機関誌「あきた経済」
秋田県のPFIの現状と課題
県や市町村など地方自治体の財政状況が厳しさを増しているなかで、地域住民の福祉や経済の礎となっている社会資本(道路、上下水道、公営住宅、文教施設等々)の整備や老朽化への対策が喫緊の課題となっているが、解決策の有効な方策として国が注力している一つにPFI事業がある。本稿では、「PFI事業とは何か」や、地方圏での取り組みが進んでいない課題等を確認し、全国の取り組み状況や本県の現状等について考える。
1 PFIとは
近年、地方自治体の財政事情が逼迫するなかで、公共施設やインフラなどの老朽化・更新対策が大きな問題となっている。
本誌では、社会資本の老朽化への課題と対策について何度か取り上げ、PPP/PFI等の活用についても、本格化させるよう提言してきている。
内閣府によると、PFI(Private Finance Initiative-民間資金を活用した社会資本整備)とは「公共施設等の建設、維持管理、運営等に民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより、(行政が直接行うのと)同一水準のサービスをより安く、又は、同一価格でより上質のサービスを提供する手法」で「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(以下、PFI法)に基づいて実施される事業である。民間の資金、ノウハウ等の活用によって、公共施設等の整備等にかかる行政コストを縮減させるとともに、真に必要な社会資本整備を効率的に進め、経済の活性化および経済成長を実現させようというものである。
一方、PPP(Public Private Partnership―官・民連携)は行政などの公共機関と民間事業者が幅広く連携することによって公共施設等の社会資本の設置、運営、管理等を民間に委ね、行政が直接行う以上の行政サービスをより低コストで地域住民に提供しようという考えで、指定管理者制度や業務委託などを含めた比較的曖昧な概念とされている。PPPとPFIの関係では、PFIはPPPの事業手法の一つとされている。(※1)
PFIは、1990年頃のイギリスで、行財政改革の実施策として導入され、我が国では、平成11(1999)年7月にPFI法が制定され、正式に制度化された。その後の法改正を経て、現在、PFI法の対象となる公共施設等は、幅広い範囲に及んでいる。(以下、年号は平成)
PFIの導入を決めるに当たっては、従来の公共事業方式とPFI方式とで行政の財政負担等を比較検証することになっている。より大きなVFM(Value For Money)が得られ、かつPFI法に則って事業が行われると判断できた場合に導入することになる。(※2)
PFIには、事業方式(施設の所有形態による分類)と事業類型(事業費の回収方法による分類)によって、いくつかの種類があり、事業方式と事業類型が組み合わされて、個別の事業の形態が示されている(例えば、「BTO方式でサービス購入型の事業」等)。国も、数次にわたるPFI法の改正によって、対象施設の拡大や、民間事業者による提案制度、公共施設等運営権制度等の導入など地方においても参入しやすい環境づくりに努めてきてはいるが、必ずしも、使い勝手が良い制度とはいえないとの声もある。このことは、内閣府が本年6月に公表した「PFI事業の実施状況について」からも読み取ることができる。24年度末現在の事業類型別では「サービス購入型」が全体の73%と大多数を占め、次いで「混合型」が22%である。本来望ましい姿とされる「独立採算型」は5%に過ぎず、その内容も利用料が安定して入り、事業リスクが比較的少ない廃棄物処理施設、駐車場、老人福祉施設などが多い。また、事業方式別では「BTO方式」が72%と最も多く、「BOT方式」が13%となっている。残りは「BOO方式」「RO方式」(※3)などその他の方式ということになる。多くの事業で交付金、補助金が施設完成後に一括で交付されること、固定資産税の負担を回避できることなどからBTO方式を選ぶとされている。(※4)
(※1)したがって、「PFIを中軸とするPPPによる市民活力・民間活力を活かした公共サービス」といった表現が使われている。
(※2)VFMとは、支払いに対するサービスの価値をいい、このVFMの最大化がPFI事業の目的の一つである。行政がサービスを直接提供するよりも民間に委ねた方が効率的(同一水準のサービスをより安く、同一価格でより上質のサービス)な場合に「VFMがある(出る)」という。
(※3)BOO方式(Build-Own-Operate方式):民間が施設建設・管理運営を行い、事業終了時に民間で施設撤去する事業方式。RO方式(Rehabilitate-Operate方式):民間が施設改修後、民間で管理運営を行う事業方式。
(※4)内閣府の集計では、秋田市や能代市の公営住宅事業のように「O(Operate):施設の運営・管理・公共サービス提供」を含まない「BT方式」等の事業は除かれている。
本誌では、社会資本の老朽化への課題と対策について何度か取り上げ、PPP/PFI等の活用についても、本格化させるよう提言してきている。
内閣府によると、PFI(Private Finance Initiative-民間資金を活用した社会資本整備)とは「公共施設等の建設、維持管理、運営等に民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより、(行政が直接行うのと)同一水準のサービスをより安く、又は、同一価格でより上質のサービスを提供する手法」で「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(以下、PFI法)に基づいて実施される事業である。民間の資金、ノウハウ等の活用によって、公共施設等の整備等にかかる行政コストを縮減させるとともに、真に必要な社会資本整備を効率的に進め、経済の活性化および経済成長を実現させようというものである。
一方、PPP(Public Private Partnership―官・民連携)は行政などの公共機関と民間事業者が幅広く連携することによって公共施設等の社会資本の設置、運営、管理等を民間に委ね、行政が直接行う以上の行政サービスをより低コストで地域住民に提供しようという考えで、指定管理者制度や業務委託などを含めた比較的曖昧な概念とされている。PPPとPFIの関係では、PFIはPPPの事業手法の一つとされている。(※1)
PFIは、1990年頃のイギリスで、行財政改革の実施策として導入され、我が国では、平成11(1999)年7月にPFI法が制定され、正式に制度化された。その後の法改正を経て、現在、PFI法の対象となる公共施設等は、幅広い範囲に及んでいる。(以下、年号は平成)
PFIの導入を決めるに当たっては、従来の公共事業方式とPFI方式とで行政の財政負担等を比較検証することになっている。より大きなVFM(Value For Money)が得られ、かつPFI法に則って事業が行われると判断できた場合に導入することになる。(※2)
PFIには、事業方式(施設の所有形態による分類)と事業類型(事業費の回収方法による分類)によって、いくつかの種類があり、事業方式と事業類型が組み合わされて、個別の事業の形態が示されている(例えば、「BTO方式でサービス購入型の事業」等)。国も、数次にわたるPFI法の改正によって、対象施設の拡大や、民間事業者による提案制度、公共施設等運営権制度等の導入など地方においても参入しやすい環境づくりに努めてきてはいるが、必ずしも、使い勝手が良い制度とはいえないとの声もある。このことは、内閣府が本年6月に公表した「PFI事業の実施状況について」からも読み取ることができる。24年度末現在の事業類型別では「サービス購入型」が全体の73%と大多数を占め、次いで「混合型」が22%である。本来望ましい姿とされる「独立採算型」は5%に過ぎず、その内容も利用料が安定して入り、事業リスクが比較的少ない廃棄物処理施設、駐車場、老人福祉施設などが多い。また、事業方式別では「BTO方式」が72%と最も多く、「BOT方式」が13%となっている。残りは「BOO方式」「RO方式」(※3)などその他の方式ということになる。多くの事業で交付金、補助金が施設完成後に一括で交付されること、固定資産税の負担を回避できることなどからBTO方式を選ぶとされている。(※4)
(※1)したがって、「PFIを中軸とするPPPによる市民活力・民間活力を活かした公共サービス」といった表現が使われている。
(※2)VFMとは、支払いに対するサービスの価値をいい、このVFMの最大化がPFI事業の目的の一つである。行政がサービスを直接提供するよりも民間に委ねた方が効率的(同一水準のサービスをより安く、同一価格でより上質のサービス)な場合に「VFMがある(出る)」という。
(※3)BOO方式(Build-Own-Operate方式):民間が施設建設・管理運営を行い、事業終了時に民間で施設撤去する事業方式。RO方式(Rehabilitate-Operate方式):民間が施設改修後、民間で管理運営を行う事業方式。
(※4)内閣府の集計では、秋田市や能代市の公営住宅事業のように「O(Operate):施設の運営・管理・公共サービス提供」を含まない「BT方式」等の事業は除かれている。
2 全国の状況
内閣府によると、我が国におけるこれまでの約15年間(11年度から25年度)のPFI導入実績は、国、地公体等で440件である。このうち、事業者決定等により公共負担額が決定したものは415件、4兆3,180億円の規模に達し、VFMも8,183億円となっている。PFI導入によって、国、地公体等を通じた国全体の財政改善に寄与しているといえよう。
内閣府で集計した25年度末での全国のPFI事業の事業主体別、分野別件数をみてみると、事業主体では国が65件、地方が333件、その他が42件となっており、地方がPFIの主役といえる。分野別では国の事業では41件が「庁舎と宿舎」で大半を占めている。地方では学校や図書館などの「教育と文化」が最も多く111件、次いで「健康と環境(病院、廃棄物処理施設等)」75件、「まちづくり(道路、公園、下水道等)」48件と続いている。その他の大半は国立大学法人等の「教育と文化」事業である。
実施都道府県別でみると、最も多いのが東京都(55件)で、以下、愛知県(30件)、大阪府(29件)、埼玉県(29件)と続くが、群馬県、和歌山県、鳥取県、高知県、宮崎県の5県ではPFI事業の実績がない。首都圏など三大都市圏で多く、地方圏で少ないというPFI事業推進の課題が現れている。
政府では、地方圏におけるPFI事業の推進に向け、25年6月の民間資金等活用事業推進会議で「PPP/PFIの抜本改革に向けたアクションプラン」を決定し、民間と地域の双方にとって魅力的なPPP/PFI事業として、今後10年間(25年~34年)で12兆円規模の事業を重点的に推進するとしている。例えば、①空港、上下水道事業における運営権制度の積極的な導入等の「公共施設等運営権制度を活用したPFI事業」、②高速道路など公共施設の維持・更新にPPP的手法の導入を検討する等の「収益施設の併設・活用など事業収入等で費用を回収するPFI事業等」などを挙げている。
同会議では、26年6月に本アクションプランの取り組みを加速化し、地域における事業機会の創出や効率的なインフラ運営、サービスの向上、さらには、民間投資の喚起による経済成長を実現するため、公共施設等運営権方式について、集中強化期間(26年度から28年度までの3年間)、重点分野(空港、上下水道、道路)、数値目標を設定し、前倒しのうえ、政府一体となって取り組むことを決定している。重点的な取り組みとしては、①関空・伊丹空港および仙台空港に係る公共施設運営権の設定による事業の着実な実施など「事業環境の整備」、②地方公共団体への働きかけ等による制度趣旨の理解や事業推進に向けた機運の醸成、地域企業のノウハウ習得や地域人材の育成などの「地域への支援」等を行っていくとしている。
また、25年6月のPFI法改正で、官民連携によるインフラファンドの機能を担う(株)民間資金等活用事業推進機構が同年10月に設立された。独立採算型等のPFIに対し、金融支援等を実施することにより、インフラ事業への民間投資を喚起し、財政負担の縮減や民間の事業機会の創出を図ろうとするものである。本機構には、本県でも秋田銀行と北都銀行が株主として出資しており、民間のリスク回避と、事業参入へのハードル軽減が期待される。
内閣府で集計した25年度末での全国のPFI事業の事業主体別、分野別件数をみてみると、事業主体では国が65件、地方が333件、その他が42件となっており、地方がPFIの主役といえる。分野別では国の事業では41件が「庁舎と宿舎」で大半を占めている。地方では学校や図書館などの「教育と文化」が最も多く111件、次いで「健康と環境(病院、廃棄物処理施設等)」75件、「まちづくり(道路、公園、下水道等)」48件と続いている。その他の大半は国立大学法人等の「教育と文化」事業である。
実施都道府県別でみると、最も多いのが東京都(55件)で、以下、愛知県(30件)、大阪府(29件)、埼玉県(29件)と続くが、群馬県、和歌山県、鳥取県、高知県、宮崎県の5県ではPFI事業の実績がない。首都圏など三大都市圏で多く、地方圏で少ないというPFI事業推進の課題が現れている。
政府では、地方圏におけるPFI事業の推進に向け、25年6月の民間資金等活用事業推進会議で「PPP/PFIの抜本改革に向けたアクションプラン」を決定し、民間と地域の双方にとって魅力的なPPP/PFI事業として、今後10年間(25年~34年)で12兆円規模の事業を重点的に推進するとしている。例えば、①空港、上下水道事業における運営権制度の積極的な導入等の「公共施設等運営権制度を活用したPFI事業」、②高速道路など公共施設の維持・更新にPPP的手法の導入を検討する等の「収益施設の併設・活用など事業収入等で費用を回収するPFI事業等」などを挙げている。
同会議では、26年6月に本アクションプランの取り組みを加速化し、地域における事業機会の創出や効率的なインフラ運営、サービスの向上、さらには、民間投資の喚起による経済成長を実現するため、公共施設等運営権方式について、集中強化期間(26年度から28年度までの3年間)、重点分野(空港、上下水道、道路)、数値目標を設定し、前倒しのうえ、政府一体となって取り組むことを決定している。重点的な取り組みとしては、①関空・伊丹空港および仙台空港に係る公共施設運営権の設定による事業の着実な実施など「事業環境の整備」、②地方公共団体への働きかけ等による制度趣旨の理解や事業推進に向けた機運の醸成、地域企業のノウハウ習得や地域人材の育成などの「地域への支援」等を行っていくとしている。
また、25年6月のPFI法改正で、官民連携によるインフラファンドの機能を担う(株)民間資金等活用事業推進機構が同年10月に設立された。独立採算型等のPFIに対し、金融支援等を実施することにより、インフラ事業への民間投資を喚起し、財政負担の縮減や民間の事業機会の創出を図ろうとするものである。本機構には、本県でも秋田銀行と北都銀行が株主として出資しており、民間のリスク回避と、事業参入へのハードル軽減が期待される。
3 秋田県の現状
本県では大館周辺広域市町村圏組合のごみ処理事業(廃棄物処理施設)がPFI法に基づく第1号事業とされており、これまで4事業が実施されている。(※5)
いずれも、行政が料金を事業者に支払う「サービス購入型」である。また、3事業が市営住宅の建て替え事業で、秋田市と能代市がBT方式、大館市はBTO方式となっている。市営住宅完成後、市に所有権が移っているもので、民間事業者の資金負担の軽減を図っている。また、秋田市と能代市ではBTで留まっていて、本来のPFIとは意味合いが異なっているが、これは、市営住宅に関しては、民間事業者に運営・管理を委ねても、それほど効率が上がらないとの認識が市側にあると推測される。
秋田市の事業の例では、5か所の市営住宅団地を1か所に集約させ、廃止した団地跡地は、民間事業者が買い取ったうえで、民間活力を導入して分譲住宅等に整備するほか、新団地には社会福祉施設を併設するなど、プロジェクト全体でPFI方式を取り入れる工夫をしている。
一方、県では「PFIガイドライン」を策定し、基本的な考え方を示すとともに、導入までの手続き等について、詳細な解説を行っているが、残念ながら18年1月以降改訂されず、事業化もされていない状況にある。
本県と同様に地方圏にあり、近隣の北海道・東北の状況を、自治体PFI推進センターの資料から比較してみると、山形県(14件)、宮城県(13件)、北海道(12件)が二桁となっているなかで、本県の4件は下位グループということになる。PFI導入が多い道・県を中心に特徴的なのは、学校施設や給食センターなどの「教育と文化」が22件と最多であるほか、廃棄物処理施設や斎場などの「健康と環境」が16件、次いで公営住宅や公園などの「まちづくり」が11件と多くなっていることである。本県でも、これら近隣の道・県の取り組み状況を検証することで、新たな導入への道筋が見えてくるのではないだろうか。
いずれにしても、地方圏でPFIの導入が進んでいない状況は本県にも当てはまっており、今後、如何にPFIの導入を進めていくかが課題である。県内の複数の市町村および建設事業者から聞き取りした結果では、導入にあたって次のようなネックがあるとのことだった。
<市町村>財源不足のなかで公共インフラの老朽化対策を急がなければとの認識は強く持っている。PFIについても有効な方策とは考えるものの、ノウハウの不足に加え、本県のような地方圏で果たして有効かとの危惧が大きい。
<民間>①PFIへの認識も含めてノウハウがない。労働力不足や資材の高騰などにより、入札不調も出ている現下の受注環境のもとでは、あえて、手間暇がかかり、コスト回収にも時間がかかると思われるPFIに積極的に取り組もうとする姿勢はない。②長期にわたるプロジェクトだけに、人件費の高騰などコスト変動のリスク対応が難しい。加えて、共同企業体を作る事業者間の信頼関係の構築が難しい。
(※5)上述のとおり、内閣府の示した440事業では、本県は大館地区の2事業のみが計上されている。しかし、秋田市、能代市の市営住宅事業もPFI法に則って行われていることから、本稿では自治体PFI推進センターなどの実施事例集に準じて4事業とした。
いずれも、行政が料金を事業者に支払う「サービス購入型」である。また、3事業が市営住宅の建て替え事業で、秋田市と能代市がBT方式、大館市はBTO方式となっている。市営住宅完成後、市に所有権が移っているもので、民間事業者の資金負担の軽減を図っている。また、秋田市と能代市ではBTで留まっていて、本来のPFIとは意味合いが異なっているが、これは、市営住宅に関しては、民間事業者に運営・管理を委ねても、それほど効率が上がらないとの認識が市側にあると推測される。
秋田市の事業の例では、5か所の市営住宅団地を1か所に集約させ、廃止した団地跡地は、民間事業者が買い取ったうえで、民間活力を導入して分譲住宅等に整備するほか、新団地には社会福祉施設を併設するなど、プロジェクト全体でPFI方式を取り入れる工夫をしている。
一方、県では「PFIガイドライン」を策定し、基本的な考え方を示すとともに、導入までの手続き等について、詳細な解説を行っているが、残念ながら18年1月以降改訂されず、事業化もされていない状況にある。
本県と同様に地方圏にあり、近隣の北海道・東北の状況を、自治体PFI推進センターの資料から比較してみると、山形県(14件)、宮城県(13件)、北海道(12件)が二桁となっているなかで、本県の4件は下位グループということになる。PFI導入が多い道・県を中心に特徴的なのは、学校施設や給食センターなどの「教育と文化」が22件と最多であるほか、廃棄物処理施設や斎場などの「健康と環境」が16件、次いで公営住宅や公園などの「まちづくり」が11件と多くなっていることである。本県でも、これら近隣の道・県の取り組み状況を検証することで、新たな導入への道筋が見えてくるのではないだろうか。
いずれにしても、地方圏でPFIの導入が進んでいない状況は本県にも当てはまっており、今後、如何にPFIの導入を進めていくかが課題である。県内の複数の市町村および建設事業者から聞き取りした結果では、導入にあたって次のようなネックがあるとのことだった。
<市町村>財源不足のなかで公共インフラの老朽化対策を急がなければとの認識は強く持っている。PFIについても有効な方策とは考えるものの、ノウハウの不足に加え、本県のような地方圏で果たして有効かとの危惧が大きい。
<民間>①PFIへの認識も含めてノウハウがない。労働力不足や資材の高騰などにより、入札不調も出ている現下の受注環境のもとでは、あえて、手間暇がかかり、コスト回収にも時間がかかると思われるPFIに積極的に取り組もうとする姿勢はない。②長期にわたるプロジェクトだけに、人件費の高騰などコスト変動のリスク対応が難しい。加えて、共同企業体を作る事業者間の信頼関係の構築が難しい。
(※5)上述のとおり、内閣府の示した440事業では、本県は大館地区の2事業のみが計上されている。しかし、秋田市、能代市の市営住宅事業もPFI法に則って行われていることから、本稿では自治体PFI推進センターなどの実施事例集に準じて4事業とした。
4 課題
PFIについては、内閣府や国土交通省などで種々の総括をしているほか、各種研究機関でもレポートしており、そこに挙げられている課題はほぼ共通して、以下のように集約される。これらは、前述した県内における聞き取り結果とも重なる部分が多い。
(1) サービス購入型が大半を占めている。本来望ましい独立採算型が普及しない課題として、運営面で民間事業者の自由度が必ずしも高いとはいえないほか、民間事業者が需要変動リスクを負うという特性が大きい。
(2) PFIは事業規模が大きく、期間も長い。運営・維持管理という建設企業だけではできない要素もあり、さらに長期の資金負担を伴うことから、大手事業者には適しているが、地方の中小事業者にはハードルが高い。特に、参入による民間事業者のメリットが今一つ明確でない。
(3) VFMをどれだけ得られるかが、PFI実施の基準となる。建設コストだけでなく、運営コストや利用者向けサービスの向上を如何に価値として換算するかも大事な要素だが、それを評価するノウハウが自治体には不足している。
(4) 官・民双方にとって、PFI実施の最大課題は、入札までに長時間かかることと用意すべき書類が膨大なことである。地方圏の自治体ではPFI自体になじみがなく、手続きの煩雑さや事業への不安等から敬遠する向きも多い。
5 まとめ
様々な課題を抱え、特に地方圏の自治体や建設業を中心とする中小事業者にとっては事業化へのハードルが高いPFIではあるが、好転の兆しがみられない地方財政にあって、老朽インフラ問題を解決するためには、従来型の公共事業よりも行政コストの削減を期待できるPFIが有効な手法の一つであることは確かである。
民間事業者にとっても、行政が行ってきた業務へ幅広く参加することが可能となるため、新たな事業機会が創出されるほか、長期的な収益源の確保など、大きなメリットが期待できる。
事業化には、様々なハードルがあるとはいうものの、いったん乗り越えて、取り組むことで、官・民ともに人材の育成やノウハウの蓄積などができ、ハードルも下がるのではないだろうか。いずれにしても、公共財産である地域の公共施設を未来へ向かって生かしていくには、民間のノウハウをいかに活用するかにかかっており、「食わず嫌い」は脱却する必要がある。
政府でも、PFI法の改正に取り組むなど、事業化を出来るだけ容易にするような施策に取り組んでいる。これらを利用することで、公共(行政)から民間へ積極的に働きかけ、民間のメリットを理解してもらうよう努めるべきである。公共と民間が連携して取り組むことが必要であり、民間の参入意欲を掻きたてるような、モデル事業を示すことも有効と考える。
一方、民間側でも、これまでのような官主導での事業化を待っていては、せっかくの収益機会を逃すことになる。幸い法改正に伴って、対象となる公共施設等も増加し、政府の支援策も充実してきている。自社の得意分野のなかから、民間の提案制度も活用するなどして、積極的にPFIに適した案件を掘り起こす動きがあっていいと思う。長期にわたって収益を確保できる有効な手段でもあり、ノウハウ不足を言い訳にすることなく、前向きな取り組みに期待したい。
民間事業者にとっても、行政が行ってきた業務へ幅広く参加することが可能となるため、新たな事業機会が創出されるほか、長期的な収益源の確保など、大きなメリットが期待できる。
事業化には、様々なハードルがあるとはいうものの、いったん乗り越えて、取り組むことで、官・民ともに人材の育成やノウハウの蓄積などができ、ハードルも下がるのではないだろうか。いずれにしても、公共財産である地域の公共施設を未来へ向かって生かしていくには、民間のノウハウをいかに活用するかにかかっており、「食わず嫌い」は脱却する必要がある。
政府でも、PFI法の改正に取り組むなど、事業化を出来るだけ容易にするような施策に取り組んでいる。これらを利用することで、公共(行政)から民間へ積極的に働きかけ、民間のメリットを理解してもらうよう努めるべきである。公共と民間が連携して取り組むことが必要であり、民間の参入意欲を掻きたてるような、モデル事業を示すことも有効と考える。
一方、民間側でも、これまでのような官主導での事業化を待っていては、せっかくの収益機会を逃すことになる。幸い法改正に伴って、対象となる公共施設等も増加し、政府の支援策も充実してきている。自社の得意分野のなかから、民間の提案制度も活用するなどして、積極的にPFIに適した案件を掘り起こす動きがあっていいと思う。長期にわたって収益を確保できる有効な手段でもあり、ノウハウ不足を言い訳にすることなく、前向きな取り組みに期待したい。
(佐々木 正)