経営随想
秋田を「丁寧に伝える」ことで新たな価値を創造
(秋田活性化株式会社 代表取締役)
弊社は2004年、憶いを同じくした85名の株主が出資して創業した会社で、「秋田の文化発信と経済活性」をコンセプトに首都圏の飲食店や、ネットショップ「秋田天国」を通じて食材販売事業を展開しております。また子会社の(株)なまはげは、「AKITA DINING なまはげ」ブランドで、銀座2店舗、仙台1店舗の飲食店を経営し、年間約7万人のお客様に秋田の食を通じた発信を行っております。御陰さまで創業から10年が経過し、首都圏での認知度も増し、初めてお会いする方々からも「行ったことがあるよ」というありがたい声を多く聞けるようになりました。とは言え、弊社の事業が秋田県のGDPに与える影響は微々たるものですが、「一人で出来ないことを多数の力を持ち寄って創る」という創業時のビジネスモデルは一定の評価をいただいており、このスキームにより偏りなく県内各地の良品を集めることが出来たからこそ、今もなお、お客様からご支持をいただいているものと思っております(弊社設立趣旨を後掲)。
さて、この10年間の秋田の情勢に目を向けますと、我々の憶いとは裏腹に、人口減少と少子高齢化に歯止めがかからず、遊休地の拡大や農家の後継者不足など多くの課題が山積する一方で、先人が築いてきた文化遺産とも言うべき豊富な食材、多様な無形文化財、教育日本一、美人の多さなど秋田の優位性もクローズアップされており、この負の課題と正の優位性をどう繋ぎ合わせ、ビジネスモデルとして確立出来るか?という秋田県民の知恵と英知が試されているような時代を迎えております。
しかし、かく言う私自身の心の中で、経済的豊かさだけが「真の幸福」を計る指標ではないということは重々承知しておりながらも、経済的活性化なくしてサステナブルな地域活動はできないという矛盾を感じており、この矛盾と目の前に置かれた現状をどのように弊社のビジネスで解決すればいいのか?と悩み続ける毎日です。なぜなら、通常の株式会社であれば「利益追求による株主配当」が設立趣旨ですが、弊社の社会的使命とは(弊社の利益追求もさることながら)先に述べた様々な秋田の課題や新たな時代のニーズを解決できるビジネスモデル(秋田の経済的活性化と真の幸福の増大を図る、謂わば「地域の課題解決事業」)を展開することで、秋田の公益に繋げなくてはならないという大前提があるからです。繰り返しになりますが、秋田の優位性の維持と、地域の「真の幸福」の増大をどうバランス良くビジネスで確立出来るかこそ、弊社が世に問われる存在意義だと考えるからです。
では、選択と集中の観点で何をすれば良いのでしょうか?現在、秋田県の農業を取り巻く課題としては、高齢化、後継者不足、耕作放棄地の拡大、TPPなどが叫ばれており、県が推進する6次産業化を始めとする農業振興策などとの懸隔をビジネスで解決したいと考えており、弊社が出来ることの一つは川下で多くの「出口」を創ることと同時に、消費者へ「丁寧に伝える」ことを命題にしていかなければなりません。出口とは言うまでもなく「販売機会」のことであり、同時に販売するコンテンツも含まれます。飽和社会を迎え、物あまりの時代にあって、今消費者が求めるものは安全・安心という当たり前のものと同時に、「ストーリー」と「洗練されたデザイン」だと感じております。
先般、経産省のクールジャパン事業のなかで、大館曲げわっぱが世界的フランス料理の権威として名高いアラン・デュカス氏の目に止まり、イベントの器として採用されました。会場からは「奇跡だ」といった賞賛の声が多く聞かれましたが、嬉しい反面、商品を見ただけで、日本人の繊細さや、秋田県人の生真面目さといった背景と、素材や製造工程などがはたして本当に伝わっているのか?と一抹の不安を拭い去れません。
そこで弊社はこの「丁寧に伝える」というコンセプトを新たに加え事業化したいと考えています。曲げわっぱの例で言うならば、天然秋田杉とは何か?誰がどんな風に山から木を切り出すのか?運び出し、皮を矧ぎ、製材し、薄い木の板に仕上げ、熱湯で茹で、曲げ、乾かし、何度も磨きを重ねて出来上がる工程そのものをしっかり丁寧に伝えるべきだと思うからです。
これは伝統工芸のみならず、農業など広い産業にあてはめ、安全・安心の背景にあるこだわりや苦労、努力に価値を創造し、見える化していかなければならず、その際に肝心なのが「洗練されたデザイン」だと思います。この視点から見れば、秋田は宝の山。日本人の中でも秋田県人の生真面目さ、繊細さ、優しさからすべての産品が生まれていることを、「丁寧に伝える」事業で「新たな価値」を創造する。これこそが秋田の次代を切り拓くコンセプトになる気がします。先達が残した秋田の全ての優位性と、そこから生まれる可能性を信じ、時には作家、時にはデザイナー的感覚を持ちながら、今後も秋田の発展に寄与する事業を進めて参ります。
【弊社設立趣旨】
秋田県は年間10,000人の人口が減っています。少子高齢化、中心商店街の空洞化が益々顕著になる中、郊外には中央資本のスーパーなどが立ち並び、お金はますます中央に吸われていくばかりのように思え、やりきれない思いがありました。
一方、ニュースを見ると地方分権が叫ばれながら、中央集権的支配体制は変わらぬように思え、「これから地方が生きる道はあるのか?」と行く末の不安を感じておりました。
2003年、日本青年会議所秋田ブロック協議会主催で行った「あきたの真価探求」。
秋田には何があるんだろう?秋田にはどんな人がいるんだろう?取材を重ねた結果見えて来たものは「こんなにすばらしいものがある」ということばかりでした。
そして、「こんなにすばらしい」素材を如何に活性化につなげられるのかをテーマにしたフォーラムを開催したのをきっかけに、秋田を活性化させるプランの雛形が出来上がり、実行組織が必要になりました。プランを形にするため県内各地の有志85名が株主となり、資本金7,250万円で作り上げたのが「秋田活性化株式会社」です。
大きな柱でもあり、パイロット事業として具現化したのが2004年3月16日に東京銀座にオープンさせた「AKITA DINING なまはげ」です。
設立当初から変わらない「MADE IN AKITA」に対する徹底的なこだわり。
秋田の良品を発掘・情報発信し販売拡大につなげることで「あきたに人とお金の流れを作り、秋田を元気にしたい。
(会社概要)
1 会社名 | 秋田活性化株式会社 |
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2 代表者名 | 代表取締役 日景賢悟 |
3 所在地 | (本社)〒010-0951 秋田県秋田市山王7丁目4-13拓朋ビル2F TEL 018-883-5101 FAX 018-883-5102 |
4 URL | https://www.akita-namahage.jp/akk/ |
5 設 立 | 2004年1月29日 |
6 資本金 | 7,250万円 |
7 事業内容 | 卸売・小売販売業、サービス業 |
8 運営 | □秋田天国 >> https://www.rakuten.co.jp/akitatengoku/ |
11 関連 | □株式会社なまはげ >> https://www.akita-namahage.jp/ □AKITA DINING なまはげ 銀座店 >>https://www.akita-namahage.jp/ginza/ □AKITA DINING なまはげ 別邸>>https://www.akita-namahage.jp/bettei/ □AKITA DINING なまはげ 仙台店 >>https://www.akita-namahage.jp/sendai/ |