機関誌「あきた経済」
県内経済(11月号)
県内経済は、全体として持ち直しの動きが続いている
機械金属が堅調に推移しているほか、電子部品も前年比増加に転じた。木材は高水準で推移している。また、建設は公共工事、住宅着工ともに増勢が続いている。個人消費は、持ち直しの動きが続いている。雇用情勢は、厳しい状況にあるものの、改善の動きが窺われる。
産業別の動向では、電子部品の生産額は、スマートフォンの新製品向けの部品需要が増加し、18か月ぶりに前年を上回った。機械金属の生産額は、輸送機械が新車販売の好調を受けて好伸し、3か月連続で前年を上回った。合板(8月)は、住宅向け需要の増加が続き、生産・出荷ともに高水準を維持している。公共工事は増勢が続く。地元大手(12社)の建設受注額も、官公庁、民間工事ともに大幅な増加が続いている。住宅着工は消費税増税前の駆け込み需要等から高水準で推移している。個人消費は、大型小売店販売額(8月)が前年を下回ったが、新車販売台数は前年を大幅に上回ったほか、家電販売も堅調に推移するなど、全体として持ち直しの動きが続いている。
新規求人数は前年比4.1%減となり、2か月連続で減少した。有効求人倍率は前月比0.01ポイント上昇し0.72倍となった。事業主都合離職者数は6か月ぶりに前年を上回った。
企業倒産件数は4件、負債総額は15億800万円であった。負債総額は、大型倒産の発生で6か月ぶりに10億円を超えた。
生産額、18か月ぶりに前年上回る
9月の生産額は前年比6.6%増と昨年3月以来18か月ぶりに前年実績を上回った。昨秋以降、大手メーカーの生産態勢再編に伴い大幅な減産を強いられていた一部事業先の影響が一巡したほか、ここにきてスマートフォンの新製品向けの部品需要が増加した。なお、7?9月は前年同期比2.9%、25年度上半期は同4.7%、それぞれ減少した。
インダクタで持ち直し基調が続いているほか、主力のセラミック・コンデンサが足許、生産水準を幾分引き上げている。一方、車載向けを中心に好調だった半導体がこのところ減少傾向にあり、液晶画面でも大幅な減少が続いている。
輸送機械、前月対比で好伸
9月の生産額は前年比11.9%増と、3か月連続で前年を上回った。公共工事関連で一頃の増勢が弱まるなか、ウエイトの高い輸送機械が新車販売好調を受け前月対比で好伸したものの、このところ月々の振れが大きい。なお、7~9月は前年同期比7.8%、25年度上半期は同0.3%、それぞれ増加した。
民需関連では、建機部品で大幅な減少傾向が続いているほか、製鋼品も減少に転じたものの、金型は増加基調を保っている。一方、公共工事関連では、水道部品で減少が続いているが、橋梁・鉄骨は復興需要や公共工事の増加等を背景として増加傾向を維持している。
生産・出荷とも高水準で推移
全国的に好調な住宅着工や公共工事の増加を背景として、生産量・出荷量は製材品、普通合板ともに高水準で推移している。
9月の製材品は、震災復興需要により著増した前年に比べ生産量が7.7%減の24千立方メートルと2か月連続で減少したほか、出荷量も同3.8%減の25千立方メートルと7か月ぶりに前年を下回った。しかし、いずれも25千立方メートル程度と依然高い水準にある。
8月の普通合板は、消費税増税前の駆け込み需要等から好調を持続しており、生産量が前年比32.4%増と6か月連続、出荷量も同11.6%増と11か月連続で増加した。
出荷量、前年比増加に転じる
9月の清酒出荷量は、県内向けが前年比8.5%増、県外向けも同6.8%増となり、全体では同7.6%増となった。県外向け出荷が落ち込んだ前年の反動のほか高価格帯商品が好調となったことが寄与した。県外向けの内訳では、東京が同2.8%増、東北5県も同1.6%増、北海道は同0.2%減となった。
県内では、現在開催中の秋田デスティネーションキャンペーンに合わせ、清酒を楽しむイベントが開かれており、各イベントとも幅広い世代の参加者で賑わっている。県外客が土産物用として清酒を購入する姿も多くみられ、同キャンペーンの開催が清酒の消費拡大に繋がるものと期待されている。
県内向け出荷量 | 817kl |
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県外向け出荷量 | 1,028kl |
合計出荷量前年比 | 7.6% |
地元大手、官公庁・民間工事ともに好調が続き前年比3倍増
9月の公共工事請負金額は国で減少したものの、県、市町村、独立行政法人等が増加したことから、全体では前年比24.8%増の151億円と7か月連続の増加となった。
当研究所調査による地元大手12社の新規受注実績も、前年比199.1%増の68億円と5か月連続で大幅に増加した。官公庁工事は、土木が成瀬ダム関連工事などで増加が続いているほか、建築にも市庁舎建設や公立学校関連の大口受注があり、5か月連続で増加した。民間工事も、福祉施設や工場新築などから6か月連続の増加となった。単月での受注が65億円を超えたのは、14社で集計していた15年3月以来10年半ぶり。
負債総額、6か月ぶりに10億円超え
9月末の県内銀行の預金は、前月末比78億円減少したものの、前年比では0.8%の増加となった。貸出金は、前月末比582億円増加し、前年比でも1.0%の増加となり、13か月連続で前年を上回った。
9月の倒産件数(負債総額1千万円以上)は4件、負債総額は15億800万円であった。負債総額は、秋田市の農事組合法人の負債額12億3,000万円が総額を押し上げ、6か月ぶりに10億円を超えた。なお、平成25年度上半期の倒産件数は23件(前年同期比14件減)、負債総額は28億3,500万円(同81.2%減)であった。
着工戸数、12か月連続で前年比増加
9月の県内新設住宅着工戸数は、378戸(前年比71戸増、23.1%増)であった。主力である持家が前年を大幅に上回ったため、全体戸数は12か月連続で前年比増加となった。
利用関係別では、持家が321戸(前年比90戸増)、貸家が32戸(同14戸減)、分譲住宅が25戸(同5戸減)、給与住宅が0戸(同横這い)となっている。
持家は8か月連続で前年を上回り、消費税増税前の駆け込み需要がみられる。貸家は秋田市で一般向け賃貸住宅の着工が減少したことから、12か月ぶりに前年を下回った。
地域別では、県央は持家と分譲、県南は持家の着工が増加し、前年を上回った。県北は分譲の着工が減少したため、前年を下回った。
持ち直しの動きが続く
大型小売店販売は3か月ぶりに前年実績を下回ったが、新車販売が前年を上回ったほか、家電販売も堅調な推移となり、全体としては、持ち直しの動きが続いている。
8月の大型小売店販売額は、前年比1.2%減と3か月ぶりに前年実績を下回った。飲食料品は、円安による輸入品価格の上昇や、全国各地で発生した集中豪雨の影響による野菜相場の上昇などから販売価格が上昇したため、前年実績をわずかに上回ったが、衣料品は、平年に比べ梅雨明けが遅れたことから、夏物が不振となった。
9月の新車販売台数は前年比19.1%増と2か月連続で前年実績を上回り、昨年9月に終了したエコカー補助金の反動減が一巡したとみられる。登録車は同2.8%増、軽自動車も38.6%の大幅増となった。
家電販売は、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などは消費電力を抑えた製品への買い替えが進み堅調となった。
有効求人倍率、前月比0.01ポイント上昇の0.72倍
9月の新規求人数は、前年比4.1%減の7,650人と2か月連続で減少した。産業別にみると、製造業では同2.1%減の730人となった。「電子部品・デバイス・電子回路」で派遣工の増員に伴い求人増となったものの、これまで増加が続いていた「食料品」で求人調整の動きが生じ減少となった。非製造業でも同4.3%減の6,920人となった。「建設」で公共工事の増加などから求人が増加しているものの、「宿泊,飲食サービス」で昨年の全国飲食チェーンの店舗網拡大に伴う求人増の反動などから落ち込む結果となった。
新規求職者数は前年比6.6%減の5,778人と、2か月連続で減少した。
有効求人倍率は一般が0.59倍、パートが1.02倍。季節調整値は前月より0.01ポイント上昇し0.72倍となった。都道府県別では、東京が最も高く1.39倍、沖縄が0.57倍と最も低い。全国平均は0.95倍で、本県の全国順位は前月の43位から44位に後退した。
事業主都合離職者数は前年比13.6%増の342人と、前月に比べ113人増加した。
地域別雇用状況をハローワーク管内別にみると、新規求人数は県北と県南で増加したものの、県央で大きく減少した。有効求人倍率は県北が最も高く0.87倍、県央が0.69倍、県南が0.64倍となった。
秋田労働局が発表した「平成25年高年齢者の雇用状況」によると、本県の高年齢者雇用確保措置実施企業の割合は前年比0.6ポイント上昇の98.9% (全国平均92.3%)、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合も前年比18.8ポイント上昇の80.0%(全国平均66.5%)と、いずれも全国一となった。本年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法により、希望者全員に対する65歳までの段階的な雇用確保が企業に義務付けられたことで、高年齢者の継続雇用を積極的に進める企業が増えたことを裏付ける結果となった。