トップ機関誌「あきた経済」トップ平成25年度新入社員アンケートから

機関誌「あきた経済」

平成25年度新入社員アンケートから
―安定志向が継続するも、転職希望割合が上昇―

 当研究所では、毎春、県内企業に就職した新入社員を対象として、就職活動や仕事に対する考え方などについて、アンケート調査を実施している。本年度の回答者は、依然として厳しい雇用情勢を受けて安定志向が継続しているものの、雇用改善に期待感が見られることから、転職希望割合が高まった。

1 アンケート結果

Q1 効果的だった情報収集方法は何ですか(2項目複数回答)
 全体では、「インターネット」(44.1%)が最も割合が高くなった。平成13年に本質問を設けて以来、最高割合となった前回調査(47.8%)と比べて3.7ポイント低下したものの、5年連続で4割台を維持している。インターネットは、豊富な企業情報を手軽に入手できることから、その活用が浸透している。ほかに、「就職部の資料」(42.5%)も4割を超えた。
 最終学歴別にみると、中学・高校卒では「就職部の資料」(50.5%)と「親・家族に話をきく」(49.0%)の割合が高い。「インターネット」は、専門・短大卒(51.1%)と大学・大学院卒(69.3%)で回答が集中した。

Q2 就職活動で利用した機関やイベントはありますか
 就職活動中に利用した機関やイベントについて、全体では、利用した割合が高い順に、「ハローワーク」(33.9%)、「秋田県合同就職説明会・面接会」(32.6%)、「リクルート会社主催の会社説明会・面接会」(20.2%)、「秋田学生職業相談室」(7.1%)となった。回答者は、多くの企業に関する採用情報やマッチングの機会を、一度に得ることができる機関・イベントを利用し、効率的な就職活動を行っていたことがわかる。
 個別にみると、「ハローワーク」は、専門・短大卒(61.7%)と大学・大学院卒(52.0%)で過半数となった。ハローワークでは、学生向けに、全国の面接会開催や求人などの情報を検索することができるインターネットサービスの提供や、学校への出張相談も行っていることから、回答者にとって利便性が高かったようだ。
 秋田県と秋田労働局が主催する「秋田県合同就職説明会・面接会」については、専門・短大卒(48.9%)と大学・大学院卒(68.0%)が、積極的に活用している。このイベントは、本県のほか東京都と宮城県でも開催されるため、県外の学校に在籍していた回答者も参加しやすかったと考えられる。
 「リクルート会社主催の会社説明会・面接会」については、大学・大学院卒で65.3%となった。首都圏で開かれることが多いことから、主に県外の学校に通っていた回答者が利用していたようだ。
 「秋田学生職業相談室」は、大学・大学院卒で24.0%と、前回調査(12.0%)の2倍となった。全体の利用率がやや伸び悩んでいるが、この機関は、秋田市御所野にあり、市中心部からやや離れているため、交通手段が限定される生徒・学生にとっては利用が難しい面もある。

Q3 インターンシップ(職業体験)の経験はありますか
 インターンシップ経験があると回答した割合は、全体の66.1%で、本質問を設けた平成15年以来、最も高くなった前々回調査(76.9%)をピークに低下傾向にある。背景には、平成23年に日本経団連の倫理憲章が改定となり、インターンシップについては実施期間が5日間以上と規定され、また採用選考活動との区別が明確化されたことや、同年に震災が発生した影響で採用スケジュールが遅れたことなどから、受け入れ企業が減少したものと推測される。
 中学・高校卒で84.0%、専門・短大卒57.4%、大学・大学院卒24.0%と、最終学歴が上がるにつれて、経験者割合が低下した。
 次に、インターンシップ経験者である213人を対象に、その効果について質問をした。インターンの経験により何らかの効果が得られたという回答者割合は、93.0%となった。大学・大学院卒(83.3%)は、中学・高校卒(93.4%)と専門・短大卒(96.3%)に比べて低く、在学中にアルバイトなどを通して、社会や仕事に触れる機会を持っていたと考えられる。
 項目別にみると、「企業や仕事の内容を理解できた」(39.9%)と「職業意識が向上した」(31.9%)に、回答が多く集まった。
 「企業や仕事の内容を理解できた」は、専門・短大卒で55.6%となり、中学・高校卒(38.7%)と大学・大学院卒(27.8%)を大きく上回った。専門・短大卒が、自分の働く姿を具体的にイメージしながら、インターンシップに取り組んでいた様子が見て取れる。
 「職業意識が向上した」は、中学・高校卒(33.9%)と大学・大学院卒(33.3%)で3割台となった。普段の生活とは異なる経験を通して、職業意識を醸成することができたようだ。

Q4 就職に関して誰に一番相談しましたか
 全体では、「親・家族」(40.7%)が最も割合が高く、次いで「先生・教授」(34.5%)となった。家庭と学校双方において、身近であり、回答者をよく知る社会人に就職相談をしていたことがわかる。
 いずれの学歴でも、「親・家族」と「先生・教授」に多くの回答が集まった。「先生・教授」の回答割合は、中学・高校卒が41.0%と最も高く、専門・短大卒(31.9%)、大学・大学院卒(18.7%)と、最終学歴が上がるほど低下した。対照的に、「友人」と「就職部」は、学歴が上がるにつれて回答割合も上昇しており、家庭以外でも相談する時間が増えている。回答者は、厳しい就職戦線を勝ち抜くため、専門的な部署の利用や仲間との情報交換などを通して、戦力アップに取り組んでいたようだ。

Q5 就職先の職種・企業は第一希望ですか
 就職先について、第一希望の職種であると回答した割合は全体の67.7%で、前回調査(67.8%)とほぼ横ばい。最終学歴が上がるにつれ、第一希望であるとする割合は低下した。
 また、第一希望の企業であるとした割合は56.8%で、職種は希望通りでも、企業となるとハードルはやや高く、前回調査(57.2%)よりも0.4ポイント低下した。職種同様、中学・高校卒(65.5%)、専門・短大卒(53.2%)、大学・大学院卒(36.0%)と、第一希望とした割合は、最終学歴が上がるほど低下している。
 なお、職種と企業双方とも第一希望先であるとした割合は50.6%で、希望に沿う就職ができた回答者は、ほぼ半数となった。反対に、どちらも第一希望以外とした割合は、23.0%となった。

Q6 県外での就職を希望したことがありますか
 県外での就職を希望したことがある割合は、全体の52.2%となった。なお、前回調査では、震災発生の影響から不安感が高まり地元志向が急激に強まるなど回答に偏りがみられたため、前々回調査(50.0%)と比較すると、2.2ポイント上昇した。
 専門・短大卒が59.6%、大学・大学院卒も73.3%となった一方、中学・高校卒(42.5%)は5割を下回った。
 県外就職を希望したことのある回答者168人のうち、実際に県外で就職活動を行った割合は44.0%と、5割を下回った。新規高卒者では、県内求職者数・内定者数とも3年連続で増加するなど県内志向が高まっていることから、回答者も、県外での就職活動に積極的に取り組んだ割合は伸び悩んだ。

Q7 県外での就職を希望した理由は何ですか
 前設問で「県外での就職を希望したことがある」とした回答者に、希望理由を質問した。
 全体では、「地元や親元を離れて生活したかった」(28.0%)が最も割合が高く、ほかに「地元より条件のよい勤め先があった」と「都会での生活を体験してみたかった」がともに22.6%となった。回答者にとって県外就職は、就労と生活の拠点、どちらの要素も魅力的だったようだ。
 男女別では、男性回答者では「都会での生活を体験してみたかった」が28.2%と、女性(16.9%)を11.3ポイント上回っており、都会での生活に憧れる様子がうかがえる。女性では、「地元や親元を離れて生活してみたかった」(31.3%)が、男性(24.7%)を6.6ポイント上回った。男女とも、生活の拠点を移すきっかけとして、県外就職を希望したことがわかる。

Q8 現在の職場でいつまで働きたいですか
<全体>
 全体では、「定年まで」とする割合が34.8%で、昭和54年の調査開始以来、最高割合となった前年(49.6%)を14.8ポイント下回り、6年ぶりに低下に転じた。また、「条件や状況次第では転職する」(18.6%)と「技術を習得したり十分な経験を積んだら転職する」(5.3%)を合わせた“転職希望派”は23.9%と2年連続で上昇した。引き続き安定志向が続いているものの、転職を希望する回答者割合が高まっている。
<男性>
 男性回答者では、「定年まで」が53.4%と、前回調査(64.1%)比10.7ポイント低下、前々回調査(73.2%)比では19.8ポイント低下と、大幅な低下が続き、平成22年(53.5%)と同水準となった。また、「条件や状況次第では転職する」(18.5%)と「技術を習得したり十分な経験を積んだら転職する」(5.6%)との“転職希望派”は24.1%となった。男性では、就職をした後もよりよい職場環境を求めようとする、現実的な考え方を持つ回答者が見られた。
<女性>
 女性では、「結婚・出産後もできるだけ長く働きたい」(30.6%)が最も割合が高い。「定年まで」(11.8%)と合わせた42.4%が、新卒として入社した先で長く勤務したいと望んでいる。また、「結婚・出産を機に退職する」(16.0%)は、前回調査(8.3%)を7.7ポイント上回ったが、前々回調査(26.1%)比では10.1ポイント低下した。女性回答者では、家庭と仕事の両立を目指す傾向が続く一方で、一定のタイミングで家庭に入りたいとする回答者もみられ、職業観は、より幅広くより柔軟になっているようだ。

○新規高卒者、県内求人伸びるもミスマッチ発生
 新規高卒者の就職状況について、秋田労働局によると、平成25年3月末現在、県内求人数は2,459人で、22年(1,692人)を底に増加が続いている。産業別求人数では、飲食店・宿泊業や卸売・小売業で増加し、生徒にとって選択の幅が広がった一方、例年、新卒者求人全体の3割超を占める製造業で大きく減少した。業種や職種のミスマッチが生じたことから、未内定者は27人と、前年よりも10人増加した。そのため、県内の就職内定率は98.3%と、前年(98.9%)を0.6ポイント下回り、4年ぶりに低下に転じた。全体の内定率も98.9%と、21年(96.5%)を底に上昇が続いていたが、前年(99.3%)を0.4ポイント下回った。

Q9 就職先を選んだ理由は何ですか(3項目複数回答)
 全体では、「仕事の内容」が42.2%で最も割合が高く、次いで、「会社のイメージがよい」(38.8%)となった。Q5のとおり、回答者の67.7%が第一希望の職種に就いていることが示すように、就職先の決定には、仕事内容が最優先された。また、これまでの実績に基づく企業イメージも重要な選択条件となった。
 男性回答者では、「会社の将来性」(33.1%)が女性(25.0%)を8.1ポイント上回っており、定年まで勤務するために必要な要素が重視された。一方、女性では、「適切な勤務時間」(22.9%)が男性(9.0%)の2倍以上となり、プライベートな時間を大切にしたい気持ちが表れている。

Q10 もしあなたが希望する定職に就くことができなかった場合には(2項目複数回答)
 全体では、「職種や働き方にこだわらず、とりあえず働く」が47.5%と、職種や就労形態を問わず、まずは仕事に就くことを最優先しようと考えていた回答者が多い。
 次いで、「希望の職種でパート・アルバイトとして働く」が30.7%となった。「希望の職種で派遣社員・臨時職員などとして働く」(14.0%)と合わせた44.7%が、就労形態に関わらず、希望の職種に就くことで目標に近づきたいと考えていたようだ。
 「専門学校・職業訓練校などに進学する」は21.4%となった。専門分野の知識や技術、資格を習得してスキルアップを図り、再び新卒求人にチャレンジする覚悟を持っていた様子がうかがえる。

○大学生の就職活動解禁時期繰り下げの影響
 本年4月、政府により、大学生の就職活動開始時期について、現行である3年生の12月から3年生の3月に繰り下げる方針が示され、経団連など経済界側も受け入れた。新日程は、2016年春の大学卒業予定者から適用される。
 就職活動期間が短縮化されると、学生が学業に集中する環境が整うなどの利点がある。一方で、大手企業の後に採用を行う中小企業を中心に、就職率の低下を憂慮する声が上がっている。本調査でも、県外の大学・大学院に在籍していた回答者から、県内外双方で同時に就職活動を行うことは負担だったとする記入がみられた。新日程の導入により、学生の就職活動スケジュールは一層タイトになるため、県内でも人材確保が難しくなることが懸念される。

2 まとめ

 雇用情勢は依然として厳しいため、回答者は、定年までも視野に入れながら長く勤務したいと望んでおり、就職先についても、仕事内容や企業のイメージなど、自分と仕事との相性や会社の安定性・将来性を重視して選択している。
 安定を求める傾向が引き続き強い一方で、転職を希望する割合が上昇した。これまでは、就職先が本意ではない場合でも、就職難を乗り越えて掴んだ先にしがみつこうとする回答者が見られた。しかしながら、本年度は、雇用改善への期待感を受けて、「とりあえず」就職をした後に、よりよい条件の企業が見つかった場合には転職にチャレンジしようとする割合が高まり、これまでよりもやや強気に変化した。

(相沢 陽子)

あきた経済

刊行物

お問い合わせ先
〒010-8655
 秋田市山王3丁目2番1号
 秋田銀行本店内
 TEL:018-863-5561
 FAX:018-863-5580
 MAIL:info@akitakeizai.or.jp