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アンケート結果から見た本県プレミアム付き商品券の使用状況

 今年度、地方の消費喚起を目的とする「プレミアム付き商品券」が全国で発行され、県内でも全25市町村が発行し、平成27年9月末までの発行総額は約97億円であった。
 当研究所では、県内消費者のプレミアム付き商品券の購入動向や使用状況等を把握するため、昨年10月にアンケート調査を実施した。本号では、その結果についてレポートする。

1 プレミアム付き商品券の発行状況

 平成27年度、消費税率引上げ後の消費低迷を受け、地方の消費喚起を目的とする交付金(「地域消費喚起・生活支援のための交付金」)を活用し、全国地方自治体の97%が「プレミアム付き商品券(以下、商品券)」を発行した。
 全国地方自治体が発行する商品券の発行額は27年9月末までに総額7,814億円、県内でも全25市町村が発行し、発行総額は約97億円に達した。
 これまでも各自治体と地元商工会が連携し、独自に商品券を発行する事業が行われてきたが、割増率はその多くが10%であった。しかし今回は、各自治体が国の交付金を活用し、商品券のプレミアム分を20~30%に設定したことから、消費拡大、個人消費の底上げなど、高い期待が寄せられた。

2 過去の消費喚起策との比較

 かつて、平成11年度と20年度にも国による消費喚起策が行われた。11年度は、景気浮揚を目的として、15歳以下の児童が属する世帯の世帯主や老齢福祉年金の受給者などを対象に、1人当たり2万円分の「地域振興券」が交付され、20年度には、18 歳以下および65歳以上の世帯構成者1人につき2万円、19歳以上64歳以下の世帯構成者1人につき1万2千円の「定額給付金」が交付された。
 このうち、11年度の「地域振興券」について、交付当時に当研究所が行った調査(平成11年10月実施、回答者805世帯)によると、県内では、地域振興券を使って「衣料品(子供用)」や「食料」など、生活必需品への使用が目立った。
 また、「地域振興券の交付で消費が増えましたか」という問いに対しては、「変わらなかった」が 65.6%にのぼり、個人消費の拡大という目的とは幾分ずれた結果となっていた。
 一方、今回発行となった商品券は、地域振興券や定額給付金とは異なり、購買意欲のある消費者の商品券購入が前提となっているため、その分はほぼ確実に消費に繋がる政策であり、消費促進効果は高いとされていた。そのため、今回の商品券発行をきっかけに、いかに追加支出を引き出すかがポイントとなっていた。

3 商品券の使用状況

 当研究所では、平成27年10月に「秋田県消費動向調査」を実施し、併せて、商品券の購入動向や使用状況等について伺い、県内703世帯の方からご回答いただいた。
 本誌27年12月号掲載の「消費動向調査」でも、アンケート結果の一部について紹介済みであるが、本号では、1か月当たりの生活費別や世帯年収別の集計、商品券発行に合わせた小売業者の取組み等についてまとめた。

(1)商品券の購入について
 商品券を購入した世帯割合は42.0%となった。販売場所となった県内各地の商店街や大型店、金融機関、商工会などでは、購入希望者が長い列を作り、人気の高さがうかがえた。
 商品券の購入について、回答世帯の1か月当たりの生活費別にみると、「10万円以上」の世帯では、購入割合が40%台となり大きな違いがなかったが、「10万円未満」の各世帯では28.4%と、他の世帯に比べて購入割合が低くなった。
 また、世帯年収別でも同様の傾向がみられた。世帯年収「300万円以上」の世帯では、購入割合が40%を超えたものの、「300万円未満」の世帯では32.2%と低くなった。
 1か月当たりの生活費の少ない世帯や世帯年収の低い世帯では、商品券購入のニーズが少なかった様子がうかがえる。

(2)商品券の使い道について
 商品券の使い道については、「日常の買い物」(80.3%)の割合が高くなり、8割を超えた。一方、「日常の買い物に加え、これまで欲しかったもの、いつもより高価なもの」が14.2%、「これまで欲しかったもの、いつもより高価なもの」が5.5%となり、二つの回答を合わせた19.7%が、商品券の発行がきっかけとなり、新たな消費に結びついたといえる。
 また、1か月当たりの生活費別では、生活費「10万円未満」で84.0%、「10~15万円未満」で88.1%と、1か月当たりの生活費が少ない世帯ほど「日常の買い物」に使用した割合が高くなった。一方、生活費「25万円以上」の世帯では、「日常の買い物に加え、これまで欲しかったもの、いつもより高価なもの」(20.0%)、と「これまで欲しかったもの、いつもより高価なもの」(12.0%)に使用した割合が最も高くなり、1か月当たりの生活費が多い世帯ほど、新たな消費に結びついた割合が高いことが分かった。
 世帯年収別では、「300万円未満」の世帯で、「日常の買い物」に使用した割合が94.6%と、最も割合が高くなった。また、商品券の発行がきっかけとなり、新たな消費に結びついた割合(「日常の買い物に加え、これまで欲しかったもの、いつもより高価なもの」と「これまで欲しかったもの、いつもより高価なもの」の合計)は、「300万円~500万円未満」、「500~800万円未満」、「800~1,000万円未満」の各世帯で2割以上となり、「1,000万円以上」でも18.8%となった。

(3)商品券の使用場所について
 商品券を主に使用した場所については、割合が高い順に「スーパーマーケット」(69.4%)、「地元商店」(43.3%)、「大型商業施設(ショッピングセンター)」(33.0%)、「ホームセンター・ドラッグストア」(26.8%)となった(図表8)。
 1か月当たりの生活費別では、「スーパーマーケット」は、どの区分においても使用割合が高く6割を超えたが、特に「20~25万円未満」では、79.5%と最も高くなった。
 「地元商店」は、「25万円以上」の世帯で約5割となったほか、「15~20万円未満」で47.1%、「20~25万円未満」では43.2%となった。「10~15万円未満」(34.9%)や「10万円未満」(40.0%)に比べ使用割合が高く、1か月当たりの生活費が多い世帯ほど、「地元商店」での使用割合が高くなる傾向にある。低価格商品を多く扱う「大型商業施設」や「ホームセンター・ドラッグストア」等に比べ、普段は値引きが少ない「地元商店」で、欲しい商品をお得に購入した様子がうかがえる。
 また、年代別にみると、「地元商店」の使用割合は60代以上で、「コンビニエンスストア」の使用割合は70代以上の高齢層で、それぞれ高くなっているのも特徴である。高齢層は、車の運転が困難であるなどの理由で交通手段の確保が難しいケースがあり、行動範囲が狭くなる傾向にあるため、郊外にある「大型商業施設」や「ホームセンター・ドラッグストア」よりも、身近な場所での使用割合が高くなったと考えられる。

(4)追加支出について
 (1)~(3)の結果から、商品券は「日常の買い物」に使用した割合が高く、使用場所についても、スーパーマーケットを中心に身近な場所で使用するなど、主に生活必需品等、日々の買い物に充てられたと考えられる。
 しかし商品券をきっかけに、日常の買い物以外に新たな消費を行った回答者(19.7%、図表6参照)のうち、65.5%が現金を追加で支出しており、一定の消費喚起効果がみられたといえる。
 1か月あたりの生活費別では、「追加で支出した」割合は、「20~25万円未満」で最も高く75.0%を占め、「25万円以上」でも68.8%となった。一方、「10万円未満」では50.0%と最も低くなった。1か月当たりの生活費が多いほど、追加で現金を支出した割合が高くなった一方、生活費が少ない世帯では、出来るだけ商品券の範囲内で支払いを済ませようとした様子がうかがえる。
 世帯年収別では、「追加で支出した」割合は、「500~800万円未満」で75.0%「300~500万円未満」では70.0%と割合が高くなり、「300万円未満」では50.0%と低くなった。

4 プレミアム付き商品券発行に合わせた小売業者の取組み

 所得の伸び悩みや物価上昇等を背景に、節約意識が根強く残り、本県の消費は厳しい状況が続いてきたため、商品券に高い期待を寄せる小売業者も多かったようである。
 県内では、商品券発行に合わせ、各店舗ではポスター掲示やのぼり等の設置を行ったほか、ホームページやブログ、SNSを使い、商品券が使用可能である旨の宣伝が行われた。さらに、ショッピングセンターや商店街では、スタンプラリーや抽選会等、様々なイベントを企画・開催するなど、商品券をきっかけに販売促進活動への取組みが多くみられた。
 従来の商品券は、主に県外資本などの大型店で使用される傾向があったが、今回は、商品券の全部もしくは一部を地元資本の商店での使用に限定したほか、店舗面積により使える商品券を区分する等の措置がとられた。
 商品券利用可能店舗への取材によると、商品券発行にともなう売上の変化については、店舗によってまちまちであったが、「新規顧客の獲得につながった」(飲食店)、「商店街の他店舗との連携強化のきっかけとなった」(衣料品販売店、クリーニング店)などの声が聞かれた。
 また、事業開始直後は加盟店として登録していなかったが、「利用客からの問い合わせがあり、事業開始後に加盟店登録した」店舗(寝具販売店、自動車整備工場)もあった。事業開始当初は事業そのものの宣伝不足のほか、消極的な姿勢を示す小売業者もあったが、発行後は、一定の盛り上がりがみられた。
 一方で、「日常と変わらない買い物を商品券で支払ったとの印象で、客単価が上昇したり、高額な商品が売れたわけではなかった」(食品スーパー)、「商品券の使用はあったが、売上に変化がなかった」(美容院)との声も聞かれ、消費行動に大きな変化はなく、生活費の補てんに充てられた、との一面も見てとれる。

5 まとめ

 今回のアンケート結果では、商品券の購入者は4割、商品券を「日常の買い物」に使った割合が8割となった。「日常の買い物以外に新たな消費を行った」回答者は約2割にとどまったが、このうち、現金を追加支出したと回答した世帯は6割を超え、一定の消費喚起効果がみられた。
 生活費が少ない世帯および世帯年収の低い世帯では、商品券の購入割合が低くなったほか、主に日用品の購入に充てられ、支払いは出来るだけ商品券の範囲内で済ませるなど、現金を追加支出した割合が低くなった。一方、生活費が多い世帯および世帯年収の高い世帯ほど、商品券購入割合が高く、新たな消費に結びついた割合や現金を追加支出した割合も高いなど、消費喚起効果は、生活費が多い世帯および世帯年収の高い世帯に強く現れたようだ。
 使用場所は、「スーパーマーケット」や「地元商店」、「大型商業施設」の割合が高く、商品券が生活費の補てんに充てられた、との一面も見て取れるが、県内各地で商品券の購入に長蛇の列ができ、発売後まもなく完売となった地域が多かったことを考えれば、今後の消費拡大に期待の持てる結果になったのではないだろうか。また、「地元商店」が4割を超え、地域経済の活性化にも好影響があったと考えられる。
 商品券の発行自体が地域活性化につながるものではないが、これをきっかけに、地元商店の魅力が再確認され、“継続的な”消費増加に繋がることが期待される。小売業者には、この効果を一過性にしないためにも、消費者との結びつきを強くし、集客やリピーター獲得に向けた継続的な努力と工夫が必要であろう。
(佐藤 由深子)
あきた経済

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