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経営随想

生活を豊かに ゆとりの生活を

加藤 憲成
(株式会社英明工務店 代表取締役)

「英明」の由来
 弊社英明工務店の「英明」は、先代(父親)が中国の八卦師から付けてもらったと云います。先代は戦争中海軍にいましたが、工業高校の建築科を出ていたことから、船には乗らずにもっぱら建築関係の仕事に従事していたようです。戦後は故郷に帰り、建設会社に就職したのち、昭和24年に独立、創業しました。
 自宅を兼ねた会社が雄物川に近い新屋船場町にありました。直ぐ近くに国の河川工事事務所の出張所があり、そこに知人が居た関係で、事務所の修繕や、河川工事に使用する資材等の納入など、いわば「何でも屋」が事業の始まりでした。私も父親に連れられて、山の立ち木を数えたのを覚えております。その後、徐々に他の国の出先事務所の仕事を請け負うようになっていったのです。

秋建協同組合
 戦後復興から高度成長期に入り、国や県・市が盛んに社会資本整備にかかる事業を発注するようになっていきます。輸送形態も鉄道から車になり、砂利道から舗装道、木橋から鉄橋やコンクリート橋などの道路整備、そして、上下水道の整備など、急速に社会インフラが整えられるようになっていきます。
 こうした中、弊社も時代と共に土木工事が主体になっていきます。その頃は、同業者に小規模な会社が多く、また、建材の会社も少なかった為、数社が集まって「秋建協同組合」をつくり、セメントや鉄筋等の共同仕入れをしたり、建設機械を貸与する今のリース業のようなことを始めました。当組合は今も活動をしています。
 当時、弊社は自社施工が主でした。少し遠い現場になると、通勤の関係で飯場を建てての作業となります。飯場での食事は大勢で食べるのでとても美味しく、学校が休みの昼時には時々食べに行くこともありました。

東日本大震災
 かつての秋田市における大規模公共事業の先がけは、雄物川の開削工事に伴う茨島、新屋両地区に跨る大工場地帯の造成と堤防築堤の工事ではないでしょうか。それにより旧市内の洪水がなくなったと聞いています。
 先代が良く云っていました。「公共事業には世の中の景気が悪くなると予算が付く」と、それは景気対策でもありました。今も昔も官庁の政策に大きく左右されてきました。2、3年前までの十数年間は、公共事業費の削減が続き、「建設業に未来はない」と云われ、建設業者は“人・モノ”を減らし厳しい経営が続きました。
 そのような時に、東日本大震災が起こったのです。この目で見た被災地の状況は、“地震と津波”による未曽有の大災害でした。地域の建設業者は官庁との災害協定により、自らも被災しているのにもかかわらず、「啓開」作業の活動を行いました。啓開作業とは、自衛隊・消防・警察等の緊急車両を通す為に、瓦礫処理をして道路を開く作業です。しかし、難渋を極め遅々として進みません。それでも、地域の建設業者は“人・モノ”が不足するなかで、精一杯頑張りました。弊社も官庁の要請により、生活用品や資材等を提供し、また、仮設住宅の建設にも協力しました。
 近年、温暖化の影響か局地的な自然災害が多発しています。日本の国は地震を始め災害大国です。“災害は忘れた頃にやってくる”地域の安全・安心を守ることはもちろん、事が起きる前の「防災・減災」が、これから一段と少子高齢化に向かう地域では大事になるのではないでしょうか。

キャンピングカーの購入
 私は、世の中の事柄に乗りやすい性格で、少しでも興味があると、直ぐに行動してきました。秋田に帰って来た当時は、全国的には景気が良いのですが、建設関連に人が集まりませんでした。それは、3K(きつい、きたない、きけん)とか6Kとか云われていました。私が建設業協会の青年会の会長をしていた頃、旧建設省が「土木の日」を設けて、建設業に興味を持つ若い人の雇用促進の為、各種イベントを秋田駅東で開催し、建設機械等の展示などを行っていました。弊社でも福利厚生の一環として会社のイメージアップと、現場での休憩所とトイレ問題の解消を兼ね、補助を受けキャンピングカーを購入したりしました。

輸入製品の販売
 また、秋田港を利用して“対岸貿易で港を活性化する会”“秋田港国際化荷主協議会”に入会したのが、弊社が輸入製品の取り扱いを始めたきっかけです。北はロシアのハバロフスク・ウラジオストク、中国の東北地方の都市や天津・上海・アモイ、それからベトナム・マレーシア・シンガポールなどを回り、各都市で開催される交易会(貿易商談会)に参加してきました。
 そうしたなか、私は、上海交易会で自称「竹炭博士」と出会い、これまで彼を通じて様々な「竹炭商品」を輸入してきました。建築関係の床下や壁下地用の炭シート、枕・靴シートなど、コンテナに二十数種類もの商品を詰めるので、博士は対応に困るほどです。
 さらに、8年程前から、中国国内のドイツ系メーカーが作っている、シャワーボックスやバスなど、体の不自由な方や高齢者の方も無理せず利用できる製品も輸入しています。
 ただ最近は、県内でも輸出展示会が多く、建設業者は売り込むものがなく大変です。それでも、各国での商談会で外国人労働関係の会社等と面談しその方面でも収穫をあげつつあります。

高齢者向けの下宿屋
 こうした輸入製品を一部使用した高齢者向けの下宿屋「ルーミングハウス」も運営しております。9年前に開業しました。その発想は、この地域に一人住まいの高齢者が多いということからです。一人世帯で住んでいる方で生活が不安な方の為の下宿です。各個室はホテル仕様で、バス・トイレ・ミニキッチン、そして、生活するための洗濯機や棚、ベッド・TV等を一通り揃えています。オール電化で安全面では警備会社対応です。もちろん、食事提供の食堂や、談話室、簡単な運動器具などもあります。長期・短期、いずれの入居も可能です。今入居されている人には、ここからデイサービスに通っている人もおられます。

地熱を活用した野菜栽培
 もう一つ、是非紹介したいものがあります。2年程前より、あきた地球熱利用事業ネットワークに加入しています。これは地熱を温室や建物の冷暖房などに利用する会です。
 加入したきっかけは、秋田港国際化荷主協議会で中国の東北地方(旧満州)に行った際に、冬でも野菜を栽培しているところを見学したことです。半カマボコ型ビニールハウスの土の壁に昼の太陽熱を蓄えた構造で、それこそ省エネ型でした。そこで私は、雪が多くて太陽熱が弱いこの秋田の地で、地下に4~5メートルの穴を掘り地熱と太陽熱を加えたらどうか、県から補助をしていただき、現在も実験中です。
 冬期間の栽培方法も色々な方法が出てきていますが、今後は、家庭菜園等への活用も期待できるのではないかと希望を膨らませています。

 弊社の経営理念である『生活を豊かに ゆとりの生活を』のため、これからも様々な事に取り組んでまいりたいと考えております。

(会社概要)

1 会社名 株式会社英明工務店
2 代表者名 代表取締役 加藤憲成
3 所在地 〒010-1615                     
秋田県秋田市新屋船場町6-53          
TEL 018-862-6850                 
FAX 018-862-5488                 
4 URL https://www.eimei.biz/index.html
5 創業 昭和24年1月
6 資本金 2,860万円
7 事業内容 総合建設業(土木工事、建築工事、住宅・介護リフォーム、舗装工事、造園工事、下水道管更生工事、道路河川の維持管理業務等)他
8 経営理念 『生活を豊かに ゆとりの生活を』
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