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経営随想

ふるさと回帰で地域再生を

荒谷 紘毅
(NPO法人秋田移住定住総合支援センター)

 今年の5月8日、政策提言集団の日本創成会議が発表した2040年に896市町村が消滅する可能性があるとする試算が全国に大きな波紋を呼んでいる。特に秋田県は全市町村の95%が消滅懸念ありというダントツの短命県になっている。これは昨年3月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口」を元に試算したもので、2010年から2040年までの30年間で20~39歳(出産適齢年代)までの女性が50%以上減少する市町村を消滅懸念自治体としている。マスコミが大々的にとりあげ、にわかに注目を集めているが、この試算によれば、減少率74.6%の男鹿市を筆頭に、五城目町74.5%、三種町73%、小坂町72.9%、八峰町72.6%、藤里町71%などの減少率が抜きんでている。県内では唯一増加するのは大潟村(+15.2%)で、東北(福島は県単位のみの推計)でも他に増加するのは宮城県の富谷町(+8.3%)のみである。当秋田県は震災年の福島、宮城の特殊な事情を除けば人口減少率全国ワーストが何年も続いており、特に2005年以降は9年連続で1万人以上減少している。1万人といえば、東成瀬村と上小阿仁村、それに藤里町を合わせた数よりも多く、丁度小坂町と井川町の合計と同数である。過去9年間にわたって毎年これらの町村が消えたことになる。
 実は昨年11月、人口問題研究所の2040年までの30年間の推計をさらに同率で延長したデータを当NPOが「自治体の余命(人口ゼロまでの期間)」と題して試算しており(別表「人口減少の推移・推計」)、その結果はほぼ創成会議の試算と重なっている。創成会議の試算は、所謂出生と死亡の差(自然増・減)の視点からのデータであるが人口の増減は転入と転出差(社会増・減)も併せて考えなければならない。東京は日本一若い男女が集まるが、合計特殊出生率は常に全国最下位である。子供を産み育てる環境にないからだろう。秋田県の人口減の70%は自然減であり、これは創成会議の指摘する若い女性の減少によるもので、この比率は増加しつつある。当センターの試算で、今から何年後に全市町村が人口ゼロとなるかを出したが、最短はあと57年の上小阿仁村、藤里町、小坂町、五城目町、最長は252年の大潟村、秋田市はあと112年であるが合併した旧河辺町は52年しか持たない。実際はこれらの地区は30年くらいで自治体としての機能を失ってしまうと思われる。
 こうした事態を受けて全国の自治体は人口減に歯止めをかけるべく様々な対策を講じ始めている。当県でも2010年に県企画振興部の中に少子化対策局が立ち上げられ、結婚支援センターを通じての婚活や、子育て環境の整備に取り組んできた。また社会減対策としては秋田県ふるさと定住機構で県内への就職あっせん活動を続けてきたが、年間1万人の人口減少に歯止めはかからない。当センターも2010年6月に発足した前身の任意団体「ようこそ秋田移住促進会議」が県からの受託事業として他県からの移住促進活動を行い、4年を要してようやく200所帯の移住希望者獲得にこぎ着けたが、このうちこれまでに移住を実現した家族は31世帯67人にとどまっており、減少の歯止めとは言えない数字である。移住希望者の数に比べ実際に移住できた数が少ないのは、年金支給が先送りされたことが大きいが、家族、特に妻女の反対が多いことにもよる。他県の移住促進の結果も似たようなものであるが、ここへきて他県の活動がヒートアップしてきた。創成会議の発表後岩手、山形、群馬など5県が全庁的な組織を新設、7月の全国知事会議では人口減少に対し非常事態宣言が出されるなど危機感を強調、今年度予算に高知県は1億9000万円、島根県は2億5000万円の移住対策費を計上、政府も「まち・ひと・しごと創生本部」の設立準備室を設置し、ようやく衰退する地方へのテコ入れに腰を上げた。民間でも創設以来10年を経た認定NPO法人「ふるさと回帰支援センター」(東京・見城美枝子理事長)を中心に全国の移住促進団体が地方への移住活動を展開、金融機関も四国銀行、山梨中央銀行、みちのく銀行などが移住者への優遇ローンを導入するなど、移住促進に積極的な協力を始めている。秋田県では本年1月各自治体の移住促進の後押しを目的に県が全県の市町村に呼びかけ「あきた移住促進協議会」を創設、4月から空き家のデータベース作成に取り掛かっている。
 東京は、そこが首都であり、政治経済文化教育の集積地である以上、いつの時代でも青雲の志を抱いた若者たちが地方から集まる。しかし過密都市は子供を産み、育てる環境が劣悪であり、出生率は1.09と日本一低い。(2012年・厚生労働省)これでは日本の人口が減少するのは当然である。
  地方に働く場所をという声は強いが、経済合理性を無視しての企業立地はできない。まず取り掛からなければいけないのは、リタイアした年金生活者の地方移住の促進であり、彼らが移住して空いたスペースが若者の居住環境の改善につながり、出生率の改善にもつながる。年金生活者の地方移住のニーズは強い。大都会で定年まで働き続けた彼らは、高いスキルを身に着けている。彼らは地方の政治、経済、文化面で活性化に大きく貢献するだろう。彼らに移住を決断させるカギになるのは受け入れる地方の熱意である。それは予算の額もさることながら、首長をはじめとする地方住民の熱い呼びかけと、温かい「おもてなし」の心だと思う。ふるさとを出た人が年を経て、多くのお土産を持ってふるさとへ帰る。これこそ持続可能な循環型社会ではないだろうか。

法 人 概 要

1 法人名 NPO法人秋田移住定住総合支援センター
2 代表者名 理事長 荒谷 紘毅(あらや ひろたけ)
3 所 在 地 〒010-1413 秋田県秋田市御所野地蔵田3-1-1秋田テルサ1F
4 T E L 018-893-3981
5 F A X 018-893-3982
6 e-mail yokoso@a-iju.jp
7 設立年月 2013年5月
8 事業内容 秋田県に於ける移住定住促進活動
9 職員数 9名
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