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本県市町村財政の現状(その1)

 「疲弊する自治体財政」ということが、しばしば聞かれるが、それでは、実際の財政状況はどのような状態にあるのだろうか。本稿では2回に分けて、本県市町村財政の現状分析を試みた。本号では、財政規模ならびに性質別の歳出状況をもとに分析を加え、次号で、各種指標での比較を行ったうえで、地方債と積立基金の状況をみることとする。

1 はじめに

 今回の現状分析に当たっては、公表された直近の決算である平成22年度決算と、本県における平成の大合併が終了した初年度の決算である18年度決算を比較した。ただし、次号の健全化判断比率については、「地方公共団体財政健全化法」に基づく最初の試算となった19年度との比較である。また、実際の歳出や歳入の総額では、殆どの項目で全25市町村中、秋田市が最多となるなど行政規模(人口)に準じた結果となることから、比率や指数を除いて大部分について人口一人当たり、もしくは千人当たりでの比較も行った。

2 財政規模

 22年度の歳入総額、歳出総額は殆どの市町村で18年度対比増加しているが、これは三位一体改革で減少した地方交付税が国の政策変更から20年度以降増加に転じた影響が大きい。また、歳入、歳出とも多い5市、少ない5町村が、ほぼ人口の多少と重なっており、財政規模はおおよそ人口に比例しているといえる。
 そこで、これを人口一人当たり(以下、一人当たり)に引き直すと、また違った風景が見えてくる。一人当たり歳入では町村平均が市平均を171千円上回り、歳出も154千円上回っている。最も多いのが、歳入、歳出とも人口では24番目の東成瀬村であり、最も少ないのが秋田市で、上位5団体全てが町村で、下位5団体のうち4団体を市で占めているというのも特徴的である。全国的にも、自主財源の少ない小規模町村ほど、主に使途を特定して交付される国・都道府県支出金(補助金等)の影響が強く出て、一人当たり決算額は大きくなる傾向がある。
 職員数が1,000人を超えているのは秋田市、横手市、由利本荘市、大仙市の4市である。羽後町等のように職員数の適正化に前倒しで取り組んできた自治体もあり、この期間の減少数(率)だけでは、取り組みの強弱を判断できない部分もあるが、全市町村とも、19年3月に総務省から求められた、いわゆる「集中改革プラン」に基づいて定員管理の適正化に取り組み、職員数の縮減を図っている。
 人口千人当たり職員数で最多が藤里町で約17人、最少が鹿角市の7人である。

3 性質別歳出の状況

 以下では、歳出の経済的側面や効果を判断できる性質別歳出をみてみる。
(1) 義務的経費[人件費、扶助費、公債費]
 義務的経費は18、22年度とも、秋田市が最多で上小阿仁村が最少という構図は変わっていない。全体では110億円の増加となっているが、人件費で80億円程度、公債費で9億円圧縮しているものの、扶助費が200億円近く増加しており、生活保護や児童福祉などの扶助費の増加が義務的経費を押し上げ、市町村財政の余裕度をなくす要因となっていることが良く分かる。総額の増加は11市3町だが、最も増加したのが秋田市で62億円増。人件費と公債費はほぼ横ばいだったが、扶助費60億円の増加が大きかった。最も減少したのが、八峰町で2億6千万円減。扶助費は1億円増加したものの、人件費と公債費の減少がそれを上回った。
 一人当たりでは、総額が最多の秋田市は平均以下に収まっている。増加しているのは全ての市と5つの町村で、この期間に繰り上げ償還を積極的に行って公債費を大幅に減らした大潟村など7町村が減少している。
<人件費>は秋田市が微増だった以外は、残る全24市町村で減少した。最も減少したのが職員数を秋田市以上の237人削減した由利本荘市で約14億円減、次いで大仙市の10億円減(後記、補助費等参照)で、この2市が10億円以上減少させた。
 一人当たり人件費では最高が大潟村で、最低が鹿角市となった。秋田市、湯沢市、仙北市の3市が増加し、残る22市町村が減少している。最も減少したのが東成瀬村で約2万円減、次いで井川町、上小阿仁村の減少幅が大きい。
<扶助費>は秋田市が最多で、大潟村が最少となっているが、全市町村で増加している。最も増加したのが、秋田市で60億円増。増加額の少なかったのが井川町や小坂町、上小阿仁村の約5千万円増である。
 一人当たり扶助費が最も多かったのは鹿角市で約9万円。最少が井川町の3万6千円となった。町村の生活保護費は県で負担していることから、市の負担が重くなっている。
<公債費>では、増加が5市3町で、減少した市町村が多かった。最も増加したのが、将来負担の軽減を図るため、地方債残高の減少に力を注ぎ、繰り上げ償還を積極的に行っている由利本荘市で14億円増。減少したのが横手市で13億円減である。
 一人当たり公債費は平均で67千円。市(65千円)より町村(87千円)で一人当たりの負担が重くなっている。最も多かったのが東成瀬村で唯一20万円を超えている。一人当たり負担が10万円を超えているのは、他に上小阿仁村、藤里町、由利本荘市、仙北市である。全体ではほぼ横ばいだったが、増加が9市4町、減少が4市8町村となった。最も減少したのが大潟村で半減している。

(2)投資的経費[普通建設事業費、災害復旧事業費等]
 投資的経費総額では、18、22年度とも最多が秋田市で最少は八郎潟町だったが、これは、普通建設事業費でも変わらない。増加したのは7市9町村で、市は半分が減少しているのに対し、大半の町村が増加させている。増加額の大きかったのは、秋田市と横手市でそれぞれ40億円近く増加している。
 一人当たり投資的経費では、減少したのが5市2町で、大部分の市町村が増加させている。一人当たり普通建設事業費では、大潟村が国の補助金で産業振興のための米粉活用プロジェクト(全体事業費約4億円)を実施したことから、補助事業費を18年度のゼロから237千円に増加させ、増加幅が最大となっている。
 また、東成瀬村は国庫補助事業の終了にともない、新たに実施した公共事業については過疎債を利用した単独事業で行ったことなどから、補助事業を最も減少(123千円減)させた一方で、単独事業を最も増加(234千円増)させるなど、特徴的な動きをしている。

(3)その他の経費[物件費、補助費、積立金等]
 その他の経費では、秋田市が最も多く、上小阿仁村が最も少ないという状況に変化はない。減少しているのは美郷町のみで、他の24市町村は全て増加している。最も増加したのは横手市の36億円で、秋田市と2市のみが30億円を超えている。
 一人当たりでは市が少なく、町村が多い。最も多く支出したのは、18、22年度とも大潟村で、物件費、補助費が最多、積立金も3番目の水準だった。
<物件費>総額で減少しているのは大仙市、美郷町、八峰町の3市町だけで、残りの22市町村は増加している。最も増えたのが秋田市で19億円、一方、大仙市は約2億円の減少となっている。増加の要因としては、22年度の豪雪にともなう除雪費のかかり増し(全市町村で18年度33億円、22年度96億円、63億円増)や国の緊急雇用対策にともなう事業の委託料増などが考えられる。
 しかし、一人当たりでは、秋田市が平均を大きく下回り、22年度の最少となっている。減少した市町村はなく、増加の大きかったのが東成瀬村で、最も少ないのが、ほぼ横ばい水準に抑えた大仙市となっている。
<補助費等>が最も多かったのは18、22年度とも秋田市だが、約13億円減と縮減も進んでいる。最少だったのが、東成瀬村で263百万円。増加が8市9町村と大部分の市町村が増加している。
 補助費等については、広域消防等の一部事務組合の負担金など義務的な支出も含まれていることから、削減が進まない要因となっている。また、大仙市では、保育園、幼稚園、特別養護老人ホーム等を直営から民営化に移行させている。このため、過渡的措置として、市から移管した職員の人件費差額相当分などを補助金として支出していることで、補助金の増加が見た目上、大きくなっている。その分、人件費の減少が大きく(約10億円減)、補助費等の増加イコール補助金の純増とは必ずしも言えない部分もある。
 一方、一人当たりでは、最も多いのが大潟村の270千円だが、大潟村は米粉活用プロジェクトに対する補助を事業主体に行ったこと等から、162千円増と2.5倍になっている。
 自治体の預金にあたる<積立金>を22年度に最も積み立てたのが、横手市の29億円で、20億円を超えたのは秋田市と同市のみである。最も少なかったのが、羽後町の60百万円。21市町村が積立額を増加させているが、能代市(11億円増)を含め4市町が10億円以上増加している。
 一人当たりで最も積み立てたのが、東成瀬村で157千円。総額と同じ21市町村が一人当たりでも増加している。

(佐々木 正)

(以下、次号では各種指標での比較を中心に分析する予定である)

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