機関誌「あきた経済」
本県先進事例にみる6次産業化の課題と解決の方向性
国や地方で、「農業の6次産業化」「農商工連携」を推進・支援する動きが強化されている。しかし、6次産業化を事業として成功させるためには、多くの解決すべき課題があることが指摘されている。本稿では、6次産業化を「事業の成功」という観点から見た場合にどんな課題があるのか考察し、本県の先進事例の調査に基づいて、その課題を解決する方向性を探った。
1 6次産業化・農商工連携
(1)強化される推進の動き
安倍政権は日本再興戦略の第三の矢・成長戦略の一つとして「攻めの農林水産業」を掲げ、その具体策として「農商工連携等による6次産業化の推進」を挙げている。秋田県でも、ふるさと秋田元気創造プランにおいて「産業経済基盤の再構築戦略」に関する取組みの一つとして「農商工連携への積極的な支援」を定め、平成25年度には、農林水産部・農業経済課内に「六次産業化班」を設置し、支援を強めている。
このように、国および地方において「農業の6次産業化」や「農商工連携」を推進、支援しようとする動きが強化されている。
(2)6次産業化・農商工連携とは
このように、国および地方において「農業の6次産業化」や「農商工連携」を推進、支援しようとする動きが強化されている。
「6次産業化」とは、農林漁業者(1次産業)が食品加工(2次産業)や流通・販売(3次産業)に事業領域を広げ、付加価値を高めようという考え方である。一方、「農商工連携」とは、農林漁業者と、食品加工業者や流通業者が「連携」して、新商品の開発等により経営の向上・改善をはかるという考え方である。
この二つの考え方は、農林漁業者を主体とするのか、農林漁業者と商工業者が「連携」するのかという違いはあるが、農産物等の地域資源を活用し「地域内で」付加価値を高め、地域経済を活性化させようとする点で共通している。
本稿では、以下、農商工連携も含めて「6次産業化」という用語で記述する。
(3)背景と目的
この二つの考え方は、農林漁業者を主体とするのか、農林漁業者と商工業者が「連携」するのかという違いはあるが、農産物等の地域資源を活用し「地域内で」付加価値を高め、地域経済を活性化させようとする点で共通している。
本稿では、以下、農商工連携も含めて「6次産業化」という用語で記述する。
6次産業化推進の背景には、中長期的に農業産出額が減少し、農業所得も減少して経営環境が厳しくなっている状況がある。その対応として農業が2次、3次産業を取り込み、付加価値を高めることにより経営を強化したいという狙いがある。
「あきた経済」2013年2月号・「『食の秋田』の振興を考える」において報告したように、本県は食品素材を安価で県外に提供する一方、その加工品を逆に県外から高い価格で購入している実情にある。例えば、秋田県産業連関表からみた本県の食料品マーケットにおける県内調達率は平成12年が37.4%、平成17年が36.0%であり、県民が口にする食料品の6割以上は県外から移輸入されていることになる。本県にとって、まず県内素材を活かして県内調達率を高め、さらに県外マーケットを開拓するため、6次産業化は二重の意味で重要であると言える。
「あきた経済」2013年2月号・「『食の秋田』の振興を考える」において報告したように、本県は食品素材を安価で県外に提供する一方、その加工品を逆に県外から高い価格で購入している実情にある。例えば、秋田県産業連関表からみた本県の食料品マーケットにおける県内調達率は平成12年が37.4%、平成17年が36.0%であり、県民が口にする食料品の6割以上は県外から移輸入されていることになる。本県にとって、まず県内素材を活かして県内調達率を高め、さらに県外マーケットを開拓するため、6次産業化は二重の意味で重要であると言える。
2 6次産業化の事業面での課題
このように6次産業化は重要な意味を持つが、様々な調査報告(※1)において、6次産業化を事業として成功させるためには多くの解決すべき課題があることが指摘されている。
これらを整理すると、6次産業化の課題には、大きく分けて①商品開発、②生産、③マーケティング、④経営資源の確保の4つがある。
(1)商品開発
これらを整理すると、6次産業化の課題には、大きく分けて①商品開発、②生産、③マーケティング、④経営資源の確保の4つがある。
(1)商品開発
最初のハードルが「商品開発」である。
日本政策金融公庫の調査(※1)では、6次産業化事業の約8割が農産物の加工を行っている。このように加工食品の開発を行う場合、「売れる商品」を開発することは簡単なことではない。専業の食品製造業者によって日々新商品が市場に投入され、食品スーパーやコンビニの売り場に膨大な数の食品が並んでいる中で、既存商品との差別化をはかり消費者にとって魅力ある商品を産み出すことには大きなハードルがある。
(2)生産
日本政策金融公庫の調査(※1)では、6次産業化事業の約8割が農産物の加工を行っている。このように加工食品の開発を行う場合、「売れる商品」を開発することは簡単なことではない。専業の食品製造業者によって日々新商品が市場に投入され、食品スーパーやコンビニの売り場に膨大な数の食品が並んでいる中で、既存商品との差別化をはかり消費者にとって魅力ある商品を産み出すことには大きなハードルがある。
次に、開発した商品を安定した品質、量で生産する体制の構築が課題となる。特に、6次産業化に関しては商品がほとんど「食品」となることから、食品衛生・リスク管理面など「安心安全」の確保の点で課題があることが指摘されている(※2)。
(3)マーケティング
次のハードルとなるのが「販売」である。すなわち、①商品の価値を認め購入してくれる消費者をターゲットに定め、②商品の価値に見合った価格を設定し、③ターゲットに商品を届ける販路を開拓し、④商品の価値を伝える広告・宣伝等を実行することが必要となる。これらはマーケティングの問題となるが、農業者等を事業主体とする6次産業化では、ハードルは特に高くなる。先進的な一部の農業者以外の多くの農業者にとって、従来は「販売=JAや市場への出荷」であり、生産物をどんな消費者に購入してもらうのか、販路開拓をどうするかという面は未経験の領域となるからである。マーケティングに関しては、農産物の生産とはまったく違うノウハウ、経営能力が必要となる。
(4)経営資源の確保
上に述べた商品開発、生産、マーケティングなどの事業活動を実行するためには、そのための経営資源(人、モノ、資金、情報)を確保する必要がある。新たに6次産業化に取り組む事業者にとって、いかにして経営資源を確保するかということは極めて大きな課題となる。実際の例をみると、「資金や人材」の確保、また、新しい事業への進出に必要な「情報」(ノウハウ、経営能力を含む)の確保が特に重要である。
(※1) ・日本政策金融公庫 「平成23年度 農業の6次産業化に関する調査」2012年1月
・野村アグリプランニング&アドバイザリー株式会社「6次産業化を推進するに当たっての課題の抽出と解決方法の検討」 平成24年3月
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構「地域資源を活かした食料品の販路拡大に関する調査研究」2013年3月
・野村アグリプランニング&アドバイザリー株式会社「6次産業化を推進するに当たっての課題の抽出と解決方法の検討」 平成24年3月
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構「地域資源を活かした食料品の販路拡大に関する調査研究」2013年3月
(※2) 消費者団体FOOCOMが運営するウェブ記事「無責任な『6次産業化』が、心配」2013年2月15日 https://www.foocom.net/column/editor/8622/
3 本県先進事例にみる課題の解決
(1)事業実績を上げている事例
本県でも、6次産業化に取り組み事業としての実績を上げている事例がある。そのような事業者はいかにして、課題と取り組み、それを解決しているのかを調査した。
(2)株式会社秋田ニューバイオファーム
a 事業等の概要
(3)浅舞婦人漬物研究会
当社は、由利本荘市を本拠地として、きりたんぽを中心とする加工食品製造や観光農園の運営等を行っている。
・従業員数 約70名(パートを含む)
・売上高 8億5千万円
昭和62年に農事組合法人として発足、ミニトマトなどのハウス栽培を行っていたが、経営の安定に向け通年稼働をはかるため、平成元年にきりたんぽの加工を開始。平成7年、観光農園「ハーブワールドAKITA」をオープン。平成17年に株式会社化し、平成22年には、東京都港区にある秋田県のアンテナショップ「あきた美彩館」の運営を受託した。
現在は、きりたんぽ、比内地鶏スープ、りんごジュースを中心とする加工食品の製造・販売、ハーブワールドAKITAでの売上、あきた美彩館運営の三つが販売の柱となっている。
b 商品開発・製造
・従業員数 約70名(パートを含む)
・売上高 8億5千万円
昭和62年に農事組合法人として発足、ミニトマトなどのハウス栽培を行っていたが、経営の安定に向け通年稼働をはかるため、平成元年にきりたんぽの加工を開始。平成7年、観光農園「ハーブワールドAKITA」をオープン。平成17年に株式会社化し、平成22年には、東京都港区にある秋田県のアンテナショップ「あきた美彩館」の運営を受託した。
現在は、きりたんぽ、比内地鶏スープ、りんごジュースを中心とする加工食品の製造・販売、ハーブワールドAKITAでの売上、あきた美彩館運営の三つが販売の柱となっている。
食品加工へ進出した際に選んだ商品が「きりたんぽ」であった。これには「本荘由利地域の食味の良い米をもっと売りたい」という動機があった。セリやネギ、キノコなど、きりたんぽ以外の食材に関しても端境期を除いては県内産の農産物を用いている(りんごジュースの原料も全量県内産)。製造に関しては、懇意にしている近隣のきりたんぽ加工事業者からノウハウ等の指導を受けながら事業を開始した。
きりたんぽは味などの面で差別化しにくい商品であり、販路開拓に訪問した先からの「他とどこが違うんですか」という言葉が最も厳しい問いかけであった。この課題を解決するために、平成15年に東北地方で初となるJAS法オーガニック認定工場の資格を取得。きりたんぽ製造業者としては唯一の認定であり、大手スーパーグループ等との取引拡大につながった。
c マーケティング
きりたんぽは味などの面で差別化しにくい商品であり、販路開拓に訪問した先からの「他とどこが違うんですか」という言葉が最も厳しい問いかけであった。この課題を解決するために、平成15年に東北地方で初となるJAS法オーガニック認定工場の資格を取得。きりたんぽ製造業者としては唯一の認定であり、大手スーパーグループ等との取引拡大につながった。
当社はきりたんぽ加工を開始するに当たり、県内マーケットは飽和状態にあると考え、最初から販売先を関東に絞った。
販路開拓に関しては、青果(ミニトマト)を卸していた首都圏の卸売業者のルートを活用して横浜等のスーパーに出荷することができた。また、全国に販路を有する納豆製造業者・株式会社ヤマダフーズ(本社・美郷町)が自社製品だけでなく他の県産品販売にも力を入れていたことから、このルートも販路として活用した。
きりたんぽに馴染みのない首都圏の消費者に対しては、売り場での実演・試食販売や作り方を説明したリーフレットの配布等を行った。
d ハーブワールドAKITA
販路開拓に関しては、青果(ミニトマト)を卸していた首都圏の卸売業者のルートを活用して横浜等のスーパーに出荷することができた。また、全国に販路を有する納豆製造業者・株式会社ヤマダフーズ(本社・美郷町)が自社製品だけでなく他の県産品販売にも力を入れていたことから、このルートも販路として活用した。
きりたんぽに馴染みのない首都圏の消費者に対しては、売り場での実演・試食販売や作り方を説明したリーフレットの配布等を行った。
それまで、旧・西目町内には人が集まるような施設がなく、農業と関係がある施設としてハーブ園を構想した。ハーブワールド開設に関しては、旧・西目町から町有地を借り受けるという支援を受けた。現在は、物販、レストラン、体験工房、岩盤浴施設を兼ね備えた複合的な農園となっている。入園者は、県境を越えた庄内地域からの客も含め、開園当初のピーク時で年間13万人、現在は6.5~8万人を集めている。農業を主体としたテーマパークとして話題作りに成功、商品PRにも役立っている。
e 経営資源の確保
当社が食品加工分野に進出し、観光農園を開設した理由には、通年稼働を可能にし、雇用の維持・安定をはかりたいという動機があった。ハーブワールドは冬期間に休業するため、その人員を需要期となるきりたんぽ加工にシフトすることにより、事業に必要な人員の確保と雇用の維持を両立させている。
a 事業等の概要
(4)株式会社四季菜
当研究会は、横手市平鹿町浅舞地区において、地元農家が栽培する野菜等を活用した漬物の加工・販売を行っている。
・従業員数 22名(うち女性19名)
・売上高 2億円
米の減反政策が始まった昭和45年、平鹿町浅舞地区婦人部と農協婦人部が、共同して行っていた学習の成果を活かし漬物加工事業を開始。
商品は秋田県種苗交換会で昭和50年から3年連続で農林水産大臣賞を受賞するなど、高い評価を得た。当初、「粕漬」「味噌漬」(商品名)の2アイテムでスタートした商品も現在、24アイテムに拡大。創業以来43年に亘り、女性を中心に漬物加工事業を継続、発展させている。
b 商品開発・生産
・従業員数 22名(うち女性19名)
・売上高 2億円
米の減反政策が始まった昭和45年、平鹿町浅舞地区婦人部と農協婦人部が、共同して行っていた学習の成果を活かし漬物加工事業を開始。
商品は秋田県種苗交換会で昭和50年から3年連続で農林水産大臣賞を受賞するなど、高い評価を得た。当初、「粕漬」「味噌漬」(商品名)の2アイテムでスタートした商品も現在、24アイテムに拡大。創業以来43年に亘り、女性を中心に漬物加工事業を継続、発展させている。
当研究会の強みは、商品が高い評価を得て、固定客を確保していることである。そのルーツは、各家庭の「秘伝」とも言える漬物製法を地域で行う生活工夫展のコンクールなどで共有、発展させたことにある。
原料となる農産物は地元農家150戸との契約栽培により調達している。当研究会による加工の前工程となる「下漬け」に関しては、下漬出荷組合を組織し、塩分や品質の統一のため年2回の講習を実施、手造りの味を守ってきた。毎年、研究会内で新商品開発コンクールを実施、グループが競い合って商品作りに挑戦している。
平成24年には、県内漬物業界で第1号となる秋田県版HACCP認証を取得。金属探知機を導入して異物の混入を防止するなど、食品の安心安全面には万全を期している。
c マーケティング
原料となる農産物は地元農家150戸との契約栽培により調達している。当研究会による加工の前工程となる「下漬け」に関しては、下漬出荷組合を組織し、塩分や品質の統一のため年2回の講習を実施、手造りの味を守ってきた。毎年、研究会内で新商品開発コンクールを実施、グループが競い合って商品作りに挑戦している。
平成24年には、県内漬物業界で第1号となる秋田県版HACCP認証を取得。金属探知機を導入して異物の混入を防止するなど、食品の安心安全面には万全を期している。
創業当初は、農協店舗以外どこも商品を取り扱ってもらえなかった。そこで、横手のかまくら祭りの際に臨時の店を出し即売するなどの苦労を重ねたが、旧・平鹿町が出稼者への慰問品として大量に買い上げてくれたことがきっかけとなって次第に評判が広がり、東京方面からも注文が入るようになった。さらに、種苗交換会での受賞によりマスコミ等に取り上げられるようになり知名度が高まっていった。
現在の販路は、卸・問屋経由が全体の約7割と中心となっており、地域別にみると県外向けが37%となっている。
販売促進は年2回の固定客へのダイレクトメール発送(約7600通)を中心としているが、雑誌・テレビ番組等で取り上げられる事が多く、これが当研究会の認知度向上に寄与している。
d 経営資源の確保
現在の販路は、卸・問屋経由が全体の約7割と中心となっており、地域別にみると県外向けが37%となっている。
販売促進は年2回の固定客へのダイレクトメール発送(約7600通)を中心としているが、雑誌・テレビ番組等で取り上げられる事が多く、これが当研究会の認知度向上に寄与している。
当研究会の創業に当たっては、旧・平鹿町と農協からの助成各25万円、個人250名からの出資金83万円により資金を調達、事業をスタートした。平成4年の新工場建設では、機械設備を含む総投資額2億円のうち、約半分を農林水産省の補助金で賄うなど行政等の支援を得ながら事業を行ってきたが、基本的には、経費支出を極力切り詰め、積み立てた資金を主体に設備投資を行い、現在は無借金となっている。
人材に関しては、設立当時の趣意書に「婦人の働き場を作る」と掲げているように、女性主体で運営してきた。「あきた経済」2013年4月号・「農業分野における秋田県女性起業の現状」で報告したように、本県では農業分野の女性起業件数が全国でも高いレベルにあるが、当研究会は女性起業の先駆となっている。
人材に関しては、設立当時の趣意書に「婦人の働き場を作る」と掲げているように、女性主体で運営してきた。「あきた経済」2013年4月号・「農業分野における秋田県女性起業の現状」で報告したように、本県では農業分野の女性起業件数が全国でも高いレベルにあるが、当研究会は女性起業の先駆となっている。
a 事業等の概要
当社は秋田市において、レトルト食品などの惣菜やプリンを中心とする菓子の製造・販売、機能性食品や特産品の開発を行っている。
・従業員数 18名
・売上高 1億1千万円
当社は平成3年に有限会社として設立され量販店内で惣菜店を営んでいた。その後、現代表が経営を引き継ぎ、県産品を活用した特産品開発を事業目的に据えて再スタートした。
平成9年から秋田県総合食品研究所の開放研究室に入所し、商品開発に取り組んだ。平成10年「男鹿鯛めし」を開発し、秋田県特産品開発コンクールで最優秀賞に選ばれたのを皮切りに、「みたらしぷりん」などのヒット商品開発に成功。地域資源を活用したこだわりのある食品を数多く市場に送り出している。
b 商品開発・生産
・従業員数 18名
・売上高 1億1千万円
当社は平成3年に有限会社として設立され量販店内で惣菜店を営んでいた。その後、現代表が経営を引き継ぎ、県産品を活用した特産品開発を事業目的に据えて再スタートした。
平成9年から秋田県総合食品研究所の開放研究室に入所し、商品開発に取り組んだ。平成10年「男鹿鯛めし」を開発し、秋田県特産品開発コンクールで最優秀賞に選ばれたのを皮切りに、「みたらしぷりん」などのヒット商品開発に成功。地域資源を活用したこだわりのある食品を数多く市場に送り出している。
商品開発の特徴は、試験研究機関の活用と地域資源の活用にこだわった開発の二つである。「男鹿鯛めし」を開発した際は、秋田県総合食品研究所の開放研究室での研究を活かし、食品中の水分をコントロールすることにより、他県の鯛めしにはなかった自然な食感と常温長期保存を両立させることに成功、これがコンクールでの受賞につながった。
また、「ハチ公プリン」では、食肉としては有名であったが、それほど活用されていなかった比内地鶏の卵に注目、その卵を活用したプリンを開発した。「みたらしぷりん」では、大手と同じことをやっていては勝てないと、醤油ベースの味を模索。県内30近い醸造元の醤油との組合せを試み、無添加、天然醸造で造る湯沢市の醸造元の醤油が最適であることを突き止めた。
機能性食品の分野では、上小阿仁村の「こはぜ」(植物)の実が一般的なブルーベリーの2~3倍のポリフェノールとアントシアニンを含み、優れた抗酸化作用を持つことに注目。この機能性の高い成分を損なわず、かつ美味しいゼリーとなる製造方法の開発に成功した。
c マーケティング
また、「ハチ公プリン」では、食肉としては有名であったが、それほど活用されていなかった比内地鶏の卵に注目、その卵を活用したプリンを開発した。「みたらしぷりん」では、大手と同じことをやっていては勝てないと、醤油ベースの味を模索。県内30近い醸造元の醤油との組合せを試み、無添加、天然醸造で造る湯沢市の醸造元の醤油が最適であることを突き止めた。
機能性食品の分野では、上小阿仁村の「こはぜ」(植物)の実が一般的なブルーベリーの2~3倍のポリフェノールとアントシアニンを含み、優れた抗酸化作用を持つことに注目。この機能性の高い成分を損なわず、かつ美味しいゼリーとなる製造方法の開発に成功した。
当社は秋田県特産品開発コンクールで6回の最優秀賞を受賞するなど数々の受賞歴を有する。その実績を基に首都圏等での物産展で商品を紹介し、デパートなどの売り場での商品展示につなげるという販路開拓を行ってきた。
また、ストーリー性のあるブランド展開にも特徴を持ち、ハチ公物語の舞台である渋谷の商工団体「ハチ公会」から秋田と東京をつなぐ商品を作れないかという問いかけを受けたことから、ハチ公誕生の地である県北の食材・比内地鶏の卵を用いた「ハチ公プリン」を開発した。
当社の商品は原材料を厳選しているため通常商品に比べ価格が高いこともあり、販売先としては県外の割合が約9割と圧倒的に大きい。今後は別ブランド開発も視野に入れ、県内マーケット開拓を検討している。また、海外の商談会でハチ公プリンの引き合いがあったことから、事業の海外展開を展望して、長期保存が可能となるアルミ製パッケージ商品の開発を計画している。
d 経営資源の確保
また、ストーリー性のあるブランド展開にも特徴を持ち、ハチ公物語の舞台である渋谷の商工団体「ハチ公会」から秋田と東京をつなぐ商品を作れないかという問いかけを受けたことから、ハチ公誕生の地である県北の食材・比内地鶏の卵を用いた「ハチ公プリン」を開発した。
当社の商品は原材料を厳選しているため通常商品に比べ価格が高いこともあり、販売先としては県外の割合が約9割と圧倒的に大きい。今後は別ブランド開発も視野に入れ、県内マーケット開拓を検討している。また、海外の商談会でハチ公プリンの引き合いがあったことから、事業の海外展開を展望して、長期保存が可能となるアルミ製パッケージ商品の開発を計画している。
当社の特徴は、経営資源の中の情報・ノウハウを独自の方法で開発していることである。前述のとおり、商品開発に当たり秋田県総合食品研究所の支援を活用している他、研究機関や民間企業とともに「秋田県機能性食品研究会」を設立し、産学官連携の活動を展開している。
4 先進事例から考える成功のポイント
(1)商品開発
以上に挙げた先進事例を基に、6次産業化を事業として成功させるポイントを探る。
まず、商品開発に関するポイントとしては、①地場産品へのこだわりと独自のノウハウ、②チャレンジの継続の二つが挙げられる。
6次産業化としては当然のことではあるが、3先とも地元産品への徹底したこだわりから商品化がスタートしている。㈱秋田ニューバイオファームのきりたんぽは食味の良い地元の米の消費拡大を狙いとし、浅舞婦人漬物研究会の漬物は地元農産物の有効利用をはかることが目的であった。また、㈱四季菜の商品は、県内各地に足を運び地場産品を吟味して開発された。
加工では、独自の技術、ノウハウが活用されている。浅舞婦人漬物研究会の漬物は、各家庭の「秘伝の味、製法」をコンクールで共有化し、それを継承、発展させたものであり、㈱四季菜の商品は、試験研究機関の支援や産学官連携組織での研究を活用して生み出されている。
ただし、一度高い評価を得た商品であっても、その評価が続くとは限らない。事例のどの先も新たな商品開発に絶えず挑戦している。㈱秋田ニューバイオファームは、主力のきりたんぽ等に続いて、地場産品を原料とする「なたね油」や「どぶろく」の開発を行い、浅舞婦人漬物研究会は、同じ漬物という商品ジャンルながら、毎年、新商品開発コンクールを実施、商品を現在の24アイテムに拡大した。㈱四季菜も、絶えず新しい地場産品の発掘を試み、「こはぜゼリー」などの新商品を開発している。
(2)生産
まず、商品開発に関するポイントとしては、①地場産品へのこだわりと独自のノウハウ、②チャレンジの継続の二つが挙げられる。
6次産業化としては当然のことではあるが、3先とも地元産品への徹底したこだわりから商品化がスタートしている。㈱秋田ニューバイオファームのきりたんぽは食味の良い地元の米の消費拡大を狙いとし、浅舞婦人漬物研究会の漬物は地元農産物の有効利用をはかることが目的であった。また、㈱四季菜の商品は、県内各地に足を運び地場産品を吟味して開発された。
加工では、独自の技術、ノウハウが活用されている。浅舞婦人漬物研究会の漬物は、各家庭の「秘伝の味、製法」をコンクールで共有化し、それを継承、発展させたものであり、㈱四季菜の商品は、試験研究機関の支援や産学官連携組織での研究を活用して生み出されている。
ただし、一度高い評価を得た商品であっても、その評価が続くとは限らない。事例のどの先も新たな商品開発に絶えず挑戦している。㈱秋田ニューバイオファームは、主力のきりたんぽ等に続いて、地場産品を原料とする「なたね油」や「どぶろく」の開発を行い、浅舞婦人漬物研究会は、同じ漬物という商品ジャンルながら、毎年、新商品開発コンクールを実施、商品を現在の24アイテムに拡大した。㈱四季菜も、絶えず新しい地場産品の発掘を試み、「こはぜゼリー」などの新商品を開発している。
生産面のポイントとしては、①農家等との良好な関係を基礎とする原材料の安定確保、②食品衛生面のリスク管理の2点が挙げられる。
6次産業化では、農産物等の原材料を安定して確保することが不可欠である。浅舞婦人漬物研究会会長の佐藤氏は「大事なことは、原料がいつも豊かに蓄えられていることであり、それでこそ新商品の開発も行える」と述べている。㈱四季菜社長の高橋氏は「一つの事業者が一気通貫でやらなくても、農業者や加工業者などが『連携』できる仕組みを地域に定着できれば、6次産業化となる」と述べている。そのためには、契約栽培等により農家にとっても販売先が確保され、農業者、加工業者の双方にとってメリットのある関係を築く必要がある。
6次産業化では、食品衛生面のリスク管理も重要である。事例の3先とも、秋田県版HACCP認定を取得しており、㈱秋田ニューバイオファームでは、さらにJAS法オーガニック認定を取得している。このことが、「安心安全」のアピールになり、他との差別化につながっている。
(3)マーケティング
6次産業化では、農産物等の原材料を安定して確保することが不可欠である。浅舞婦人漬物研究会会長の佐藤氏は「大事なことは、原料がいつも豊かに蓄えられていることであり、それでこそ新商品の開発も行える」と述べている。㈱四季菜社長の高橋氏は「一つの事業者が一気通貫でやらなくても、農業者や加工業者などが『連携』できる仕組みを地域に定着できれば、6次産業化となる」と述べている。そのためには、契約栽培等により農家にとっても販売先が確保され、農業者、加工業者の双方にとってメリットのある関係を築く必要がある。
6次産業化では、食品衛生面のリスク管理も重要である。事例の3先とも、秋田県版HACCP認定を取得しており、㈱秋田ニューバイオファームでは、さらにJAS法オーガニック認定を取得している。このことが、「安心安全」のアピールになり、他との差別化につながっている。
㈱秋田ニューバイオファーム社長の鈴木氏は、「6次産業化で一番大事なことは『出口』、すなわち販売」と述べている。販売面では3先とも県外マーケットの開拓に成功しているが、マーケティング戦略は、それぞれの特徴がある。それをまとめると①コンクール等での受賞による知名度アップ、②生産管理面の認証による「安心安全」のアピール、③ストーリー性のあるブランド構築の3点が挙げられる。さらに④地道な販路開拓の努力が共通するポイントである。
浅舞婦人漬物研究会と㈱四季菜は、種苗交換会や特産品開発コンクールで数々の受賞歴を誇り、報道等で取り上げられて知名度が向上した。
㈱秋田ニューバイオファームは、差別化しにくい「きりたんぽ」の販路開拓に当たり、同商品製造に関して唯一となるJAS法オーガニック認定を取得、「安心安全」をアピールした。
また、3先に共通する特徴として、ストーリー性(物語性)のあるブランド構築が挙げられる。㈱四季菜が「忠犬ハチ公」という物語を活かしてハチ公プリンを開発したのが代表的であるが、浅舞婦人漬物研究会は、会の名称自体に「農家のお母さんたちが一生懸命研究して漬物を手造りしました」というメッセージが込められている。また、㈱秋田ニューバイオファームは、ハーブワールドAKITAの運営会社として認知度が高く、農業によるテーマパークという明るく楽しいイメージ創出に成功している。
ただし、各先とも最初からスムーズに販路が開拓された訳ではない。浅舞婦人漬物研究会の創業当時、メンバーはイベント会場で慣れない漬物の即売を行い、㈱四季菜は、首都圏のデパートなど大手小売業に足を運んで販路開拓を行った。また、㈱秋田ニューバイオファームが首都圏でのきりたんぽ普及のために売り場での実演・試食を繰り返したように、地道な努力がその後の販路開拓につながっていった。
(4)経営資源の確保
浅舞婦人漬物研究会と㈱四季菜は、種苗交換会や特産品開発コンクールで数々の受賞歴を誇り、報道等で取り上げられて知名度が向上した。
㈱秋田ニューバイオファームは、差別化しにくい「きりたんぽ」の販路開拓に当たり、同商品製造に関して唯一となるJAS法オーガニック認定を取得、「安心安全」をアピールした。
また、3先に共通する特徴として、ストーリー性(物語性)のあるブランド構築が挙げられる。㈱四季菜が「忠犬ハチ公」という物語を活かしてハチ公プリンを開発したのが代表的であるが、浅舞婦人漬物研究会は、会の名称自体に「農家のお母さんたちが一生懸命研究して漬物を手造りしました」というメッセージが込められている。また、㈱秋田ニューバイオファームは、ハーブワールドAKITAの運営会社として認知度が高く、農業によるテーマパークという明るく楽しいイメージ創出に成功している。
ただし、各先とも最初からスムーズに販路が開拓された訳ではない。浅舞婦人漬物研究会の創業当時、メンバーはイベント会場で慣れない漬物の即売を行い、㈱四季菜は、首都圏のデパートなど大手小売業に足を運んで販路開拓を行った。また、㈱秋田ニューバイオファームが首都圏でのきりたんぽ普及のために売り場での実演・試食を繰り返したように、地道な努力がその後の販路開拓につながっていった。
経営資源については、①節約を徹底し資源を有効活用すること、②公的な支援を活用すること、③独自のノウハウ開発がポイントである。
浅舞婦人漬物研究会では、創業メンバーが手弁当に近い形でスタートして以来、経費節減が徹底されている。㈱秋田ニューバイオファームでは、季節によって要員をシフトし雇用を維持しながら人材を有効に活用するシステムが構築されている。経営資源が必ずしも潤沢ではない6次産業化の事業体にとっては、経営資源を極力有効に活用することが大切である。
さらに、事例では行政機関の補助金など資金面の公的支援を活用しているほか、㈱四季菜は試験研究機関の活用などノウハウの面でも公的支援を活かしている。国や秋田県は、6次産業化支援に力を入れており、今後、公的支援の活用はますます重要となると考えられる。
経営資源のうち情報に関しては、(1)商品開発で述べたように、独自の技術・ノウハウを開発、確保することが、事業の核となっている。
(5)まとめ
浅舞婦人漬物研究会では、創業メンバーが手弁当に近い形でスタートして以来、経費節減が徹底されている。㈱秋田ニューバイオファームでは、季節によって要員をシフトし雇用を維持しながら人材を有効に活用するシステムが構築されている。経営資源が必ずしも潤沢ではない6次産業化の事業体にとっては、経営資源を極力有効に活用することが大切である。
さらに、事例では行政機関の補助金など資金面の公的支援を活用しているほか、㈱四季菜は試験研究機関の活用などノウハウの面でも公的支援を活かしている。国や秋田県は、6次産業化支援に力を入れており、今後、公的支援の活用はますます重要となると考えられる。
経営資源のうち情報に関しては、(1)商品開発で述べたように、独自の技術・ノウハウを開発、確保することが、事業の核となっている。
今回、6次産業化の先進事例を調査する中で、各事業者が6次産業化に取り組んだ背景には共通の「危機感」があると感じた。
浅舞婦人漬物研究会のお母さんたちが漬物加工に取り組んだのは減反政策が始まった年であり、農業のあり方が姿を変える中で、それまで男性について黙々と働いてきた女性たちも何か出来ることを始めなければならないという思いがあったと、佐藤会長から伺った。
そのような農業に関する危機感は、㈱秋田ニューバイオファームや㈱四季菜の代表者も異口同音に述べており、これが様々な課題を乗り越えて6次産業化を事業として継続させてきた原動力になっていると思われる。本県で、先進事例に学び6次産業化の事業に成功する事業者が続くことを期待したい。
浅舞婦人漬物研究会のお母さんたちが漬物加工に取り組んだのは減反政策が始まった年であり、農業のあり方が姿を変える中で、それまで男性について黙々と働いてきた女性たちも何か出来ることを始めなければならないという思いがあったと、佐藤会長から伺った。
そのような農業に関する危機感は、㈱秋田ニューバイオファームや㈱四季菜の代表者も異口同音に述べており、これが様々な課題を乗り越えて6次産業化を事業として継続させてきた原動力になっていると思われる。本県で、先進事例に学び6次産業化の事業に成功する事業者が続くことを期待したい。
(荒牧 敦郎)