経営随想
お客様との信頼、コミュニケーションがある市場づくり
(協同組合秋田市民市場 理事長)
当組合の歴史は、昭和26年に発足した朝倉市場出店者親睦団体「商栄会」まで遡ります。昭和37年に商栄会のメンバーが中心となって、協同組合が設立されて以来、昨年は組合設立50周年を、そして今年は平成15年に全館リニューアルオープン後10周年という節目をそれぞれ迎えました。記念式典、記念イベントを実施し、多くの方々より駆けつけていただきました。様々な時代の変化に遭遇しながらも、着実に発展を続けることができたのも、ひとえにお世話になっている多くの皆様からのあたたかいご指導とご鞭撻の賜であると深く感謝いたしております。
現在、秋田市民市場は鮮魚店、塩干物、乾物、青果物、日用品雑貨、衣料、飲食店などの各種専門店が全82店舗(組合員60、テナント22)で構成されております。秋田の台所として、これまで積み重ねてきた対面販売の良さを大切にしながら、安全・安心の品質の良い品ぞろえをし、市場全体の魅力を高めていくとともに、一店一店が地道に正直な商いを続け、お客様の信頼を得ていかなければならないと思っております。
しかしながら、当市場をこれまで中心となって支えてきてくださったお客様の年齢が上がり、加えて人口の減少、世帯構造の変化や、個人所得の伸び悩みなどから、食品小売業界は縮小傾向にあり、我々の業界を取り巻く状況は非常に厳しく、景況感の上昇は感じられず悪い状態が続いております。
また、大型店、スーパーの出店により、業態間、業種間の競争が激化しており、消費者の選択肢の幅は広がり、多様に変化する消費者の嗜好に合わせた対応をしていくことが必要となってきております。
さて、10月に入り、円安や原材料費の価格高騰を受け、食料品をはじめとする暮らしに身近な様々な料金の値上げが相次いでおります。乳業大手が牛乳などの出荷価格を1~4%一斉値上げされました。ごま油も10%以上値上げされるとのことです。それにより、店頭での販売価格、飲食店などにおいては値上げの判断の対応が迫られていくことになりそうです。
また、来年4月に消費税率を8%に引き上げることが正式に決まり、衣料品や食料品など生活必需品の消費税負担が家計に重くのしかかります。消費税引き上げ後には購買意欲の低下、買い控えなどが懸念されます。店側にとっても、値札を変えたり、レジシステムを変えたりといった費用も発生するなど、消費税増税による負担は大きいものになります。
食品に関しては、東日本大震災に伴う放射能汚染などによる消費者の安全・安心への関心がより高まっております。現在、消費者に低価格志向が定着しているともいわれておりますが、一方ではより美味しい、より安全といった品質に対する付加価値を求める消費者も多く存在しております。消費者の立場に立って、食に関する情報を提供し、商品説明を行うなど、お客様のニーズを拾い上げていくことが非常に大事であります。商品に対するお客様との信頼関係を構築することが必要であり、お客様と対話し、不満や要望をお聞きすることを通じて、「顧客創造」をすることが重要であると考えております。
経営環境が厳しい状況の中においても、我々商売人としては「お客様ありき」というスタンスで、お客様から信頼を得る、お客様に「いいね」と共感していただき続けることが重要であると思っております。
そのためには、こちらから一方的に語りかけるのではなく、お客様の話をよく聞く「双方向のコミュニケーション」が必要であり、お客様一人ひとり異なるニーズに対応するための「個別対応」を大事にしていかなければなりません。このようなことを市民市場の各商店が実践していくことにより、一人でも多くのお客様を増やす努力を続けていかなければならないと思っております。
当市場では、毎日の食の提供をしていくという役割のほかにも、様々な取り組みを行っております。当市場には毎年、市内を中心に県内から大勢の小学生が買い物体験、社会科学習のため来場されております。また、中学生の職場体験、高校生のインターンシップの受け入れについても多くの学校側から要請され、全て受け入れ対応をさせていただいております。食に携わる者として、地域に結びついたこのようなことを通じて、将来を担う子ども達と交流していくことで、「食」を大切にすること、「おいしく食べること」の意味、秋田の「食」への理解を深めてもらえるよう取り組んでおります。
また、循環型社会を目指してリサイクル活動にも積極的に取り組んでおります。生ゴミのリサイクル事業として、当市場では野菜くずや魚のアラなど、市場各店から出る生ゴミを施設内の大型発酵処理機で処理し、堆肥を生成しております。農家と連携しその堆肥を使って、野菜や米を育て販売しております。野菜、特に葉物は色が青々しくなり、茎も太くなり、甘みが増す、米も非常に美味しいと評判であります。これらは「市場ブランド」として商品開発して、PRし全国にも広めてまいりたいと思っております。
本県が抱える高齢化や人口減少等の問題に対応すべく、日常の買い物が困難な方をサポートする宅配事業「市場買援隊」(宅配対応地域:秋田市内)にも取り組んでおります。
「買援隊」利用者には、かつて市民市場の常連だった方も多く、市場の新鮮な食材が届くとあって大変喜ばれ、買い物に出歩くことができないお客様の強い味方となっております。今後このような買い物サポートは、社会活動において益々必要性が高まっていくものと予想されますので、より利用しやすく、より良いサービスとなるよう取り組んでまいります。
現在、秋田デスティネーションキャンペーン開催中により、当市場にも多くの県外客に来場いただいており、秋田駅前の観光の玄関口としての役割を今後も果たしていかなければならないと強く感じているところでございます。来年は国民文化祭の開催も予定されており、観光客へのおもてなし対応をしっかりと行っていくことで、販路拡大に繋がっていくことになりますのでしっかりと努力をしてまいりたいと思います。
当市場は、観光客への対応強化はもちろんですが、地元密着型の市場として日々のお客様が大部分を占めております。食品小売市場は、激動期の真っ只中にあり、取り巻く環境も大きく変化していますが、社会環境の変化に柔軟に対応し、強みや特徴を活かすだけでなく、地域を大事にして住民に身近な存在であり続けることも必要になってくると思います。毎日来ていただいているお客様に対して商品に自信と責任を持ち、実直に商いを続けていくことでお客様の信頼を得ていかなければなりません。そしてその活気を市場全体、中心市街地全体、秋田全体にまでこの市場から波及させてまいりたいと思います。
(組合概要)
1 組合名 | 協同組合秋田市民市場 |
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2 代表者名 | 理事長 進藤政弘(株式会社進藤水産代表取締役社長) |
3 所在地 | 〒010-0001 秋田市中通四丁目7番35号 |
4 電話番号 | 018-833-1855 |
5 Fax番号 | 018-832-9000 |
6 URL | https://www.akitashiminichiba.com/ |
7 設立年月 | 昭和37年4月 |
8 出資金 | 4億1千万円 |
9 年商 | 38億4千万円 |
10 従業員数(事務局含む) | 320人 |
11 事業内容 | 生鮮品の卸売、小売 |