機関誌「あきた経済」
本県における第三セクター鉄道と地域活性化
民営鉄道や第三セクターによって運営される地域鉄道は、沿線地域の人口減少やモータリゼーションの進行により、全国的に経営面で厳しい状況にある。こうした中、地域鉄道を「地域住民の足」という基本的な役割に加えて、地域活性化のための資源と捉えなおし、再生と活性化をはかる取組みが各地で行われている。本稿では、この観点から本県における第三セクター鉄道の現状を調査し、地域活性化のために第三セクター鉄道を活用する方向性を探った。
1 全国的な地域鉄道の状況
(1)厳しさを増す経営環境
(2)新たな意義付け
我が国で中小民営鉄道および第三セクターによって運営される鉄道事業者の経営状況は、沿線地域での人口減少や少子高齢化、モータリゼーションの進行によって極めて厳しい状況が続いている。平成23年度には全91社中69社(約76%)の地域鉄道事業者が鉄軌道業の経常収支ベースで赤字を計上している。また、経営状態の悪化から路線が廃止される事例が相次いでおり、平成12年度以降、平成25年3月までに35路線、673.7kmが廃止となっている(※1)。
第三セクター鉄道の赤字は地方自治体からの補助金等によって補填されるケースが多いが、地方自治体の財政状況も厳しさを増す中で、経営改善は大きな課題となっている。
(※1) 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
「地域鉄道における再生・活性化へ向けた事例調査」 (平成24年度)
第三セクター鉄道の赤字は地方自治体からの補助金等によって補填されるケースが多いが、地方自治体の財政状況も厳しさを増す中で、経営改善は大きな課題となっている。
(※1) 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
「地域鉄道における再生・活性化へ向けた事例調査」 (平成24年度)
(2)新たな意義付け
地域鉄道にとって「地域住民の足」としての地域交通サービス提供は本質的なものであり重要であるが、沿線地域の人口減少等は今後も続くことが予想され、沿線住民の利用促進だけでは、経営の改善をはかることが難しい。
このような経営環境の中、地域鉄道を新たな観点から意義付け、活性化の方策を考える動きが全国的に広がっている。それは、地域鉄道を地域活性化のための「資源」として捉え直し、観光誘客による交流人口増加や地域からの情報発信のために活用しようとする動きである。
このような経営環境の中、地域鉄道を新たな観点から意義付け、活性化の方策を考える動きが全国的に広がっている。それは、地域鉄道を地域活性化のための「資源」として捉え直し、観光誘客による交流人口増加や地域からの情報発信のために活用しようとする動きである。
2 本県での社長公募と新たな取組み
本県における二つの第三セクター鉄道では、ともに現在の社長が公募により就任してから約2年が経過した。
「あきた経済」へ寄稿していただいた経営随想で、由利高原鉄道の春田啓郎社長は「ローカル鉄道の経営を健全化するためには地域の活性化とセットでないと難しい」と述べられ、秋田内陸縦貫鉄道の酒井一郎社長は「内陸線は地域の基幹産業を目指す」と述べられている(※2)。
これは、ともに「地域鉄道を地域活性化のための資源として活用する」という考え方と共通する観点と考えられる。本稿では、この観点から本県における第三セクター鉄道の経営状態および取り組みを説明し、地域活性化への活用の方向性を考える。
(※2) 由利高原鉄道・春田啓郎社長(2012年10月号)
秋田内陸縦貫鉄道・酒井一郎社長(2013年2月号)
「あきた経済」へ寄稿していただいた経営随想で、由利高原鉄道の春田啓郎社長は「ローカル鉄道の経営を健全化するためには地域の活性化とセットでないと難しい」と述べられ、秋田内陸縦貫鉄道の酒井一郎社長は「内陸線は地域の基幹産業を目指す」と述べられている(※2)。
これは、ともに「地域鉄道を地域活性化のための資源として活用する」という考え方と共通する観点と考えられる。本稿では、この観点から本県における第三セクター鉄道の経営状態および取り組みを説明し、地域活性化への活用の方向性を考える。
(※2) 由利高原鉄道・春田啓郎社長(2012年10月号)
秋田内陸縦貫鉄道・酒井一郎社長(2013年2月号)
3 本県における第三セクター鉄道の状況
(1) 由利高原鉄道株式会社
(2)秋田内陸縦貫鉄道株式会社
a 事業等の概要
由利高原鉄道(鳥海山ろく線)は、昭和60年10月に旧国鉄矢島線を引き継ぐ第三セクター鉄道として誕生した。JR羽後本荘駅から鳥海山の麓である矢島駅まで全長23.0kmの路線に11の駅(起点駅を含まず)を配する。
秋田県と由利本荘市が各38.5%を出資、残り23%を民間企業、商工団体等が出資している。
春田啓郎社長は、平成23年6月、公募により就任した。
秋田県と由利本荘市が各38.5%を出資、残り23%を民間企業、商工団体等が出資している。
春田啓郎社長は、平成23年6月、公募により就任した。
b 経営実績
過去10年間の経営実績をみると、まず利用人員の面では減少傾向が続いており、平成24年度の利用人員は平成15年度の81%であった。利用客の内訳では、平成24年では全体の71%が定期の利用客である。定期利用客の中では通学定期の割合が88%と圧倒的に多い。しかし、沿線地域の人口減少や少子化の影響、羽後本荘駅から徒歩圏内だった本荘高校や由利高校が駅から遠い場所に移転した影響から、定期の利用客は減少を続けている。
過去10年間の損益面をみると、平成21年度まで70百万円台の経常赤字で推移していたが、平成22年度以降は80百万円台以上に赤字幅が拡大している。
過去10年間の損益面をみると、平成21年度まで70百万円台の経常赤字で推移していたが、平成22年度以降は80百万円台以上に赤字幅が拡大している。
c 平成24年度の収支目標の達成
由利高原鉄道と秋田県および由利本荘市の「3者合意」では、平成24年度は経常損失を82,763千円以内に抑えることを目標としていたが、実績では赤字額を前年度比8,458千円減の81,834千円に抑え、目標をクリアした。
定期利用客は前年度比約1万6千人減少したが、観光客など定期外の利用客が約1万6千人増加し、総体では600人の増加となった。運賃割引のない定期外の利用客増加などから営業収益が17百万円増加し、営業収益はこの10年間で初めて1億円を突破。この収益増加を主因として損益を改善することができた。
3者合意では、赤字をさらに段階的に圧縮し、平成27年度の赤字を69,588千円以内に抑える目標としており、達成のハードルは一層高くなる。春田社長は、定期外の利用客をさらに増加させ、今後1~2年で定期利用客とほぼ同数までもっていくことを目標としている。
定期利用客は前年度比約1万6千人減少したが、観光客など定期外の利用客が約1万6千人増加し、総体では600人の増加となった。運賃割引のない定期外の利用客増加などから営業収益が17百万円増加し、営業収益はこの10年間で初めて1億円を突破。この収益増加を主因として損益を改善することができた。
3者合意では、赤字をさらに段階的に圧縮し、平成27年度の赤字を69,588千円以内に抑える目標としており、達成のハードルは一層高くなる。春田社長は、定期外の利用客をさらに増加させ、今後1~2年で定期利用客とほぼ同数までもっていくことを目標としている。
d 観光誘客の取り組み
春田社長は、就任以来「ローカル鉄道は地域の宝」を合言葉として、経営に取り組んできた。
地域に鉄道が存在することで時刻表に駅名が載り、全国的な知名度がアップする。また、様々なイベントを行うことでマスコミ等に取り上げられ情報発信も増加する。逆に鉄道が廃止されると、地域の過疎化はより速いスピードで進むと予想される。そうした意味で、鉄道は地域の活性化のシンボルであり「地域の宝」である。そういう考えに基づき鉄道という資源を活かした観光誘客のユニークな新しい企画を次々に発表、実行しており、これが前述の定期外の利用客増加につながった。
まず、イベント列車を以前の4倍程度に増やした。沿線の美味しいものを提供する「B級グルメ列車」、列車の揺れを感じながらバランスの良い立ち方等について専門家の指導を受ける「エクササイズ列車」などの運行を計画している。「エクササイズ列車」はアテンダント(乗務員)の発案を取り入れた企画である。
イベント列車の利用は、地元・由利本荘市に加え、秋田市、酒田市などからの客が多いが、好評を得てほぼ満員近い参加がある。定員が36名程度で収益上では大きな貢献はないものの、新聞やテレビに取り上げられるという情報発信や、イベント列車に乗った人が次に家族や知人を連れてくるという2次効果に期待している。
上り下りの各一便には、おばこ姿の女性アテンダントが乗務して、利用客の接遇に当たっている。全国的に和服を制服とする乗務員は珍しく、一緒に写真を撮る乗客もいるという。
地域に鉄道が存在することで時刻表に駅名が載り、全国的な知名度がアップする。また、様々なイベントを行うことでマスコミ等に取り上げられ情報発信も増加する。逆に鉄道が廃止されると、地域の過疎化はより速いスピードで進むと予想される。そうした意味で、鉄道は地域の活性化のシンボルであり「地域の宝」である。そういう考えに基づき鉄道という資源を活かした観光誘客のユニークな新しい企画を次々に発表、実行しており、これが前述の定期外の利用客増加につながった。
まず、イベント列車を以前の4倍程度に増やした。沿線の美味しいものを提供する「B級グルメ列車」、列車の揺れを感じながらバランスの良い立ち方等について専門家の指導を受ける「エクササイズ列車」などの運行を計画している。「エクササイズ列車」はアテンダント(乗務員)の発案を取り入れた企画である。
イベント列車の利用は、地元・由利本荘市に加え、秋田市、酒田市などからの客が多いが、好評を得てほぼ満員近い参加がある。定員が36名程度で収益上では大きな貢献はないものの、新聞やテレビに取り上げられるという情報発信や、イベント列車に乗った人が次に家族や知人を連れてくるという2次効果に期待している。
上り下りの各一便には、おばこ姿の女性アテンダントが乗務して、利用客の接遇に当たっている。全国的に和服を制服とする乗務員は珍しく、一緒に写真を撮る乗客もいるという。
e 情報発信
由利高原鉄道では、あらゆる機会を捉えて話題作りを行い、マスコミへの露出機会を増やす試みを行っている。
秋田市の県立博物館で本年7月6日から開催された特別展「あきた大鉄道展」には、同鉄道で昨年度まで運行していたディーゼルカーの運転台を展示。子供たちが操縦を疑似体験できることで人気を集め、特別展の目玉となった。
情報発信面では、IT媒体の活用にも取り組んだ。首都圏のIT専門家をアドバイザーとしてホームページを刷新。同鉄道に関する情報だけでなく、地元の食材や自然、宿泊施設、スキー場などの観光資源を紹介するなど、地域の情報発信媒体として充実したものになっている。
Facebookでは「由利高原鉄道ファン」というページを作成した。このページでのファン同士の交流をきっかけとして、首都圏に同鉄道の応援団が発足、首都圏におけるイベント等に際して自分たちでデザインしたTシャツを着て、ボランティアで手伝ってくれている。地域鉄道に関して地元を離れた遠隔地でのファン組織が存在することは全国的にも珍しい。
秋田市の県立博物館で本年7月6日から開催された特別展「あきた大鉄道展」には、同鉄道で昨年度まで運行していたディーゼルカーの運転台を展示。子供たちが操縦を疑似体験できることで人気を集め、特別展の目玉となった。
情報発信面では、IT媒体の活用にも取り組んだ。首都圏のIT専門家をアドバイザーとしてホームページを刷新。同鉄道に関する情報だけでなく、地元の食材や自然、宿泊施設、スキー場などの観光資源を紹介するなど、地域の情報発信媒体として充実したものになっている。
Facebookでは「由利高原鉄道ファン」というページを作成した。このページでのファン同士の交流をきっかけとして、首都圏に同鉄道の応援団が発足、首都圏におけるイベント等に際して自分たちでデザインしたTシャツを着て、ボランティアで手伝ってくれている。地域鉄道に関して地元を離れた遠隔地でのファン組織が存在することは全国的にも珍しい。
f 地域との協力(コラボレーション)
鉄道を地域活性化に活用するためには、地域の住民や企業、行政との協力が不可欠である。
同鉄道には、地域住民によるアシストクラブという支援組織がある。例えば、年会費5千円のゴールド会員は車内のつり革に応援メッセージ付の氏名を取り付けることができる。
行政との協力では、同社が旅行業の免許を持っていることから、行政機関の要請に応じて地域資源を活用した観光ツアーを実施している。ツアー実施によりお客さんが何を求めているかが分かり、地域における宿泊や食事などの受入れ態勢の課題が理解されるようになった。
同鉄道には、地域住民によるアシストクラブという支援組織がある。例えば、年会費5千円のゴールド会員は車内のつり革に応援メッセージ付の氏名を取り付けることができる。
行政との協力では、同社が旅行業の免許を持っていることから、行政機関の要請に応じて地域資源を活用した観光ツアーを実施している。ツアー実施によりお客さんが何を求めているかが分かり、地域における宿泊や食事などの受入れ態勢の課題が理解されるようになった。
(2)秋田内陸縦貫鉄道株式会社
a 事業等の概要
秋田内陸縦貫鉄道(秋田内陸線、愛称:あきた美人ライン)は、昭和61年11月、旧国鉄阿仁合線・角館線を受け継いで、第三セクター鉄道として開業した。JR鷹巣駅からJR角館駅まで、秋田の内陸部を南北に縦貫する94.2kmに29の駅を配する路線である。
秋田県と「北秋田市・仙北市・上小阿仁村の3市村」が各38.6%を出資、残り22.8%を民間企業、商工団体等が出資している。酒井一郎社長は、平成23年12月、公募により就任した。
秋田県と「北秋田市・仙北市・上小阿仁村の3市村」が各38.6%を出資、残り22.8%を民間企業、商工団体等が出資している。酒井一郎社長は、平成23年12月、公募により就任した。
b 経営実績
過去10年間の経営実績をみると、まず利用人員の面では、平成24年度の利用人員は平成15年度の65%と減少の割合が大きい。利用人員の内訳では、定期利用客の方が多い傾向があったが、平成24年度は、定期、定期外の利用客がほぼ同数となった。
定期利用客の中では、通学定期が平成24年度で90%と大部分を占める。沿線地域での人口減少、少子化や沿線の高校の統廃合により、定期の利用客は減少傾向を続けている。
損益面をみると、路線が長く維持費がかさむこともあり、ここ10年間の営業費用は5億円前後で推移し、経常損失は平成23年度まで2億円超を継続していた。
損益面では、人件費圧縮等により営業費用を減少させたこと、物販・レストラン部門の増収等により営業収益を約55百万円増加させ10年間で最大の計上となったことを主因として、損益を改善することができた。
酒井社長は「あきた経済」への寄稿で「私の最大の使命は、平成24年度の経常赤字を2億円以内に収めること」と述べられたが、その使命を達成したことになった。
定期利用客の中では、通学定期が平成24年度で90%と大部分を占める。沿線地域での人口減少、少子化や沿線の高校の統廃合により、定期の利用客は減少傾向を続けている。
損益面をみると、路線が長く維持費がかさむこともあり、ここ10年間の営業費用は5億円前後で推移し、経常損失は平成23年度まで2億円超を継続していた。
損益面では、人件費圧縮等により営業費用を減少させたこと、物販・レストラン部門の増収等により営業収益を約55百万円増加させ10年間で最大の計上となったことを主因として、損益を改善することができた。
酒井社長は「あきた経済」への寄稿で「私の最大の使命は、平成24年度の経常赤字を2億円以内に収めること」と述べられたが、その使命を達成したことになった。
c 平成24年度の収支目標の達成
秋田内陸縦貫鉄道と、秋田県、北秋田市、仙北市の「4者合意」では、平成22年度以降の経常赤字を2億円以内に圧縮する目標を設定していた。平成22、23年度は達成できなかったが、平成24年度は赤字額を前年度比56,071千円減の195,052千円に抑え、目標を達成した。
利用人員の面では、定期利用客が前年度比で約57千人減少したが、定期外の利用客が約13千人増加し、定期利用客を上回った。
損益面では、人件費圧縮等により営業費用を減少させたこと、物販・レストラン部門の増収等により営業収益を約55百万円増加させ10年間で最大の計上となったことを主因として、損益を改善することができた。
酒井社長は「あきた経済」への寄稿で「私の最大の使命は、平成24年度の経常赤字を2億円以内に収めること」と述べられたが、その使命を達成したことになった。
利用人員の面では、定期利用客が前年度比で約57千人減少したが、定期外の利用客が約13千人増加し、定期利用客を上回った。
損益面では、人件費圧縮等により営業費用を減少させたこと、物販・レストラン部門の増収等により営業収益を約55百万円増加させ10年間で最大の計上となったことを主因として、損益を改善することができた。
酒井社長は「あきた経済」への寄稿で「私の最大の使命は、平成24年度の経常赤字を2億円以内に収めること」と述べられたが、その使命を達成したことになった。
d 観光誘客の取り組み
酒井社長は、生活路線としての内陸縦貫鉄道を守るためにも、「観光路線を強化する」という方針を打ち出している。年間260万人の観光客が訪れる角館と接続し、秋田新幹線と直結している利点を最大限に活かすため、首都圏を戦略商圏と設定して、そこから多くの観光誘客をはかる取り組みを始めた。
イベント列車としては、時期・季節に対応した「ホタル号」や「森吉山麓紅葉号」、「サンタ列車」を運行している。沿線地域の農家のお母さんたちが作った郷土料理をふるまう「ごっつお玉手箱列車」は好評を博しており、今年度は農閑期となる秋~冬の期間に6回の運行を実施予定。観光ツアーの一部に組み込まれることもあり、首都圏からの乗客も集めている。
沿線の学校や行政機関等の協力を得て実施している「田んぼアート」は、沿線5か所に設定。鑑賞のおすすめコースも設け、ダイヤによっては「田んぼアート」の見られる場所では列車をゆっくり走らせるサービスを行った。
「阿仁いけばな芸術祭」は、かつて日本一の銅山の町であった「阿仁」にある6つの寺を会場にしていけばな五流派が競演するというイベントである。秋田デスティネーション・キャンペーン開始後の10月19日から31日まで13日間の開催であり、同キャンペーンとの連動を意識している。
イベント列車としては、時期・季節に対応した「ホタル号」や「森吉山麓紅葉号」、「サンタ列車」を運行している。沿線地域の農家のお母さんたちが作った郷土料理をふるまう「ごっつお玉手箱列車」は好評を博しており、今年度は農閑期となる秋~冬の期間に6回の運行を実施予定。観光ツアーの一部に組み込まれることもあり、首都圏からの乗客も集めている。
沿線の学校や行政機関等の協力を得て実施している「田んぼアート」は、沿線5か所に設定。鑑賞のおすすめコースも設け、ダイヤによっては「田んぼアート」の見られる場所では列車をゆっくり走らせるサービスを行った。
「阿仁いけばな芸術祭」は、かつて日本一の銅山の町であった「阿仁」にある6つの寺を会場にしていけばな五流派が競演するというイベントである。秋田デスティネーション・キャンペーン開始後の10月19日から31日まで13日間の開催であり、同キャンペーンとの連動を意識している。
e 情報発信
酒井社長は、地域からの情報発信に向けて自然景観や食材に加えて、歴史、祭などの地域資源の発掘に力を入れている。
このため、いくつかの駅には地域の観光資源を記した「セカンドネーム」を設置している。例えば、桂瀬駅のセカンドネームは「笑う岩偶出土 最寄りの駅」、上桧木内駅のセカンドネームは「紙風船上げの駅」である。
また、鉄道ファンが写真を撮る際の参考になるように、景観の美しい8つのスポットを選び「秋田内陸線八景」としてカレンダーにした。
沿線地域の歴史に注目した取り組みも行っている。内陸線沿線はかつて日本一の銅山を有した地域であり、「阿仁いけばな芸術祭」も、江戸時代に全国から銅山に集まった鉱山労働者の宗派に対応するために、各宗派の寺が作られたという歴史に着目して企画されたものである。
本年7月1日には、鉄道建設請願運動が始まってから100年を超える内陸線の歴史を基に、県内の鉱山鉄道、森林鉄道等の資料を展示した「内陸線資料館」を阿仁合駅前に開設した。
このため、いくつかの駅には地域の観光資源を記した「セカンドネーム」を設置している。例えば、桂瀬駅のセカンドネームは「笑う岩偶出土 最寄りの駅」、上桧木内駅のセカンドネームは「紙風船上げの駅」である。
また、鉄道ファンが写真を撮る際の参考になるように、景観の美しい8つのスポットを選び「秋田内陸線八景」としてカレンダーにした。
沿線地域の歴史に注目した取り組みも行っている。内陸線沿線はかつて日本一の銅山を有した地域であり、「阿仁いけばな芸術祭」も、江戸時代に全国から銅山に集まった鉱山労働者の宗派に対応するために、各宗派の寺が作られたという歴史に着目して企画されたものである。
本年7月1日には、鉄道建設請願運動が始まってから100年を超える内陸線の歴史を基に、県内の鉱山鉄道、森林鉄道等の資料を展示した「内陸線資料館」を阿仁合駅前に開設した。
f 飲食・物販の強化
即効性のある収入増をはかること、沿線各地で生産された商品を販売し地域の役に立つこと、この二つの観点から飲食・物販の強化に取り組んでいる。阿仁合駅にあるレストラン「こぐま亭」は東京の一流レストランで活躍していたシェフの店として人気を集めている。飲食・物販の強化は、営業収益の増加につながった。
g 地域の住民、行政、団体との協力
同鉄道は、「田んぼアート」や「ごっつお玉手箱列車」の実施で、地域の学校や行政、住民の協力を得ており、また、沿線地域にいくつもの支援団体がある。
本年7月28日には、秋田内陸線エリアネットワークなど8支援団体と同鉄道などが、内陸線活性化に向けた取り組みを協議する「秋田内陸線支援団体情報交換会」を開催、「みんなで内陸線に手を振ろう」などの提案が行われた。
本年7月28日には、秋田内陸線エリアネットワークなど8支援団体と同鉄道などが、内陸線活性化に向けた取り組みを協議する「秋田内陸線支援団体情報交換会」を開催、「みんなで内陸線に手を振ろう」などの提案が行われた。
4 地域活性化の資源としての方向性
(1)社長公募による効果
(2) 地域資源として活用するための課題
由利高原鉄道の春田社長、秋田内陸縦貫鉄道の酒井社長が公募により就任してから約2年、平成24年度の経営実績は、2鉄道そろって収支目標を達成した。これは、公募により新社長が就任したことの効果と考えることができる。
春田社長は旅行会社、酒井社長は百貨店でのキャリアが長い。鉄道業ではないが、商品・サービスの質を高め、それをPRして、お客様を集めるという点では経験が深く、このことが鉄道経営に活かされていると考えられる。
また両社長とも地域外からの就任だったという点にも意味があったのではないだろうか。鉄道への集客のためには地域の魅力を発信することが必要であるが、外から来た人だからこそ新鮮な目で地域を見つめ、魅力を発見することができるという面もあると考えられる。
「生活充実サービス」とは、要介護・要支援の認定を受けておらず、余暇や趣味など生活の充実を目指すシニアを対象としたサービスである。平成23年度の本県の要介護・要支援認定者数は6.6万人で、65歳以上人口に占める割合は20.6%である。シニア層の約8割は要介護・要支援認定を受けておらず、体力、時間、経済の各面で余裕があり、余暇や趣味を楽しむ環境にある。
春田社長は旅行会社、酒井社長は百貨店でのキャリアが長い。鉄道業ではないが、商品・サービスの質を高め、それをPRして、お客様を集めるという点では経験が深く、このことが鉄道経営に活かされていると考えられる。
また両社長とも地域外からの就任だったという点にも意味があったのではないだろうか。鉄道への集客のためには地域の魅力を発信することが必要であるが、外から来た人だからこそ新鮮な目で地域を見つめ、魅力を発見することができるという面もあると考えられる。
「生活充実サービス」とは、要介護・要支援の認定を受けておらず、余暇や趣味など生活の充実を目指すシニアを対象としたサービスである。平成23年度の本県の要介護・要支援認定者数は6.6万人で、65歳以上人口に占める割合は20.6%である。シニア層の約8割は要介護・要支援認定を受けておらず、体力、時間、経済の各面で余裕があり、余暇や趣味を楽しむ環境にある。
(2) 地域資源として活用するための課題
全国の地域鉄道で取り組みがなされているように、厳しい経営環境が続く地域鉄道が存続するためには、地域鉄道を「地域活性化のための資源」として定義し直し、活用する道を追求する必要がある。その意味では、人口減少が進み経営環境が厳しくなっている地域の鉄道であるがゆえに、逆にその地域における鉄道の存在意義は大きいと言える。
平成24年度は両鉄道とも収支目標を達成したが、沿線地域は秋田県内でも最も人口減少・少子高齢化の進行が速いという点で共通している。したがって、今後も目標を達成して存続を実現するためには、地域外の利用客をさらに増加させ続ける必要があり、目標達成のハードルは年々高くなる。
地域鉄道を存続させ、地域活性化のための資源として活用をはかるうえで、どのような取り組みが求められるだろうか。
平成24年度は両鉄道とも収支目標を達成したが、沿線地域は秋田県内でも最も人口減少・少子高齢化の進行が速いという点で共通している。したがって、今後も目標を達成して存続を実現するためには、地域外の利用客をさらに増加させ続ける必要があり、目標達成のハードルは年々高くなる。
地域鉄道を存続させ、地域活性化のための資源として活用をはかるうえで、どのような取り組みが求められるだろうか。
a 地域での意識の共有と協力
鉄道を地域活性化の資源として活用するためにも、地域の住民や企業、団体、行政機関でその意識を共有し、鉄道を一つの核とした活性化に取り組む必要がある。現在も、両鉄道には支援組織などの協力があるが、さらにその意識、取り組みを強化していくことが求められる。
b 地域鉄道活用を考慮した地域開発
両鉄道とも、学校や病院などの公共施設が沿線から移転することにより利用客が減少しているという現実がある。「コンパクトシティ」という考え方とも共通するが、高齢化が進む本県で地域社会を維持するためにも、高齢者など交通に関する弱者に配慮し、公共施設を鉄道の駅周辺に集めるなど、もっと鉄道の活用を考慮した地域の開発を行う必要がある。
c 全県の観光振興の中での位置づけ
鉄道を地域活性化のための資源として捉える場合、その「地域」とは沿線地域に限定して考えるべきではない。「地域」を広く全県と捉えた観点から地域鉄道を活かす道を探ることが有益である。かつて韓国ドラマ「アイリス」に内陸線の場面が登場し、観光誘客に一定の効果があったように、フィルムコミッション機能と組み合わせた活性化策も一つの有力な方法と考える。
第2期ふるさと秋田元気創造プラン(骨子)でも重要となる視点として「交流人口の拡大と県内流動の促進による県内消費の拡大」を挙げている。この視点からも交通手段である地域鉄道を全県的な観光振興の中で位置づけ、活用をはかることが重要である。
第2期ふるさと秋田元気創造プラン(骨子)でも重要となる視点として「交流人口の拡大と県内流動の促進による県内消費の拡大」を挙げている。この視点からも交通手段である地域鉄道を全県的な観光振興の中で位置づけ、活用をはかることが重要である。
(荒牧敦郎)