経営随想
企業の責務:Going Concern
(大館桂工業株式会社 代表取締役社長)
弊社は昭和33年、㈱大館製作所から鉄道工事部門が分離独立し桂工業㈱として発足し、その後大館水道工業㈱と合併して大館桂工業㈱として現在に至っています。今年で54歳です。
業種としては建設業ですが、手掛けている工種として管・水道施設工事、電気工事を始め、建設業法上の中心工種10工種の施工技術を有しており、中でも鉄道信通工事に関しては特殊な分野で、北東北3県ではトップクラスの技術を持っていると自負しております。
・茹でガエル寸前
以前は事業部制の組織体制をとっており、環境施設事業部(管・水道)、電設事業部、信号事業部の3事業部とメンテナンス部門でしたが、数年前に大幅な組織改革を行いました。時代が大きく変わり、公共事業が大幅に減少し、従来の仕事のやり方ではとても会社を維持できないと思ったからです。かつての地方の建設業者は、潤沢な(今にして思えば)公共工事をどうやってこなすか、受注の心配は然程考えなくとも経営が成り立ってきました。勿論、その時代にあったそれなりの経営努力をしたことに違いはありませんが、少なくとも「来年の仕事が半減する」といったような危機意識はあまり感じていませんでした。
国内の建設市場はバブル崩壊以後ずうっと減少トレンドでしたが、いわゆる小泉改革を境に公共事業は急激な右肩下がりの一途を辿ることになり、あいまって民間の工事量も激減し、気が付いたら「仕事が半分以下に減っていた」という訳です。
・過去の成功体験が足かせ
以前の右肩上がりの時代は、社内の事業部が良い意味でのライバルであり、隣の事業部には負けまい、来年は我が事業部が数字を上げて見せよう等々、パイが増えている時代はお互いの事業部が張り合って、増えるパイを“大館桂工業”という会社に取り込もうとし、又ある程度それが可能でもありました。その為にはお互いの協力関係よりも「負けてなるか」というバネが効いて、結果としていい成績をもたらすことにもなりました。
そういう時代が長く続くことにより「負けてなるか」という思考回路が出来上がり、「情報を共有する」とか、「部分最適より全体最適」という発想に至らず、「隣の事業部に負けるな!」だけが、夫々の行動規範のベースにあった気がします。又、事業部長の立場としては、言わば夫々が社長の立場としての事業部の全責任を負っている訳ですから、どこかおかしいと思いながらも、「全社の将来」よりも「事業部の今年」を優先するのはごく自然の振る舞いであった筈です。
・本業に拘るな、本業を離れるな
従来の公共工事・民間の大型工事の市場がどんどん縮小していく中、平成18年にフォーム事業を立ち上げました。
会社として新規事業とはいってみても、いきなり農業分野とか製造業とか、元々の経営資源を活用できなければ、素人の道楽に終わってしまいます。かといって従来の事業領域では先が見えています。丁度平成18(2006)年当時、「2007年問題」と称して、団塊の世代が大量にリタイアし、新たなビジネスチャンスがある、と言われておりました。秋田の一地方都市といえども、個人のリフォーム需要が増えるだろうとの予測で、INAX(現LIXIL(リクシル))のフランチャイズLIFA(ライファ)事業として、個人住宅のリフォーム市場に参入した訳です。しかし、元々が官工事、企業向けの仕事が大半で、個人のお客様対応のノウハウがありませんでした。当初は工事そのものの品質に技術屋としての拘りがあっても、お客様の細かなニーズにスピーディに対応することが出来ず、スタッフも何度か入れ替えをして何とか現在の体制を作り上げました。
・“経営品質”との出会い
リフォーム事業の立ち上げと丁度同じ頃「経営品質」という経営手法について社内的に勉強を始めていました。物凄く端折って、甚だ不勉強な小生が独断的に表現すると、 「目指すところの理想の姿を描き、現状との差異を自ら客観的に分析し、そのギャップを埋めるための継続的な改善活動」とでもいうのでしょうか。
(恐らく経営品質に関してある程度の見識をお持ちの方が見たら鼻で笑われそうです。)
・スクラップ&ビルド・新たな旗印
不勉強でしたが、経営品質の物真似をしながら事業部制の解体と、新たな組織づくりを実施しました。同時に我が社としての旗印も明確に文章化し、機会がある度に社員・パートナーの皆さんにも考え方を共有してもらう努力をしております。
※編集部注
当社は、県内で顧客本位の優れた経営を行っている組織に与えられる「秋田県経営品質賞」において、経営品質向上に対する取り組み姿勢が積極的で、今後の継続した活動によって更なる向上ができる組織として、平成23(2011)年度唯一受賞対象先となられ、奨励賞を受賞されました。
理想の姿(我が社の目指すところ)
「個別の技術を生かし、地域に必須でかつ感謝される集団を目指す」
基本理念
「昨日までとは違う私」への挑戦
1.社員もパートナーも「楽しく、生き生き」と。③社員重視
2.お客様の「ニーズと変化」を敏感にとらえる。①顧客満足
3.他社にはない「頭・腕・技」をもつ。②独自能力
4.世間様にも「信頼と満足」を提供する。④社会との調和
*経営品質の“基本理念”に対する教科書的な位置づけは、① 顧客本位 ②独自能力 ③ 社員重視 ④社会との調和 ですが、敢えて順序は③①②④にしました。「楽しく・生き生き」仕事をする前提にはお客様の満足が必須な筈です。
・Going Concern
企業としての究極の目的は継続し続けることだと思っています。人口に膾炙された言葉ではありますが、「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びる訳でもない。唯一生き残るのは変化できる者である」(チャールズ・ダーウィン)
これからも理想の姿を求め、社員とパートナーが楽しく・生き生きと、変化に対応していける集団を目指したいと思っております。
会 社 概 要
1 社 名 | 大館桂工業株式会社 |
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2 代表者名 | 代表取締役社長 中田直文 |
3 所 在 地 | 〒017-0044 大館市御成町3丁目7-17 |
4 電話番号 | 0186-49-1331 |
5 Fax番号 | 0186-49-7411 |
6 設立年月 | 昭和33年10月 |
7 資 本 金 | 60,000千円 |
8 年 商 | 20億5千万円(H23年度) |
9 従業員数 | 94名 |
10 事業内容 | 建設業(管工事、電気工事他) |
11 経営方針 | (理想の姿) 「個別の技術を生かし、地域に必須でかつ感謝される集団を目指す」 |