経営随想
横手盆地の魅力を全国に
(一般社団法人横手市観光協会 会長)
横手市観光協会は創立60周年を迎えました。昭和27年に創立された横手市観光協会は平成26年4月から一般社団法人として新たなスタートを切ったところであり、創立60年という還暦を迎えた節目の年が、新たなスタートの年にもあたります。横手市がそこに暮らす人々にとって自慢できる愛すべきふるさとになるように、素晴らしい地域であり続けるように、61年目からの横手市観光協会はこれまで以上に力強く進んでいくものと確信しています。
横手市観光協会は、創立以来一貫して、市の四季折々のまつり、春は「さくらまつり」(4月下旬~5月上旬)、夏は「送り盆まつり」(8月15、16日)、秋は「菊まつり」(10月下旬~11月上旬)、冬は「雪まつり」(2月14~17日)の運営に携わってきました。
夏の送り盆まつりの屋形舟の繰り出しは、他に類を見ないこの地域独特な行事です。江戸時代の天明・天保の時代から二百数十年間受け継がれてきた伝統行事で、秋田県の無形民俗文化財にも指定されています。丸太や木材、稲わらで形作られた屋形舟は長さ約7m、高さ約4m、重さは800kgにもなります。この舟を町内ごとに担いで蛇の崎川原に繰り出し、御霊を流した後の返す舟で勇壮なぶつけ合いが繰り広げられます。お盆の行事は全国各地に数々ありますが、送り盆を「祭り」として実施しているのは横手市だけです。故郷を愛するたくさんのお盆の帰省客とともに、横手若衆の熱気を集め毎年盛大に開催されています。
また、夏の屋形舟に相対するのは冬のぼんでんです。叙情的な静のまつり「かまくら」に対して、動の祭りとされる「ぼんでん」は市内の旭岡山神社の梵天奉納祭として280年の歴史を誇ります。秋田県内雄物川流域に残る各地の「ぼんでん」の中では、豪華な頭飾りと優美さ大きさが特徴で、高さは5mを超え重さは30kgにもなります。家内安全・商売繁盛などの願いを込めて、各町内・職場などから一千名を超える男衆が「ジョヤサ!ジョヤサ!」の掛け声とともに「ぼんでん」を担ぎ、厳しくもみ合いながら旭岡山神社の参道を一気に駆け上がる勇壮なお祭りです。
また、横手商工会議所と共同で「かまくらレトロ浪漫」事業を行います。これは、明治・大正時代からのレトロな建物と昔風の裾広がりの「かまくら」を楽しんでもらうスポットとして、大町のゲストハウス平源・旅館平利・木村屋本店前、鍛冶町のこうじ庵前を会場づくりします。NHK朝の連続ドラマ「マッサン」にちなんでニッカウヰスキー創始者の竹鶴政孝氏の軌跡をたどる写真パネルの展示とマッサンとリタ竹鶴ご夫妻の動画を上映しながら、ニッカウヰスキー(竹鶴、初号ブラックニッカ復刻版、初号ハイニッカ復刻版)を試飲やショット販売して楽しんでもらう計画もしています。
そして、今年最大の目玉事業は、株式会社ロッテさんの特別協賛を頂いて実施する、本格的3Dプロジェクションマッピング「雪見の夜」の開催です。横手市内の羽黒町かまくら会場付近の横手南小学校の校舎正面をスクリーンに、幅50m、高さ10mの立体映像を映写します。横手市の四季の魅力や祭りや伝統行事、小学校の子どもたちが描いた絵画などを盛り込んだ約5分間の立体映像作品を、2月14日、15日の2日間、午後6時から9時まで15分間隔で繰り返し上映する予定です。本格的な3Dプロジェクションマッピングであり、ぜひ大勢の方々が見に来て欲しいと希望しています。
横手市観光協会が大きな転換期を迎えたのが、平成13年。民間企業から奥山和彦さんが会長に就任し観光協会の自立化と民営化の取り組みを開始しました。社団法人格を取得して公益法人としての活動を開始したほか、これまでのお祭り運営に加えて、交流人口の増大や地場産業の振興、物産や特産品の開発と拡販やPRなど、横手市の市勢を伸長することを活動の目的に据え事業の幅を広げました。
全国各地で開催される物産展へ積極的に出展し、「出前かまくら」を全国的に展開し、「横手やきそば」のブランド化を進め「B-1グランプリin横手」を開催しました。横手やきそばのゴールドグランプリ獲得や大沢葡萄ジュースの商品開発、山内のいぶりがっこ「金樽」の新ブランド開発などが顕著な成果といえます。
横手やきそばとB-1グランプリ効果は歴然としており、5年を経過した現在でも、週末には市内のやきそば店には行列ができ、横手市に宿泊される観光客も伸びています。横手やきそばによって、横手市は通年型の魅力を手に入れたと言えます。
大沢葡萄ジュースは、平成17年にスタートしてから9年を経てブドウ約50tを使用してジュース約5万本を生産するまでになりました。昨年からは、国や県の6次化生産施設の助成を頂いて、農事組合法人大沢ファームが新設され、農産品材料からジュース加工瓶詰めまで、市内で一貫して生産できる体制となりました。
山内のいぶりがっこ「金樽」も、昨シーズンは3万本が発売開始から約2か月で完売するなど、全国の消費者から高い評価を頂くブランドに育ってきております。
ダンプカーに30tもの雪を運んで全国各地に本物の「かまくら」をお届けする「出前かまくら」は、横手市や横手市観光協会のフットワークの良さを象徴する事業です。平成12年度からの14年間で、通算で150か所以上、香港やソウル市などの海外にも出展しています。千葉県の市川市や兵庫県の加古川市、横浜の八景島シーパラダイスなどでは毎年実施しています。もちろん、その会場には、横手市の特産品や名産品をたくさん持ち込んで、試食や試飲、テストマーケティングを行う物産展もセットで展開し、広く全国に横手市をPRしています。
今や「観光」は地域の総合産業と言われます。旅館やホテル、観光施設やお土産店だけでなく、農工商すべての産業に大きな波及効果が及ぶのが観光です。産業だけでなく、文化の育成や伝統の継承、地域づくりやコミュニティ醸成、地域らしさというアイデンティティーの確立までも深く大きな影響を及ぼすのが、「観光」です。 そこに住んでいる人々にとって、暮らしやすいか?楽しいか?自慢できるか?を基準とする地域創生運動。これこそが、観光の目指す姿ではないでしょうか。
横手盆地は豊かな大地です。
後三年の合戦の古来より、東北有数の穀倉地帯であり、文字通り「秋の田んぼ」のような豊かな実りの大地です。
横手盆地の魅力を一層高め、全国に発信していくことが地方創生の道だと思います。
(協 会 概 要)
1 協会名 | 一般社団法人横手市観光協会 |
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2 代表者名 | 会長 打川 敦 |
3 所 在 地 | 〒013-0023 横手市中央町8-12 |
4 電話番号 | 0182-33-7111 |
5 FAX番号 | 0182-33-7113 |
6 U R L | https://www.yokotekamakura.com/ |
7 設立年 | 昭和27年 |
8 職員数 | 14人 |
9 事業内容 | 観光の振興、市勢の伸張 |