トップ機関誌「あきた経済」トップ第26回 秋田県消費動向調査

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第26回 秋田県消費動向調査

・ 「昨年と比較した暮らし向き」は、平成20・21年に最も高い割合であった「悪くなった」世帯割合が2年連続で低下した代わりに、「変わらない」世帯が過半数となり、平成19年以降続いていた悪化傾向に4年ぶりに歯止めがかかった。
・ 「昨年と比較した収入」は、昨年調査では「減少した」世帯割合が最も高かったが、今年は「変わらない」世帯割合が昨年よりも大幅に上昇して最も高くなった。所得環境は4年ぶりに下げ止まったといえるが、依然として厳しさが残っている。
・ 薄型テレビ、冷蔵庫、エアコン、乗用車など、政府による購入支援策の対象商品の購入割合は全て昨年調査を上回っており、政府支援策の実施効果がみられたという結果となっている。

《調査要領》
 調査対象:県内世帯1,540世帯
 回収数:900世帯(回収率58.4%)
 調査方法:秋田銀行の本支店を通じて依頼
 調査時期:平成22年10月
  BSI:「増えた」または「良くなる」-「減った」または「悪くなる」 ×100
              回  答  数

1 暮らし向きについて

(1)昨年と比較した暮らし向き
―悪化傾向、4年ぶりに歯止め―

 昨年と比較した暮らし向きについて、「変わらない」とする世帯(55.3%)が半数を超えた。また、「悪くなった」世帯割合は、平成20年(51.0%)をピークに低下が続いて、今回は38.4%となり、暮らし向きの悪化傾向に歯止めがかかった。ただし、依然として厳しい状況に変わりはない。
 年代別では、全年代で「変わらない」が最も高い割合となった。29歳以下(67.7%)と70歳以上(66.7%)で6割台と高く、収入の低い年代では暮らし向きに大きな変化がみられなかった。一方、「悪くなった」世帯割合は、昨年調査(平成21年10月実施)より減少したものの、40~60代で4割台に上り、特に50代(47.8%)で最も高くなった。働き盛りの年代の暮らし向きは、今も厳しさが残っている。
 暮らし向き得点は、今年は△0.41と、昨年(△0.62)を0.21ポイント上回った。

(2)今後1年間の暮らし向き
―「変わらない」予想世帯が6割超―

 今後1年間の暮らし向きについて、「変わらない」(60.4%)が、最も割合が高くなった。また、「悪くなる」世帯割合は34.3%と、平成20年調査(48.3%)をピークに減少が続いている。ただし、「良くなる」とする世帯割合(5.3%)も昨年調査を0.3ポイント下回っており、暮らし向き予想に改善の兆しは見えない。
 住宅ローン(以下、ローン)の有無別では、「悪くなる」世帯割合は、ある世帯(41.4%)がない世帯(30.9%)を10.5ポイント上回った。双方とも現状維持を予想する割合が最も高いが、ローンのある世帯の方が、より厳しく見通している。

2 収入について

(1)昨年と比較した世帯収入の増減
―所得減少世帯割合、4年ぶりに低下―

 昨年と比較した収入は、「変わらない」世帯割合が45.3%と、昨年調査(29.8%)よりも15.5ポイント上昇した。次いで、「減少した」が、40.5%となった。収入減少世帯の割合は、平成19年以降、増加を続けて昨年調査で61.5%を占めたが、今年は4年ぶりに低下に転じた。所得環境は平成19年から悪化が続いて、昨年に一層深刻さを強めたものの、今年はどうにか持ち直して、4年ぶりに下げ止まっている。
 年代別にみると、年代が上がるにつれて「増加した」世帯割合は低下し、70歳以上では皆無となり、「変わらない」と「減少した」に二分された。ここでも50代では「減少した」(61.9%)が、「変わらない」(31.2%)の約2倍となっており、所得環境の悪化傾向が続いている。
 収入得点は△0.38であるが、昨年より大きく上昇し、4年ぶりに上向いた。

(2)来年の収入の増減
―「変わらない」予想世帯が最多―

  来年の収入の増減は、「変わらない」と予想する世帯割合(58.2%)が最も高く、昨年調査(50.7%)を7.5ポイント上回った。「変わらない」のほか「増加する」も昨年を上回った一方、「減少する」(34.5%)は3年ぶりに減少した。平成19年から続いていた所得環境見通しの悪化傾向に、ようやく歯止めがかかったが、大幅な改善とはいえず、依然として低水準が続いている。
 ローンの有無別にみると、「悪化する」は、ローンのある世帯(39.8%)がない世帯(32.0%)を7.8ポイント上回るなど、より厳しい見通しをしている。

3 生活費について

(1)1か月あたりの生活費
―平均生活費は180千円、前年比減―

 1か月あたりの生活費について、昨年調査と比べて、「10~15万円」が横ばい、「25~30万円」が3.0ポイント低下した以外は、いずれも上昇した。その結果、生活費20万円以下の世帯割合は65.3%で、昨年調査(63.5%)を1.8ポイント上回った。昨年、節約努力が長引いた疲労感からそれまで続いていた生活費の低下傾向は増加に転じたが、今年は所得の伸び悩みから、再度減額となった。
 ローンの有無別では、ローンのある世帯で「15~20万円」(25.4%)の割合が、ローンのない世帯では「10~15万円」(32.1%)の割合が最も高くなった。総じて、ローンのある世帯が、ローンのない世帯よりも生活費の水準が高い結果となっている。
 1か月あたりの平均生活費は180千円で、昨年調査(183千円)を3千円下回った。年代別では、50代(205千円)が唯一200千円を上回り、次いで、40・60代で190千円台となった。昨年調査と比べて、60代(193千円)で9千円減、70歳以上(171千円)で10千円減と、高齢者層での大幅減が、平均生活費全体の減少に繋がっている。年金や介護保険、高齢者医療制度など先行きが今一つ不明瞭であることも影響して、高齢者層は生活費を抑えて将来に備えているようだ。

(2)昨年と比較して支出が「増えた」費目・「減った」費目
―「水道光熱費」が猛暑により支出増―

 昨年と比べて、支出が増えた費目としては、割合が高い順に、「水道光熱費」(11.4%)、「住居費」(10.7%)、「保健医療費」(10.4%)となった。今夏は記録的な猛暑となったため、エアコン使用による電気代がかさみ、「水道光熱費」への支出増加に繋がっている。
 「住居費」は、昨年調査(4.3%)と比べて、2倍以上の伸びとなった。今年は政府による住宅ローン減税の拡充や住宅エコポイント制度に加えて、県でも住宅リフォーム支援事業を実施しており、住宅購入やリフォームの好機となっている。「住居費」の支出拡大には、これらの施策も寄与したものと思われる。
 昨年よりも支出が減った3大費目は、3年連続で、「外食費」(17.5%)、「旅行・レジャー費」(14.6%)、「貯蓄」(14.2%)の順となった。
 景気後退を機に強まった内食傾向は今も継続しており、収入が伸び悩んでいるなかで、外食費の支出減が続いている。また、「旅行・レジャー費」は、昨年の高速道路のETC割引に続いて、今年は6月末から高速道路無料化の社会実験が実施されているため、支出減の要因の一つとなっていると考えられる。

(3)今後の家計支出
―家計引き締め傾向はやや弱まる―

 今後の家計支出について、「引き締める」世帯の割合は、72.9%となった。昨年調査(74.1%)を1.2ポイント下回ったものの、依然として高い割合となっている。前記の2(2)のとおり、来年の所得環境については4年ぶりに下げ止まりが見込まれるが、悪化が長く続いたため水準自体は低いことから、引き続き家計抑制意識は強く、回答者の財布の紐は固く締められたままになりそうだ。
 年代別では、「引き締める」は40代(81.7%)で最も高く、30代以下の年代でも75%台と割合が高い。50代以降では、年代が上がるに連れて割合は低下し、60代で61.9%、70歳以上では27.1%となった。70歳以上では「変わらない」とする割合は72.9%と高く、昨年との収入が変わらない世帯割合も5割を占めていることから、回答者に年金生活者が多く、今後の家計支出についても現状のままとする傾向が強い。
 家計支出を引き締める理由としては、「所得の減少または伸び悩み」(58.7%)が最も割合が高くなったが、昨年調査(67.3%)よりも8.6ポイント低下した。また、「生活の先行き不安」(55.0%)も2.8ポイント低下した一方、「貯蓄を増やす」(30.5%)は8.7ポイント上昇した。所得の伸び悩みから、回答者は支出を切り詰め貯蓄に回しているようだ。

4 耐久消費財について

過去1年間に購入した耐久消費財
―購入支援策実施効果が鮮明―

 過去1年間に耐久消費財を購入した世帯の割合は70.7%で、昨年調査(67.1%)を3.6ポイント上回っている。
 年代別に購入割合をみると、30・40代で7割を超え、昨年調査と比べても、他の世代よりも伸びが大きくなっており、活発な消費行動がみられる。
 購入した耐久消費財としては、割合が高い順に「薄型テレビ」(55.2%)、「携帯電話・PHS」(25.9%)、「乗用車」(23.5%)で、昨年と同じ順となっている。「薄型テレビ」は、昨年調査(38.5%)を16.7ポイント上回っており、地上デジタル放送への完全移行が来年7月に迫っているため、購入割合は急激に伸びた。
 エコポイント制度の対象商品をみると、「薄型テレビ」のほか、「冷蔵庫」(13.7%)は1.3ポイントの上昇、「エアコン」は今夏の猛暑の影響もあり3.2ポイント上昇と、いずれの購入割合も昨年調査を上回っている。また、「乗用車」も昨年調査(21.4%)を2.1ポイント上回った。家電エコポイント制度やエコカー減税・補助金制度導入効果から、対象商品の購入割合はいずれも昨年調査を上回っている。所得の減少には歯止めがかかったものの、所得環境は厳しい状況が続いているなか、制度の導入が、消費者の購買意欲促進に繋がったようだ。

(相沢 陽子)

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