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機関誌「あきた経済」

平成24年度新入社員アンケートから ―安定を求める傾向続く―

 当研究所では、毎春、県内企業に就職した新入社員を対象に、就職活動や仕事に対する考え方などについて、アンケート調査を実施している。本年度の回答者は、厳しい雇用情勢を受けて安定を求める傾向が高まっており、加えて、男性では条件次第で転職も辞さない現実的な考え方が、女性では結婚後も定年までを視野に入れて仕事と家庭の両立を目指す現代的な職業観が現れた。

1 アンケート結果

Q1 効果的だった情報収集方法は何ですか(2項目複数回答)
 全体では、「インターネット」(47.8%)がこれまで最も高かった前々回調査(45.4%)を上回り、本質問を設けた平成13年以来、最も高い割合となった。就職活動におけるインターネットの重要度は高まっており、今や欠くことのできないツールとなっていることが分かる。ほかに、「親・家族に話をきく」(46.7%)と「就職部の資料」(44.2%)も4割を超えた。
 最終学歴別では、高校卒で、「親・家族に話をきく」(56.3%)と「就職部の資料」(50.0%)が半数以上となった。「インターネット」は、専門・短大卒(64.9%)と大学・大学院卒(69.4%)が、高校卒(38.9%)を大きく上回っている。

Q2 就職活動で利用した機関やイベントはありますか
 就職活動中に利用した機関やイベントについて、全体では、利用した割合が高い順に、「ハローワーク」(27.9%)、「秋田県合同就職面接会」(24.6%)、「リクルート会社主催の会社説明会・面接会」(17.8%)、「秋田学生職業相談室」(5.8%)となった。回答者は、多くの企業の採用状況を一度に把握できるイベント・機関を活用して就職活動に臨んでいたようだ。
 個別にみると、「ハローワーク」は、専門・短大卒(43.2%)と大学・大学院卒(42.9%)でともに4割台となった一方、高校卒では21.1%となった。ただし、高校卒では、主に学校主導の就職活動を行っていることから、他の3イベント・機関の利用率はいずれも1割に満たず、ハローワークが最も活用された機関である。
 秋田県と秋田労働局が主催する「秋田県合同就職面接会」は、専門・短大卒(54.1%)と大学・大学院卒(67.3%)で割合が高い。このイベントは東京都・宮城県・本県の各会場で開催されることから、県外の学校に通学していた回答者にとっても利用しやすかったと考えられる。
 「リクルート会社主催の会社説明会・面接会」については、大学・大学院卒は61.2%で、専門・短大卒(32.4%)のほぼ2倍となった。本県よりも首都圏など県外で開かれることが多く、秋田県合同就職面接会同様、県外で通学していた回答者に便利だったようだ。
 秋田市御所野にある「秋田学生職業相談室」は、最も割合が高い専門・短大卒でも16.2%となった。同相談室では、求人情報の提供や面接会の案内、保護者を含めた相談などを行い、高校や大学などを卒業予定または卒業後概ね3年以内の若年者の就職を支援しているが、他イベント・利用機関と比べて利用率が低い。

Q3 インターンシップ(職業体験)の経験はありますか
 インターンシップ経験のある割合は、全体の71.4%で、本質問を設けた平成15年以降最も高くなった前回調査(76.9%)から5.5ポイント低下したものの、引き続き7割台で推移した。インターンシップ事業は高校を中心として活発に行われており、高校卒で80.5%、専門・短大卒で70.3%と割合が高い。その一方で、大学・大学院卒では36.7%と低率になっている。
 次に、インターンシップ経験者である197人を対象に、どのような効果が得られたかについて質問をした。インターンシップを経験して何らかの効果があったと回答した割合は、全体の98.0%で、なかでも大学・大学院卒では、経験者全員が効果を得ることができたとしており、有意義な体験であったことがわかる。反対に、効果がなかったという割合は2.0%である。
 項目別にみると、「職業意識が向上した」と「企業や仕事の内容を理解できた」が、ともに37.6%となった。
 「職業意識が向上した」は、最終学歴別では、高校卒(40.5%)、専門・短大卒(38.5%)、大学・大学院卒(11.1%)となり、学歴が上がるにつれて回答割合が低下した。大学生は、アルバイト経験などを通して既に職業意識の醸成を図っていたと思われる。また、「企業や仕事の内容を理解できた」は、最終学歴を問わずほぼ同じ割合となった。
 「自分の適性を確認できた」は、大学・大学院卒が38.9%と、高校卒(18.3%)と専門・短大卒(11.5%)を上回っており、実際に自分がその場で働くことをイメージしながらインターンシップに取り組んだ様子がうかがえる。
 「企業との絆を持つことができた」は、全体的に割合が低い。

Q4 就職に関して誰に一番相談しましたか
 全体では、「先生・教授」と「親・家族」がともに41.7%と、回答が集中した。家庭と学校において身近に接する社会人に、就職相談をしていた様子を見て取ることができる。
 平成22年以降、「先生・教授」が最も高くなっており、自己アピールの方法やマナーなどの面接対策について、先生や教授に、よりきめ細かな指導を求める傾向が高まっているようだ。
 いずれの学歴でも、「先生・教授」と「親・家族」に多くの回答が集まったものの、大学・大学院卒では、「先生・教授」は24.5%で、高校卒(46.3%)と専門・短大卒(40.5%)を大きく下回った。一方で、大学・大学院卒では「就職部」(20.4%)の割合が高く、校内では、教授のアドバイスに加えて、豊富な知識を持つ専門職員の力も借りながら就職活動に臨んでいたことがわかる。

Q5 就職先の職種・企業は第一希望ですか
 就職先について、第一希望の職種であると回答した割合は全体の67.8%で、前回調査(64.8%)を3.0ポイント上回った。高校卒が70.0%と最も高く、専門・短大卒(64.9%)、大学・大学院卒(61.2%)と、最終学歴が上がるほど低下している。
 また、第一希望の企業であるとした割合は57.2%と、前回調査(55.3%)を1.9ポイント上回った。職種と同様に、前回調査から上昇している。また、最終学歴が上がるにつれ第一希望であるとする回答者割合が低くなった。
 なお、職種と企業双方とも第一希望先であるとした割合は全体の50.7%で、回答者の半数が希望通りの就職ができたことがわかる。反対に、どちらも第一希望以外とした回答者割合は23.9%となった。

Q6 県外での就職を希望したことがありますか
 県外での就職を希望したことのある回答者割合は全体の50.0%で、前回調査(55.7%)から5.7ポイント低下した。震災の影響で、首都圏を中心に県外求人が減少したことや、県内生徒・学生の保護者が子供の県外就職に不安を覚えて地元就職を望む傾向が生じていることなどが要因と考えられる。
 大学・大学院卒は79.6%と高い一方、高校卒は42.6%、専門・短大卒も48.6%となった。
 県外就職を希望したことのある回答者138人のうち、実際に県外で就職活動を行った割合は46.4%で、前回調査(43.5%)を2.9ポイント上回った。割合が上昇した背景には、県内の就職状況は改善しつつあるものの、求人の多い業種・職種に偏りがみられ、回答者の希望とマッチしなかったことなどがあると推測される。

Q7 県外での就職を希望した理由は何ですか
 前設問で「県外での就職を希望したことがある」とした回答者に、希望理由を質問した。
 全体では、「地元より条件のよい勤め先があったから」(26.1%)が最も割合が高いが、他3項目も同じく2割台となった。働く場所を探して県外に目を向けた回答者と、就職を機に生活の拠点を県外に求めた回答者がみられる。
 男女別では、男性では「地元より条件のよい勤め先があったから」が31.7%と、女性(17.9%)を13.8ポイント上回っており、労働条件を重視する現実的な考え方が現れた。また、女性回答者では「地元や親元を離れて生活してみたかった」が30.4%と、男性(17.1%)を13.3ポイント上回った。就職は、女性にとって、新天地で生活を迎えるためのきっかけという面もあるようだ。

Q8 現在の職場でいつまで働きたいですか
<全体>
 全体では、「定年まで」とする回答割合が49.6%と5年連続で上昇して、昭和54年に調査を開始して以来、最も高くなった。「条件や状況次第では転職する」(15.2%)と「技術を習得したり十分な経験を積んだら転職する」(2.5%)を合わせた“転職派”は17.7%で、定年まで希望する割合が“転職派”を大きく上回っている。
 なお、前回調査は震災発生直後に行われ、不安感から回答が偏る傾向がみられたため、本調査は前々回調査と比較する。
<男性>
 男性では、「定年まで」が64.1%と、前々回調査(53.5%)から10.6ポイント上昇しており、安定志向が高まる傾向が続いている。その一方で、「条件や状況次第では転職する」は18.0%で、前々回(35.9%)を大きく下回り、平成20・21年と同水準となった。男性では、厳しい就職活動の末に入社した先で長く働きたいという安定を求める傾向が続いているが、よりよい条件の企業が見つかった場合には転職も辞さないという現実的な考え方の回答者も見られる。
<女性>
 女性では、「定年まで」(27.5%)が前々回調査(17.2%)と比べて10.3ポイント上昇した。また、「結婚・出産後もできるだけ長く働きたい」(32.1%)と合わせた59.6%が、新卒として入社した先で長く勤務したいと望んでいる。反面、「結婚・出産を機に退職する」は8.3%と、低下基調で推移した。女性回答者では、安定志向の高さとともに、結婚後も定年までの勤務を視野に入れながら家庭と仕事の両立を目指す現代的な職業観が現れた。

Q9 就職先を選んだ理由は何ですか(3項目複数回答)
 全体では、「仕事の内容」が44.2%で、最も割合が高く、次いで、「会社のイメージがよい」(41.7%)となった。Q8のとおり、回答者は安定志向が強いため、長く続けられるよう仕事内容を重視して就職先を決めたほか、確かな実績に裏付けられた企業イメージの良さも、重要な選択条件となった。
 男性回答者では、「会社の将来性」(34.1%)が女性(21.1%)を13.0ポイント上回っており、男性は先を見据えて就職活動に臨んでいたことが分かる。一方、女性では、「通勤が便利」(26.6%)が男性(17.4%)を9.2ポイント上回っており、利便性も決め手となったようだ。

Q10 もしあなたが定職に就けなかったとしたら(2項目複数回答)
 全体では、「職種や働き方にこだわらず、とりあえず働く」が54.7%と、職種や就労形態にこだわらず、就労することを最優先する考えを持つ回答者が多い。次いで、「専門学校・職業訓練校などに進学する」は27.2%で、仮に就職できなかった場合には、進学をして再び新卒として就職活動に臨む覚悟でいたことが見て取れる。
 「希望の職種でパート・アルバイトとして働く」(26.4%)と「希望の職種で派遣社員・臨時職員などとして働く」(12.3%)を合わせた38.7%が、就労形態に関わらず希望の職種に関わって働きたいと考えていたようだ。このうち、パート・アルバイトについては、専門・短大卒(45.9%)が、高校卒(24.2%)と大学・大学院卒(20.4%)の約2倍となった。

2 まとめ

 雇用情勢は改善基調にあるとはいえ依然厳しく、見通しも不透明であることから、回答者が安定を求める傾向は一層高まっている。安定志向に加えて、女性回答者では、定年までを視野に入れて長く勤務したいとする割合が大幅に上昇している。結婚・出産を機に退職を考える割合が低下基調にあることと併せて、女性の職業観の変化が現れた。一方で、男性では、キャリアアップに繋がる場合には転職もためらわないという現実的な考え方を持つ回答者も見られる。
 また、就職先を選んだ理由として、仕事内容や企業イメージの良さなど、将来の安定・安心に繋がる条件が最優先された。

○県内新規高卒者の就職状況、回復傾向鮮明に
 新規高校卒業者職業紹介状況(秋田労働局)によると、平成24年3月末現在、求人数については、県外の減少が響いて、全体では前年に続いて過去最低を更新したが、県内(2,089人)は2年連続で増加し、21年以来、3年ぶりに2千人台となった。
 就職内定率は、全体で99.3%と、平成7年以来、17年ぶりに99%台となり、これは平成元年以降、5番目に高い水準である。県外の就職内定率(99.9%)は前年を上回り、県内(98.9%)も3年連続で上昇した。企業の採用抑制緩和や、ジョブサポーターなど就職支援員の尽力などにより、今春、県内の高校を卒業した生徒の就職状況は、21年から続く回復基調がより鮮明となった。

○県内新規学卒者の就職サポート体制の現状
 県内では、各ハローワークに配置されている学卒ジョブサポーターや、県教育庁高校教育課から各学校に配置されているキャリアアドバイザーなどの「就職支援員」が、高校・大学の新規学卒者の就職をサポートしている。現在、50名を超える支援員が、求人の掘り起こしや生徒・学生と企業とのマッチングなどを行い、県内の新卒求人数の増加や就職決定率の上昇に尽力している。支援員によると、県内の求人は職種に偏りがみられるが、勤務条件や体力面で負担の多い仕事は、保護者が反対するケースも多い。また、自身の希望が曖昧であるほか、正社員へのこだわりが希薄な生徒・学生は内定を得ることが難しい。このため、支援員は、生徒・学生の職業意識の醸成にも取り組んでいる。

(相沢 陽子)

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