機関誌「あきた経済」
円高の影響について
本年5月の連休明けから円高が進行し、8月末にかけて1ドル82円近辺までの円高となり、1995年4月の史上最高値(79円75銭)を15年ぶりに更新するのではないかと騒がれ、9月15日になって政府による円売・ドル買いの市場介入が、マ-ケットや輸出企業から催促される形でようやく行われた。その結果一時85円まで戻し一息つき、足元で円高は一服しているものの、依然1ドル80円台前半の水準で推移しており、輸出企業は海外移転の第3波に直面しているといわれている。(第1波は1985年のプラザ合意後、第2波は1995年の最高値をつけた後)
プラザ合意により急激な円高に見舞われて以降、1995年の史上最高値を経て、日本の産業界は25年間円高との長い戦いを強いられてきたともいわれるが、経済産業省と当研究所で行った「円高の影響」調査結果を紹介し、今般の円高の国内および県内企業への影響とともに、円高の推移・歴史を振り返ってみる。
1 今回の円高の背景・要因
1985年のプラザ合意(後述)以来、日本は何度も円高にさらされてきたが、今回の円高は従来と比べてその背景・要因に大きな違いがある。
今般の円高は、多くの国が、世界的な景気後退からの回復が遅れる中、自国経済を回復させるべく、自国の通貨価値を低めに誘導し、輸出の価格競争力を強めようとした結果、各国とも「通貨切り下げ(安)競争」を繰り広げ、日本の円だけが、消去法的に買われているもので、「受身の円高」とも表現されている。
すなわち、米国経済は、景気と雇用回復の両面で大きな懸念材料が残っており、景気の減速感の強まりにより、この11月に追加的金融緩和策を取らざるを得なかったほど回復が思わしくない。また、不況回復のため巨額の財政出動を行い、政策金利引下げも行い、財政出動の余力が乏しい欧米各国も、残された手段として自国の通貨安で輸出を拡大する手段に走った。さらに中国も好調な輸出を維持するため、自国通貨の下落を容認する、という図式の中、リスク回避のため円が買われるという、これまでの「日本が経常収支の大幅黒字の削減、輸入拡大、内需拡大等を迫られることと併せて進行した円高」と様相を異にする要因によってもたらされているものである。
消去法的に日本の円が買われている要因としては、①日本は、経常黒字を長期間続けている構造的な黒字国で、国際収支の赤字から通貨危機が発生する危険が小さく、外貨の資金繰りに苦慮する必要がないこと、②名目GDPの2倍にも達する国債残高があっても、ほとんどが国内貯蓄で賄われているため、財政危機が具現化するリスクはないこと、③超低金利であっても米欧国債の利回りも低下を続けており、価格乱高下りリスクを考慮すると日本国債の方が安全といえること、④日本はゼロ金利でもインフレ率もマイナスであり、実質金利は米欧よりも高いこと、などがあげられる。
2 円高のメリット・デメリット
円高は、デメリットだけでなく、当然メリットももたらす。
一般的なメリット・デメリットを簡単に整理すると、次のとおりである。
(円高のメリット・デメリット)
メリット
《産業界・企業》
・輸入原材料価格の低下のほか、原油価格低下による運送費や電気料の低下など、コスト削減効果が生じる。
・輸入業者は、商品仕入価格が下がるため、値下による販売促進に繋がる。
・M&A(合併・買収)や工場建設など海外への投資が安く行える。
《家計》
・海外ブランド品や食料品など、輸入品が全般に安く買える。
・原油の価格が下がるため、ガソリンや電気料などの負担が減る。
・海外旅行費用が安くなるほか、海外での買い物が安くなる。
デメリット
《産業界・企業》
・輸出メ-カ-は、製品価格が割高となり、海外での価格競争力は低下する。その結果、輸出の減少、収益ダウンにつながり、国内景気への悪影響が大になる。
※秋田県内電子部品業界への影響大
・出荷減少、製品価格値下圧力が増大する。
・雇用や賃金への影響が懸念される。
・輸入品と競合する製品の製造・販売業者は、輸入品との価格競争が激化。
価格の引下げ圧力が強まり、デフレの長期化も懸念される。
・外国人旅行者の減少。観光関連業者の売上げダウン
・株価の下落による資産の目減り、投資減少につながる。
・輸出企業の海外移転加速による国内産業の空洞化
《家計》国内景気後退の影響
・雇用や所得の悪化およびそれにともなう消費の抑制・減退
・株価下落による資産価値の目減り
家計にとっては、輸入食材・雑貨の価格低下による円高還元セ-ル等による還元、海外旅行に関するメリットがあり、直接的なメリットの方が大きいものと思われる。
しかし、円高の進展による国内景気の後退によってもたらされる、雇用や所得の悪化、資産価値の目減り等、間接的な後発的デメリットも考慮する必要がある。
また、秋田県にとっては、県のリ-ディング産業である電子部品業界への影響が大であるということが、一番大きなインパクト、デメリットになる。
秋田県の製造出荷額に占める電子部品業界の占める割合は(統計方法が変わった)平成17年から19年まで約4割を占めており、20年・21年はリ-マンショック以降の景気低迷でそれぞれ34.2%、29.5%とシェアを落としているが、依然として圧倒的なショアを占めている。
円高によって電子部品を組み込んだ最終商品の価格が相対的に高くなり、結果外国企業との価格競争力が低下することとなり、受注の減少、単価の引下げ要請等につながるという、間接的な影響が大きいものである。
なお、円高のメリットとして低下するはずの「原燃料」の価格は、アメリカの一段の金融緩和策によって投機資金の流入が拡大したことにより逆に高騰しており、現状円高のメリットにつながっていない。
3 産業界への影響
経済産業省の緊急ヒアリングと当研究所の調査結果から、実際にどれほど影響があるのか、見てみたい。
(1) 経済産業省の緊急ヒアリング(8/11~8/24実施)
中小企業を含む200社を対象に行ったものであるが、
・対ドルの円高で製造企業の約6割強、対ユ-ロでは約5割強が、「減益」
・1ドル85円の円高が継続した場合、 製造企業のうち4割が「生産工場や開発拠点等を海外に移転」、6割が「海外での生産比率を拡大」
・中小企業においても、1ドル85円の円高が継続した場合、約7割(下請中小企業の8割強)が「減益」
という、大変厳しい回答結果であった。
なお、このアンケ-トは8月24日までに実施し、同月27日に公表されたものであるが、悲鳴に近い回答結果であるにもかかわらず、また、トヨタで1円の円高で営業利益年間300億円のマイナス影響、ホンダでも同じく170億円の影響と公表されているにもかかわらず、上記の結果だけの公表で、コメントもなく、9月15日まで市場介入等の手立てを講じなかったことについて違和感を覚えるという関係者の声も多く聞かれた。
1994年度に18%だった製造業の海外生産比率(海外進出企業ベ-ス)は1ドル79円をつけた1995年以降急上昇、2001年に29%となってからは30%前後で推移してきたが、この回答結果からは海外企業の買収も含めて海外生産比率を再加速させる可能性が高まっていると言える。(トヨタ・日産・ホンダなど大手自動車メ-カ-は既に海外生産比率は50%を超えている。)
一方、円高のメリットとして海外企業の買収等、海外への積極的投資によってグロ-バル化を進めている企業も多い。
本年度上期(4~9月)の海外企業に対するM&A(合併・買収)は過去10年で最多の251件で前年同期比58%増、買収総額も54%増の1兆5,300億円となっている。(米国調査会社トムソン・ロイタ-社発表)
なお、東京商工リサ-チの調べによると、本年1~10月の「円高」関連倒産は、前年同期比3倍増の58件と急増し、「円高はジリジリと企業環境の足元を蝕み始めている。」と同社ではコメントしている。
(2) 当研究所の調査(9月上旬~中旬)
次に、当研究所が9月上旬から中旬にかけて県内企業231社を対象に行った調査結果では、「悪い影響」があると回答した企業が87社(37.7%)、「良い影響がある」が31社(13.4%)あった。
一方「影響がない」と回答した企業は43.7%に当たる101社であった。
原木や部品の原材料を輸入している企業では「良い影響」という回答になっているが、全体で見るとやはり悪い影響デメリットの方が大きいと言わざるをえない。
業種別では、製造業では半数を超える企業が「悪い影響」との回答である。このうち、秋田県製造業の代表業種である「電子部品」と「機械金属」では、それぞれ62.5%、72.2%と高い回答であり、円高の影響を受けやすいことを表わしている。 回答のうち、「悪い影響の理由」については、コストダウン要請が圧倒的に多く、次いで「為替差損の発生」、「輸入品との競合激化」、「既存契約のキャンセル・条件変更」と多岐にわたっているが、「その他」の回答も20.7%と高い回答割合となっている。
直接的な影響はないものの、今後景気が悪くなり、間接的に自社にも悪影響が及ぶことが懸念されるという回答が多かった。
また、22年下半期の「想定為替レ-ト」についても質問し、ドルレ-トについては計24社から回答いただいた。
回答結果によると、「85.0~87.4円」から「90.0~92.4円」の3レンジ内のレ-トを7割の企業が想定している。
したがって、現在足元で円高は一服しているものの、1ドル85円以下の水準では、厳しい状況は続くものと思われる。
ちなみに、TDKは今年度第3四半期以降の想定レ-トを1ドル87円から80円に、ニプロも1ドル90円から80円に、それぞれ修正変更と発表している。
4 為替レ-ト(円)の適正水準は
今回の円高は「15年ぶりの円高」といわれるが、それでは何円が適正な水準か、為替の望ましい水準はいくらかということになる。
適正な水準を測る方法いろいろあるが、そのうち代表的なものとして次の2つの方法がある。
Ⅰ 個別商品比較法-購買力平価法(ビックマック指数)
同じ商品であれば、世界中で同じような価格になるという考え方に基づく。代表的な商品としてマグドナルドのビックマックで比較する方法が有名である。
例えば、日本で320円、アメリカで3.73ドルで買えるとすると320÷3.73⇒1ドル=85.79円が適正水準となる。
同じくスタ-バックスのコ-ヒ-では1ドル=148円が適正水準となる。
このように、2つの商品だけをみても大きな開きがあり、個別商品でみてみると、競合状況や合理化の度合いや従業員の賃金水準等の違いで、適正価格は導きだせないという結論にならざるを得ない。
Ⅱ 実質実効レ-ト
個別の商品でなく、また2国間だけの比較だけでなく、多くの国の間の物価上昇率を計算し、貿易量も考慮に入れて、ある時点からの為替変動率を同期間の相場にあてはめて、現在の均衡レ-トを割り出すもの。
日本銀行が発表しているレ-トは、2005年を基準(指数100)とし、各時点の日本円の購買力を他国通貨の購買力と比較するもの。値が大きい方が「円高・外貨安」となる。
実質実効レ-トで計算すると、9月末現在では104.36という計算になるが、プラザ合意(1995年4月)当時は151.11であり、これと比較すると、まだ3割以上の円安水準であるという計算になる。
トレンドを見るという意味では、この実質実効レ-トは有効であるが、個別商品比較法と同様、あくまでも”計算上”の数値であり、実際の為替相場は、いろいろな観測・思惑・心理が交錯し、実態経済の規模より流通している資金が数十倍にもなっている“マネ-ゲ-ム“の世界でもあり、計算値を目の前の場に活かす、反映させるという訳にはいかない。
やはり結論としては、何が適正な為替レ-トの水準かということを人為的に決めることは難しいということになる。
5 為替介入の効果
今回の円高で、政府は9月15日に、1日当たりとしては過去最大の2兆1,249億円の円売り・ドル買い介入を行い、一時1ドル85円まで戻すこととなったが、その後の為替相場の推移をみるとその効果は限定的・一時的であったといわざるを得ない。
これは、世界の1日の貿易額は3兆円前後であるのに対して、1日の為替の取引額は370兆円で、うちドル・円取引額は50兆円(BIS-国際決済銀行の調査)もあり、50兆円に対する2兆円の介入では、また一国の単独介入では効果は限定的・時限的とならざるを得ないことによるものである。
ちなみに、2003年から2004年にかけて日本政府は累計35兆円の市場介入を行ったが、当時の市場規模が現在の半分であったにもかかわらず、この時も結局は円高トレンドは変えられなかったという経緯にある。
6 円相場の歴史(円高との戦い)
1871年(明治4年)制定の「新貨条例」により「円」が誕生し、「円とドル」の為替相場が始まった。(アメリカのドルの誕生は1785年)
『日本銀行百年史』に載せられている為替相場の始まりは1874年(明治7年)であるが、太平洋戦争開始直前までの相場の主な推移は次のとおりである。
なお、1874年当時は各国とも「金本位制」を採用していたため、当時の相場は「(1)円金貨に含まれる金含有量」と「(1)ドル金貨に含まれる金の含有量」の比較から算定されたシンプルなものである。
なお、「金本位制」は1929年以降の世界恐慌の中で各国において次々に廃止され、日本は1931年に廃止している。
(為替相場)
1874年(明治7)
1ドル0.984円
1897年(明治30)
1ドル2.028円
1924年(大正13)
1ドル2.382円
1930年(昭和5)
~1931年(昭和6)
1ドル2円強に戻る
1931年(昭和6)
冬以降大幅円安に
1932年(昭和7)
12月1ドル5円に
1941年(昭和16)
太平洋戦争開始直前1ドル4円25銭
続いて、戦後1949年から史上最高値をつける1995年までの円相場の主な推移・出来事は次のとおりである。
1949年~1971年 1ドル360円、固定相場:ブレトンウッズ体制[金・ドル本位制時代]
1971/12~1973前半 1ドル=308円、固定相場:スミソニアン体制
1973年2月変動相場制への移行、直後1ドル260円
1977年~1978年 1ドル200円を突破
1978年末 1ドル180円
1979年~1985年 1ドル200~250円で推移(円安)
1985年 9月22日 プラザ合意、G5(日本・アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス)がニュ-ヨ-クのプラザホテルでドル安で合意。1ドル235円から翌日20円下落
1985年末 1ドル200円
1986年末 1ドル160円
1987年 2月22日 ル-ブル合意、G7(G5+イタリア・カナダ)が、ドル下落に歯止めをかけるため「為替相場の現行水準の安定」で合意。ただし、政策協調の足並みに乱れ-12月のクリスマス合意で再確認されるまで1ドル=120円台の水準までドルが売られ続けた。
1995年4月19日 1ドル79.75円、史上最高値
ここで、それまで基軸通貨として「強いドル(ドル高)政策」を堅持してきたアメリカがこれを放棄したという画期的な歴史の転換点として、度々とりあげられる1985年の「プラザ合意」について、その背景等について敷衍してみたい。
まず、当時の背景としてあげられるのが、アメリカの巨額の貿易赤字と財政赤字(1985年のアメリカの経常赤字は史上最高となる1,177億ドルを突破)のいわゆる「双子の赤字」を抱え、日本やドイツとの貿易赤字が拡大する一途であったことである。
「日米経済戦争」とも呼ばれる日米間での貿易摩擦(米独間でも)が発生しており、ドル安によってアメリカの輸出競争力を高め、アメリカの貿易赤字を減らすということで、G5(日本・アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス)各国で合意したものである。
プラザ合意によって円高と内需拡大を余儀なくされた日本は、円高に耐えかねた輸出企業(自動車・電気製品等)の海外進出が進み、産業の空洞化が叫ばれ、一方、内需拡大施策を求められた日本政府は、公共事業の拡大に加えて、リゾ-ト法の成立による大型リゾ-ト開発推進を進め、併せて金融緩和も進めすぎたため、バブルを招来させ、現在まで続く長期不況の遠因になっていると言われている。
なお、このプラザ合意による円高が、秋田県の金属鉱山の完全閉山につながる原因にもなっている。円高によって、鉱山から出荷する価格である建値が、外国の鉱山との価格の競争力で相対的に割高となり、採算が取れなくなり、次々に閉山に追い込まれ、昭和30年から黒鉱で隆盛を極めた本県鉱山も、プラザ合意から9年を経た平成6年(1994年)3月に1200年の歴史を閉じるということになったのである。
1995年4月19日に1ドル=79円75銭の最高値をつけて以降、円高・円安の繰り返し・揺り戻しが繰り返されてきたものの、トレンドとしてはジリジリとした円高が続いている。
したがって、プラザ合意から25年間、日本の製造業は円高との戦いを強いられてきたといっても過言ではない。
7 輸出依存度(名目輸出/名目GDP)
日本の輸出依存度の推移は次のとおりであり、現在の依存度は、輸出に頼って黒字をため込んでいると非難されたプラザ合意の当時の15.1%より高く、円高の影響度は高まっているといえる。
(輸出依存度)
1985年4~6月※プラザ合意前 15.1%
2004年 12.3%
2006年 14.9%
2007年 16.0%
2008年 16.1%
資料:総務省統計局
※参考 (G7の輸出依存度 2008年)
ドイツ 39.9%、カナダ 29.9%、 イタリア 23.7%、 フランス 21.1%、 イギリス 17.1%、 アメリカ 9.1%、 日本 16.1%
ドイツ、イタリア、フランスはEUに加盟している国どうしの輸出入が主であり、域内のやりとりに近く、また、カナダはほとんどがアメリカ向けということで、先進国では日本が実質一番輸出依存度が高いといえる。
8 最後に
年内に円の史上最高値を試すという見方もあり、円の先高観には根強いものがある。
今回の円高局面でいち早く生産の一部海外移転を発表する企業も現れた。
日本の製造業はトヨタのカイゼンに代表される血のにじむようなコスト削減に加えて、生産性の向上等経営努力に努め、これまでの円高局面を乗り越えてきたように、円高耐久力が増している。しかし、これまで以上の円高に進んだ場合、企業のコスト削減にも限界があり、前述の経済産業省のアンケ-ト結果からも、現地生産の拡大・加速化は避けられない。
生産の海外移転は低付加価値品から産業素材など中核部門へと広がり、「新次元に入りつつある。」ともいわれる。 従来から、産業界には「日本企業には高い法人税、労働規制の強化、二酸化炭素の25%削減等、世界で最も厳しいハンディを強いられている。」との声がある。
コスト削減の限界点を超えた企業の海外移転が加速しないよう、競争相手国と同じ競争条件の整備の迅速な実行が望まれる。
現地生産拡大にともない国内産業が空洞化し、「去って初めて、自動車産業等が日本の雇用や経済にいかに貢献していたかを実感するのでは遅い」のである。
加えて、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)交渉の遅れ等によっては、関税障壁の高さから、競争力のさらなる相対的低下を招き、空洞化が加速されることになる。
農業を初めとする国内産業の保護・強化策も含めた経済戦略の早期策定・実行も急ぐ必要がある。
一方、国内の生産と雇用を守るという9月に策定した政府の新成長戦略の迅速な実行も喫緊の課題である。
円高による輸入コストの低下を武器とした新たな事業の起業、為替相場に左右されない内需型産業の育成、潜在的需要が大きい分野(子育て、医療・介護、環境、情報通信、農業、林業等)の拡充等である。
昨年来、日本経済はデフレが続いているが、拱手していては、今後少子高齢化の進展=生産年齢人口の減少によって、内需(消費)不振によるデフレの継続も懸念される。
政府の新成長戦略の主眼も「デフレ脱却」であり、デフレを脱却するために何が必要かの議論もほぼ出尽くしており、後は実行あるのみといえよう。
(松渕秀和)