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経営随想

秋田県における農地中間管理事業の取組について

三浦 庄助
(公益社団法人秋田県農業公社 理事長)

1 公社の沿革

 公益社団法人秋田県農業公社は、農業関係5法人(秋田県農地管理公社、秋田県畜産開発公社、秋田県家畜畜産物衛生指導協会、秋田県畜産会、秋田県種苗センター)が、その機能を強化し、農業経営体の生産基盤から経営改善まで一体的な指導支援を行う体制を整備するため統合し、平成12年4月に発足しました。平成25年4月には公益社団法人へ移行し、現在、4つの部(総務企画部、農業振興部、農地管理部、畜産部)により、行政機関の補完的な役割を果たす機関として、秋田県農業の発展と農家経済の安定向上に寄与するため、各種事業に取り組んでいます。

2 秋田県農地中間管理機構の概要

 国は、担い手が利用する農地面積を現在の5割から10年間で8割にまで拡大することを目指し、これを実現するため、平成25年12月に「農地中間管理事業の推進に関する法律」を制定し、「農地中間管理機構」を各都道府県に整備しました。本県では秋田県農業公社が機構の指定を受け、平成26年4月1日より機構業務を開始しています。

(1)農地中間管理事業の仕組み
 農地中間管理事業は、機構が農地の中間的受け皿となり、農地の出し手である離農や規模縮小する農家から農地を借入れ、担い手となる受け手へ貸付けを行い、規模拡大と農地の集約化・連坦化により生産性の向上を図るための事業です。
 機構へ農地の貸付けを希望する場合は、市町村窓口で受付けを行います。受付け後、機構が農地の受け手を探し、受け手が見つかった場合、10年以上の期間で借受契約となります。また、農地の出し手には各種要件に基づき、機構集積協力金が交付されます。
 機構から農地を借りたいという場合は、機構が行う借受希望者の公募に申し込む必要があります。申込みは、各市町村が設定した公募区域毎となり、申込者は法律に基づき、農業公社のホームページにおいて公表します。公表後は、貸付希望者の農地とマッチングを行い、交渉成立後、県の認可により貸付契約が決定します。
 なお、窓口業務を始め、出し手、受け手の掘り起しなど、事業に係る業務の一部は、市町村等へ委託しています。
 また、機構では、中山間地域等の条件不利地においても担い手が農地を借りやすい環境を整えるため、農地の畦畔除去、暗渠排水などの簡易な基盤整備や耕作放棄地の再生整備を実施します。

(2)秋田県農地中間管理事業評価委員会の設置
 秋田県農地中間管理事業の評価委員会は、事業の実施状況を評価するため、法律に基づき設置している組織です。同会の委員は、客観的かつ中立な判断ができる方として、秋田経済研究所所長ほか、外部から4名の方に委嘱し、事業の進め方等にご意見をいただき、検証しながら各種取組の改善に努めています。

3 農地中間管理事業の実施状況(平成26年度)

 米価下落等厳しい環境下において、経営規模の拡大は避けられないという農家の志向にも支えられ、農地中間管理事業の初年度にもかかわらず、計画目標の1,000haを超える農地を担い手へ集積・集約化しました。

(1)借受・貸付実績
 機構の借受面積は1,730ha、貸付面積は1,049haと全国7位の実績となり、貸付面積のうち新規集積面積は722haと全国3位となりました。

(2)機構の貸付農地の状況
 機構が貸付けた農地1,049haの地帯別状況については、平地が69%、中山間地が31%と平地での貸付けが多くなりました。
 貸付先の経営形態で比較すると、平地では個人と法人への貸付割合がほぼ半々であったのに対して、中山間地では個人への貸付が6割と法人を上回りました。

(3)出し手、受け手の状況
 出し手の貸出前の経営面積は1.4haとなっており、ほとんどが水田です。1件当たりの貸出面積は1.1haとなっています。
 貸出後の経営面積は0.3haとなり、規模別では、0.1ha未満は6割、0.1ha以上1ha未満は3割となっています。
 また、受け手の借受面積を経営形態で比較すると、個人と法人がほぼ半々となっており、1件当たりの借受面積は、個人では1.3ha、法人は 5.2haと個人の4倍となっています。

(4)地域別の借受・貸付実績
 各地域振興局(県の出先機関)の借受・貸付面積の実績は、仙北地域振興局管内が最も多く、次いで、平鹿地域、秋田地域の順となっており、県南地域の借受・貸付が多い状況となっています。

4 初年度の実績からみた課題と今後の対策

 初年度の実績からみた課題としては、借受希望面積の15,070haに対して貸付希望面積は2,268haと、借り手と出し手のミスマッチが生じていることです。そのため、農地の出し手の掘り起こし活動を強化する必要があります。
 また、市町村ごとの貸付実績に大きな開きがあることから、取組の弱い市町村に対しては、各地域振興局と連携を強化し、農地中間管理事業の促進を図ることが今後の課題となっています。
 事業が本格稼働となる今年度は、3,000haの集積目標を掲げその目標達成に向けて、次の取組を展開してまいります。

(1)出し手農家への周知活動の強化
 市町村・JA等の広報紙に事業内容を掲載して周知を図ることや、秋田県種苗交換会及び市町村産業祭においての相談活動は、今年度も引き続き行います。
 新たな試みとして、新聞広告への掲載や高齢者にも視覚的にわかりやすく解説する「PR映像」を制作し、市町村等関係機関にDVDを配布する予定としています。さらに、事業を活用し、農地集積に取り組んだモデル地区において、農地流動化の機運が盛り上がっている地域の出し手や受け手農家を対象とした現地説明会を実施します。

(2)地域における推進体制の充実・強化
 地域農業の事情に精通している方を現地相談員に委嘱し、県内10箇所に配置することとしております。
 また、県の農政部局と土地改良部局、農業公社で構成する県推進チームと市町村・JA・土地改良区等関係機関が連携を密にして、農地集積のモデル事例を作り上げ、県内への横展開を促進させ、農地集積の加速化を図ります。

5 おわりに

 秋田県の農業に活気を取り戻すためには、企業の経営ノウハウを活かした付加価値の高い農業の展開がキーポイントの一つとなりますので、地域の新たな担い手として、企業の農業参入も期待されております。農業に関心のある経営者の方は、秋田県農業公社までご相談いただければ幸いです。
 最後に、本県農業の課題である「規模拡大による競争力強化」と「米依存体質からの脱却」といった生産構造の転換に対して、秋田県農業公社は、先導的な役割を担うよう取り組んでまいりますので、今後とも各方面からのご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。

(公 社 概 要)

1 名  称 公益社団法人 秋田県農業公社
2 代表者名 理事長 三浦 庄助
3 所 在 地 (本社)〒010-0951 秋田市山王4-1-2 秋田地方総合庁舎5階
4 T E L 018-893-6211
5 F A X 018-895-7210
6 U R L https://www.ak-agri.or.jp/
7 設立年月日等 平成12年4月1日
平成25年4月1日 公益社団法人へ移行
8 事業内容 農地集積、就農相談、6次産業化の推進、
有機JAS・特別栽培農産物の認証、畜産振興、種苗の生産供給
9 職員数 79名(平成27年4月1日現在)
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