経営随想
秋田県の魅力で企業価値を高める
(株式会社斉藤光学製作所 代表取締役社長)
【弊社の歴史と未来ビジョン】
昭和60年の夏、東京生まれ、埼玉育ちの私は、皆様のご縁を頂き、24歳で秋田工場創業の為、秋田県美郷町(旧千畑村)に、第2の人生をスタートさせて頂きました。
この夏、29年目の秋田県美郷町の生活です。
当時秋田工場では腕時計用カバー硝子を成形研磨しておりましたが、この29年の歳月の中、何度かの経営危機を乗越え、数多く研磨技術への挑戦を繰返し、研磨技術をキーワードに、現在はシリコンに次ぐ次世代半導体基板高度化材料と言われる、SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)などの研磨技術の研究まで事業を進める事ができました。
このSiC、GaN基板は、耐熱性や耐圧性に優れ、電気抵抗が小さく、電力ロスを減らして、省エネ効果を高める半導体素子として、需要が高まっていくと言われております。
弊社はこの次世代半導体基板の研磨技術開発を目的に平成9年4月、多くの皆様との出逢いとご支援を賜り、群馬県太田市に群馬テクニカルセンターをM&Aにて創業させて頂いた経緯があります。
このテクニカルセンターの創業目的は、サファイア、SiC、GaNなどの半導体基板研磨技術開発を中心に、半導体基板研磨に必要な研磨剤、研磨パット、研磨後の基板洗浄をする洗剤など、研磨技術における副資材メーカー様の商品開発をサポートする研磨関係副資材開発受託型業務をスタートしました。
このサービスは弊社の強みである研磨技術の水平展開を目指したものです。
また新たなビジネスモデルへの挑戦でもありました。
創業の2年間は、お客様の信頼獲得や資金繰り等で大変な苦労もしましたが、この開発受託型ビジネスモデルは業界でも類の無いビジネスモデルと自負しております。
また、このビジネスモデルを更に発展させ、研磨技術(ソフト)から研磨機械(ハード)販売までと、業務内容を進化させてきております。
このビジネスモデルを更に発展させるべく、昨年11月に弊社秋田工場隣接地の工場を取得させて頂き、群馬テクニカルセンターを秋田テクニカルセンターとして、移管創業をさせて頂きました。
秋田工場の生産業務と秋田テクニカルセンター技術開発業務の統合により企業価値を高め、秋田県美郷町より世界に通じる人材を育て、ローカルロケーションからハイテク研磨技術の創出を世界に向けて発信する事が私どもの夢であります。
そして弊社のビジネスモデルが、研磨業界全体の発展に寄与し、皆様のお役に立てる様、日々奮闘していく事が、秋田県経済発展の一助となるものと考えております。
【産学官連携の推進と人材育成】
企業の成長に不可欠な事は、業種を問わず、新たなイノベーションを起こす事です。
私どもも戦略的技術開発と人材育成に未来を託し、投資を進めなくてはなりません。
しかし、その資金を自前で調達していく事は、中小企業にとりましても大きな課題になっております。
私どもは積極的に産学官連携を進め、大学の持つ先端的技術の情報を学び、今後の事業展開に重要な戦略的技術開発のアドバイスを頂いております。
また行政からは、中小企業向け競争的資金活用のアドバイスを頂きながら、戦略的技術開発を進めてさせて頂いております。
グローバル経済が進む中、中小企業は積極的な連携を進め、企業価値を高めていかなくてはいけません。
その中でも、大学、行政機関との連携は、重要な課題だと考えております。
しかし、産学官連携をしっかり進めていく為には、社内の人材育成が不可欠であります。
私どもは、その手法の一つとして、産学官連携も人材育成の場と考え、弊社社員には積極的に産学官連携の場に参加するしくみを進めております。
従来は閉鎖的だった人材育成も、産学官連携を活用させて頂く事により、少しずつではありますが、人材の成長を感じる事が出来る様になりました。
人材育成は、多くの人材交流の中から達成でできる事なのかもしれません。
しかし、経営者が部下の成長に力を入れるものの、自らの学びを怠っては論外ではないでしょうか。
経営者と社員の関係は、経営者が新しい事にチャレンジをし、社員と共に成長をする関係を構築しなければならないと考えております。
その中、私どもの人材育成のかたちが表れたものが、現在弊社で研究を進めております、SiC半導体基板研磨技術です。
この研磨技術で平成25年度第5回ものづくり日本大賞優秀賞を受賞致しました。
この褒賞制度は、毎年経済産業省が主催しています「人から人へ、日本の優れたものづくりを未来に受け継いでいくために」をテーマにしているものです。
この受賞を契機に更に、技術開発と人材育成に投資をしていきたいと考えております。
【秋田県の魅力と産業間連携】
東京生まれ、埼玉育ちの私は、ここ秋田県が大好きです。
春の緑、夏の青、秋の赤、冬の白と四季豊かな彩と温泉の恵み、お酒と四季折々の豊かな食文化。
弊社のお客様は、現在日本全国、東南アジア、最近では米国からの来日もあります。
昨年の流行語に「おもてなし」がありました。弊社にお仕事で来秋されるお客様に、魅力ある研磨技術と魅力ある秋田県を堪能して頂く事を「おもてなし」と考えております。
製造業と食文化、製造業と温泉、製造業と観光など、新しい連携で企業価値を上げる事も大事な事だと考えます。
秋田県の魅力は、県外生活を長くしていた方々が分かっている事が、多い事もあります。
【秋田県美郷町が日本の中心に】
日本地図を見ると、なぜか東京都が中心としてつくられていますが、私は秋田県美郷町を中心として地図を見る様にしています。
物事は見方を変えれば、感覚も変わっていきます。
ローカルロケーションからハイテク研磨技術の創出は、秋田県美郷町でなければなりません。
これもローカルが弱点とするならば、弱点を最大の魅力として強みにする発想が必要だと思います。
今後も積極的に技術開発、人材育成の投資と、産業間連携を進め、秋田県の魅力で企業価値を高め、秋田県で経済を楽しみたいと思います。
(会社概要)
1 会社名 | 株式会社斉藤光学製作所 |
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2 代表者名 | 代表取締役社長 齊藤伸英 |
3 所在地 | (秋田工場) 〒019-1512 秋田県仙北郡美郷町本堂城回字若林118-3 TEL 0187-85-3300 FAX 0187-85-3302 (埼玉本社) 〒356-0033 埼玉県ふじみ野市新田2-3-11 TEL 049-263-0808 FAX 049-266-6424 |
4 URL | https://www.interset.ne.jp/~optsaito/ |
5 設 立 | 昭和52年 |
6 資本金 | 1千万円 |
7 年 商 | 4億8千万円 |
8 従業員数 | 43名 |
9 事業内容 | ●硝子、酸化物単結晶、サファイア、SiC、GaN基板研磨 ●各種評価・試験・加工コンサルタント ●研磨関連装置製造販売 |
10 経営理念 | 心豊かな製品の提供に徹し、お客様の信頼こそ企業存続価値と利益に通じると心に誓い、静かな企業成長を目指し、物心両面の幸せを目指す |