機関誌「あきた経済」
秋田県林業の現状と課題
スギ人工資源量全国一を誇る本県ではあるが、農山村人口の減少や高齢化の進展、さらには安価な外材の流入などにより、林業の衰退がいわれて久しい。しかし、近年、国・県をはじめとする行政や、林業関係者の努力に加え、国産材利用推進の流れもあって、林業復活に向けた明るい兆しも出てきている。本稿では、県が5月に公表した「平成25年度版 秋田県林業統計」、7月に策定した「第2期ふるさと秋田農林水産ビジョン」等を元に、本県林業の現状を概観するとともに、本格復活に向けた課題について考える。
1 はじめに
本県は、森林面積が83万6千ha(22年2月1日現在)と県土の72%を占めており、東北で3位、全国でも6位の森林県である。このうち民有林が46万2千ha(55.3%)で、国有林の割合(44.7%)は全国4位と、国有林の割合が高いのが特徴である。スギ人工林面積は民有林、国有林ともに全国1位となっている。
世界遺産の白神山地を始め、森吉山や鳥海山など雄大で美しい自然を擁し、豊かな里山に彩られた本県の森林は、二酸化炭素吸収や土砂災害防止、水源涵養などの多面的機能を始め、バイオマス利用の面からも潜在的に大きな可能性を有しており、これを基にした新たなビジネスの創出や地域の活性化につながることが期待されている。(第2期ふるさと秋田農林水産ビジョン―以下「ビジョン」―より抜粋)
(注:以下、年号は特に表記がない限り平成である。)
世界遺産の白神山地を始め、森吉山や鳥海山など雄大で美しい自然を擁し、豊かな里山に彩られた本県の森林は、二酸化炭素吸収や土砂災害防止、水源涵養などの多面的機能を始め、バイオマス利用の面からも潜在的に大きな可能性を有しており、これを基にした新たなビジネスの創出や地域の活性化につながることが期待されている。(第2期ふるさと秋田農林水産ビジョン―以下「ビジョン」―より抜粋)
(注:以下、年号は特に表記がない限り平成である。)
2 本県の森林資源・林業の現状
(1)本県林業の位置づけ
(2)保有形態別森林面積等
(3)民有林人工林の特徴
(4)価格、生産量等
(5)林業就業者、林業所得
本県における林業の位置づけを、林業生産額の推移からみると、昭和54年度(494億円)をピークに減少を続けたが、14年度に76億円で底を打ってからは、増加傾向に転じており、この10年では2割を超える増加となっている。一方、13年度以降の約10年間で県内総生産および第1次産業生産額はほぼ一貫して減少を続けている。このため、林業の総生産および1次産業に対する割合は高まっており、ピーク時には及ばないものの、本県における林業の存在感は復活してきている。
(2)保有形態別森林面積等
保有形態別に森林面積(25年3月末)をみると、森林総数は82万haで、うち民有林が54.5%と半分を超えているが、全国的にみると国有林の占める割合が高い。民有林では、そのほとんどは私有林で、私有林では個人所有が47.4%を占め、次いで林業公社の6.2%などが続いている。また、森林全体では人工林と天然林の割合はほぼ半々となっているが、国有林では天然林が約6割、民有林では逆に人工林が約6割と特徴的な構成となっている。民有林の残り4割の天然林は、そのほとんどがナラ類やブナなどの広葉樹林で、多様な森づくりに向けて今後の活用が期待されている。
地域別、市町村別の森林面積では、森林総数の最も多いのが北秋田地域で、市町村別でも北秋田市が最も多い。一方、国有林は地域別では北秋田地域が最も多いものの、市町村別では仙北市が最も多くなっている。民有林では私有林も併せて、由利地域および由利本荘市の面積が最も広くなっている。
森林を構成する樹木の体積で、資源量の目安となる森林蓄積量は166百万立方メートルで、うち民有林が65.7%を占めている。また、人工林の割合は66.9%と約3分の2である。
地域別、市町村別の森林面積では、森林総数の最も多いのが北秋田地域で、市町村別でも北秋田市が最も多い。一方、国有林は地域別では北秋田地域が最も多いものの、市町村別では仙北市が最も多くなっている。民有林では私有林も併せて、由利地域および由利本荘市の面積が最も広くなっている。
森林を構成する樹木の体積で、資源量の目安となる森林蓄積量は166百万立方メートルで、うち民有林が65.7%を占めている。また、人工林の割合は66.9%と約3分の2である。
(3)民有林人工林の特徴
本県における民有林の人工林造成は、昭和43年に旧田沢湖町で開催された全国植樹祭を契機に、翌44年から50年にかけて「年間1万ha造林推進県民運動」が実施されたことで、整備が進んだ。この結果、人工林率は森林全体で50%、民有林では58%となっており、民有人工林におけるスギ人工林は23万8千haと90%を超え、全国一の面積を有している。このうち県が、生育途上のため間伐が必要だとしている3~7齢級(11年生~35年生)の面積は5万8千haで全体の24%、これらを含む7齢級以下の若・幼齢林が25%、売却などの利用間伐が可能な8齢級以上が75%を占めている。人工林は、天然林と異なり、人が手をかけて整備しなければ、健全さを維持することが困難な森林であり、間伐の推進は、適正な森林管理、木材の安定供給の観点から、重要な役割を担っている。
この齢級別面積を元年度と比較すると、間伐が必要な齢級面積が減少してきている一方で、伐採適齢期(伐期)といわれる林齢50年(10齢級)以上が大幅に増加していることが分かる。造林推進県民運動から50年近く、元年度から四半世紀の時を要して、今まさに本県の誇るスギ人工林は伐期を迎え、その有効かつ積極的な活用が求められている。
この齢級別面積を元年度と比較すると、間伐が必要な齢級面積が減少してきている一方で、伐採適齢期(伐期)といわれる林齢50年(10齢級)以上が大幅に増加していることが分かる。造林推進県民運動から50年近く、元年度から四半世紀の時を要して、今まさに本県の誇るスギ人工林は伐期を迎え、その有効かつ積極的な活用が求められている。
(4)価格、生産量等
スギ立木価格の推移をみてみると、昭和50年頃は1立方メートル当たり1万7千円前後だったものが、近年は2千円台と2割以下の水準にまで落ち込んでいる。ただ、全国平均の価格の下落は本県以上であり、平成年代に入ってからは、本県産スギの価格が全国平均をほぼ上回って推移している。安価な外材の輸入にともなって国産材価格が長期低迷している様子がみて取れるが、足元では、下げ止まりの傾向もみられる。
5年以降20年間の素材(丸太)生産量の推移をみてみると、年々減少していた生産量は、14年に644千立方メートルで底を打った後、増加に転じ、24年にはほぼ6年の水準まで回復している。リーマンショックによる20年秋以降の急速な景気悪化の影響等を受け、一時減少に転じたものの、後述する国の森林・林業再生プランの策定や、世界的な木材需給の逼迫等から国産材回帰の動きが強まり、22年からは再び、増加基調に復している。国有林、民有林の割合も5年当時はほぼ半々だったが、近年は、民有林の割合が7割近くに上っている。なお、樹種別ではスギが86%と大半を占め、スギの生産量は宮崎県に次いで全国2位、東北1位となっている。
素材の生産は、14年度に底打ちしたが、これを用途別に約10年間の推移でみた。製材用とチップ用は年度による若干の変動はあるものの、趨勢としては減少傾向となっている。一方、合板の伸びが著しい。全体の生産量が増加に転じた大きな要因は、合板用木材の増加に負うところが大きいが、これは、合板工場がスギ資源量の充実にいち早く対応し、それまでの外国産材の使用から、国産材価格の低下とも相まって、国産材に原料転換したことによる。14年以降本格化した旺盛な合板需要が、利用間伐等の素材生産活性化の原動力となっている。
5年以降20年間の素材(丸太)生産量の推移をみてみると、年々減少していた生産量は、14年に644千立方メートルで底を打った後、増加に転じ、24年にはほぼ6年の水準まで回復している。リーマンショックによる20年秋以降の急速な景気悪化の影響等を受け、一時減少に転じたものの、後述する国の森林・林業再生プランの策定や、世界的な木材需給の逼迫等から国産材回帰の動きが強まり、22年からは再び、増加基調に復している。国有林、民有林の割合も5年当時はほぼ半々だったが、近年は、民有林の割合が7割近くに上っている。なお、樹種別ではスギが86%と大半を占め、スギの生産量は宮崎県に次いで全国2位、東北1位となっている。
素材の生産は、14年度に底打ちしたが、これを用途別に約10年間の推移でみた。製材用とチップ用は年度による若干の変動はあるものの、趨勢としては減少傾向となっている。一方、合板の伸びが著しい。全体の生産量が増加に転じた大きな要因は、合板用木材の増加に負うところが大きいが、これは、合板工場がスギ資源量の充実にいち早く対応し、それまでの外国産材の使用から、国産材価格の低下とも相まって、国産材に原料転換したことによる。14年以降本格化した旺盛な合板需要が、利用間伐等の素材生産活性化の原動力となっている。
(5)林業就業者、林業所得
国勢調査の結果をもとに、森林整備の担い手である林業就業者数の推移をみると、山村地域の人口減少や高齢化が影響し、17年には1,923人と昭和45年当時の18%にまで激減したが、22年には2,518人と増加に転じている。年齢構成でも、25歳~54歳の働き世代の就業者の増加が顕著である。この結果、55歳以上の割合が最も高い点に変わりはないものの、2年以来20年ぶりに、50%を割り込むなど、若返りの兆しも現れてきている。また、林業雇用労働者の年間採用数も県の調査によると、ここ数年は100人を超えている。林業従事者の研修費用などを国が補助する「緑の雇用」事業とともに、県の森林整備担い手育成基金を活用した各種事業や助成等により、若い林業労働者にとって魅力ある労働環境となるよう就労条件等の整備が進められていること、生産性の向上に向けて高性能林業機械の導入も進んでいることなどが林業就業者の増加につながっていると考えられる。
一方、農林業センサスによると、本県で山林を所有する林家約2万8千戸のうち、サラリーマンなど非農業林家の割合が36%と高く、また、所有面積5ha以下が80%近いなど零細小規模な所有構造となっている。国交省の試算では、今後、相続時に登記手続きがなされない等で、所有者不明の森林は62年(2050年)には全国で47万ha(全国森林面積の約2%)に達し、それも虫食い状態に分布することが予想されていることから、これらの森林の荒廃を如何に防ぐかが課題となってきている。
東北・北陸の林家における林業所得の推移をみてみると、本県のみを対象にした調査ではないが傾向はほぼ同じと考えられ、平成12年以降はほぼマイナスが続くなど、林業の採算性の厳しさが表れている。
一方、農林業センサスによると、本県で山林を所有する林家約2万8千戸のうち、サラリーマンなど非農業林家の割合が36%と高く、また、所有面積5ha以下が80%近いなど零細小規模な所有構造となっている。国交省の試算では、今後、相続時に登記手続きがなされない等で、所有者不明の森林は62年(2050年)には全国で47万ha(全国森林面積の約2%)に達し、それも虫食い状態に分布することが予想されていることから、これらの森林の荒廃を如何に防ぐかが課題となってきている。
東北・北陸の林家における林業所得の推移をみてみると、本県のみを対象にした調査ではないが傾向はほぼ同じと考えられ、平成12年以降はほぼマイナスが続くなど、林業の採算性の厳しさが表れている。
3 森林保護
(1)松くい虫被害
(2)ナラ枯れ被害
本県の森林資源の主体は全国的なブランド力を持つ秋田スギではあるが、これとともに、本県の海岸線263㎞には、飛砂防備や防風、保健休養の面で重要な役割を果たしているマツ林が広がり、豊かな景観美を誇っている。しかし、その海岸マツ林は、近年松くい虫の被害により、多くが失われている。
松くい虫被害は、昭和57年に旧象潟町で確認されて以来拡大を続け、被害面積は19年に3,410ha、被害材積は14年に38,835?のピークとなった。その間、県をはじめとする関係者の懸命な防除によって、徐々に面積、材積ともに減少傾向になってきている。しかし、24年には、これまで被害のなかった小坂町でも発生が確認され、ついに県内全域に及んだ。県の調査によると、被害の中心は県の北部に移動して活発化しており、依然として予断を許さない状況と認識されている。
松くい虫被害は、昭和57年に旧象潟町で確認されて以来拡大を続け、被害面積は19年に3,410ha、被害材積は14年に38,835?のピークとなった。その間、県をはじめとする関係者の懸命な防除によって、徐々に面積、材積ともに減少傾向になってきている。しかし、24年には、これまで被害のなかった小坂町でも発生が確認され、ついに県内全域に及んだ。県の調査によると、被害の中心は県の北部に移動して活発化しており、依然として予断を許さない状況と認識されている。
(2)ナラ枯れ被害
一方、ナラ枯れ被害は18年に、にかほ市(旧象潟町)で確認され、その後、一気に北上している。現在、被害市町村は秋田市や男鹿市のほか、内陸南部を含む8市町村に拡大し、被害材積も3,000立方メートルを超えるまでになっている。
4 課題
林業を再生するためには、林業・森林管理そのものの「川上」から、林業によって産出された素材(木材)を製材・加工する木材業の「川下」までを一貫して成長させる必要がある。
「川上」対策としては、適時適切な間伐や、林業の生産性向上が求められるほか、「川下」対策としては、製材工場等の大型化・効率化に加えて、近年、住宅業界などから求められる乾燥材の提供体制の充実などが課題となっている。
(1)川上対策
(2)川下対策
(3)林業公社
「川上」対策としては、適時適切な間伐や、林業の生産性向上が求められるほか、「川下」対策としては、製材工場等の大型化・効率化に加えて、近年、住宅業界などから求められる乾燥材の提供体制の充実などが課題となっている。
(1)川上対策
林業の生産性の向上を図るためには、林道などの路網整備と、高性能機械を活用した効率的な作業システムを導入することが不可欠である。国内林業は路網整備や施業の集約化の遅れなどから生産性が低く、材価も低迷するなか、森林所有者の林業への関心低下も課題となっている。(ビジョンより抜粋)
(2)川下対策
一方、川下の中心的役割を占める製材工場は零細・小規模工場が多いことに加え、機械設備の更新の遅れ等から生産効率が低いなどの課題を抱えている。加えて、販路対策として、被災地等県外への木材製品の出荷促進や販売促進の強化。公共建物等の木造化・木質化の促進。発電や熱利用など木質バイオマス利用拡大システムの構築なども求められている。(ビジョンより抜粋)
(3)林業公社
資金上の制約等から森林所有者による造林が進みにくい森林では、計画的な森林資源の造成や山村の振興等を目的として、地方公共団体等の出資により設立された林業公社が費用負担者となって森林を造成してきた。しかし、公社の経営は木材価格の低下等の社会情勢の変化や森林造成に要した借入金の累増等により総じて厳しい状況にある。(林野庁「森林・林業白書」)このため、全国的に解散や合併、民事再生法の適用等を受ける公社が出てきており、本県でも、その存廃を含めて在り方が検討されている。
5 県の取り組み
(1)第2期ふるさと秋田農林水産ビジョン
(2)本年度の取り組み
(3)その他の取り組み
県では、本年7月に、本県の農林水産業および農山漁村の振興に関する基本計画として「第2期ふるさと秋田農林水産ビジョン」を策定し、農林水産施策の基本方向を明らかにしている。26年度から29年度までの4年間を実施期間としているが、林業については「川上から川下まで競争力の高い木材・木製品の安定供給体制を整備することにより、全国最大級の木材総合加工産地としての地位確立を目指す」としている。
県ではこれまでも、川上については、保育・利用間伐のほか、低コスト化に向けた林道・作業道の路網整備、高性能林業機械の導入を支援してきた。また、川下についても、東北最大級の大規模製材工場の整備や人工乾燥施設の導入、県産材を利用した住宅の建設や公共建築物の木造化・木質化を推進してきている。
そして、おおむね10年後には、原木の低コスト生産や木材加工企業等の施設整備が進み、大型の木造建築物や木造住宅が増えるほか、木質バイオマスボイラーやペレットストーブが普及するなど、県産材の活用が多方面で進む姿を描いている。
県ではこれまでも、川上については、保育・利用間伐のほか、低コスト化に向けた林道・作業道の路網整備、高性能林業機械の導入を支援してきた。また、川下についても、東北最大級の大規模製材工場の整備や人工乾燥施設の導入、県産材を利用した住宅の建設や公共建築物の木造化・木質化を推進してきている。
そして、おおむね10年後には、原木の低コスト生産や木材加工企業等の施設整備が進み、大型の木造建築物や木造住宅が増えるほか、木質バイオマスボイラーやペレットストーブが普及するなど、県産材の活用が多方面で進む姿を描いている。
(2)本年度の取り組み
こうしたビジョンを現実化するために、本年度も「グローバルな産地間競争に打ち勝つ『木材総合加工産地・あきた』」を目指して、森林・林業・木材産業に関する種々の施策を打ち出している。このなかで、全国一の量を誇るスギ人工林資源が、本格的な伐採・活用の時期にあることから、県産材の需要を拡大し、地場産業として秋田の成長の一翼を担う林業・木材産業を再生していくことが重要課題だとしている。
このため、「川上対策」として、①間伐の推進や林内路網整備と高性能林業機械導入促進など「原木の低コスト生産・安定供給体制の整備」、②林業就業希望者向け林業大学校の来年度開設など新たな研修機関の整備を進め「高い技術と知識を持った林業技術者の確保・育成」。「川下対策」として、③大規模製材工場の生産拡大とともに、製材機械や乾燥機等の導入促進などによる「競争力の高い製品の供給体制整備と木質バイオマスの利用促進」、④県産材の情報発信と首都圏等での販路拡大とともに、公共建築物の木造化・木質化等による木材の活用を促進する「秋田スギ等県産材の需要拡大」。「環境保全対策」として、⑤水と緑の森づくり税を活用した森林環境の保全や森林病虫害防除を進める「県民参加の森づくりと暮らしを守る森づくりの推進」―を大きな柱として取り組んでいる。
このため、「川上対策」として、①間伐の推進や林内路網整備と高性能林業機械導入促進など「原木の低コスト生産・安定供給体制の整備」、②林業就業希望者向け林業大学校の来年度開設など新たな研修機関の整備を進め「高い技術と知識を持った林業技術者の確保・育成」。「川下対策」として、③大規模製材工場の生産拡大とともに、製材機械や乾燥機等の導入促進などによる「競争力の高い製品の供給体制整備と木質バイオマスの利用促進」、④県産材の情報発信と首都圏等での販路拡大とともに、公共建築物の木造化・木質化等による木材の活用を促進する「秋田スギ等県産材の需要拡大」。「環境保全対策」として、⑤水と緑の森づくり税を活用した森林環境の保全や森林病虫害防除を進める「県民参加の森づくりと暮らしを守る森づくりの推進」―を大きな柱として取り組んでいる。
(3)その他の取り組み
また、20年度からは「秋田県水と緑の森づくり税」を活用し、針葉樹と広葉樹の混交林化や松くい虫・ナラ枯れ対策など、森林環境や公益性を重視した森づくりや、県民参加の森づくりも推進している。
さらに、一昨年からは、秋田スギなどの県産材を使って県外で住宅を新築した施主に、県内パック旅行や県産品を贈る「秋田の木販路開拓事業」も行っており、好評を得ている。
さらに、一昨年からは、秋田スギなどの県産材を使って県外で住宅を新築した施主に、県内パック旅行や県産品を贈る「秋田の木販路開拓事業」も行っており、好評を得ている。
6 見え始めた明るい兆し
長かった低迷から、ようやく脱却の動きが現れつつある林業だが、近年は建築の技術革新で間伐材の活用などが進み、国産材の利用が上向くなど、より明るい兆しも見え始めている。
(1)CLT
(2)木材自給率50%目標
(3)県内の動き
(1)CLT
国では、国産材の利用拡大につなげる狙いから、CLT(クロス・ラミネーテッド・ティンバー:細長い木板を積み重ねた大型パネル)の生産を支援していく方針で、本県でも、県立大木材高度加工研究所(木高研)が秋田スギを活用した製造技術確立を目指して研究開発に取り組んでいる。CLTは優れた強度、断熱、耐火性を持つほか、建築物の工期を大幅に短縮できることから、欧米では中高層建築物の壁や床材として活用が進んでいる。しかし、我が国では強度や耐火性などの基準整備が遅れていることに加え、板を張り合わせる工程に専用設備が必要なことなどから、普及は進んでいない。国では、28年度を目標に基準を定め、東京五輪の関連施設への利用を働き掛けるなど、国内での使用を推進する方針にある。本県でも、こうした流れに乗り遅れることなく、伐期にある秋田スギを活用できるようにすべきであり、木高研の成果に期待したい。
(2)木材自給率50%目標
農水省では21年12月、「コンクリート社会から木の社会へ」を副題に「森林・林業再生プラン」を公表し、林業経営・技術の高度化とともに、森林資源の活用を図ることで、14年には18%台まで落ち込んだ木材自給率を10年後の32年までに50%へ引き上げる目標を打ち出している。これに向けた施策も、「公共建築物等木材利用促進法」の施行を始め、CLTに関する法整備を進めるなど、着実に動き出している。
経済発展が著しい中国を中心に世界の木材需要は長期的に増加傾向にある一方、世界一の産業用丸太輸出国のロシアでは(資源保護の観点からの)丸太輸出税の引き上げにより輸出量が大幅に減少している。この結果、世界の木材需給は逼迫してきており、我が国の輸入木材価格も上昇し、国産材の相対的な競争力は高まっている。加えて、我が国では、近年、製材生産の大規模工場への集中や合板生産に占める国産材の割合の上昇等の動きがみられ、国産材を利用する環境は整いつつある。(ビジョンより抜粋)
東日本大震災による原発事故にともなう、エネルギー環境の根本的な見直しが行われるなか、発電や、熱利用などに木質バイオマスの活用が注目されている。本県においても、低質材を中心にチップ向け材の需要は拡大が見込まれる。
経済発展が著しい中国を中心に世界の木材需要は長期的に増加傾向にある一方、世界一の産業用丸太輸出国のロシアでは(資源保護の観点からの)丸太輸出税の引き上げにより輸出量が大幅に減少している。この結果、世界の木材需給は逼迫してきており、我が国の輸入木材価格も上昇し、国産材の相対的な競争力は高まっている。加えて、我が国では、近年、製材生産の大規模工場への集中や合板生産に占める国産材の割合の上昇等の動きがみられ、国産材を利用する環境は整いつつある。(ビジョンより抜粋)
東日本大震災による原発事故にともなう、エネルギー環境の根本的な見直しが行われるなか、発電や、熱利用などに木質バイオマスの活用が注目されている。本県においても、低質材を中心にチップ向け材の需要は拡大が見込まれる。
(3)県内の動き
また、このところ県内では、秋田市内のコンビニ店舗を秋田スギ木造構法で建設するなど商業・土木分野での県産材利用拡大の取り組みも行われている。秋田スギを活用した中高層建築の可能性を探る研究会も活動しているほか、JR秋田駅西口バスターミナル、国際教養大学の図書館棟、県正庁の内装等々、これまであまり使われなかった用途にも、スギを中心とした県産材の利用が進み、全国的な注目を集めており、今後のさらなる活用が期待される。
7 まとめ
県では、「国産材時代をリードする木材供給基地」を標榜して資源的基盤整備を積極的に進めている。このため、ビジョンでも、「木材・木製品の安定供給を整備するためには、林内路網の整備や間伐等森林施業の集約化、担い手の確保・育成など、原木の低コスト生産や安定供給に向けた川上対策を充実・強化する必要がある。また、川下においても、大規模製材工場を核とした低コストで高品質な製品の供給体制づくりや集成材原材料の外国産材から秋田スギへの転換、低質材のバイオマス利用を促進し、県産材の需要拡大を図る必要がある」ことを強調している。
前述したように、秋田スギを全面的に利用したコンビニや、JR秋田駅西口バスターミナルが秋田スギをふんだんに使って建て替えられるなど、木造住宅以外にも秋田スギを活用する動きが進んでおり、全国的にも注目されている。また、県内の木材関連36社が10月、秋田スギなど県産材の販路拡大を目指して、東京で合同展示商談会を開催する動きもある。こうした積極的な攻めの姿勢をさらに推進するならば、県産材の未来は明るいと考える。
前述したように、秋田スギを全面的に利用したコンビニや、JR秋田駅西口バスターミナルが秋田スギをふんだんに使って建て替えられるなど、木造住宅以外にも秋田スギを活用する動きが進んでおり、全国的にも注目されている。また、県内の木材関連36社が10月、秋田スギなど県産材の販路拡大を目指して、東京で合同展示商談会を開催する動きもある。こうした積極的な攻めの姿勢をさらに推進するならば、県産材の未来は明るいと考える。
(佐々木 正)