経営随想
内陸線は「地域の基幹産業」をめざす
(秋田内陸縦貫鉄道株式会社 代表取締役社長)
1.今期の見通し
平成23年12月社長に就任した私の最大の使命は、平成24年度の経常赤字を2億円以内に収めることです。ちなみに平成23年度は251百万円の赤字でした。平成24年11月末に、上期結果をもとにして年度見通しの記者会見をおこないました。期末の3月まで内陸線沿線は大雪に閉ざされ、運賃収入増は見込めないため、オリジナルグッズやギフト回数券などの販売に努力をすれば、195百万円の赤字となり、目標の2億円以内を達成できると発表しました。
現在1月下旬であと2カ月余り残されていますが、記者会見時点と比較して懸念されることは予想以上の大雪です。平成23年度も大雪で除雪費が予算以上にかかりました。その実績から、本年度は昨年度以上の除雪費を計上していますが、このペースでいけば、除雪費の予算オーバーは避けられません。予算以上の除雪費になっても、それを吸収できるだけの収入を得られるよう最大限努力してまいります。
2.就任から1年間の取組み
目標達成のために3つの方針を出して取組みました。①生活路線を守るため観光路線を強化する、②ターゲットは女性・高校生・鉄道ファン、③オリジナルグッズ開発を進め、飲食・物販売上を強化する、以上の3点です。
①「生活路線を守るため観光路線を強化する」。内陸線は沿線地域の人々にとって、必要な公共交通機関ですが、生活路線の収入だけでは経営が成り立ちませんので、多くの観光客に乗ってもらって収益をあげることが必要となります。いわば1階が生活路線、2階が観光路線の2階建ての鉄道と考えました。そして東京を中心とする首都圏を戦略商圏と設定して、そこから多くの観光客を集める取組みを始めました。新幹線こまちで、東京から角館まで乗り換えなしで来ることのできるアクセスの良さは、新幹線こまちと内陸線の相性の良さを表しています。
②「ターゲットは女性・高校生・鉄道ファン」。内陸線最大の課題は、首都圏で知名度がないことです。そのため多くのイベントを実施してマスコミに取り上げてもらい、知名度を上げることが必要となります。知名度を上げるためにイベントを企画する場合、ターゲットを定める必要があります。そのターゲットの1番目は女性です。女性の持つ<ソフトパワー>は今までの内陸線にはない魅力で、内陸線の新たな顧客になることは間違いありません。昨年10月に開催した「いけばなパフォーマンス」はマスコミに大きく取り上げられ、今後継続したいイベントです。2番目は高校生です。彼らは勉強・部活で忙しく観光客として期待できませんが、内陸線にはない<若さ>を持っていることが魅力です。昨年8月に開催した「第1回高校生地方鉄道交流会」もマスコミに何回も取り上げられ、成功したイベントです。参加した高校とは現在も交流が続いております。3番目は鉄道ファンです。数は多くありませんが、熱心に応援をしてくれるありがたい存在です。
③「オリジナルグッズ開発を進め、飲食・物販売上を強化する」。鉄道収入を上げるのは時間がかかるため、即効性のある飲食・物販で収入増を図ります。阿仁合駅にあるレストランこぐま亭は、東京の一流レストランで長年シェフとして活躍していた麻木シェフの店として新装開店しました。観光客だけではなく、最近は地元の人にも利用される店として人気が出てきました。商品販売は<ないりっくん>という可愛いキャラクターを使ったオリジナルグッズを中心に、<馬肉シチュー>や只今ヒット中の<みうら庵バター餅>など、品揃えを充実して売上が順調に伸びております。
3.今後の取組み
今年度の目標が達成できれば、次に取り組むことは今後継続的に赤字が2億円以内に収まる経営の仕組みを作り上げることです。そのために必要なことは、内陸線は地域密着の鉄道としての役割を今以上に果たさなければなりません。「地元にもっと役立つ鉄道」をめざすことです。別の言葉で表現すると、内陸線は地域の基幹産業をめざすということです。観光路線の弱点はさまざまな環境の変化に影響されて、鉄道収入が安定しにくいことがあります。その弱みを減らす役割が基幹産業化となります。
地域の基幹産業になるためには少なくとも3つのことができなければなりません。1つ目は全国から多くの観光客を呼び込み、沿線各地でお金を落としてもらい地域の役に立つことです。2つ目は沿線各地で生産された商品を内陸線の販売商品として売上を上げ、地域の役に立つことです。この2つは既に取組んでおり、少しずつ成果を上げてきております。基幹産業をめざすならもう一つの役割を果たさなければなりません。それが3つ目の役割で、沿線の歴史を発掘しそれを全国に発信し、新たな観光資源にすることです。第1弾として本年秋に「鉱山の町阿仁」を全国に紹介するイベントを開催する予定です。「阿仁」はかつて日本一の銅山で、全国から鉱山労働者が集まり大変賑わいのあった町でした。内陸線の沿線にも歴史のある地域があることを全国に発信することができれば、地域に役に立つ鉄道として認められることになると考えております。これをまとめると新たな内陸線のイメージは、1階が生活路線、2階が観光路線、3階が基幹産業の3階建ての鉄道をめざすことになります。
会 社 概 要
1 社 名 | 秋田内陸縦貫鉄道株式会社 |
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2 代表者名 | 取締役社長 酒井一郎 |
3 所 在 地 | 〒018-4613 北秋田市阿仁銀山字下新町41-1 |
4 電話番号 | 0186-82-3231 |
5 Fax番号 | 0186-82-3793 |
6 URL | https://www.akita-nairiku.com/ |
7 設立年月日 | 昭和59年10月31日 |
8 資本金 | 3億円 |
9 年商 | 234,178千円 |
10 従業員数 | 65人 |
11 事業内容 | 鉄道業他 昭和61年11月1日、国鉄阿仁合線・角館線を受け継いで、第三セクター鉄道として開業 |