機関誌「あきた経済」
秋田ノーザンハピネッツの2011-12年シーズンにおける経済波及効果
~経済波及効果は5.2億円~
当研究所では、日本プロバスケットボールリーグ「bjリーグ」に所属する秋田ノーザンハピネッツが2011-12年シーズンの活動によって県内にもたらした経済波及効果について試算を行った。その結果、ハピネッツのチーム運営費や観客の消費支出などによる経済波及効果は5億2,000万円となった。本稿では、ハピネッツの2011-12年シーズンにおける経済波及効果について試算した結果をまとめた。
1 はじめに
秋田ノーザンハピネッツは、県内初のプロスポーツチームとして日本プロバスケットボールリーグ「bjリーグ」に2010-11年シーズンより新規参入し、今年で3年目のシーズンを迎える。昨シーズンのチーム成績は、イースタン・カンファレンスで3位の成績を収め、2年連続でプレイオフに進出した。プレイオフでは接戦の末、あと一歩及ばず有明コロシアム進出(ファイナル4)はならなかったものの、チームは前シーズンより順位を上げ、ホームゲームの観客動員数も増加した。
当研究所では、「県民球団」として定着してきている秋田ノーザンハピネッツのチーム運営に伴う支出や観客の消費支出が、秋田県経済にどの程度の経済波及効果をもたらすのかを2011-12年シーズンにおけるデータに基づき、平成17年秋田県産業連関表の36部門表を用いて試算した。
2 2011-12年シーズンの概要
秋田ノーザンハピネッツの2011-12年シーズンは、11年10月15日(土)の大分ヒートデビルズ戦で開幕し、全52試合が開催された。そのうち県内では秋田市(16試合)、由利本荘市(2試合)、横手市(2試合)、大館市(2試合)、能代市(2試合)、三種町(2試合)で開催され、計26試合を行った。レギュラーシーズンの成績は28勝24敗の勝率5割3分8厘とイースタン・カンファレンスで3位になり、前シーズンに続いてプレイオフに進出した。今年5月に県内ではじめて開催されたプレイオフ・ファーストラウンドを勝ち進み、有明コロシアム進出をかけて横浜ビー・コルセアーズ戦に臨んだが、最終決定戦(1勝1敗の後、前後半5分の特別ルール)で惜しくも敗れ、シーズンを終えた。
ホームゲームの観客動員数(プレイオフ・ファーストラウンド開催分を含む)は、61,791人と前シーズンに比べ7,603人増加した。また、1試合あたりの観客動員数は約2,200人と前シーズンとほぼ同数であったものの、昨シーズン1試合あたりの観客動員数が2,000人を超えたチームは、bjリーグ全19チームの中で4チームのみとなっており、ハピネッツが県民球団として定着してきていることがうかがえる。
3 2011-12年シーズンにおける経済波及効果
(1)最終需要増加額の推計
経済波及効果の試算をするにあたって、はじめに秋田ノーザンハピネッツが2011-12年シーズン中に支出した会場設営費や広告宣伝費、人件費などのチーム運営費のほかに、県内外からの観客が県内で支出した宿泊費、飲食費、交通費、グッズなどの土産等購入費を推計する。これらの支出額を合計すると4億1,800万円となり、これが最終需要増加額となる。
(2)経済波及効果の試算
a 直接効果
次に、県内に波及効果が生じるのは、あくまでも県内で生産活動を行った場合であるため、最終需要増加額のうち県内の需要増加額がいくらになるかを推計する。(1)で求めた最終需要増加額4億1,800万円に県内自給率を掛けて算出した額が3億4,100万円となり、これが直接効果(県内需要増加額)となる。
b 第一次波及効果
この直接効果が県内に支出されると、関連する産業に次々と生産が波及していく。これを第1次波及効果といい、これが1億1,500万円となった。
c 第二次波及効果
直接効果、第1次波及効果によって生産が増加すると、雇用者の所得増加に結び付き、その増加分の一部が消費支出に回ることによって、さらに生産が誘発されていく。これを第2次波及効果といい、これが6,400万円となった。
d 総合効果
これらの直接効果、第1次波及効果、第2次波及効果である生産誘発額の合計が5億2,000万円となり、これが秋田ノーザンハピネッツの2011-12年シーズンにおける経済波及効果となる。なお、直接効果に対する経済波及効果全体(総合効果)を示す効果倍率は1.53倍となった。
また、各産業部門の生産活動が誘発されることに伴い、新たに生み出される企業の利潤(営業余剰)や雇用者所得等のことを粗付加価値という。生産誘発額5億2,000万円のうち、粗付加価値誘発額は2億8,900万円、雇用者所得誘発額は1億3,700万円となった。
(3)産業別の波及効果
本件の経済波及効果である生産誘発額5億2,000万円を産業別にみると、対個人サービスの1億4,100万円(宿泊業、飲食業など)が最も大きく、次いで対事業所サービス9,300万円(広告業、物品賃貸サービス業、警備業など)、運輸9,000万円となっている。
4 おわりに
秋田ノーザンハピネッツのホームゲームには、年間60,000人以上の観客が来場し、県内に大きな経済波及効果をもたらしている。この効果をさらに大きなものにするためには、県民が1試合でも多く試合会場に足を運ぶとともに、県外からより多くの観客を呼び込む必要がある。また、ハピネッツによるバスケットボールクリニックやイベント参加などの地域貢献活動を通じて地域の活性化を図っていくことも重要であろう。
今シーズンのハピネッツは、開幕6連勝と順調な滑り出しをみせ、上位グループに位置している。bjリーグ初優勝を目指しているハピネッツの躍進が、県内経済の一層の活性化につながることを期待したい。
(山崎 要)