昨年の国内景気は、1~3月期は消費税増税前の駆け込み需要が個人消費に顕著に現れ、景気の拡大テンポが強まり、実質経済成長率(GDP)は5.8%(年率換算)の高い伸びを示した。
しかし、4~6月期に入ると駆け込み需要の反動により個人消費が大きく落ち込んだほか、住宅投資や設備投資も低調に推移し、この期のGDPはマイナス6.7%(年率換算)と大きく落ち込んだ。続く7~9月期も、公共投資の2四半期連続の増加があったものの、夏場の天候不順に加えて、消費者の節約志向が高まり個人消費の回復も遅れ、GDPも2期連続でマイナス成長(年率換算マイナス1.9%)となった。
ただし、10月以降は、前期からの輸出持ち直しに加えて、雇用・所得環境の改善、原油安の進展による家計・企業の負担軽減によって、プラスに転じたものと思われ、年末にかけて“個人消費などに弱さがみられるが緩やかな回復基調が続いている"(内閣府)、“基調的に緩やかな回復を続けている"(日銀)景気となった。
秋田県の景気も、ほぼ同様の傾向で推移したが、公共工事による景気の下支えや高水準の生産が続いた電子部品産業というプラス要因はあったものの、4月以降は、消費税増税の駆け込み需要の反動が想定以上に大きく長引いたことに加え、円安の進行による輸入原材料の価格上昇の負担増が家計・企業経営に大きく響き、非製造業および住宅・自動車販売関連企業の業績は厳しさが続いた。
10月以降は、駆け込み需要の反動の影響がやや和らぎつつあり、原油安による家計・企業の負担減もあり、緩やかな回復の動きが続いているが、企業の景況感は改善されていないまま推移した。
新年は、アベノミクスの3本の矢のうちまだ成果が十分でない成長戦略と地方創生戦略を早期に軌道に乗せ、県内にも広くその効果が及ぶことが渇望されるが、県内の主要な業界団体からご協力いただいたアンケート結果(後掲)も踏まえて、国内および県内景気の新年の見通しについてとりまとめた。
機関誌「あきた経済」
新年県内景気見通し
1 国内経済の見通し
(1) 国内景気の先行きについて、内閣府と日銀の判断は次のとおりである。
(2) また、世界景気の現状・先行きについては、リスク要因も含めて、次のとおり判断している。
(3) IMF(国際通貨基金)の実質成長率(GDP)見通し
a 内閣府『月例経済報告』(26.12.19)
「当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善傾向が続く中で、各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待される。」
b 日銀『金融経済月報』(26.12.24)
「緩やかな回復を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も収束していくとみられる。
輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。
国内需要については、公共投資は、当面、高水準で横ばい圏内の動きを続けたあと、次第に減少傾向に転じていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に収束していくとみられる。住宅投資は、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、緩やかな増加に復していくと考えられる。」
輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。
国内需要については、公共投資は、当面、高水準で横ばい圏内の動きを続けたあと、次第に減少傾向に転じていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に収束していくとみられる。住宅投資は、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、緩やかな増加に復していくと考えられる。」
(2) また、世界景気の現状・先行きについては、リスク要因も含めて、次のとおり判断している。
a 内閣府『月例経済報告』
「世界の景気は、一部に弱さがみられるものの、緩やかに回復している。先行きについては、緩やかな回復が続くことが期待される。
ただし、アメリカの金融政策正常化に向けた動きの影響、ヨーロッパ、中国やその他新興国経済の先行き、地政学的リスク等について留意する必要がある。」
b 日銀『金融経済月報』
ただし、アメリカの金融政策正常化に向けた動きの影響、ヨーロッパ、中国やその他新興国経済の先行き、地政学的リスク等について留意する必要がある。」
「海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。先行きの海外経済は、先進国を中心に緩やかな回復が続くとみられる。
米国経済は、民間需要を中心にしっかりとした回復が続くと予想される。欧州経済は、目先回復がもたつくと予想され、債務問題の帰趨やロシア経済の減速の影響などには引き続き注意が必要である。中国経済については、成長率を切り下げつつも、安定した成長を続けると予想されるが、下押し圧力(製造業における過剰設備問題や不動産市場の調整)には引き続き注意が必要である。中国以外の新興国・資源国経済は、基本的には先進国の景気回復の好影響が次第に及んでいくとみられるが、成長に勢いを欠く状態が長引く可能性もある。」
「リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。」
米国経済は、民間需要を中心にしっかりとした回復が続くと予想される。欧州経済は、目先回復がもたつくと予想され、債務問題の帰趨やロシア経済の減速の影響などには引き続き注意が必要である。中国経済については、成長率を切り下げつつも、安定した成長を続けると予想されるが、下押し圧力(製造業における過剰設備問題や不動産市場の調整)には引き続き注意が必要である。中国以外の新興国・資源国経済は、基本的には先進国の景気回復の好影響が次第に及んでいくとみられるが、成長に勢いを欠く状態が長引く可能性もある。」
「リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。」
(3) IMF(国際通貨基金)の実質成長率(GDP)見通し
昨年10月に発表されたIMFの経済見通しによる世界全体・主要国・地域の平成26年および27年の実質GDP予想は、次のとおりである。26年、27年とも、米国等一部を除いてそれぞれ7月時点より下方修正された。
その理由として、「世界経済は引き続きばらついた回復傾向にあり、26年前半の先進国・地域の経済活動の後退、及び一部新興市場国・地域の見通しがそれほど楽観視できなくなったことを反映している」と述べている。
その理由として、「世界経済は引き続きばらついた回復傾向にあり、26年前半の先進国・地域の経済活動の後退、及び一部新興市場国・地域の見通しがそれほど楽観視できなくなったことを反映している」と述べている。
[IMFの実質GDP見通し(26.10)]
[単位:%]
| 25年 | 26年 | 27年 | |
|---|---|---|---|
| 世 界 | 3.3 | 3.3(△0.1) | 3.8(△0.2) |
| 先 進 国 | 1.4 | 1.8(±0.0) | 2.3(△0.1) |
| 日 本 | 1.5 | 0.9(△0.7) | 0.8(△0.2) |
| 米 国 | 2.2 | 2.2(+0.5) | 3.1(±0.0) |
| ユーロ圏 | △0.4 | 0.8(△0.3) | 1.3(△0.2) |
| 新 興 国 | 4.7 | 4.4(△0.1) | 5.0(△0.2) |
| 中 国 | 7.7 | 7.4(±0.0) | 7.1(±0.0) |
(注)()内は26年7月予想比
(4) 「日銀短観(全国企業短期経済観測調査:26.11.12~12.12)業況判断指数―全国中小企業」
全国の中小企業(5,224社。うち製造業1,893社、非製造業3,331社)の業況判断指数(「良い」企業―「悪い」企業)の推移は次のとおり。
全国の中小企業(5,224社。うち製造業1,893社、非製造業3,331社)の業況判断指数(「良い」企業―「悪い」企業)の推移は次のとおり。
| 26年9月調査 | 26年12月調査 | |||
|---|---|---|---|---|
| 最近 | 12月予測 | 最近 | 27/3予測 | |
| 全 産 業 | 0 | △1 | 0 | △4 |
| 製 造 業 | △1 | 0 | 1 | △5 |
| 非製造業 | 0 | △1 | △1 | △4 |
(注)「最近」は回答時点、「先行き」は3か月後を示す。
昨年12月時点の業況は、昨年9月時点での「先行き(平成26年12月)」見通しに比べて、製造業、非製造業ともほぼ横ばいであったが、先行き(本年3月)については、製造業、非製造業とも悪化を見込んでいる。
(5) 本年の国内の景気は、消費税増税の影響が和らぎ、雇用・所得環境の改善も続くため個人消費が緩やかに持ち直すほか、企業業績の改善により設備投資も増加が続く。また、円安の定着や海外経済の緩やかな回復を背景に輸出も増加傾向が続くため、景気は緩やかな回復軌道を辿るものと見込まれる。
ただし、前述の日本経済の景気下振れリスク要因、消費税再増税先送りによるリスク(株安・円安・債券安)次第によっては、国内経済にも下押し圧力がかかる可能性がある。
ただし、前述の日本経済の景気下振れリスク要因、消費税再増税先送りによるリスク(株安・円安・債券安)次第によっては、国内経済にも下押し圧力がかかる可能性がある。
2 県内経済の見通し
(1) 日銀短観(26.11.12~12.12)「業況判断指数―秋田県」(156社―うち製造業54社、非製造業102社)
| 26年9月調査 | 26年12月調査 | |||
|---|---|---|---|---|
| 最近 | 12月予測 | 最近 | 27/3予測 | |
| 全 産 業 | △4 | △3 | △6 | △8 |
| 製 造 業 | 0 | 8 | 2 | 8 |
| 非製造業 | △6 | △8 | △11 | △16 |
本年3月時点の業況予測については、製造業は改善するものの、非製造業は昨年12月よりさらに「悪化」と見る企業の割合が増えている。
26年度設備投資計画は、製造業が2年連続の増加計画(前年度比+33.9%)に対し、非製造業は5年振りの減少計画(同△24.0%)となり、全産業では2年連続の増加計画(同+11.2%。うち上期△5.7%、下期+28.8%)となった。
なお、鉱工業の生産量を表わす「鉱工業生産指数(季節調整済)」(平成22年=100)の推移は次のとおりであり、26年は25年対比では高い水準が続いている。
| 年 | 四半期・月 | 秋田県 | 東 北 | 全 国 |
|---|---|---|---|---|
| 25年 | 第3四半期 | 95.6 | 93.9 | 97.8 |
| 第4四半期 | 98.6 | 97.8 | 99.6 | |
| 26年 | 第1四半期 | 101.5 | 98.4 | 102.5 |
| 第2四半期 | 99.1 | 96.2 | 98.6 | |
| 第3四半期 | 100.0 | 95.2 | 96.7 | |
| 10月 | 98.3 | 93.7 | 98.4 |
(2) 県内主要業界団体アンケート結果
a 「平成26年の業界の業況」および「平成27年の業界の業況見通し」
15団体から回答いただいた「平成26年の業界の業況」および「平成27年の業界の業況見通し」の結果は次のとおりである。
平成26年の各業界の業況については、「不況」もしくは「やや不況」だった業界が7業界にのぼる一方、「やや好況」だった業界も6業界あり、「変わらなかった」業界が2業界だけであったことから、二極分化が進んだ1年といえる。
平成27年の各業界の業況見通しについては、「変わらない」と見る業界が5業界、「やや悪化」と見る業界が6業界、「やや好転」とする業界が4業界と3つに分かれ、総体では26年よりやや悪化に向かうとみられる。
ただし、平成26年の業況が「不況」と「やや不況」の7業界の27年の見通しを見てみると、「好転する」業界はなく、引き続き「変わらない」業界が2業界で、さらに「やや悪化」と見込まざるを得ない業界が5業界あり、これらの業界にとってはまだまだ厳しさが続く、またはより一層厳しさが増すという結果になった。
| 平成26年の業界の業況 | 平成27年の業況見通し | ||
|---|---|---|---|
| 好 況 | 0業界 | 好 転 | 0業界 |
| やや好況 | 6 〃 | やや好転 | 4 〃 |
| 変わらない | 2 〃 | 変わらない | 5 〃 |
| やや不況 | 5 〃 | やや悪化 | 6 〃 |
| 不 況 | 2 〃 | 悪 化 | 0 〃 |
平成27年の各業界の業況見通しについては、「変わらない」と見る業界が5業界、「やや悪化」と見る業界が6業界、「やや好転」とする業界が4業界と3つに分かれ、総体では26年よりやや悪化に向かうとみられる。
ただし、平成26年の業況が「不況」と「やや不況」の7業界の27年の見通しを見てみると、「好転する」業界はなく、引き続き「変わらない」業界が2業界で、さらに「やや悪化」と見込まざるを得ない業界が5業界あり、これらの業界にとってはまだまだ厳しさが続く、またはより一層厳しさが増すという結果になった。
b 「平成27年の県内景気見通し」
自業界の業況見通しとは別に、「平成27年の県内景気見通し」についても回答いただいたが、その結果は次のとおりである。なお、カッコ内は昨年同時期の回答結果である。
昨年は、「変わらない」と見る業界が10業界と圧倒的に多く、「やや好転」と見る業界が3業界、「やや悪化」と見る業界も2業界しかなかった。
本年は「やや悪化」が5業界に増え、「やや好転」と「変わらない」と見る業界が減っている。原油安という好転材料はあるものの、消費税増税に伴う反動減の影響が残り、円安傾向という懸念材料もあり、悲観的な見方がされていると思われる。
| やや好転 | 2業界(3業界) |
| 変わらない | 8業界(10業界) |
| やや悪化 | 5業界(2業界) |
本年は「やや悪化」が5業界に増え、「やや好転」と「変わらない」と見る業界が減っている。原油安という好転材料はあるものの、消費税増税に伴う反動減の影響が残り、円安傾向という懸念材料もあり、悲観的な見方がされていると思われる。
c 「国内および県内経済・社会における重大関心事」
「業界の重要課題」に加えて、「国内および県内経済・社会における重大関心事」をお聞きした。(自由記述)
回答数の多い事項は次のとおりである。
【参考】昨年の重大関心事
昨年は、1番目の関心事として「消費税増税の影響」が10業界からあげられたが、今年は2業界から「消費税の今後の動向」としてあげられただけで、「人口減少・少子高齢化対策」が、昨年の7業界から12業界に増え、再び1番目の関心事となった。政府の地方創生総合戦略が策定されるなど、ようやく国をあげてこの問題に取り組むこととなった。人口減少の要因は複合的で各県・各地で区々であるが、根本的な解決策は「雇用の場の確保」であろう。経済振興と少子化対策は表裏一体のものであり、第二期『ふるさと秋田元気創造プラン』に基づいた取組みを1つ1つ着実に推し進めることこそ、人口減少問題への対策、ひいては、景気回復、拡大につながるものであり、官民あげて実につなげていきたい。
回答数の多い事項は次のとおりである。
| ① 人口減少・少子高齢化対策(雇用の確保等含む。) ② 農業政策・TPP交渉の行方 ③ 地方創生戦略(秋田元気創造プランとの連携) ③ エネルギー問題・政策 ⑤ 為替、輸入物価および燃料価格の動向 ⑤ 東北六魂祭等の開催 |
(12業界) (6業界) (4業界) (4業界) (3業界) (3業界) |
| ① 消費税増税の影響 ② 人口減少・少子高齢化対策 ② TPPの行方(農業問題含む。) ② 国民文化祭・アフターデスティネーションキャンペーン(DC)の開催 |
(10業界) (7業界) (7業界) (7業界) |
(松渕 秀和)




