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経営随想

思い出や大切な情報を残す

佐々木 宏也
(株式会社みどり光学社 代表取締役社長)

 当社は昭和27年にカメラ・写真材料・DPEの販売店として秋田市大町に創業、昭和44年に写真総合商社として法人組織以来、写真・カメラ・画像のエキスパートとしての礎を築いてきました。しかしながら、急速なデジタル化の流れによって旧来の写真事業は縮小、創業時の主力事業であったカメラ販売は全売上の15%に低下し、現在では撮影や出力、画像処理、アーカイブ事業がメインとなっています。また昨年から当社のキャッチフレーズを、取扱商品を呼称した「写真総合商社」から、サービス内容を体現化した「思い出や大切な情報を残す会社」へと変更し、当社やお客様が撮影した画像をより付加価値のある、カタチのあるもので残すという時代のニーズに合った業容を目指して日々取り組んでおります。

 一見便利なように見えますが、デジタル化によって「思い出や大切な情報を残す」ことは思いのほか難しくなってきています。皆さんのケータイの画像はどうしていますか?10年後に残っているのでしょうか?自分の子供を撮影した昔の8mmテープやミニDVテープを今見ることはできますか?当社にはお客様からさまざまな相談が寄せられます。ケータイやデジカメで撮影したナイスショット!の画像はやはりプリントして残す、人にあげるのが一番ですし、8mmテープであれば劣化する前にDVDへ媒体変換することが必要です。また当社のスタジオでは、撮影に来たお客様に必ず家族写真を撮ることをオススメしています。子供も年頃になると家族写真なんて!と嫌がるものですが、そうやって嫌々?撮った写真が成人してから本当にいい思い出になるシーンをたくさん見てきました。いろいろと市場に出回っているデジタル一眼レフからどれを選べばよいか迷っている方も多いと思います。何を撮影したいのか、メーカーの好みはどうかなどカメラの選択を間違うと思い出もよく残りません。ご年配の方で、せっかくたくさんのお孫さんの写真を撮っているのに、デジカメのカードにずーっとたまっている人がいます。それは本当にもったいない。そのたくさんの画像の中から、われわれプロの視点で素晴らしい笑顔の画像を選んでプリントします―などなど。インターネット通販に負けない付加価値を提供するには、お客様としっかりと話をし、地域のお客様が気軽に相談できる雰囲気を作ることが重要です。デジタル時代のため複雑化したお客様の写真・画像ライフをお手伝いし、未来へキレイに思い出が残るカタチをアドバイスする、こんな店作りを目指しています。

 一方で法人向けでは、東日本大震災の影響からか、最近、大切な情報を残すため地域のデジタルアーカイブ(注)の機運が高まっています。幸いわが社には長年写真で培った色補正など画像処理技術の蓄積があり、国立国会図書館や東京国立博物館のネットワークも活用しながら、地域資料のデジタル化・データーベース化に取り組んでおります。昨今の市町村合併によって地域固有の貴重資料が散逸したり、貴重資料が死蔵されているため劣化し、一部の人しか知らない状態であったりしているのが現状です。地域資料のデジタル化を進め、公開することにより、資料を保存しながら資料の新しい価値を創出し、地域の活性化に寄与することができるのです。これもわが社のキャッチフレーズの「地域の大切な情報を“付加価値をつけて”残す」ことに他なりません。

 最近の当社が手がけた事例では、東日本大震災で全壊した岩手県陸前高田市立図書館で泥水をかぶった岩手県指定文化財「吉田家文書・絵図」のデジタル保存作業が挙げられます。汚水の浸食やカビの繁殖により、原資料の色調後退・劣化が懸念されたことから、高精細デジタルカメラで撮影し、形のゆがみや色などを原本と照合しながら画像処理、デジタルデータ化を行いました。将来的には、デジタル化した膨大な文書のデータベースを作成したり、デジタル化した古絵図と津波浸食地域を重ね合わせた画像を作成し、より付加価値をつけたカタチで大切な情報を残す予定でおります。

 一方で地域資料のデジタル化、アーカイブ化においては、地方での予算確保の難しさや技術的ノウハウの欠如があり、資金や人材は大都市や国立機関等に集中しているのが現状です。この状態では、地域の貴重な資料が十分に活用されず、失われることにも繋がりかねません。そのため、当社では昨年10月からデジタル化のノウハウを有する秋田県立図書館と資料のデジタル化の最適化に関する共同研究を進めています。県立図書館が所蔵する資料には、古書・絵図・掛け軸・図書など様々な形態やサイズがあり、これらをデジタル化するにあたって、撮影方法、保存方法、画像フォーマット、提供方法等は資料に応じて違ってきます。このアーカイブ分野は、全国に通用するノウハウや技術的要素が必要であり、全国の地域アーカイブを活性化する秋田発の地域資料デジタル化の新基準策定を目指し、前向きに取り組んでいきたいと思います。

(注)デジタルアーカイブ:
 有形・無形の知的文化資産をデジタル情報の形で記録し、その情報をデータベース化して保管し、随時閲覧・鑑賞、情報ネットワークを利用して情報発信すること。

会 社 概 要

1 社  名 株式会社みどり光学社
2 代表者名 代表取締役社長 佐々木宏也
3 所 在 地 〒010-0923 秋田市旭北錦町2-36
(店舗:秋田駅前フォーカス、広面店/スタジオドレミ、横手店)
4 電話番号 018-862-5180
5 Fax番号 018-863-4530
6 設立年月 昭和44年1月
7 資本金 2400万円
8 年  商 3億5千万円(2011年12月期)
9 従業員数 31名
10 事業内容 撮影、画像処理、アーカイブ、DPE、カメラ・写真用品販売
11 スローガン 「思い出や大切な情報を残す」社員力アップ、お客様と話す、撮影出力会社へ
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