20~39歳の若年女性の流出によって、2040年(平成52年)には全国の自治体の約半分が消滅する可能性があるとの試算が、平成25年5月に有識者でつくる政策発信会議の「日本創成会議」から発表された。これを受けた形で政府内に「まち・ひと・しごと創生本部」が設置され、“人口減少と地域経済縮小の克服”と“まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立”を基本的考え方とする「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が示された。
都道府県および各市町村は、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づき、本年度内に「地方人口ビジョン」と「地方版総合戦略」の策定が求められている。
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の基本目標の1つである「地方への新しいひとの流れをつくる」ための政策パッケージとして「地方移住の推進」が掲げられ、その中で「日本版CCCRCの検討」が盛り込まれている。全米で約2000か所存在するCCRCについて、その概要等を紹介するとともに、本県における活用を考察する。
機関誌「あきた経済」
CCRCについて
1 CCRCとは
CCRCとは「Continuing Care Retirement Community」の略で、「高齢者が健康で元気に輝き暮らし続けることのできるコミュニティ」と定義される。高齢者が移り住み、健康時から介護・医療が必要となる時期まで継続的なケアや生活支援サービス等を受けながら生涯学習や社会活動等に参加する共同体である。
2 米国におけるCCRCの概要
CCRCは100年以上前に米国で誕生し、1900年には20か所程度しか存在していなかったが、現在は全米で約2000か所存在し、居住者は約70万人を数え、市場規模は約3兆円といわれている。中でも、大学での生涯学習等を通じて、知的刺激や多世代交流を求める高齢者のニーズに対応する大学連携型CCRCが近年増加している(約70か所)。
CCRCの基本コンセプトおよび大学連携型CCRCのコンセプトは次のとおりである。
CCRCの基本コンセプトおよび大学連携型CCRCのコンセプトは次のとおりである。
≪CCRCの基本コンセプト≫
健康レベルに合わせた「自立型住まい」「軽介護型住まい」「介護施設」等の住宅が用意され、健康レベルに応じて住み替えることが可能。
○自立型住まい
健常・自立の者向け。食事サービス、娯楽文化サービスや、健康を維持するプログラムが提供される。
○軽介護型住まい
日常生活に一部支援が必要な者向け。着替え、投薬、入浴介助等の支援を受けられる。
○介護施設
常時介護が必要な者向け。24時間対応を必要とするケア等を受けられる。
健康レベルに合わせた「自立型住まい」「軽介護型住まい」「介護施設」等の住宅が用意され、健康レベルに応じて住み替えることが可能。
○自立型住まい
健常・自立の者向け。食事サービス、娯楽文化サービスや、健康を維持するプログラムが提供される。
○軽介護型住まい
日常生活に一部支援が必要な者向け。着替え、投薬、入浴介助等の支援を受けられる。
○介護施設
常時介護が必要な者向け。24時間対応を必要とするケア等を受けられる。
≪大学連携型CCRCのコンセプト≫
(1960年代以降作られた、高齢者が集住し、ゴルフ等の娯楽に打ち込めるコミュニティでは、知的刺激や多世代交流を求めるニーズに対応できないとともに、認知症等を患う恐れも増加。)
○大学での生涯学習や学生との交流を通じて「知的刺激や多世代交流の不在」を解消
○大学での一定時間以上の生涯学習を入居条件としている大学もある。
○入居者が亡くなったときに大学に財産を寄付する定めのCCRCもある。
廃校となった大学を改修したCCRCもある。
(1960年代以降作られた、高齢者が集住し、ゴルフ等の娯楽に打ち込めるコミュニティでは、知的刺激や多世代交流を求めるニーズに対応できないとともに、認知症等を患う恐れも増加。)
○大学での生涯学習や学生との交流を通じて「知的刺激や多世代交流の不在」を解消
○大学での一定時間以上の生涯学習を入居条件としている大学もある。
○入居者が亡くなったときに大学に財産を寄付する定めのCCRCもある。
3 日本版CCRCが検討されている背景
(1) 地方創生戦略で、日本版CCRCが検討されることとなった背景は次のとおりである。
(2) 内閣官房が昨年8月に実施した「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」結果から、①東京在住者の4割(うち関東圏以外出身者は5割)が地方への移住を検討している又は今後検討したいと考えている、②特に30代以下の若年層及び50代男性の移住に対する意識が高い、ことがポイントとしてあげられている。
なお、50代男性の半数、50代女性の34%が今後地方への移住を予定又は検討したいと考えている。また、高齢者が移住を検討する上でのポイント(重視する点、不安・懸念点)は「医療・福祉」が高い。
(3) 高齢者世帯、単身高齢者世帯および高齢者夫婦のみ世帯の割合は、次のとおり推計されている(高齢化率は2013年3月、世帯数関連は2014年4月推計)。
秋田県のみならず、全国でも高齢化率の進展とともに、単身高齢者世帯および高齢者夫婦のみ世帯の割合も着実に増えていく。
<日本版CCRCが検討されている背景>
1 団塊世代の高齢化が大きな社会問題
~医療介護費用の増大(社会参加、介護予防等による健康維持が重要)
2 特に大都市圏での高齢者の増大が課題
~介護難民の発生の懸念(地方は今後高齢者は増えない、介護・医療施設に余裕)
3 単身高齢世帯の増加~周辺部からまち
なか居住へ(高齢者住宅のニーズ増加・高齢者のQOL=“生活の質”向上)
4 都市部の高齢化と地方部活性化の同時解決(大都市圏と地方圏のWIN=WIN)
1 団塊世代の高齢化が大きな社会問題
~医療介護費用の増大(社会参加、介護予防等による健康維持が重要)
2 特に大都市圏での高齢者の増大が課題
~介護難民の発生の懸念(地方は今後高齢者は増えない、介護・医療施設に余裕)
3 単身高齢世帯の増加~周辺部からまち
なか居住へ(高齢者住宅のニーズ増加・高齢者のQOL=“生活の質”向上)
4 都市部の高齢化と地方部活性化の同時解決(大都市圏と地方圏のWIN=WIN)
(2) 内閣官房が昨年8月に実施した「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」結果から、①東京在住者の4割(うち関東圏以外出身者は5割)が地方への移住を検討している又は今後検討したいと考えている、②特に30代以下の若年層及び50代男性の移住に対する意識が高い、ことがポイントとしてあげられている。
なお、50代男性の半数、50代女性の34%が今後地方への移住を予定又は検討したいと考えている。また、高齢者が移住を検討する上でのポイント(重視する点、不安・懸念点)は「医療・福祉」が高い。
(3) 高齢者世帯、単身高齢者世帯および高齢者夫婦のみ世帯の割合は、次のとおり推計されている(高齢化率は2013年3月、世帯数関連は2014年4月推計)。
秋田県のみならず、全国でも高齢化率の進展とともに、単身高齢者世帯および高齢者夫婦のみ世帯の割合も着実に増えていく。
4 日本版CCRC構想の基本コンセプト(案)
(1) こうした背景を受けて、「日本版CCRC構想有識者会議」が設置され、各地域の意向調査結果等も踏まえて今夏頃までに中間報告がなされる予定である。
(2) 日本型CCRCの機能・要件
基本コンセプトから、日本型CCRCに求められる機能・要件は次のとおり要約される。
<日本版CCRCの機能・要件>
① 医療との連携強化
② 介護サービスの充実強化
③ 介護・病気予防の推進
④ 見守り、配食、買い物など、多様な生活支援サービスの確保や権利擁護
⑤ 高齢期になっても住み続けられる高齢者住宅の整備
① 医療との連携強化
② 介護サービスの充実強化
③ 介護・病気予防の推進
④ 見守り、配食、買い物など、多様な生活支援サービスの確保や権利擁護
⑤ 高齢期になっても住み続けられる高齢者住宅の整備
(3)日本版CCRCによる効果
a ①高齢者の安心・安全の確保とQOL向上、②健康寿命の延伸による社会的コストの削減、③地域の雇用創出や消費拡大による地域活性化の3点に集約されるが、他にも様々な導入メリットがあげられる。
b 病気や障害が起き、外部の施設に入所する場合や病院に入院する場合に、環境が大きく変化するために起きる精神的な落ち込みが起こる現象(トランスファーショック)も防ぐことができる。
c 大学連携型CCRCは、シニア学生が再びキャンパスで学び、自らの経験を活かして教壇に立つ「半学半教」の生活が魅力とされている。
日本には約800の大学があり、キャンパスには図書館、カフェテリア、運動場など魅力的で活用可能なインフラが既に備わっている。大学連携型CCRCは、単なるシニア住宅でなく、「教育」「研究」「地域貢献」という大学の使命にもシナジーをもたらす。
日本には約800の大学があり、キャンパスには図書館、カフェテリア、運動場など魅力的で活用可能なインフラが既に備わっている。大学連携型CCRCは、単なるシニア住宅でなく、「教育」「研究」「地域貢献」という大学の使命にもシナジーをもたらす。
d 急速な少子高齢化に対応するために2012年に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」で、地域包括ケアシステムの重視が謳われたが、その地域包括ケアシステムの役割も果たすことも可能となる。
(注)地域包括ケアシステム
「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するために医療や介護のみならず、福祉サービスを含めたさまざまな生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制」と定義。おおむね30分以内」に必要なサービスが提供される圏域。
「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するために医療や介護のみならず、福祉サービスを含めたさまざまな生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制」と定義。おおむね30分以内」に必要なサービスが提供される圏域。
e また、街に複合施設が複数でき、その近くに自立型、支援型、介護型の高齢者住宅およびネットワークを作る。自宅でケアが可能な高齢者には、複合施設から往診、訪問看護・介護を提供することによって、“街ごとCCRC”にすることも可能となる。
5 秋田県におけるCCRCの活用・導入
(1) 日本では、高齢者用「施設」の整備は進んでいるが、高齢者用「住宅」の整備は進んでいないといわれてきた。また、日本の介護施設の問題点として、様々な生活レベルの高齢者に対して同様のサービスを提供していることがあげられる。
平均寿命が年々上昇し、セカンドライフ時間(65歳時点の余命×高齢者の平均的な行動時間)は10万時間時代になり、元気な団塊の世代がこれから高齢化を迎える中で、CCRCは早急に導入の検討が進められるべき施策である。
平均寿命が年々上昇し、セカンドライフ時間(65歳時点の余命×高齢者の平均的な行動時間)は10万時間時代になり、元気な団塊の世代がこれから高齢化を迎える中で、CCRCは早急に導入の検討が進められるべき施策である。
(2) 地方にとっても、2つの意味で検討すべき課題である。
a 1つめは、「地方への移住」の受け皿となることによって、新たなビジネスモデルによる雇用の場・消費拡大を産みだし、「人口減少・少子高齢化問題」の解決策の1つと成り得ることである。
ちなみに、NPO法人「ふるさと回帰支援センター」が運営する「ふるさと暮らし情報センター」の昨年1年間の来場者を対象に行ったアンケート結果(回答者数2885人)による“ふるさと暮らし希望地域”ランキング(上位20位まで公表)において、首都圏から比較的交通アクセスが良い県が上位となる中、秋田県が北東北で唯一名前が上がっている(14位)。
なお、その理由として、同センターでは「Aターン(U・Iターン)相談といった地道な活動の結果、希望者を増やしており、活動を継続させることの重要性を裏付けている」とコメントしている。活動の成果を結実させるためにも、CCRC設置を移住の契機・後押しとしたい。
ちなみに、NPO法人「ふるさと回帰支援センター」が運営する「ふるさと暮らし情報センター」の昨年1年間の来場者を対象に行ったアンケート結果(回答者数2885人)による“ふるさと暮らし希望地域”ランキング(上位20位まで公表)において、首都圏から比較的交通アクセスが良い県が上位となる中、秋田県が北東北で唯一名前が上がっている(14位)。
なお、その理由として、同センターでは「Aターン(U・Iターン)相談といった地道な活動の結果、希望者を増やしており、活動を継続させることの重要性を裏付けている」とコメントしている。活動の成果を結実させるためにも、CCRC設置を移住の契機・後押しとしたい。
b 2つめは、「安全・安心なまちづくり」のためにもCCRCが今後ポイントとなるからである。
人口減少と少子高齢化によって、行政コスト縮減のためには「コンパクトシティ」の考え方によるまちづくりは避けてとおれない。
加えて、雪国の本県では高齢者宅の除排雪対策が重くのしかかっているが、この打開策にも成り得るものであり、また、増加する一方の空き屋対策にも有効となる。
CCRCによる「安心・安全なまちづくり」は、高齢者本人のみならず、遠くに住む家族にとっても、今後欠かせないものとなろう。
このような考え方のもと、昨年8月に設立されたのが、「秋田プラチナタウン研究会」である。
秋田銀行を事務局とし、事業者のほか、大学・行政機関等の参加により、①日本版CCRCの先駆けとなる取組みを本県で実現すること、②他県から高齢者を呼び込むとともに、雇用・消費の場を創出することで本県の活性化をはかる、③秋田版CCRCモデルを全国・世界に向けて発信する、ことを最終目標とし、活動が進められている。
人口減少と少子高齢化によって、行政コスト縮減のためには「コンパクトシティ」の考え方によるまちづくりは避けてとおれない。
加えて、雪国の本県では高齢者宅の除排雪対策が重くのしかかっているが、この打開策にも成り得るものであり、また、増加する一方の空き屋対策にも有効となる。
CCRCによる「安心・安全なまちづくり」は、高齢者本人のみならず、遠くに住む家族にとっても、今後欠かせないものとなろう。
このような考え方のもと、昨年8月に設立されたのが、「秋田プラチナタウン研究会」である。
秋田銀行を事務局とし、事業者のほか、大学・行政機関等の参加により、①日本版CCRCの先駆けとなる取組みを本県で実現すること、②他県から高齢者を呼び込むとともに、雇用・消費の場を創出することで本県の活性化をはかる、③秋田版CCRCモデルを全国・世界に向けて発信する、ことを最終目標とし、活動が進められている。