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平成27年度新入社員アンケートから―安定志向と地元志向が鮮明化―

 当研究所では、毎春、県内企業に就職した新入社員を対象に、就職活動や仕事に対する考え方などについて、アンケート調査を実施している。本年度は、県内の雇用情勢の改善を受け、県外就職を希望したことのある回答者割合が、平成11年度の設問以来、最も低くなり、地元志向が強まった。また、定年までも見据え長く働きたいとする割合も、昭和54年度の調査開始以来、最高となり、安定志向が鮮明化した。

1 アンケート結果

Q1 効果的だった情報収集方法は何ですか(2項目複数回答)
 全体では、「先生・教授に話をきく」(46.5%)が、平成26年度に実施した前回調査(40.1%)から6.4ポイント上昇し、6年ぶりに最も高い割合となった。同じく、「就職部の資料」(41.0%)も4割台となった。回答者にとって、先生・教授の進路指導経験に基づく情報や、卒業生の就職活動を踏まえた情報が効果的だったようだ。
 最終学歴別にみると、「先生・教授に話をきく」が、中学・高校卒(54.5%)と専門・短大卒(53.8%)で5割を超え、最も高い割合となった。大学・大学院卒では、「インターネット」(68.1%)に回答が集中した。

Q2 就職活動で利用した機関やイベントはありますか
 就職活動に取組む際に利用した機関やイベントについて、全体では、「秋田県合同就職説明会・面接会」と「ハローワーク」がともに25.7%と、割合が高くなった。「リクルート会社主催の会社説明会・面接会」は14.9%、「秋田学生職業相談室」は5.9%となった。例年どおり、回答者は、多くの職種や企業の求人情報を一挙に得られる機関・イベントを多く利用したことが分かる。ただし、学歴別では、中学・高校卒は主に学校主導の就職活動を行うため、いずれの機関・イベントも利用割合が低くなった。
 個別にみると、秋田県と秋田労働局などが主催する「秋田県合同就職説明会・面接会」は、大学・大学院卒(51.1%)と専門・短大卒(49.2%)で5割前後となった。このイベントは、本県、東京都、宮城県で開催されるため、回答者は居住地に関わらず参加しやすかったようだ。
 「ハローワーク」は、大学・大学院卒(48.9%)と専門・短大卒(41.5%)で4割を超えた。ハローワークは、新卒者を含む35歳未満の求職者向けに就職活動の支援を行っており、回答者にとって利便性が高かったものと思われる。
 首都圏など大都市で開催されることの多い「リクルート会社主催の会社説明会・面接会」については、大学・大学院卒(51.1%)のみ利用が目立った。このうち、県外での就職を希望したことがある回答者の割合が7割超を占めていることから、大学・大学院卒の多くが、このイベントを県外就職の足掛かりとして利用したものと推測される。
 秋田市御所野にある「秋田学生職業相談室」は、専門・短大卒(10.8%)と大学・大学院卒(10.6%)で1割台、中学・高校卒で2.8%となった。

Q3 インターンシップ(職業体験)の経験はありますか
 インターンシップ経験があると回答した割合は、全体の75.0%と、前回調査(71.7%)から3.3ポイント上昇した。本質問を設けた平成15年度以来、23年度調査(76.9%)に次ぐ2番目の高さとなった。全国的に、実施企業や受け入れ人数が増加し、生徒・学生が参加しやすい環境の整備が進んでいるため、回答者の経験割合も上昇傾向にある。最終学歴別では、中学・高校卒(85.2%)と専門・短大卒(80.0%)で割合が高く、大学・大学院卒(29.8%)を大きく上回った。
 次に、インターンシップ経験のある回答者216人に、経験を通して得られた効果について質問した。何らかの効果があったとする割合は、全体の92.1%となった。中学・高校卒で94.0%、専門・短大卒で92.4%と9割を超え、大学・大学院卒では71.4%となった。若い世代の方が、普段の生活で社会や社会人との接点が少ないため、学ぶ点が多かったようだ。
 項目別にみると、「企業や仕事の内容を理解できた」(38.9%)と「職業意識が向上した」(32.4%)がともに3割台となった。
 「企業や仕事の内容を理解できた」は、最終学歴を問わず、最も高い割合となった。回答者にとって、インターンシップが仕事への理解を深める貴重な機会であったことが分かる。
 「職業意識が向上した」については、中学・高校卒(36.7%)が、専門・短大卒(25.0%)と大学・大学院卒(14.3%)を上回った。
 「自分の適性を確認できた」は、専門・短大卒(25.0%)で2割を超えた。インターンシップを通じて、自分のスキルを見極め、その後の就職活動に役立てた様子が見て取れる。

Q4 就職に関して誰に一番相談しましたか
 一番相談した相手として、全体では、「親・家族」(42.0%)と「先生・教授」(41.0%)が4割を超えた。回答者は、家庭と学校双方において最も身近な社会人に相談していたようだ。
 「親・家族」は、中学・高校卒(48.9%)で4割を超え、大学・大学院卒(31.9%)と専門・短大卒(30.8%)で3割台となった。「先生・教授」については、専門・短大卒(56.9%)が最も割合が高く、大学・大学院卒(10.6%)の5倍以上となった。
 最終学歴が上がるにつれて、「友人」と「就職部」の割合が上昇しており、回答者が様々な立場の人を相手に相談していた様子が見て取れる。その一方で、「誰にも相談しなかった」については、大学・大学院卒(8.5%)が、専門・短大卒(3.1%)と中学・高校卒(1.1%)を上回った。

Q5 就職先の職種・企業は第一希望ですか
 就職先が第一希望の職種であるとした回答割合は全体の71.2%で、前回調査(73.8%)と比べて2.6ポイント低下した。中学・高校卒(73.9%)が、大学・大学院卒(68.1%)と専門・短大卒(66.2%)を上回った。
 また、第一希望の企業であるとした割合は全体の64.6%で、前回調査(59.9%)から4.7ポイント上昇した。ただし、中学・高校卒(68.6%)を筆頭に、専門・短大卒(58.5%)、大学・大学院卒(57.4%)と、最終学歴が上がるにつれて、第一希望と回答した割合は低下している。
 なお、職種・企業とも第一希望先であるとした割合は全体の57.3%で、前回調査(52.7%)を4.6ポイント上回った。雇用情勢の改善を背景に、希望する就職をすることができた回答者割合が上昇した。

Q6 県外での就職を希望したことがありますか
 県外での就職を希望したことがある割合は、全体の46.5%で、本質問を設けた平成11年度以降、初めて5割を下回った。希望したことがある割合は、12年度(60.2%)をピークに低下傾向にあり、求人数の増加など県内の就職活動を取り巻く環境の改善や、若年者における地元志向の強まりが影響しているものと考えられる。
 最終学歴別では、中学・高校卒(44.9%)と専門・短大卒(38.5%)が5割を下回った一方、大学・大学院卒(63.8%)は6割を超えた。
 県外での就職を希望したことがある回答者134人のうち、実際に県外で就職活動を行った割合は38.8%となった。前回調査(37.5%)と比較すると、1.3ポイント上昇したものの、引き続き3割台で推移した。

Q7 県外での就職を希望した理由は何ですか
 前設問で「県外での就職を希望したことがある」と回答した134人に、希望理由を質問した。
 全体では、「都会での生活を体験してみたかった」(33.6%)が、前回調査(27.8%)を5.8ポイント上回り、2年連続で最も高い割合となった。「地元や親元を離れて生活したかった」(27.6%)と「地元より条件のよい勤め先があった」(23.9%)は、ともに2割台となった。「地元に希望する職種がなかった」(7.5%)は、本質問を設けた平成11年度以降、初めて一桁台となり、雇用情勢の改善が影響したものと考えられる。
 男女別にみると、男性回答者では、「都会での生活を体験してみたかった」(38.2%)、女性では、「地元や親元を離れて生活したかった」(31.1%)が最も高い割合となった。

Q8 現在の職場でいつまで働きたいですか
<全体>
 全体では、「定年まで」とする回答割合が49.7%と2年連続で上昇し、昭和54年度に本調査を開始して以来、最も高くなった。また、「条件や状況次第では転職する」(13.5%)と「技術を習得したり十分な経験を積んだら転職する」(4.5%)を合わせた“転職希望派”は18.0%で、前回調査から2.1ポイント低下し、3年ぶりに2割を下回った。回答者では、安定志向がより一層強まっている。
<男性>
 男性回答者では、「定年まで」(63.0%)は、前回調査(60.9%)を2.1ポイント上回り、最も高い割合となった。また、「条件や状況次第では転職する」(12.2%)と「技術を習得したり十分な経験を積んだら転職する」(6.6%)との“転職希望派”は18.8%で、前回調査(23.1%)から4.3ポイント低下し、4年ぶりに2割を下回った。男性では、新卒として就職した先で定年までの勤続を希望する割合が上昇した。
<女性>
 女性では、「結婚・出産後もできるだけ長く働きたい」(30.8%)が前回調査(35.2%)と比べて4.4ポイント低下したものの、回答項目のなかで最も高い割合となった。「定年まで」(27.1%)は、前回調査(19.7%)を7.4ポイント上回った。この結果、仕事と家庭の両立を目指す割合と、定年まで勤め続けたいとする割合を合わせると57.9%となり、過去最高割合である平成24年度調査(59.6%)に次ぐ2番目の高さとなった。また、「結婚・出産を機に退職する」(6.5%)は前回調査(13.1%)からほぼ半減し、これまでで最も低い割合となった。

○県内の若年者離職状況と離職防止への取組

 秋田労働局によると、平成23年3月に卒業した県内若年者の3年以内の離職率は、高卒者で42.4%、大卒者で36.1%と、ともに前年より低下したものの全国平均を上回った。県内では、職種が限られているため雇用のミスマッチが生じやすいこともあり、依然、若年者の早期離職傾向が続いている。
 秋田県「平成26年度・若年者の職場定着に関するアンケート調査結果報告書」によると、回答した県内事業所が、離職した若年者正社員の対応で苦慮した事例として、割合の高い順に「仕事への意欲不足」(14.7%)、「忍耐力・精神力が弱い」(14.4%)、「コミュニケーション・礼儀・挨拶」(12.2%)を挙げた。一方で、過去3年間で離職した若年者の退職理由は、「職場の人間関係がつらい」(6.7%)、「仕事が面白くない」(6.5%)、「給与に不満」(5.9%)となった。
 次に、各事業所は、若年者の職場定着のための取組内容として、「若年者が職場で話しやすい雰囲気をつくる」(9.1%)、「休日をとりやすいようにする」(7.7%)、「社員の意見・提案を経営に反映させる」(7.0%)を挙げた。また、職場定着のために実施したいことの第1位として、「賃金水準を引き上げる」(12.0%)、「若年者が職場で話しやすい雰囲気をつくる」(9.3%)、「若年者に対し目標管理を実施する」(7.7%)となった。
 このように、現在、県内各事業所は、若年者の主な退職理由を踏まえた離職防止策を講じている。回答者の「定年までも見据え長く働きたい」意向の高まりに応え、事業所と若年者が積極的にコミュニケーションをとることで、若年者の働きやすい環境づくりを進め、職場定着率の向上に繋げることが望まれる。

Q9 就職先を選んだ理由は何ですか
(3項目複数回答)
 全体では、「会社のイメージがよい」(41.0%)と「仕事の内容」(39.2%)に多くの回答が集まった。Q8にある通り、回答者は定年までも視野に入れできるだけ長く働きたいと考えているため、これまでの実績に基づく企業イメージや、仕事内容を重要視し就職先を選択したようだ。
 男性回答者では、「資格が取れる」(16.6%)と「給与・賞与がよい」(13.8%)が、ともに女性を9.1ポイント上回った。実利的な面を重視する現実的な考え方が見て取れる。女性は、「通勤が便利」(27.1%)が男性(19.3%)を7.8ポイント上回ったほか、「適切な勤務時間」(18.7%)が男性(9.4%)の約2倍となっており、プライベートな時間を大切にしたいと考えている。

○新規高卒者、県内求人数の増加続く

 新規高卒者の就職状況について、秋田労働局によると、平成27年3月末現在、県内求人数は3,348人で、22年を底に増加している。また、全体の内定率は99.1%と、前年(99.3%)には及ばなかったが高水準を維持した。

2 まとめ

 県内の雇用情勢の改善を背景に、県外での就職を希望したことのある回答者の割合は、平成11年度に本質問を設けて以来、最も低くなり、地元志向が強まった。
 また、職種・企業とも第一希望先であるとした割合が、前回調査を上回った。その結果、新卒として就職した先で定年までも視野に入れ長く働きたいとする割合は、昭和54年度の本調査開始以来、最も高くなり、安定志向が鮮明となった。
(相沢 陽子)
あきた経済

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