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経営随想

アウトインからインアウトへ

近藤 和生
(エイデイケイ富士システム株式会社 代表取締役)

 当社は、地方分散型ソフトベンダーとして、1984年に株式会社ADKソフト開発研究所としてスタートし、‘86年4月には秋田テクノポリス地区七曲臨空港工業団地進出第1号企業として操業を開始いたしました。以来、時代が求める情報化に貢献する「技術者集団」を企業目標として、28年間事業を推進してまいりました。
 この間、富士電機および富士ファコム制御を始めとする大手エンジニアリング会社から、社会インフラシステム(電力給配電システム・上下水道プラントシステム等)・産業基幹システム(鉄鋼・自動車・半導体製造・流通産業等)分野において日本経済を牽引する大手企業のソフトウエア受託開発や企業基幹業務システム、社内イントラ構築等を行い、また、地域情報化事業ではITコーディネータの育成を図るなど、産学官連携による地域情報化事業やプロジェクトに積極的に関わりながら、地方自治体基幹システム・学校教育システム・地元企業基幹システムの開発等も行ってまいりました。‘04年には中国大手情報会社との合弁で、中国北京に北京亜数富士信息系統有限公司を立ち上げ、北京・大連の2か所に海外開発拠点を作り、複数の開発拠点におけるシステム分散開発を進めてまいりました。

 国内の情報産業は‘90年代半ばから2000年代にかけ順調に成長を遂げてきましたが2002年のITバブル崩壊以降、安定成長期に入り‘08年のリーマン・ショックを経て、厳しい市場環境に直面しています。
 また、日本経済全体としてはリーマン・ショックによる世界的な経済変動の影響を受け、さらに、社会価値観の変化と相まって、官民共に自らの事業改革に迫られ、民間企業はもちろん国や地域社会も、世界との競争力や社会・企業価値の向上を目指し、様々な体質改善を行ってきました。
 その最中に発生した東日本大震災は、日本経済に対して、さらに大きな試練を与えています。
 今、市場環境は構造的な変化が生じ、徹底的なコスト競争力の追求・グローバル化への加速等、明らかに産業全体の潮目が変わってきました。さらに、少子高齢化の進行により、地域や国全体の仕組み(構造)を組みなおさなければならない状況に直面しています。

 今般、企業(団体)が事業改革を進めていく為のIT戦略では、更なる付加価値向上を求め、そして、それらを実現するノウハウのシステムを我々ソフトベンダーに求めています。
 また、昨今『クラウド』が注目されていますが、ユーザー企業(団体)における情報システムは、『作る』から『使う』へのパラダイムシフトが、一段と加速すると思われます。
 当社は、これまで、「顧客固有のニーズに対応することで、顧客へ価値を提供すること」に注力し、「国内分散・海外分散開発でソフトウェアトータルQCDを提供する開発ノウハウ(実現力)」を企業価値としてきました。その結果、当社は、受託開発型のサービス提供の比率が高く、所定の開発要件に基づき、人的工数を投入することで開発を進める労働集約的な性格が強い企業になりました。

 今、多くのユーザー企業(団体)がこれまで以上に、急激な事業環境変化への対応を迅速化し、自らの改革に取り組んでいます。その中で、「社会・産業構造変化に伴う、情報サービス市場の構造変化に、いかに対応していくか」が、当社の今取り組んでいる大きな課題です。
 それは、
① 「受託開発型サービスからサービス提供型モデルへのシフト」
② 「労働集約型ビジネスモデルから知識集約型モデルへのシフト」
③ 多重下請構造から水平分業型へのシフト」
 顧客や競合との関係では、
① 顧客従属型からパートナー型へのシフト」
② 「域内・国内競争から域外・国外競争へのシフト」
これら5つの課題に対応すべく「アウトインからインアウトへ」をテーマに、企業の構造改革(ビジネスモデルの転換)に取り組んでいます。

 当社は‘09年創業25周年を機に、自社の資産総棚卸を行い、独自のプロダクトやサービスを提供するために、自社が保有するノウハウや経験知の体系化を図り、知識集約型ビジネスモデルへの転換の挑戦を始めました。
 当社の知識・経験の特徴は、①産業・社会インフラ分野におけるプラントシステムの監視・制御技術 ②ネットワーク・Web開発技術 ③ソフト開発トータルQCD実現力(国内外分散開発)です。
 一方、社会が抱える大きな共通課題は環境問題ですが、当社は自社の持つその資産(知識・経験の特徴)を、環境課題を解決する為の手段として特徴付け、情報産業の担い手として、ICTを駆使した環境ソリューションを開発・提供し、企業の競争力を向上させるという目標を掲げました。
 そして、‘11年には環境ソリューションを中心に、様々な組織・個人が協力して環境問題に取り組む
 【Green Market(https://www.green-market.jp)】を立ち上げました。
 ここでは、当社やパートナー企業が開発・販売する環境に配慮した商品の紹介や「エコアクション21」活動を支援するツール、また、各企業が持っている資産(技術・経験等)を結び付けた新たな商品開発や商品紹介を行っています。
 まさに、当社が、協業型ビジネス・パートナービジネス・市場への提案型ビジネスを実現するための場です。
 また、‘11年11月には、自社のソフト開発・商品開発で培った問題解決支援ツール『セイカ ミチシルベ』を中小企業展で、12月には仙台のエンジニアリング会社と協業で開発した、オフィス環境改善商品『Office-eye』を環境展示会「エコプロダクツ2011」に出展いたしました。当社のこの2年間の取組みの成果の一部である2つの商品は、いずれもクラウド仕様となっています。

 これからの時代はユーザーとの協業・同業との協業・異業種との協業により、それぞれの企業が持つ資産やノウハウを結び付け、より競争力の高い商品の開発とユーザー企業の競争力を上げるシステムの「提案力と実現力」を磨いてゆくことが、企業成長のカギととらえています。
 少子高齢化率・人口減少率トップの秋田県、市場縮小や雇用の減少が課題です。
 これまで、地域内だけにとどまらず地域外・国外を視野に入れながら、秋田の企業として、安定した雇用の場をどのように作っていくのかを考え、また、多くのユーザー様のご支援いただきながら25年が過ぎました。
 今、時代の潮流の節目に当たり、当社は新たな企業競争力向上を目指し、責任ある秋田の企業の一員として、次の一歩を踏み出しています。

会 社 概 要

1 社  名 エイデイケイ富士システム株式会社
(通称ADK富士システム株式会社)
2 代表者名 代表取締役 近藤 和生
3 本社所在地 〒010-0000 秋田市手形新栄町2番58号
4 電話番号 018-835-5404
5 FAX番号 018-832-6078
6 設立年月 1984年6月
7 資本金 8,000万円
8 年  商 10億2千万円(2011年9月期)
9 従業員数 124名
10 事業内容 受託ソフトウエア開発、システムインテグレーションサービス
11 社  是 『己を尽くす』
・『ADFは時代が求める情報化に貢献する「技術者集団」となる』
・『ADFは常に新しい技術や経営手法にチャレンジする』
・『ADFは無限の可能性を追求していく』
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