響
 本年6月28日より始まった高速道路無料化実験の影響も出ている。国土交通省が高速道路無料化社会実験開始1か月後に発表した交通量調査によると、県内で無料化実験を行っている3路線全てにおいて、平日、休日とも実験前交通量の2倍を超えている。インターチェンジ出口付近に立地する道の駅の利用客が増加する傾向にある一方で、高速道路に並行して国道沿いに立地する道の駅では利用客が減少するといった影響が出ている。
 秋田~青森間の最短ルートで国道285号線のほぼ中間地点に立地する「かみこあに」では、社会実験開始後約3週間の利用客数は、前年同時期に比べ約30%減少した。同駅では「285号線を利用していたドライバーは無料化により、高速道路を使うようになった。特に営業車両の減少が目立っている」という。
 また、国道7号線沿いに立地する「岩城」や「にしめ」は平成19年から20年にかけて利用客が減少している。19年9月、秋田わか杉国体の開催にあわせ、日本海沿岸道路(岩城IC~仁賀保IC)が延伸・無料化され、国道7号線の交通量が減少すると同時に、道の駅の利用客も減少した。平成20年度の利用客数は、「岩城」では前年度比12%減、「にしめ」では同24%減と、ともに利用客数を落としている。
 今回の社会実験では、さらに無料区間(岩城~河辺JCT)が伸び、秋田自動車道も秋田中央IC以北は無料となっている。河辺JCT~秋田中央IC(普通乗用車ETC割引利用で平日昼間300円、休日昼間200円)の僅かな高速料金を支払うだけで、仁賀保IC~二ツ井IC間を通行することが可能になったため、県北方面、または、象潟方面に向かうドライバーは、より利用しやすくなった。
 「岩城」の支配人は、「国体が開催された年ほどの影響は感じていないが、このまま無料化が継続されるのであれば、高速道路はバイパス化してしまい、国道を走る車は、ますます少なくなるだろう」と危惧している。
 交通量減少の対応策として、以下の施策を講じるとしている。

(4)農家の高齢化問題
 県内の道の駅の課題として、農作物販売に係る農家の高齢化も挙げられている。農林水産省が平成17年に実施した統計調査「農林業センサス」(5年毎の調査)によると、秋田県の基幹的農業従事者(ふだん仕事として主に農業に従事している人)は45,993人で、このうち65歳以上の人は24,054人と、全体の52.3%を占めている。昭和60年では65歳以上の人は10,753人で、全体の13.6%にすぎなかったが、20年間で高齢化率が約4倍に拡大している。
 県内の農産物直売所の多くは、農協や各地域の直売組合によって組織されている。新鮮な野菜や果物等を安価に購入でき、生産者の顔が見えることから、消費者にとっては安心・安全で利用しやすい。しかし、農家の高齢化や地域の過疎化の影響から直売組合員が減り、農産物の出品量が減少している道の駅もある。
 昨今の雇用情勢悪化の影響から全国の新規就農者数は増加傾向にあるが、県内においては年間100人前後で推移しており、農業後継者の十分な確保までには至っていない。
 農家の高齢化の対応策として、以下の施策を講じるとしている。

4 地域連携した取組

 アンケート調査では、「各道の駅の特徴的な取組」についても尋ねてみた。
(1)じまんこ市場
 県南地域の道の駅から回答が多かったのが、「じまんこ市場」である。このイベントは、平成20年夏に発生した岩手・宮城内陸地震の影響で売り上げが落ち込んでいた湯沢市内の直売所を支援するため、「十文字」が道の駅の販売スペースを提供したことがきっかけとなり、県南の道の駅の連携が始まった。「十文字」が中心となり、「協和」、「かみおか」、「なかせん」、「雁の里せんなん」、「さんない」、「おがち」のほか、「おおがた」などが連携し、昨年から4~11月の間(8月を除く)、毎月1回各道の駅持ち回りで、イベントなどに合わせて開催している(今年は日程の都合上、10月30、31日の「なかせん」が最終回)。各駅から地域自慢の逸品を持ち寄って販売を行ったり、各地域の伝統芸能を披露したりと利用客の評判も良く、地域の活性化や情報発信に取り組んでいる。

(2)料理バトル
 また、由利本荘地域では、由利本荘市とにかほ市にある6つの道の駅が連携してイベントを提供している。由利地域振興局と道の駅が協力し、利用客が減少する冬期期間の対策として、今年2月に地域の食材を生かした「料理」バトルを開催した。第1回の「丼もの」対決が好評を博し、第2回は「定食」対決(6月)、第3回は鍋料理などの「あったかメニュー」対決(10月)と毎回テーマを変え、期間限定メニューの販売数を競うイベントを行っている。回を重ねる毎に参加者も増え、観光客誘致の一翼を担っている。

5 まとめ

 県内の道の駅が抱えている課題は多く、一つの道の駅だけでは解決できない問題もある。こうした課題を道の駅が地域連携をはかりながら、時には道の駅と自治体が協力しあい、改善をはかっていくことが重要である。
 例えば、秋田県の冬は雪に覆われ、冬期野菜の栽培に適さない土地柄ではあるが、自治体と道の駅が一体となって、農家へ冬期野菜の栽培を促し、年間を通じて安定した野菜供給ができれば、道の駅の利用客減少に歯止めをかけることができ、一方では新規就農者の増加につながり、地域振興に貢献できるのではないだろうか。
 また、それぞれの道の駅が、「特色」をより打ち出していくことも必要であると考える。道の駅のホームページ内で、イベントや観光情報の提供を行い、特産物の通信販売を行うなど情報発信に力を入れている道の駅もあれば、野菜ソムリエの資格を取得した店員が勤務する「十文字」や、里芋やそばのオーナーとなり、秋の収穫体験を楽しむ「農作物オーナー制度」を実施している「おおうち」などユニークな道の駅もある。「なかせん」では、地元産品への理解と親しみを深めるため、地元の小中学校の生徒に施設内にある米菓工場見学を実施している。子供たちが地域の文化や伝統産業に触れる機会を創出する「学びの場」として地域に貢献している。
 このように、道の駅が果たす役割はそれぞれ異なるが、「特色」を持つことは、その道の駅の「魅力」でもある。地域と一体となった魅力ある道の駅づくりに今後も期待したい。

(山崎 要)

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